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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A01K
管理番号 1153036
審判番号 不服2005-8553  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-09 
確定日 2007-02-26 
事件の表示 平成7年特許願第270422号「飼槽内餌水分離給餌器」拒絶査定不服審判事件〔平成9年3月25日出願公開、特開平9-74934〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年9月11日の出願であって、平成17年3月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月9日に拒絶査定不服審判の請求とともに手続補正がなされたものである。

2.平成17年5月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年5月9日付けの手続補正を却下する。
[理由]
平成17年1月31日付けの手続補正は補正却下の決定がなされているので、本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項1および2は、補正前の
「【請求項1】家畜用給餌器の構成で、飼槽に連結した下部に集約した餌排出口を有させた餌供給筒を用い、飼槽の底面板の上面域の前後左右の中程に集約的に餌を繰り出せるように構成した、その一台の給餌器の飼槽の底面板の上面域に於いて、複数頭数の家畜に餌摂取をさせることが可能な家畜用給餌器であってその飼槽の底面板の上面域を分割する餌水分離仕切り板を餌排出口を中にして両側に有させ、その両側の餌水分離仕切り板の餌排出口側の飼槽の底面板の上面域の中程に集約的に餌を繰り出させ、その分割した餌水分離仕切り板の外側の飼槽の底面板の上面域に於いて、家畜が弁バルブを操作することを可能とする給水器を設置し、その給水器から底面板の上面域に水を貯留させることを可能としたことを特徴とした飼槽内餌水分離給餌器。
【請求項2】餌水分離仕切り板で分割し、飼槽の両側に有させた底面板の上面域に水を供給する給水形態の構成に於いて、設置した給水器の弁バルブ開閉を家畜が行なうことが可能な給水器を用いていて、尚且つ、その給水器の給水器口方向が前向き、横向き、後向き、下向き等の何れの向きであっても、その給水器の給水口径の全域を餌水分離仕切り板の上面より下に位置させてあることを特徴とする請求項1の飼槽内餌水分離給餌器。」
から、
「【請求項1】長方形で上方を開放した箱状の餌箱、該餌箱の前壁と後壁を跨いで横長の底部を形成すると共に、該底部の横長となされた中央付近に漏斗状をなした餌供給筒を吊り下げ配置し、一方該餌供給筒下部の餌排出口を挟んで餌箱の左右側壁間に対し、餌溜り部と水溜り部を区分けして配置形成するための餌水分離仕切り板を設け、他方各水溜り部には配管パイプを下向きで且つその下端に弁バルブを備えた給水器を底部と凡そ近接する状態に取付けたことを特徴とする複数家畜対応用給餌器。
【請求項2】餌箱の底部を逆台形状に形成したことを特徴とする請求項1記載の複数家畜対応用給餌器。」
と補正された。

そこで、補正された事項について検討すると、補正前の請求項2に係る発明の特定事項である、「給水器の給水口径の全域を餌水分離仕切り板の上面より下に位置させてある」が削除されており、当該手続補正は、特許法第17条の2第4項各号に規定するいずれの事項を目的とするものとはいえない。

したがって、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成17年5月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1および2に係る発明は、平成16年4月14日受付けの手続補正によって補正された請求項1および2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】家畜用給餌器の構成で、飼槽に連結した下部に集約した餌排出口を有させた餌供給筒を用い、飼槽の底面板の上面域の前後左右の中程に集約的に餌を繰り出せるように構成した、その一台の給餌器の飼槽の底面板の上面域に於いて、複数頭数の家畜に餌摂取をさせることが可能な家畜用給餌器であって
その飼槽の底面板の上面域を分割する餌水分離仕切り板を餌排出口を中にして両側に有させ、その両側の餌水分離仕切り板の餌排出口側の飼槽の底面板の上面域の中程に集約的に餌を繰り出させ、
その分割した餌水分離仕切り板の外側の飼槽の底面板の上面域に於いて、家畜が弁バルブを操作することを可能とする給水器を設置し、その給水器から底面板の上面域に水を貯留させることを可能としたことを特徴とした飼槽内餌水分離給餌器。
【請求項2】(記載を省略。)」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

