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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B62D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62D
管理番号 1153025
審判番号 不服2004-2111  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-06 
確定日 2007-02-26 
事件の表示 平成11年特許願第376609号「車載用画像記録システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月12日出願公開、特開2000-247265〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成11年12月15日(国内優先権主張 平成10年12月28日 特願平10-376936号)の出願であって、平成12年10月4日付けの手続補正書が提出され、そして、原審において、平成14年12月27日付けで拒絶理由が通知されたのに対して、請求人(出願人)は平成15年2月14日に意見書及び手続補正書を提出したが、平成15年11月27日付けで拒絶査定を受け、この査定を不服として、平成16年1月6日に本件審判請求をすると共に、平成16年2月3日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成16年2月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年2月3日付けの手続補正を却下する。
[理 由]
1.補正後の本願発明
平成16年2月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】自車の車体の一部と、自車の動きに関連して自車の車体の一部の直下に隣接する近傍領域の路面とを撮像する路面視カメラと、自車の車体の一部と前方の路面および外景を撮像する前方向視カメラまたは自車の車体の一部と後方の路面および外景を撮像する後方向視カメラまたは自車の車体の一部と側方の路面および外景を撮像する側方向視カメラの少なくとも一つの方向視カメラとを有した撮像手段及び該撮像手段の画像を蓄画する画像記録手段とを備え、自車の運転中は常に作動し蓄画することを特徴とする車載用画像記録システム。」
と補正された。
上記補正は、新規事項を追加するものではなく、特許法17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例及びその記載内容
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-20592号公報(以下、「引用例」という。)には、次の技術事項が記載されている。
(イ)「【産業上の利用分野】本発明は自動車の運転状態及び自動車運転中の外景等を記録する方法および記録装置に係り、特に万一事故が発生した場合に事故発生前の一定時間から事故発生までの状況を記録保存しておくことが可能な方法および装置に関する。」(段落【0001】)
(ロ)「図1は自動車運行状況記録装置を示す。この装置は車載型であって装置が搭載された自動車の外景を中心とした画像データ及び運転状況データを記録するものである。」(段落【0010】)
(ハ)「符号1は画像入力装置であって、自動車2の前方における自動車外景を画像情報として入力するものである。このため外景入力に好適でかつ運転に支障のない位置、例えば車内のダッシュボード部分や車外のラジエターグリル近傍等に設置される。また画像入力装置1の具体例としては例えばビデオカメラ等も考えられる……実施例としては……、小型かつ構造が簡素なイメージセンサを画像入力装置とする構成を示す。即ちこのイメージセンサは荷電結合素子(CCD)を用いたリニア・イメージセンサ……を画像入力部として構成された画像入力装置であって、外景の画像情報を1本乃至複数本の走査線のデータとして扱う装置である。」(段落【0011】)
(ニ)「スピードメータ10に出力される速度信号はA/D変換装置6c、制御装置4を経て記録装置11において自動車2の速度データとして記録される。……符号11は上述の各種データを記録する記録装置である。記録装置としては光磁気(MO)ディスク・ドライブ、ハードディスク・ドライブ(HDD)、フロッピーディスク・ドライブ(FDD)、ビデオテープレコーダ(VTR)等が考えられる……」(段落【0016】、【0017】)
(ホ)「ビデオテープは画像入力装置1をビデオカメラとした場合には画像をそのまま記録できる利点がある……」(段落【0019】)
(ヘ)「解析装置17に対してCCDラインスキャナ14を介して記録された画像が取り込まれ(符号22)、画像データの中から被写体を特徴拡大して特定し(符号23)、かつ移動平均画像を得(符号24)、この移動平均画像に基づいて特定された被写体の中から静止対象物を抽出特定する(符号25)、さらに全ての静止対象物の特定が終了したことを確認(符号26)したならば移動物体の画像を抽出する(符号27)。なお事故の相手が走行中の自動車等移動物体である場合にはこの移動物体の画像を特定する。また移動物体が複数ある場合には事故発生時点の画像から事故対象(事故の相手)を特定する。因に事故対象は事故発生時に事故車との相対的距離が零若しくはこれに近い値となっているので他の移動対象とは容易に判別することができる。次に特定された事故対象が移動物体である場合には移動物体と事故車の相対距離や相対速度および車速データに基づく移動物体の移動速度を算出する(符号28)。更に事故現場の状況図を基にして前記解析結果に基づいて事故発生に至る事故車と事故対象の移動状況を作図し(符号29)、事故の解析を行う。なおこの場合制御装置4の時刻回路4bから出力されたデータにより事故発生時刻、事故発生に至る事故車および事故対象の変移と変移時間等、および事故に至るまでの車速、運転操作状況等もも全て記録されているので、これらのデータも参考に事故発生に至る状況、事故車および事故対象の法的責任の如何等も正確に検討することが可能である。」(段落【0049】)
(ト)「またこの装置は事故に至るまでの運転者の運転操作状況も全て記録されるので、場合によっては残されたデータが運転者の自責を証明することにもなる。この結果本装置を装着することより運転者には安全運転・適法運転を行うように心がける心理的効果が生じ、この点から間接的に事故を未然に防ぐ効果も期待できる。」(段落【0052】)
よって、ここでいう「自動車運行状況記録装置」は、自動車の運転中は常に作動することが、記載事項(ヘ)、(ト)からみても明らかであるから、記載事項(イ)?(ト)によれば、引用例には、残されたデータが運転者の自責を証明することにもなる結果、本装置を装着することより運転者には安全運転・適法運転を行うように心がける心理的効果が生ずるというように、本願補正発明と同じ目的を達成すべく、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「自動車運転中の外景を撮像する画像入力装置と、自動車の運転状態及び前記の外景を記録する記録装置とを備え、該自動車の運転中、常に作動して記録する車載型の自動車運行状況記録装置。」

