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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1153039
審判番号 不服2006-6477  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-06 
確定日 2007-02-26 
事件の表示 平成 5年特許願第298455号「平坦な熱伝導体の背面層を有する半導体素子とその形成法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 2月21日出願公開、特開平 7- 50339〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成5年11月29日(パリ条約優先権主張 1992年11月30日、米国)の出願であって、平成17年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成18年4月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月8日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成18年5月8日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】 半導体素子であって、
(a)溝領域と前記溝領域を囲む隔離領域とを含む第1の平坦な表面を持つシリコン基板を有し、ここで前記隔離領域はシリコン基板を通じて平坦な背面層にまで伸びており、かつこの平坦な背面層は、熱伝導体よりなり、かつ接着剤層によりシリコン基板へ接着されており、更に
(b)それぞれ前記溝領域に配置された活性素子を有し、かつ
(c)前記隔離領域上に配置され、溝領域の活性素子に結合された電気的に導電性の相互接続を有する、
ことを特徴とする半導体素子。」

3.刊行物記載事項
(1)米国特許第5、102、822号明細書
本願の優先権主張日前に米国内において頒布され、平成16年5月25日付けの拒絶理由通知において引用した米国特許第5、102、822号明細書(以下、「刊行物1」という。)には、図7ないし図10とともに、以下の事項が記載されている。

「1.発明の技術分野
本発明は、プレーナ型であるが、メサ型の少なくとも1つのメサ型半導体要素を備えたマイクロ波集積回路に関するものである。」(第1欄第8?12行の訳文)
「本発明の適用できる材料は、3-5族材料・・・であるが、これらの材料には限定されない。本発明はシリコンにも適用できる・・・。」(第1欄第15?18行の訳文)
「本発明の目的は、プレーナ型のマイクロ波集積回路、即ち、基板において素子の形成されていない(unoccupaied)反対側の面が実質的に平面である集積回路、即ち、半導体層の空洞化されたリセスに埋め込まれた少なくとも1つのメサ要素と、前記メサ要素の周辺の前記リセスを充填した誘電体材料とを備えることにより、相互接続線又はマイクロストリップラインを堆積される平滑表面を再構成(reconstitute)することができるようにする、集積回路を提案することである。」(第1欄第38?47行の訳文)
「より正確には、発明は、半絶縁性で半導電性材料からなる基板に形成された、少なくとも1つのメサ型要素を含む、プレーナ型マイクロ波集積回路であって、その(基板)中で、該メサ型要素が集積回路のチップの空洞化されたリセスに位置し、該リセスは前記メサ要素周辺において、誘電体で埋め込まれており、その(誘電体)上表面はプレーナ要素の表面の平面上にあって、前記プレーナ要素と前記メサ要素間の相互接続はチップの上表面上に形成されており、マイクロストリップラインにより該要素と直接接続し、前記基板のメタライズされた下面はマイクロストリップラインのグランド面を形成しているものである。」(第1欄第61行?第2欄第10行の訳文)
「メサ構造の新たに形成された面(flanks)は一般的にパッシベーション層で覆われる。層6、例えばシリコン窒化膜、の堆積が、図7に示される最初の工程である。この層は、上表面とともに、プレーナ領域の新たに形成された面(franks)も被覆する・・・。
同図に示される第2のステップは、前記リセス16をシンターガラス粉末(sintered glass powder)からなる誘電物質10で、平面化のために堆積することである。」(第4欄第16?26行の訳文)
「最後に、図8に示されるように、相互接続又はマイクロストリップライン12は、集積回路のプレーナ平面3上への堆積及びエッチングにより形成される。」(第4欄第39?41行の訳文)
「少なくとも1つのプレーナ要素がエピタキシャル成長により形成された層・・・である場合について、この発明による集積回路とその製造方法について説明した。図9及び図10では、プレーナ要素がイオン注入により形成された場合の製造方法の最終ステップの説明である。
前記方法は、最初のN層とN+層のエピタキシャルの形成を除いて、図2ないし図6に対応して記載した最初のいくつかのステップにおいて対応している。プレーナ要素はイオン注入で形成するので、このエピタキシャルは最早不要である(there are no longer any grounds)。これらの条件で、先行する例の図7に対応するものとして、前記方法により図9の構造が得られる。
バリヤ層6のプレーナ表面15,18はマスクが形成され、エッチングされる。言い換えると、プレーナ表面15が露出され、例えば、トランジスタの表面へイオン注入され、プレーナ表面18が露出され、メサダイオード5へのコンタクトを再度形成する。その後、図10で、少なくとも1つのプレーナトランジスタ4がイオン注入により形成される。・・・これらの領域は、例えば、ソース及びドレインアクセスのための2つのリセス19及び20と、チャネル21である。対応するイオン注入領域に、従来技術にしたがって、ソースメタライゼーション22,ゲートメタライゼーション23及びドレンメタライゼーション24が堆積される。
マイクロストリップラインのインピーダンスを整合するために、基板2の厚さを薄くすること、及び、両表面へのメタライゼーション12,13の堆積及びエッチングにより、前記方法は終了する。必要ならば、裏面より、14にコンタクトを再度形成することも含みうる。」(第5欄第1?33行の訳文)

