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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1153027
審判番号 不服2004-4346  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-04 
確定日 2007-02-26 
事件の表示 平成9年特許願第87507号「配線基板及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月9日出願公開、特開平10-270815〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年3月21日の出願であって、本願の請求項1?3に係る発明は、平成15年12月22日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものと認める(請求項1に係る発明を、以下「本願発明」という。)。
「主面に、フリップチップ接続用の多数の電極及びそのフリップチップの接続における位置決めのための位置決めマークを備えると共に感光性のソルダーレジストが形成されてなる配線基板において、そのソルダーレジストが、前記電極の上面周縁及び前記位置決めマークの上面周縁を被覆しており、しかも、そのソルダーレジストは、前記電極の上面周縁及び前記位置決めマークの上面周縁を被覆することになるマスクパターンを有するマスクを用いて露光、現像されることによって形成されていることを特徴とする配線基板。」

2.引用刊行物およびその記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開平6-326446号公報(以下、「刊行物1」という。)には「基板の製造方法及び基板」に関して、図1?8とともに以下の記載がある。
イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、銅箔パターン部に対してレジストマスクを施していわゆる絞り込みを行っている実装基板の製造方法及びその基板に関するものであり、特に、比較的に高密度の実装が要求され、チップ部品等を基板の銅箔ランドといわれるパターン部分に表面実装する基板及びその基板の製造方法にとって好適なものである。
【0002】
【従来の技術】実装基板の高密度化に伴い、いわゆるチップ部品を基板に表面実装する技術が知られている。図5は表面実装基板の一例を示す斜視図であり、この図に示すように、基板1の表面にはエッチング工程等を経て形成された銅箔ランド10のパターンが形成されている。11はチップ部品であり、本体部の両端には電極11a,11aが設けらた形状を有している。これらのチップ部品11は、図の破線に示すように銅箔ランド10、10に対して電極11a,11aが位置するように装着された後に、図のもっとも左側に示すチップ部品11のように半田12により銅箔ランド10、10と電極11a,11aが半田付けされることで、基板に実装されるものである。
【0003】このような表面実装基板においては、高密度実装の要求から隣り合うパターン部分がかなり近接した状態にある場合が多い。このため、近接する銅箔ランド10やチップ部品11どうしのブリッジ等を防ぐため、銅箔ランド10の外周に対してレジストマスクといわれる半田付け不可部分が形成されるよう、基板に対してレジスト印刷して、銅箔ランド10の半田付け有効面積を縮小する、いわゆる絞り込みという技術が知られている。」
ロ)「【0005】チップ部品装着時には、先ず基準位置検出用カメラ5、6がそれぞれ基板1上の基準マーク14、14の中心位置C(図7(b)に示す)を読取り、基板の位置のずれを検出する。そして、基準マーク14、14のそれぞれの中心位置Cを基準として基板1と部品装着位置の相対的な位置を一致させ、図示しない部品供給口等から基板1上の図示しない銅箔ランドに対してチップ部品11を装着することとなる。・・・
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上述したレジストマスク9を銅箔ランド10に施す工程においては、銅箔ランド10に対してレジストマスク9が適正な位置に印刷されずに若干のずれを有して印刷されてしまう場合がある。また、図7にて説明した方法により基準位置を検出してチップ部品11を装着する場合には、前述のように、チップ部品11は銅箔ランド10を基準位置として適正な位置に装着される。
【0007】したがって、レジストマスク9がずれて印刷された基板1に対し、図7に示した方法でチップ部品11を装着しようとする場合には、図8の平面図に示すように、チップ部品11の電極11a,11aと実際の半田付け有効部分10aとの位置のずれが生じることとなる。」
ハ)「【0008】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明は・・・基板上の銅箔パターン部分の半田付け有効面積を縮小するレジストマスクを施す工程において、基板上の2つ以上の所定位置に形成された位置検出用銅箔部分に対して所定形状の基準位置マークが打ち抜かれたレジストマスクを施すという方法により基板を製造することとした。
【0009】
【作用】基板の銅箔パターン部分にレジストマスクを施す工程時に、同時に基板上の2つ以上の所定位置に形成された位置検出用銅箔部分に対して、基準位置マークが打ち抜かれたレジストマスクを施すことで、部品装着時の基準位置がレジストマスクにより形成された半田付け有効部分と一致することとなる。」
ニ)「【0011】基板1上のコーナー部に設けられている2は、基準位置の位置検出用銅箔ランドであり、他の銅箔パターンと共に形成されたもので、この場合には所定サイズの方形とされるが他の形状を有していてもよい。3は位置検出用銅箔ランド2に対して印刷される基準位置検出用レジストマスクを示しており、位置検出用銅箔ランド2よりも1回り小さな所定サイズの方形とされるが、他の形状を有していても構わない。そして、この基準位置検出用レジストマスク3の中央には、所定サイズの円形の基準マーク4が打ち抜かれている。・・・
【0012】この基板1に対しては、前述のレジストマスクによる絞り込みの工程が施されるが、基準位置検出用レジストマスク3は、この絞り込みの印刷パターンに描かれており、絞り込み工程時に同時に位置検出用銅箔ランド2に対して印刷されるものである。・・・
【0013】図2は、この基準位置検出用レジストマスク3が基板1の位置検出用銅箔ランド2に印刷された状態を示す平面図であり、他の銅箔ランド等のパターンは図示を省略している。この図に示すように、基準位置検出用レジストマスク3が位置検出用銅箔ランド2の上に印刷された状態においては、基準マーク4の部分は銅箔が露出することとなる。そして次に説明するように、この銅箔が露出した基準マーク4の部分が部品装着時の基準位置検出の対象となる。」
ホ)「【0015】チップ部品装着時には、先ず基準位置検出用カメラ5、6、7がそれぞれ、銅箔部分が円形に露出している基準マーク4、4、4の中心位置C・・・を読取り、基板1の位置のずれを検出する。そして、このようにして検出された位置を部品装着の基準位置としてずれを補正し、図示しない部品供給口等から基板1上の規定の装着位置に対してチップ部品11を装着することとなる。
【0016】この際、図2に示すように位置検出用銅箔ランド2に対して基準位置検出用レジストマスク3がずれて印刷されている場合には、図4に示すように、チップ部品11が半田付けされるべき他の銅箔ランド10に施されたレジストマスクもずれていることとなる。ところが、上述の方法により基準位置の検出を行った場合には、チップ部品11の装着位置は、従来例において図8に示したように銅箔ランド10を基準にチップ部品を装着するのではなく、銅箔ランド10に印刷されたレジストマスク9のパターンを基準にチップ部品11を装着することとなる。」