3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「自動車」及び「車載型の自動車運行状況記録装置」は、本願補正発明の「自車」、「車載用画像記録システム」に相当すると共に、記載事項(ハ)からみると、外景を撮像する画像入力装置としてビデオカメラも含まれているから、引用発明の「画像入力装置」は、本願補正発明の「カメラを有した撮像手段」に相当し、更に、記載事項(ニ)からみると、引用発明の「記録装置11」は、速度データの如き運転状況に係るデータをも記録されることからして、記録される全てのものが画像データを意味するのではないものの、記載事項(ホ)及び記載事項(ロ)、(ヘ)等からみて、少なくとも、自動車運転中の外景に対しては、「画像入力装置(撮像手段)による画像を蓄画する画像記録手段」としての役割を担うものである。
したがって、両者は、
「カメラを有した撮像手段及び該撮像手段の画像を蓄画する画像記録手段とを備え、自車の運転中は常に作動し蓄画することを特徴とする車載用画像記録システム。」
の点で一致し、次の点で相違する。
本願補正発明は、自車の車体の一部と、自車の動きに関連して自車の車体の一部の直下に隣接する近傍領域の路面とを撮像する路面視カメラと、自車の車体の一部と前方の路面および外景を撮像する前方向視カメラまたは自車の車体の一部と後方の路面および外景を撮像する後方向視カメラまたは自車の車体の一部と側方の路面および外景を撮像する側方向視カメラの少なくとも一つの方向視カメラとを有した撮像手段及び該撮像手段の画像を蓄画する画像記録手段とを備えているのに対し、引用発明では、カメラを有した撮像手段と、該撮像手段の画像を蓄画する画像記録手段とを備えてはいるものの、この撮像手段は、自動車運転中の外景を撮像するものであり、したがって、画像記録手段に蓄画されるものも、自動車運転中の外景以上のものまで含まれているか否かについては明らかでない点。

