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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F17C |
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管理番号 | 1152951 |
審判番号 | 不服2004-5235 |
総通号数 | 88 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-03-15 |
確定日 | 2007-02-28 |
事件の表示 | 平成10年特許願第550584号「大容量ガス貯蔵および供給システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年11月26日国際公開、WO98/53246、平成14年 1月22日国内公表、特表2002-502482〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年5月20日(パリ条約による優先権主張1997年5月20日)の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年4月9日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。) 「物理的な収着媒にて収着可能であり、収着後に、圧力を媒介とした脱離または熱を媒介とした脱離により前記収着媒から脱離可能な流体を貯蔵しおよび要求があり次第供給するためのシステムであって、 前記物理的収着媒を含む、貯蔵および供給容器と、 前記物理的収着媒から脱離した流体を保持し、後に前記流体をそこから放出するための保持構造体と、 脱離した流体を前記貯蔵および供給容器から前記保持構造体に伝達しそこで保持するために配されるポンプと、 前記保持構造体内に保持される流体の圧力をモニタし、それに応答して前記ポンプのポンプ動作を調整することにより、このシステムから放出するための所定量の流体を前記保持構造体内に維持するための手段とを含む、システム。」 2.当審の拒絶理由 一方、当審において平成18年2月3日付けで通知した拒絶理由の概要は、本願発明は、本願出願前に頒布された、特開平4-260436号公報(以下、「引用文献1」という)、特開平6-316号公報(以下、「引用文献2」という)、米国特許第5518528号明細書(以下、「引用文献3」という)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3.引用文献1、2及び3の記載事項 (1)引用文献1の記載事項 a:「原料を加熱し気化させる手段と、気化した原料がその一次側に送られるニードルバルブ手段と、該ニードルバルブ手段を覆う恒温手段と、該ニードルバルブ手段の一次側圧力を検出し、その圧力に応じて上記原料に加える熱量を変化させることにより該一次側圧力を調整する手段と、該ニードルバルブ手段の二次側圧力を検出し、その圧力に応じて該ニードルバルブ手段の上記恒温手段外部へと延びる操作軸を操作することによりニードルバルブ手段の開度を変化させ、該二次側圧力を調整する手段とを備えることを特徴とする原料供給装置」(特許請求の範囲) b:「原料が原料タンク1内でヒーター2により加熱され気化して一次チャンバ5に送り込まれることによりその内圧が上昇し、その圧力上昇が圧力センサ8により検出される。圧力センサ8の出力はヒーター制御回路10に送られる。ヒーター制御回路10はこの圧力センサ8の出力に応じてヒーター2を制御し、一次チャンバ5の内圧が一定に保たれるようにヒーター2による加熱量の制御が行われる。このようなフィードバック制御により、ニードルバルブ6の一次側圧力がつねに一定に保たれることになる。」(段落【0017】、図1) (2)引用文献2の記載事項 c:吸着塔を流過した酸素(O2)ガス等は、矢印aに示すように、PSA-N2ガス分離装置1の上部から排出され、一方N2ガスは真空ポンプ3を経てサージタンク4へ送られる。(段落【0003】、図2) d:「本発明の圧力スイング式ガス製造装置は、吸着剤によって加圧下で原料ガス中の特定の成分ガスを吸着し、減圧下で前記特定の成分ガスを吸着剤より脱着する圧力スイング式ガス分離装置を備え、前記吸着剤から脱着された特定の成分ガスをサージタンクを介して脱湿装置へ送って脱湿して製品ガスを得る圧力スイング式ガス製造装置・・・」(段落【0012】、図1) (3)引用文献3の記載事項 e:「図7に概略的に示されているように、システムの操作の時を好ましいように設定して下流プロセス流れに分裂を起させたり、あるいはそれとの干渉を避けるようにする。前記クライオポンプと中圧タンク内の質量流れ制御器と圧力変換器からの信号を自動化プロセスシステムに用いることができる。前記クライオポンプは循環させて気体を前記貯蔵と送出システムから前記中圧ボンベ120に移動させて、前記減圧弁の出口における低圧を維持できる。」