(2)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布されている刊行物である実願昭61-77012号(実開昭62-190467号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、第1?5図とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「ほぼ円錐状本体の粉餌傾斜案内面の頂部を粉餌受入れ部とすると共に、上記傾斜案内面のすそ部分に、該傾斜面を滑り落ちる粉餌を溜めるべき給餌皿を形成し、上記給餌皿と仕切壁により区画される給水皿を連設し、該給水皿内に水を供給すべき給水手段を設けた、養鶏用給餌給水器。」(実用新案登録請求の範囲)
(ロ)「給餌給水器(7)の構造は次のようである。第2、3、4図において、コンベアシリンダ(5)の外周面に対応する湾曲板であって、中央部に通孔(14)をあけると共に該通孔(14)の中心方向に延長するネジ杆(15)を有する支持板(13)を、そのネジ杆(15)を下方へ突出した状態で、上記コンベアシリンダ(5)の粉餌送出口(16)の下面に当接すると共に該支持板(13)の下面に切頭円錐状のカバー(17)の開口頭部を当接し、その状態で該カバー(17)を締着バンド(18)によりコンベアシリンダ(5)に締着し、このように取付けたカバー(17)内にほぼ中空円錐状の給餌給水器本体(19)の上半部を下から挿入し、そして上記カバー(17)内面と該上半部との間に間隔(d)を形成した状態で頂部(20)の中心に上記ネジ杆(15)を貫通し、ナット(21)で吊支してある。・・・上記本体(19)は、頂部(20)を適宜半球状に形成してコンベア(4)の送出口(16)からの粉餌受入れ部とすると共に、該頂部からの円錐面を粉餌の滑り落ちる傾斜案内面(31)とし、この案内面のすそ部分全周に適宜高さの周壁(27)を立設して該すそ部分に環状溝を形成し、該環状溝内に給水皿(28)…(本例では4個)を互に等間隔をあけて配置して該傾斜案内面(31)環状溝を4個の給餌皿(29)…に区画形成してある。上記給水皿(28)…はほぼ三角形の皿状のもので、その底面を上記傾斜案内面(31)に合わせて傾斜させた状態で互に連結板(30)…により環状に連結してあり、各給水皿(28)…の側壁は、傾斜案内面(31)を滑り落ちる粉餌が給水皿内に入らないような角度と高さに設計されており、又各連結板(30)…は上記傾斜案内面(31)に密接している。」(明細書4頁5行?6頁2行)
(ハ)「給水皿(28)…への給水手段としては種々の構造のものが使用されるが、一例として従来公知の鶏自身によって操作される操作型給水装置(32)を各給水皿(28)…の傾斜底面における最下位に突設してある。これは、ボディ(33)内に水の流通路及び該流通路を開閉すべき弁を有し、該ボディ(33)の上端部に、先端に上記流通路の一端と連通する放水口を有する弁開閉操作ピン(34)が弾性的に揺動可能に突設され、又上記ボディ(33)の下端部に、上記流通路の他端と連通する給水ホース(35)の一端を接続すると共に、該ホース(35)の他端を水道に接続したもので、鶏がくちばしで上記操作ピン(34)を揺動させると、ボディ(33)内の弁が開いて水道の水がホース(35)、ボディ(33)内の流通路及び操作ピン(34)を通って放水口から放出される。」(明細書6頁3?17行)
(ニ)「粉餌が第1の給餌給水器(7)に通じる粉餌送出口(16)に至ると、該送出口(16)及び通孔(14)から本体(19)の頂部(20)に落下し、そこからカバー(17)との間隔(d)を通りつつ傾斜案内面(31)全面に分散して滑り落ち、各給餌皿(29)…内にたまる。各給餌皿(29)…内にたまった粉餌が次第に傾斜案内面(31)に下から上へ堆積していき、そして間隔(d)内で送出口(16)に至るまで満杯になると、シリンダ(5)内の粉餌は該送出口を通過して前方へ搬送されていき、第2の送出口(16)に至ると該送出口から第2の給餌給水器(7)に上述と同様に供給され、以下順次各給餌給水器(7)…に粉餌を供給する。」(明細書7頁7?19行)
(ホ)「…鶏は給餌皿(29)…内の粉餌をとった後、その隣の給水皿(28)…内の放水弁(32)を操作して水をのむ。」(明細書8頁2?4行)
(ヘ)各図面をみると、一台の養鶏用の給餌給水器7の給餌給水器本体19の傾斜案内面31のすそ部分の環状溝において、複数羽の鶏に餌を摂取させることが可能であることが明らかである。