4.当審の判断
引用発明も、残されたデータが運転者の自責を証明することにもなる結果、本装置を装着することより運転者には安全運転・適法運転を行うように心がける心理的効果が生ずるようになされている点で、本願補正発明と技術的意味において格別の差異はない。その上、撮像手段として、自車の車体の一部と、自車の動きに関連して自車の車体の一部の直下に隣接する近傍領域の路面とを撮像する路面視カメラを有するようにすること、及び、自車の車体の一部と、少なくとも、後方の路面および外景を撮像する方向視カメラを有するようにすることが、共に、従来周知の技術事項である[周知例 路面視カメラに係る事項;特開平5-105104号公報(特に、図2,3,5、及びこれらに関連する記載事項を参照)、方向視カメラに係る事項;特開平9-142206号公報(特に、図5,6,14,16、及びこれらに関連する記載事項を参照)、特開平9-142210号公報(特に、図3,7,8,16、及びこれらに関連する記載事項を参照)]ばかりでなく、撮像手段としてのカメラに複数のカメラを用いてそれぞれ異なる領域を撮像する撮像手法自体も、従来周知の技術事項である[周知例;特開平5-345547号公報(特に、図2及びこれらに関連する記載事項を参照)、特開平10-257482号公報(特に、図3及びこれらに関連する記載事項を参照)、特開平10-310088号公報(特に、図1及びこれらに関連する記載事項を参照)]。しかも、本願補正発明が、撮像手段としてのカメラを、路面視カメラと方向視カメラとの組合せとしたことにより、格別の相乗効果が生じるということもできないから、本願補正発明の、撮像手段に、自車の車体の一部とその直下に隣接する近傍領域の路面を撮像する路面視カメラと、自車の車体の一部と所定方向の路面および外景を撮像する方向視カメラとを有するようにしたこと自体に格別なものは認められない。
そして、引用例の記載事項(ハ)によれば、引用発明の「画像入力装置」は、一例として、「車内のダッシュボード部分や車外のラジエターグリル近傍等に配置される」ものである以上、たとえ、この画像入力装置が自動車運転中の外景を撮像するものであるからといって、撮像手段及び撮像手法に係る前記従来周知の技術事項を引用発明に採用することに、特段の阻害要因が生じてしまうということができないから、相違点でいう本願補正発明の構成とすることは、引用発明に前記従来周知の技術事項を適用することにより、即ち、引用発明の、自動車運転中の外景を撮像する画像入力装置(カメラを有した撮像手段)に対し、前記従来周知の路面視カメラ及び後方向視カメラを採用することにより、延いては、引用発明の、記録装置に対し、自動車運転中の外景を含むデータを記憶することに代えて、前記の撮像手段及び撮像手法により得られる画像データを記録(蓄画)する構成にすることにより、当業者が容易に想到することができたものである。
また、本願補正発明の効果も、引用発明及び前記の従来周知の技術事項から、当業者であれば予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、前記の従来周知の技術事項を考慮することにより、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

【3】本願の発明について
1.本願の請求項1に係る発明
平成16年2月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成15年2月14日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】自車の車体の一部と、自車の動きに関連して車体直下の近傍領域の路面とを撮像する路面視カメラと、自車の車体の一部と前方の路面および外景を撮像する前方向視カメラまたは自車の車体の一部と後方の路面および外景を撮像する後方向視カメラまたは自車の車体の一部と側方の路面および外景を撮像する側方向視カメラの少なくとも一つの方向視カメラとを有した撮像手段及び該撮像手段の画像を蓄画する画像記録手段とを備え、自車の運転中は常に作動し蓄画することを特徴とする車載用画像記録システム。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、前記の【2】2.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明の構成を全て含むと共に、当該発明の構成に更に限定を施している本願補正発明が、前記【2】3.以下に記載したとおり、従来周知の技術的事項を考慮することにより、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の請求項1に係る発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

【4】むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-11 
結審通知日 2006-12-19 
審決日 2007-01-05 
出願番号 特願平11-376609
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B62D)
P 1 8・ 575- Z (B62D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石原 正博小菅 一弘野村 亨  
特許庁審判長 前田 仁
特許庁審判官 柴沼 雅樹
永安 真
発明の名称 車載用画像記録システム  
代理人 大内 俊治  

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