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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1152988
審判番号 不服2005-8456  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-06 
確定日 2007-02-21 
事件の表示 特願2000-598351「化学薬品を貯蔵および輸送するための多層装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月17日国際公開、WO00/47412、平成14年12月 3日国内公表、特表2002-541026〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成12年2月1日(パリ条約による優先権主張1999年2月11日、独国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1ないし12に係る発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1は、以下のとおり記載されている。
「【請求項1】 化学薬品、特に、電子工業用の液体高純度化学薬品を貯蔵および輸送するための同時押出しによって製造される熱可塑性プラスチックで作られている多層装置において、その装置の内容物側の最も内側の層が、安定剤を含まないHDPEで作られていることを特徴とする装置。」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」という。)

2 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭62-39444号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。
a「(1)ポリエチレンを吹込成形してなる高純度薬品用ボトルであって、該ボトルは多層構造とされており、最内層を遮光剤を含有しないポリエチレンで構成し、最内層以外の少なくとも一層を遮光剤を含有するポリエチレンで構成したことを特徴とする高純度薬品用ボトル
(2)最内層が密度0.945?0.971g/cm3……のポリエチレンからなることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の高純度薬品用ボトル」(特許請求の範囲)
b「〔産業上の利用分野〕 本発明は高純度薬品用ボトルに関するものである。詳しくは、半導体等の電子部品等を加工する際等に用いる高純度の硫酸や硝酸等の薬品を収容、運搬する際に用いるボトルに関するものである。」(1頁左下欄下から2行ないし右下欄4行)
c「従来この種の薬品を収容、運搬する容器としては、ポリエチレン製の単層の容器が用いられており、特に硝酸等、光に当ると変色や変質する薬品用容器の場合には、ポリエチレンにカーボンブラックとチタンホワイト等を混入して灰色に着色したボトル等が用いられている。しかしながら、この着色、単層ボトルの場合、薬品を収容して運搬等を行なう際、振動等が加わり、容器内で薬品が揺動すると、ポリエチレンのこれら添加物の溶出問題に加えて容器の内壁から微細なダストが発生し、薬品中に混入すると云う問題がある。本発明は、薬品中にダストの混入することの少ない容器を提供することを目的とするものである。」(2頁左上欄1ないし14行)
d「最内層2を構成するポリエチレンには後述する遮光剤は添加しない。微量の不純物が収容した薬品に混入することを防止する上から、劣化防止剤等の添加剤は添加されていないポリエチレンを用いることが望ましい。」(2頁右下欄2ないし6行)
e「ボトル1は上述のように少なくとも2層のボトルであるが、これを製造するには、通常の多層押出ダイを用い多層のパリソンを押出し、これをブロー成型することによつて行なえば良い。」(3頁左上欄12ないし15行)
f「実施例1 内層樹脂として密度0.963g/cm3……の高密度ポリエチレン…を用い、」(3頁左下欄14ないし20行)

以上の記載によれば、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。
「半導体等の電子部品等を加工する際等に用いる高純度薬品を収容、運搬するための、多層押出ダイを用いた吹込成形によって製造されるポリエチレンで作られている多層構造のボトルにおいて、ボトルの最内層が、遮光剤を含有しない高密度ポリエチレンで作られているボトル。」

3 対比
本願発明1と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「半導体等の電子部品等を加工する際等に用いる高純度薬品」、「ポリエチレン」、「多層構造のボトル」及び「ボトルの最内層」は、それぞれ本願発明1の「化学薬品、特に、電子工業用の液体高純度化学薬品」、「熱可塑性プラスチック」、「多層装置」及び「装置の内容物側の最も内側の層」に相当する。
そして、引用例記載の発明の「多層構造のボトル」は、多層押出ダイを用いた吹込成形により製造されるものであり、多層押出ダイを用いて多層のパリソンを押出し、これをブロー成型して製造される(上記記載e参照。)ので、同時押出しによって製造されているということができ、さらに、本願発明1の「HDPE」は、「高密度ポリエチレン」の略称(本願明細書段落【0005】参照。)であるから、両者は、
「化学薬品、特に、電子工業用の液体高純度化学薬品を貯蔵および輸送するための同時押出しによって製造される熱可塑性プラスチックで作られている多層装置において、その装置の内容物側の最も内側の層が、高密度ポリエチレンで作られている装置」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点
本願発明1では、装置の内容物側の最も内側の層が、安定剤を含まない高密度ポリエチレンで作られているのに対して、引用例記載の発明では、装置の内容物側の最も内側の層が、遮光剤を含有しない高密度ポリエチレンで作られており、安定剤を含まない高密度ポリエチレンで作られているのか不明である点。

4 相違点の検討
そこで、上記相違点について検討する。
本願明細書の段落【0001】ないし【0003】の記載によると、本願発明1において、装置の内容物側の最も内側の層が安定剤を含まない高密度ポリエチレンで作られているのは、電子工業用の液体高純度化学薬品が、輸送又は貯蔵の間に装置の壁材料により汚染されることを防ぐためである。
一方、引用例記載の発明も、半導体等の電子部品等を加工する際等に用いる高純度薬品を収容、運搬するボトルの内壁から微細なダストが発生し、薬品中に混入するのを少なくするため(上記記載b,c参照。)に、最内層(装置の内容物側の最も内側の層)が、遮光剤を含有しない高密度ポリエチレンで作られているというものであって、本願発明1と同様の課題を解決するものである。そして、引用例には、最内層を構成するポリエチレンとして、微量の不純物が収容した薬品に混入することを防止する上から、劣化防止剤等の添加剤は添加されていないポリエチレンを用いることが望ましいこと(上記記載d参照。)が記載されており、この「劣化防止剤等の添加剤」は、プラスチックの劣化を少なくするために加えられる、いわゆる安定剤の一種であるから、引用例記載の発明において、微量の不純物が収容した薬品に混入することを防止するために、装置の内容物側の最も内側の層を安定剤を含まない高密度ポリエチレンで作り本願発明1とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本願発明1は、引用例記載の発明及び引用例の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-27 
結審通知日 2006-09-28 
審決日 2006-10-11 
出願番号 特願2000-598351(P2000-598351)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 宏之  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
宮崎 敏長
発明の名称 化学薬品を貯蔵および輸送するための多層装置  
代理人 富田 博行  
代理人 中田 隆  
代理人 増井 忠弐  
代理人 小林 泰  
代理人 社本 一夫  
代理人 千葉 昭男  

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