ここで、図7、同図(7図)「に示される次のステップは、前記リセス16をシンターガラス粉末(sintered glass powder)からなる誘電物質10で、平面化のために堆積することである。」(第4欄第24?26行の訳文)、図10及び「バリヤ層6のプレーナ表面15,18はマスクが形成され、エッチングされる。言い換えると、プレーナ表面15が露出され、例えば、トランジスタの表面へイオン注入され、プレーナ表面18が露出され、メサダイオード5へのコンタクトを再度形成する。その後、図10で、少なくとも1つのプレーナトランジスタ4がイオン注入により形成される。・・・マイクロストリップラインのインピーダンスを整合するために、基板2の厚さを薄くすること、及び、両表面へのメタライゼーション12,13の堆積及びエッチングにより、前記方法は終了する。」(第5欄第16?32行の訳文)の記載より、プレーナトランジスタ4とリセス16を含む半導体基板の表面及び半導体基板の裏面が平坦であることは明らかである。

よって、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。
「プレーナ型の半導体集積回路であって、
メサ領域4及びメサ領域5と、
半導体基板で、前記メサ領域4及び前記メサ領域5の間に形成されたリセス16であって、前記リセスと前記半導体基板との間に形成されたパッシベーション膜6を介して誘電物質10で埋められたリセス16と、
前記半導体基板の前記メサ領域4に形成されたプレーナトランジスタ4と、
前記半導体基板の前記メサ領域5に形成されたメサダイオード5と、
前記誘電物質10上に形成され、前記メサ領域4及び前記メサ領域5を接続するメタライゼーション12と、
前記半導体基板の裏面に形成されたメタライゼーション13と、
を備え、
前記半導体基板の前記プレーナトランジスタ4が形成された前記メサ領域4、前記メサダイオード5が形成された前記メサ領域5、及び前記誘電物質10の表面は平坦であるとともに、
前記半導体基板の前記裏面も平坦である
ことを特徴する半導体集積回路。」

(2)特開昭56-17035号公報
本願の優先権主張日前に日本国内において頒布され、平成16年5月25日付けの拒絶理由通知において引用した特開昭56-17035号公報(以下、「刊行物2」という。)には、第2図及び第3図とともに、以下の事項が記載されている。

「本発明の目的は、76.2ミクロン・・・より薄いウエハに半導体装置を形成して、厚いウエハによつて生ずるような望ましくない熱的・・・作用を減少させ・・・得るようにすることである。」(第3頁左上欄第5?11行)
「ウエハ10が薄ければ薄い程、熱はより効率良く伝導され、除去される。」(第4頁右上欄第14?15行)
「ウエハ10は、普通、シリコン・・・等の単一結晶半導体である。」(第5頁左上欄第13?15行)
「必要ならば、パシベーシヨン層23を能動半導体素子11及びウエハ10上に付着することができ・・・る。周知の如く、シリコン半導体装置のための適当なパシベーシヨン層は、SiO2、Si3N4・・・その他の・・・誘電物質によつて得られる。・・・ウエハがシリコンならば、多結晶層21は多結晶シリコンである。」(第5頁右上欄第16行?同頁左下欄第12行)
「金属化の後、半導体装置は第2図に示すようになつている。この方法の最後の工程は、第3図に示したような半導体装置30となるまで、ウエハ10を適当に薄くすることである。」(第6頁右上欄第19行?同頁左下欄第2行)
「この種の溝20を形成した後、ウエハの裏面12は、溝20の底部が除去されて溝20に、付着された多結晶物質21が見えるようになるまで、エツチング、ラツピング、研磨・・・で除去される。」(第6頁右下欄第9?16行)