上記イ)?ホ)の記載からみて、上記刊行物1の「基板の製造方法及び基板」における基板1は、表面に、チップ部品接続用の多数(図5では6個)の銅箔ランド10及びそのチップ部品11の接続における位置決めのための基準マーク4を備えると共にレジストマスク3,9が形成されてなる配線基板であるものと認められ、図2,8から明らかなように、該レジストマスク3,9は、前記銅箔ランド10の上面周縁及び前記基準マーク4の上面周縁を被覆して形成されているものと認められる。
したがって、上記刊行物1には、
「表面に、チップ部品接続用の多数の銅箔ランド10及びそのチップ部品11の接続における位置決めのための基準マーク4を備えると共にレジストマスク3,9が形成されてなる配線基板において、そのレジストマスク3,9が、前記銅箔ランド10の上面周縁及び前記基準マーク4の上面周縁を被覆して形成されている配線基板。」の発明(以下、「刊行物1の発明」という。)が記載されているものと認める。

3.本願発明と上記刊行物1の発明との対比
本願発明と上記刊行物1の発明とを対比すれば、上記刊行物1の発明の「表面」、「銅箔ランド10」、「基準マーク4」は、それぞれ本願発明の「主面」、「電極」、「位置決めマーク」に相当しており、また、本願発明の「フリップチップ」は、チップ部品の一種であるから、その限りにおいて上記刊行物1の発明の「チップ部品」に相当している。
さらに、上記刊行物1の発明の「レジストマスク3,9」は、上記刊行物1の【0012】の記載から明らかなように、絞り込みの印刷パターンに一緒に描かれ、絞り込み工程時に同時に印刷されるものであるから、これらは合わせて本願発明の「ソルダーレジスト」に相当している。
したがって、本願発明と上記刊行物1の発明は、
「主面に、チップ部品接続用の多数の電極及びそのチップ部品の接続における位置決めのための位置決めマークを備えると共にソルダーレジストが形成されてなる配線基板において、そのソルダーレジストが、前記電極の上面周縁及び前記位置決めマークの上面周縁を被覆して形成されている配線基板。」
で一致し、以下の<相違点>で相違しているものと認める。
<相違点>
本願発明では、基板主面に実装されるチップ部品がフリップチップであり、ソルダーレジストが感光性のソルダーレジストであって、該ソルダーレジストは、電極の上面周縁及び位置決めマークの上面周縁を被覆することになるマスクパターンを有するマスクを用いて露光、現像されることによって形成されているのに対し、上記刊行物1の発明では、基板表面(主面)に実装されるチップ部品がフリップチップでなく、ソルダーレジストも感光性のものでなく、印刷によって形成されている点。

4.相違点の検討
実装面にチップ部品接続用の多数の電極を備えると共に、該実装面にソルダーレジストが形成されてなる配線基板において、該接続されるチップ部品を特にフリップチップとすることや、該ソルダーレジストを特に感光性のものとすることは、原査定の拒絶理由通知書で引用された特開昭58-148434号公報や、拒絶査定の備考で引用された特開平6-97634号公報にみられるように周知技術であるとともに、感光性のソルダーレジストを、マスクパターンを有するマスクを用いて露光、現像させることによって形成することも、上記特開平6-97634号公報にみられるように周知技術である。
してみれば、上記刊行物1の発明で、基板表面(主面)に実装されるチップ部品をフリップチップとし、ソルダーレジストを特に感光性のものとして、被覆部に対応するマスクパターンを有するマスクを用いて露光、現像させることによって形成することすることは、上記刊行物1の発明に上記各周知技術を適用することにより、当業者が容易に行い得たものである。

そして、本願発明が奏する作用効果は、上記刊行物1の発明と上記各周知技術に示唆された事項から予測される程度以上のものではない。
したがって、本願発明は、上記刊行物1の発明と上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上詳述したとおり、本願発明は、上記刊行物1の発明と上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、このような進歩性を有しない発明を包含する本願は、本願の請求項2,3に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-11 
結審通知日 2006-12-19 
審決日 2007-01-05 
出願番号 特願平9-87507
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長屋 陽二郎  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 ぬで島 慎二
山内 康明
発明の名称 配線基板及びその製造方法  
代理人 加藤 和久  

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