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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B |
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管理番号 | 1152888 |
審判番号 | 不服2004-5251 |
総通号数 | 88 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-03-15 |
確定日 | 2007-02-21 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第514501号「電界発光ランプ装置とその製造」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 6月23日国際公開、WO94/14180、平成 8年 5月28日国内公表、特表平 8-505000〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、1993年12月14日(パリ条約による優先権主張1992年12月16日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成15年12月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成16年3月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年4月14日付けで手続補正書が提出されたものである。 その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年4月14日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「選択された発光可能領域を有するユニットを提供する方法において、 所定の大きさの支持基板を供給し、 上記支持基板は、ランプを受け取るための表面であって、その表面上にランプが面と面を接するよう配置される表面と、上記支持基板の該表面上に配置され、電界発光ランプを活動化するために上記の面と面を接して配置されたランプ上の対応した電導体により接続されるために露出した導電トレースとを有し、 事前に成形された機械的に柔軟なシート形状の複数の電界発光ランプを供給し、 各ランプは上記支持基板より小さく、かつ、1組のシート形状の導電電極層の間に配された電界発光材を含むシート形状層を含み、 上記複数の電界発光ランプを選択された導電トレースに電気的に接続し、上記複数の電界発光ランプをそれぞれの周囲において上記支持基板に固定して、上記複数の電界発光ランプを平らな形で面と面を接した形で上記支持基板の上記表面上の所定の位置に配置し、 上記支持基板及び固定されたシート形状の電界発光ランプは利用のための所望の形状に一体的に変形されることを特徴とする方法。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された実願昭61-101740号(実開昭63-8781号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)「2.実用新案登録請求の範囲 相互に間隔を存して平行に配置された一対の長手電極と、 側部から露出して前記電極にそれぞれ接続される入力端子を有する複数のEL素子と、 電極とEL素子との全体を気密に覆う外封材とを有し、EL素子の入力端子付近上には、隣接するEL素子の発光領域が部分的に重ねられ、これによつて複数のEL素子の各発光領域が連続するようにしたことを特徴とするEL表示装置。」(第1頁第4行?第13行) (2)「第1図は本考案の一実施例の分解斜視図であり、第2図はその一部の断面図である。自己支持性のあるフィルムまたは板状体から成る基体1は、たとえばベークライトなどの材料から成る。この基体1の一表面に、接着剤2によって、一対の平行な電極3、4を第1図における仮想線3a、4aで示される位置に貼着する。電極3、4は、金属、たとえば銅などから成り、箔状である。」(第4頁第13行?第20行) (3)「基体1の前記一表面には、複数のEL素子13がいわゆる両面テープ14などによって貼着される。両面テープ14は、可撓性を有する合成樹脂製フィルムの両表面に接着剤が設けてある構成を有する。EL素子13は、本体15と、一対の入力端子16、17とを有する。入力端子16、17は、電極3、4上にそれぞれ配置される。EL素子13の本体における発光領域18は、隣接するEL素子13の入力端子16、17付近を仮想線19で示される位置まで覆う。これによって発光領域18が連続して基体1の長手方向に沿って形成されることになる。入力端子16、17は、電極3、4に半田20によって半田付けされる。」(第5頁第7行?第19行) (4)「第3図を参照して、EL素子13は、偏平なEL発光体28が、透明電極29とアルミニウムなどの材料から成る電極30とによってサンドイッチされ、これらは透光性の外封材31、32によって気密に覆われて構成される。EL発光体28は、たとえば有機分散形EL材料などであって、乳白色であり、外封材31、32はたとえばダイキン工業社製商品名「ダイフロン」として知られている三フッ化塩化エチレンなどから成る。」(第7頁第20行?第8頁第8行) (5)「基体1は、フィルム状であってもよく、また剛性もしくは可撓性であってもよい。」(第11頁第2行?第4行) (6)第1図、第2図から、1)基体1は、基体1の表面上にEL素子13が面と面を接するよう配置される表面を有すること、2)基体1がEL素子13の入力端子16、17により接続されるために露出した電極3、4を有すること、3)各EL素子13は基体1より小さいこと、4)複数のEL素子13をそれぞれの周囲において基体1に固定して、上記複数のEL素子13を平らな形で面と面を接した形で上記基体1の上記表面上の所定の位置に配置すること、が見てとれる。 (7)第1図、第3図から、各EL素子13がシート形状であることが見てとれる。 これらの記載事項により、引用例1には、「発光領域18を有するEL表示装置において、基体1を有し、上記基体1は、その表面上にEL素子13が面と面を接するよう配置される表面と、上記基体1の該表面上に配置され、上記の面と面を接して配置されたEL素子13の入力端子16、17により接続されるために露出した電極3、4とを有し、外封材31、32がたとえばダイキン工業社製商品名「ダイフロン」として知られている三フッ化塩化エチレンなどから成る変形されたシート形状の複数のEL素子13を有し、各EL素子13は上記基体1より小さく、かつ、透明電極29とアルミニウムなどの材料から成る電極30とにサンドイッチされたEL発光体28を含むシート形状層であり、上記複数のEL素子13を電極3、4に接続し、上記複数のEL素子13をそれぞれの周囲において上記基体1に固定して、上記複数のEL素子13を平らな形で面と面を接した形で上記基体1の上記表面上の所定の位置に配置し、上記基体1は可撓性であるEL表示装置。」