(3)特開平3-263351号公報
本願の優先権主張日前に日本国内において頒布され、平成16年5月25日付けの拒絶理由通知において引用した特開平3-263351号公報(以下、「刊行物3」という。)には、第1図とともに、以下の事項が記載されている。

「この発明の半導体基板の製造方法の実施例について図面に基づき説明する。第1図(a)ないし第1図(g)はその第1実施例を説明する工程断面図である。」(第4頁右下欄第9?12行)
「上記第1の絶縁膜3を除去し、N+半導体基板1の上記エッチング面を含む表面に、第1図(c)に示すように、第2の絶縁膜4を形成する。・・・上記第2の絶縁膜4のパターンをマスクとして・・・N+半導体基板1とN型半導体基板2をエッチングし、深いV溝5と浅いV溝6を形成する。
次いで・・・第1図(d)に示すように、N+半導体基板1とN型半導体基板2の深いV溝5と浅いV溝6を含む表面に、分離絶縁膜7を被着形成する。
次に、第1図(e)に示すように・・・まず支持体となる多結晶Si層8を・・・500μm程度成長し・・・またN型半導体基板2の他方の主表面側を上記深いV溝5,浅いV溝6の先端が露見する・・・まで順次研磨除去する。
このようにして、N+埋込層9を有する複数の深い分離島10と浅い分離島11が形成される。」(第5頁左上欄第16行?同頁右上欄第19行)

4.対比
本願発明と刊行物発明とを比較検討する。

(1)本願発明の「シリコン基板」の「シリコン」が半導体であることは明らかであるから、刊行物発明の「半導体基板」は、本願発明の「基板」に相当する。
(2)刊行物発明の「プレーナトランジスタ」が活性素子であることは明らかであるから、刊行物発明の「プレーナトランジスタ」は、本願発明の「活性素子」に相当する。
(3)刊行物発明において、「プレーナトランジスタ」及び「メサダイオード」は、それぞれ「メサ領域4」及び「メサ領域5」に形成されており、一方、本願発明では、「活性素子」が「溝領域」に配置されているから、上記(2)を参照すると、刊行物発明の「メサ領域」は、本願発明の「溝領域」に相当し、刊行物発明の「前記半導体基板のメサ領域4に形成されたプレーナトランジスタ4」及び「前記半導体基板の前記メサ領域5に形成されたメサダイオード5」は、本願発明の「それぞれ前記溝領域に配置された活性素子」に相当する。
(4)刊行物発明において、誘電物質10がメサ領域を囲んでいるか否か明らかではないが、誘電物質10は、プレーナトランジスタ4とメサダイオード5との間に配置されているから、刊行物発明の「誘電物質10」は、本願発明の「隔離領域」に相当する。
(5)刊行物発明の「メタライゼーション12」は、メサ領域4及びメサ領域5を導電的に接続し、誘電物質10上に形成されているから、上記(4)を参照すると、刊行物発明の「前記誘電物質10上に形成され、前記メサ領域4及び前記メサ領域5を接続するメタライゼーション12」は、本願発明の「前記隔離領域上に配置され、溝領域の活性素子に結合された電気的に導電性の相互接続を有する」ことに相当する。
(6)上記(1)、(3)及び(4)から、刊行物発明の「メサ領域」、「誘電物質」及び「半導体基板」は、それぞれ、本願発明の「溝領域」、「隔離領域」及び「基板」に相当するから、刊行物発明の「前記半導体基板の前記プレーナトランジスタが形成された前記メサ領域4、前記メサダイオード5が形成された前記メサ領域5、及び前記誘電物質10の表面は平坦である」ことは、本願発明の「溝領域と前記溝領域を囲む隔離領域とを含む第1の平坦な表面を持つ」「基板を有」することに相当する。
(7)刊行物発明の「半導体集積回路」は、半導体素子を含むものであるから、刊行物発明の「半導体集積回路」は、本願発明の「半導体素子」に相当する。