これらの記載事項並びに明細書全体および図面によると、引用文献1には、次の発明が記載されているものと認められる。〔〕かっこ内は対応する引用文献1における構成・用語である。
「家畜用給餌器〔養鶏用の給餌給水器7〕の構成で、飼槽〔給餌給水器本体19〕に連結した下部に餌排出口を有させた餌供給筒〔切頭円錐状のカバー17〕を用い、その一台の給餌器の飼槽の底面板〔傾斜案内面31のすそ部分〕の上面域〔環状溝〕において、複数頭数の家畜〔複数羽の鶏〕に餌を摂取をさせることが可能な家畜用給餌器であって、
その飼槽の底面板の上面域を分割する餌水分離仕切り板〔給水皿28の側壁〕を有させ、餌水分離仕切り板の餌排出口側の飼槽〔給餌皿29〕の底面板の上面域に餌を繰り出させ、
その分割した餌水分離仕切り板の外側の飼槽〔給水皿28〕の底面板の上面域に於いて、家畜が弁バルブ〔弁開閉操作ピン34〕を操作することを可能とする給水器〔操作型給水装置32〕を設置し、その給水器から底面板の上面域に水を貯留させることを可能とした飼槽内餌水分離給餌器〔給餌給水器7〕。」
(以下、「引用文献1発明」という。)

(3)対比・判断
本願発明と、引用文献1発明を比較すると、両者は、
「家畜用給餌器の構成で、飼槽に連結した下部に餌排出口を有させた餌供給筒を用い、その一台の給餌器の飼槽の底面板の上面域において、複数頭数の家畜に餌を摂取をさせることが可能な家畜用給餌器であって、
その飼槽の底面板の上面域を分割する餌水分離仕切り板を有させ、餌水分離仕切り板の餌排出口側の飼槽の底面板の上面域に餌を繰り出させ、
その分割した餌水分離仕切り板の外側の飼槽の底面板の上面域に於いて、家畜が弁バルブを操作することを可能とする給水器を設置し、その給水器から底面板の上面域に水を貯留させることを可能とした飼槽内餌水分離給餌器。」
の点で一致し、次の点で相違している。

相違点1:本願発明では、下部に集約した餌排出口を有させた餌供給筒を用い、飼槽の底面板の上面域の前後左右の中程に集約的に餌を繰り出せるように構成したのに対し、引用文献1発明では、そのようにはなっていない点。
相違点2:本願発明では、餌水分離仕切り板を餌排出口を中にして両側に有させ、その両側の餌水分離仕切り板の餌排出口側の飼槽の底面板の上面域の中程に集約的に餌を繰り出させるのに対し、引用文献1発明では、そのようにはなっていない点。

上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
一般的に養豚等の家畜用給餌器において、下部に集約した餌排出口を有させた餌供給筒を用い、飼槽の中程に餌を集約的に餌を繰り出せるようにすることは、周知技術(例えば、原査定の拒絶の理由で周知例として引用された、実願昭63-136127号(実開平2-57371号)のマイクロフィルム、実願平1-150411号(実開平3-91761号)のマイクロフィルム等参照。)であり、該周知技術を引用文献1発明に採用することは、当業者が容易に想到することにすぎない。
(相違点2について)
引用文献1における給餌給水器7は、例えば第2図に示されているように上方から見た場合、全体形状が円形であるが、これを長方形状等の箱形とすることは当業者が適宜選択できる設計的事項であり、その際、餌水分離仕切板を餌排出口を中にして両側に有させ、その両側の餌水分離用仕切り板の内側を給餌部とすることも、必然的になし得る事項にすぎない。

そして、本願発明の作用効果も、引用文献1発明および周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。

(4)むすび
以上、本願発明は、引用文献1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-11 
結審通知日 2006-12-19 
審決日 2006-12-22 
出願番号 特願平7-270422
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01K)
P 1 8・ 572- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 郡山 順  
特許庁審判長 安藤 勝治
特許庁審判官 西田 秀彦
宮川 哲伸
発明の名称 飼槽内餌水分離給餌器  
代理人 忰熊 弘稔  

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