(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 3.対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「発光領域18」は本願発明の「発光可能領域」に、以下同様に、「基体1」は「所定の大きさの支持基板」に、「EL素子13」は「ランプ」及び「電界発光ランプ」に、「EL素子13の入力端子16、17」は「ランプ上の対応した電導体」に、「電極3、4」は「導電トレース」に、「EL発光体28」は「電界発光材」に、それぞれ相当する。 (1)引用発明の対象である「EL表示装置」は「発光領域18を有」するものであるから、引用発明においても本願発明の「選択された発光可能領域を有するユニットを提供する方法」を包含するものであると言える。 (2)引用発明の「基体1を有」するものであるから、引用発明においても本願発明の「所定の大きさの支持基板を供給」するものであると言える。 (3)引用発明は「基体1は、その表面上にEL素子13が面と面を接するよう配置される」ものであるから、引用発明の「基体1」も本願発明の「ランプを受け取るための表面」を有すると言える。 (4)引用発明の「EL素子13の入力端子16、17により接続されるために露出した電極3、4」も、本願発明の「電界発光ランプを活動化する」機能を有することは、自明のことである。 (5)引用発明において、「基体1は、その表面上にEL素子13が面と面を接するよう配置される」ものであるから、引用発明の「EL素子13」が事前に成形されたものであることは自明であることにより、引用発明の「シート形状の複数のEL素子13を有」することは、本願発明の「事前に成形されたシート形状の複数の電界発光ランプを供給」することと言える。 (6)引用発明の「EL素子13」はシート形状であることから、引用発明の「透明電極29」と「アルミニウムなどの材料から成る電極30」もシート形状であることは自明であることにより、引用発明の「透明電極29とアルミニウムなどの材料から成る電極30とにサンドイッチされたEL発光体28を含むシート形状であ」ることは、本願発明の「1組のシート形状の導電電極層の間に配された電界発光材を含むシート形状層を含」むことと言える。 (7)引用発明の「複数のEL素子13を電極3、4に接続」の「接続」が電気的に接続することは自明であることにより、引用発明の「複数のEL素子13を電極3、4に接続」することは、本願発明の「複数の電界発光ランプを選択された導電トレースに電気的に接続」することと言える。 以上から、両者は、 「選択された発光可能領域を有するユニットを提供する方法において、所定の大きさの支持基板を供給し、上記支持基板は、ランプを受け取るための表面であって、その表面上にランプが面と面を接するよう配置される表面と、上記支持基板の該表面上に配置され、電界発光ランプを活動化するために上記の面と面を接して配置されたランプ上の対応した電導体により接続されるために露出した導電トレースとを有し、事前に成形されたシート形状の複数の電界発光ランプを供給し、各ランプは上記支持基板より小さく、かつ、1組のシート形状の導電電極層の間に配された電界発光材を含むシート形状層を含み、上記複数の電界発光ランプを選択された導電トレースに電気的に接続し、上記複数の電界発光ランプをそれぞれの周囲において上記支持基板に固定して、上記複数の電界発光ランプを平らな形で面と面を接した形で上記支持基板の上記表面上の所定の位置に配置する方法。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1]シート形状の複数の電界発光ランプに関して、本願発明が機械的に柔軟なものであるのに対して、引用発明は、外封材31、32はたとえばダイキン工業社製商品名「ダイフロン」として知られている三フッ化塩化エチレンなどから成ることにとどまり、機械的に柔軟なものであることの明示的な記載がない点。 [相違点2]本願発明が、支持基板及び固定されたシート形状の電界発光ランプは利用のための所望の形状に一体的に変形されるのに対して、引用発明は、支持基板は可撓性であることにとどまる点。 4.判断 上記相違点について検討する。 [相違点1]について 引用発明のシート形状の複数の電界発光ランプの外封材31、32の材料として用いられている「ダイキン工業社製商品名「ダイフロン」」、「三フッ化塩化エチレン」が機械的に柔軟なものであることは、従来周知の技術事項(特開昭61-149218号公報第3頁、特開平2-64187号公報第2頁、特開平2-126957号公報第2頁参照)である。 してみると、引用発明のシート形状の複数の電界発光ランプの外封材31、32が機械的に柔軟なものであることから、引用発明のシート形状の複数の電界発光ランプも機械的に柔軟なものとすることに何ら困難性はない。 [相違点2]について 引用発明の支持基板は可撓性であり、また、上記相違点1で既述したように、引用発明のシート形状の複数の電界発光ランプも機械的に柔軟なものとすることに何ら困難性はない。 そして、支持基板及び固定されたシート形状の電界発光ランプを、電界発光ランプの利用分野、用途、貼り付ける部位等に応じて所望の形状に一体的に変形することは、従来周知の技術事項(特開平2-191099号公報第4頁、及び第5、6図、実願平2-13340号(実開平3-105885号)のマイクロフィルム第4、5頁、及び第1?3図参照。)である。 してみると、引用発明において、支持基板及び固定されたシート形状の電界発光ランプは利用のための所望の形状に一体的に変形されるように構成することは、当業者が電界発光ランプの利用分野、用途、貼り付ける部位等に応じて容易に想到し得た事項である。 そして、本願発明による作用効果も、引用発明及び従来周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-09-20 |
結審通知日 | 2006-09-26 |
審決日 | 2006-10-10 |
出願番号 | 特願平6-514501 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中田 善邦、山本 忠博 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
井口 猶二 森口 良子 |
発明の名称 | 電界発光ランプ装置とその製造 |
代理人 | 河宮 治 |
代理人 | 青山 葆 |