したがって、本願発明と刊行物発明は、
「半導体素子であって、
(a)溝領域と隔離領域とを含む第1の平坦な表面を持つ基板を有し、更に
(b)それぞれ前記溝領域に配置された活性素子を有し、かつ
(c)前記隔離領域上に配置され、溝領域の活性素子に結合された電気的に導電性の相互接続を有する、
ことを特徴とする半導体素子。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
本願発明が、「溝領域と前記溝領域を囲む隔離領域とを含む第1の平坦な表面を持つシリコン基板を有し、ここで前記隔離領域はシリコン基板を通じて平坦な背面層にまで伸びており、かつこの平坦な背面層は、熱伝導体よりなり、かつ接着剤層によりシリコン基板へ接着されており、」との構成を備えるのに対して、
刊行物発明が、「半導体基板で、前記メサ領域4及び前記メサ領域5の間に形成されたリセス16であって、前記リセスと前記半導体基板との間に形成されたパッシベーション膜6を介して誘電物質10で埋められたリセス16」を備え、「前記半導体基板の前記裏面も平坦である」との構成を備えている点。
相違点2
本願発明が、「半導体素子」であるのに対して、
刊行物発明が、「プレーナ型の半導体集積回路」である点。
相違点3
刊行物発明が、「前記半導体基板の裏面に形成されたメタライゼーション13」を備えるのに対して、本願発明が上記構成を備えていない点。

5.当審の判断
各相違点について以下で検討する。
[相違点1について]
相違点1については、本願発明が「シリコン基板」を備えるのに対して、刊行物発明が「半導体基板」を備えること(相違点1-1)と、本願発明が「前記溝領域を囲む隔離領域」及び「ここで前記隔離領域はシリコン基板を通じて平坦な背面層にまで伸びて」いるとの構成を備えるのに対して、刊行物発明が「前記リセスと半導体基板との間に形成されたパッシベーション膜6を介して誘電物質10で埋められたリセス16」を備えるともに、「前記半導体基板の前記裏面も平坦である」との構成を備えている点(相違点1-2)と、本願発明が「平坦な背面層は、熱伝導体よりなり、かつ接着剤層によりシリコン基板へ接着され」るとの構成を備えるのに対して、刊行物発明は、「前記半導体基板の前記裏面も平坦である」との構成を備えているが、上記構成を備えていない点(相違点1-3)とに区分して検討する。

相違点1-1について
刊行物1には、「本発明の適用できる材料は、3-5族材料・・・、しかし、これらの材料に限定されない。本発明はシリコンにも適用できる・・・。」(第1欄第15?18行の訳文)と記載されるとともに、半導体集積回路を形成するための半導体基板として「シリコン基板」は従来周知であるから、刊行物発明において「半導体基板」を「シリコン基板」とすることは、当業者が何ら困難性なくなし得たものである。
相違点1-2について
刊行物発明においては、「メサ領域4」及び「メサ領域5」が「誘電物質10で埋められたリセス16」に囲まれているか否か明確でないが、半導体基板上に形成された半導体素子は、通常相互に「絶縁分離」されること、例えば、所定のトランジスタ等の能動素子を囲む絶縁領域を形成することは、半導体分野において周知慣用の技術手段であって、刊行物発明において、「半導体基板」を「シリコン基板」とした場合には、「メサ領域4」に形成された「プレーナトランジスタ4」と「メサ領域5」に形成された「メサダイオード」を絶縁分離するためには、「メサ領域4」と「メサ領域5」の間を「絶縁分離」するための領域を形成することが必要であることは、当業者に自明であり、そのために、「前記半導体基板の前記裏面も平坦である」との構成を備えた刊行物発明において、リセス16を、例えば、刊行物2に記載されるように、その界面がSiO2、Si3N4等の誘電物質からなるパシベーション層が形成された隔離領域を基板背面まで形成する(第3図及びその説明参照)こと、又は、刊行物3に記載されるように、その界面に分離絶縁膜7が形成された深いV溝6を半導体基板の裏面から表面まで形成する(第1図及びその説明参照)ことにより、本願発明の如く「隔離領域」で「溝領域」を囲むとともに、「前記隔離領域」を「シリコン基板を通じて平坦な背面層にまで伸び」る構成とすることは、当業者が何ら困難性なくなし得たものである。
相違点1-3について
ここで、相違点1-3については、「熱伝導体」からなる「平坦な背面層」と「接着剤層」に区分して検討する。
[熱伝導体からなる平坦な背面層について]
半導体装置において、半導体基板の、MOSFET及びバイポーラトランジスタのような能動素子を形成した表面と反対側の表面に、半導体装置で発生した熱を放散するためにヒートシンクを形成することは、例えば、特開平2-270367号公報(特に、第1図、第3図、第2頁右下欄?第3頁左下欄(特に、ヒートシンク4)参照)及び米国特許第5,145,795号明細書(特に、FIG.8?FIG.14、第4欄第61行?第7欄第30行(特に、メタライゼーション レイヤー(Metallization layer16(116の誤記))参照)に記載されるように、半導体分野においては、従来周知である。
また、刊行物2には、半導体ウエハの厚さを減少させることにより、半導体ウエハが厚い場合と比較して「熱的」な問題が減少することが記載されているように、半導体ウエハに形成した半導体素子の発熱が課題であることが記載されている(第3頁左上欄第5から11行及び第4頁右上欄第14及び15行参照)から、半導体ウエハを薄くしてもなお、半導体素子からの発熱が問題となる場合には、従来周知のヒートシンクを半導体基板の能動素子を形成した表面と反対側の表面に形成すること、言い換えると、刊行物発明において、半導体基板の平坦な裏面に従来周知のヒートシンクを設けることは、当業者が何ら困難性なくなし得たものである。
[接着剤層について]
半導体装置に対して接着剤層により熱伝導体を接着することは、例えば、
特開平4-264758号公報(特に、図1、請求項1及び0014段落(特に、接着材料4及びヒートスプレッダー2)参照)及び特開平4-179298号公報(特に、第1図、第2図、第2頁左上欄?左下欄(導電接着剤14,24及びヒートシンク13,23)参照)に記載されるように、半導体分野においては、周知慣用手段であるから、刊行物発明において、従来周知の放熱板(ヒートシンク)を半導体集積回路の平坦な裏面に接着する際に、従来周知の接着剤を用いることは、当業者が必要に応じて適宜なし得たものである。