(第13欄第31?39行) f:「気体の貯蔵と送出用の吸着・脱離装置であって、 貯蔵と計量分配容器で固相物理的収着媒体を保持し、また気体を前記容器に流出入させるために構成・配置した容器と 前記貯蔵と計量分配容器に内部気体圧力で配置した固相物理的収着媒体と 前記固相物理的収着媒体上に物理的に吸着された収着済み気体と 前記貯蔵と計量分配用容器と気体流れ連通して連結し、また前記貯蔵と計量分配容器の外部で、前記内部圧力以下の圧力を供給して収着済み気体の前記固相物理的収着媒体からの脱離と、前記脱離済み気体を通過させる気体流れを達成させるため構成・配置した計量分配アセンブリー・・・」(第18欄第10?28行) 4.対比 引用文献1は、流体を貯蔵しおよび要求があり次第供給するためのシステムであり、引用文献1の「原料タンク」及び「一次チャンバー」は、本願発明の「貯蔵及び供給容器」及び「保持構造体」に相当し、引用文献1の発明は、一次チャンバーすなわち保持構造体に保持される流体の圧力をモニタし、それに応答して原料タンクすなわち貯蔵及び供給容器から供給する流体量を調整するものである。 これらの点を考慮して、本願発明と引用文献1に記載されたものとを対比すると、 両者は、「流体を貯蔵しおよび要求があり次第供給するためのシステムであって、 貯蔵および供給容器と、 貯蔵及び供給装置から供給された流体を保持し、後に前記流体をそこから放出するための保持構造体と、 前記保持構造体内に保持される流体の圧力をモニタし、それに応答して貯蔵及び供給装置からの供給量を調整することにより、このシステムから放出するための所定量の流体を前記保持構造体内に維持するための手段とを含む、システム。」で一致し、以下の2つの点で相違する。 相違点1:本願発明では、貯蔵及び供給容器が物理的収着媒を含むものであって、物理的収着媒から圧力を媒介として脱離または熱を媒介として脱離した流体を貯蔵および供給容器から保持構造体に伝達するものであるのに対し、引用文献1では、貯蔵及び供給容器には物理的収着媒を含まず、原料を加熱することによって気化した流体を貯蔵および供給容器から保持構造体に伝達するものである点。 相違点2:本願発明では、脱離した流体を前記貯蔵および供給容器から保持構造体に伝達しそこで保持するためにポンプが用いられ、保持構造体内の流体圧力に応じて調整されるのがポンプの動作であるのに対し、引用文献1では、脱離した流体を前記貯蔵および供給容器から保持構造体に伝達しそこで保持するためにポンプは用いられておらず、保持構造体内の流体圧力に応じて調整されるのが流体を気化させるためのヒータである点。 5.当審の判断 相違点1について 本願発明では、貯蔵及び供給容器が物理的収着媒を含むものであって、物理的収着媒から圧力を媒介として脱離または熱を媒介として脱離した流体を貯蔵および供給容器から保持構造体に伝達するものであるが、流体を物理的収着媒に収着させて貯蔵し、減圧によって脱離させて貯蔵及び供給装置から供給することは、引用文献2(記載事項d)及び3(記載事項f)に記載されているように、ガスの貯蔵・供給の形態として公知のものであって、引用文献1に記載の発明において、原料を気体の状態で供給する原料タンクとして物理的収着媒を含む貯蔵及び供給容器を用い、減圧によって物理的収着媒から脱離させて流体を供給することは当業者が容易になし得ることにすぎない。 相違点2について 本願発明では、脱離した流体を前記貯蔵および供給容器から保持構造体に伝達しそこで保持するためにポンプが用いられているが、このようなことは引用文献2(記載事項c)及び3(記載事項e)に記載されているように公知の事項にすぎず、当業者が容易になし得ることである。 そして、本願発明では、保持構造体内の流体圧力に応じて調整されるのがポンプの動作であるが、引用文献1に記載されているように、一次チャンバーすなわち保持構造体に保持される流体の圧力をモニタし、それに応答して原料タンクすなわち貯蔵及び供給容器から供給する流体量を調整することは公知であって、引用文献1ではヒーターを制御することによって流体の供給量を制御しているが、本願発明においてはポンプで流体の供給しているのであるから、流体の供給量の制御をする際にポンプの動作を制御することは当然のことであって当業者が容易になし得ることにすぎない。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、残余の請求項について検討を行うまでもなく、本願は当審で通知した上記拒絶理由によって拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-09-29 |
結審通知日 | 2006-10-03 |
審決日 | 2006-10-16 |
出願番号 | 特願平10-550584 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F17C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平城 俊雅、山崎 勝司、倉田 和博 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
中西 一友 豊永 茂弘 |
発明の名称 | 大容量ガス貯蔵および供給システム |
代理人 | 堀井 豊 |
代理人 | 仲村 義平 |
代理人 | 深見 久郎 |
代理人 | 森田 俊雄 |