[相違点2について]
「プレーナ型」とは、半導体基板の表面上に半導体素子を形成する構造を意味するものであるから、本願発明も「プレーナ型」とは記載されていないものの、実質的に「プレーナ型」であるから、この点は、実質的な相違点ではない。

[相違点3について]
刊行物発明においては、メサ領域5にメサダイオードを備えることにより、裏面から電極を取り出すことが必要であるため、「前記半導体基板の裏面に形成されたメタライゼーション13」を備えているものの、刊行物発明の「半導体集積回路」を構成する半導体素子が裏面から電極をとることが必要でなければ、当業者は、上記構成を適宜削除することができるものである。
したがって、本願発明は、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、平成6年7月5日付けの手続補正書により補正された図面(図9ないし図11)についての補正は、以下の理由で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていない事項を含むものである。
平成6年7月5日付けで補正された図面の図9ないし図11において、シリコン基板の「N+領域」の下に「右斜め上方向の斜線」を付した領域が記載されおり、図1ないし図11において、「右斜め上方向の斜線」を付した領域は、「酸化物層5」、「酸化物層7」又は「酸化物層11」、即ち、シリコン層を酸化した酸化物層、言い換えると、「シリコン酸化物層」を意味している。
しかしながら、願書に最初に添付した図面(図9ないし図11)には、上記『シリコン基板の「N+領域」の下に「右斜め上方向の斜線」を付した領域』は記載がなく、また、願書に最初に添付した明細書の詳細な説明にも上記『シリコン基板の「N+領域」の下に「右斜め上方向の斜線」を付した領域』を形成するための工程は記載されておらず、さらに、図8から図9までの工程においては、「シリコン29のウエハーが、好適にはポリイミド31の除去可能な接着剤によって図8の構造の活性面へ接着され」るとの工程を行っている(0012段落)に過ぎず、上記「シリコンウエハー29」を接着する工程において、上記『シリコン基板の「N+領域」の下に「右斜め上方向の斜線」を付した領域』が形成できることはありえず、技術的にも正しくないものである。
したがって、平成6年7月5日付けの手続補正書により補正された図面の図9ないし図11に記載される『シリコン基板の「N+領域」の下に「右斜め上方向の斜線」を付した領域』は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されている事項とは言えない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願は、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-26 
結審通知日 2006-09-29 
審決日 2006-10-16 
出願番号 特願平5-298455
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅野 智子松本 貢北島 健次  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 今井 拓也
長谷山 健
発明の名称 平坦な熱伝導体の背面層を有する半導体素子とその形成法  
代理人 清水 邦明  
代理人 浅村 皓  
代理人 浅村 肇  
代理人 林 鉐三  
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