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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12G
審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12G
管理番号 1153254
審判番号 不服2002-51  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-01-04 
確定日 2007-03-08 
事件の表示 平成 4年特許願第 85011号「米からのアルコール飲料」拒絶査定不服審判事件〔平成 5年10月 5日出願公開、特開平 5-252929〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年3月9日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成15年3月17日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「ガスクロマトグラフィーにおいて、R.T.5.296付近にピークを有する、果実臭を有するエステルに由来する香気成分を含有することを特徴とする、米(無蒸煮の赤香米を除く)を原料とするアルコール飲料。」

2.特許法29条1項3号について
(1)引用例記載の発明
平成15年1月9日付拒絶理由通知で引用された、特開平2-276564号公報(以下、「引用例」という。)には、
(a)「米を原料とするアルコール飲料の醸造工程において原料米の一部又は全部として無蒸煮の赤香り米を使用することを特徴とするワイン風味のアルコール飲料を製造する方法。」(特許請求の範囲の項)、
(b)「本発明における原料米としては従来いわゆる清酒醸造に用いる酒造米ではなく、フィリピンにおいて産する赤香り米、タポールを使用するが、他の産地で生産されるものであっても赤香り米であればモチ米ウルチ米を問わずすべてのタイプのものが自由に使用できる。また、赤香り米を原料とした場合ほどの良好な風味は得られないものの、香り米ではない赤米(稀珍黒米)も卓越したワイン様の芳香及び色素を産生ずるので、ワイン風味アルコール飲料の原料として使用可能である。」(2頁右上欄14行?左下欄3行)、
(c)「このようにして製造されたアルコール飲料は、卓越したワイン様の芳香を発し(原料香り米本来の香りとは全く異質のもである)、色もきれいですきとおった赤色を呈し、味もふくいくたるものがあった。」(2頁右下欄6?10行)、
(d)「実施例1
赤香米(玄米及び精米)を次の<操作>にしたがって処理した後、以下により<発酵>処理を行つた。
<操 作>
無蒸煮アルコール発酵
(1)300ml容三角フラスコに30gの香り米を入れた。
(2)0.2g(水40g)Asp.nigerのグルコアミラーゼと3g(水50g)パン酵母を加えた。
(3)pHを3.5に調整した。
<発 酵>
30℃、静置培養を行った。
24時間ごと三角フラスコ容器を計測し前日重量とほぼ変わらなくなった時点で発酵終了とした。」(2頁右下欄18行?3頁左上欄12行)、及び
(e)「上記結果からも明らかなように、特に無蒸煮赤香米(玄米)には揮発性成分が多種類且つ多量に含まれ、とりわけイソブタノール及びイソバレルアルデヒドの含有量が格段にすぐれており、ワイン様の芳香が発生する要因の1つがこの点にあるものと思考される。」(4頁右下欄1?6行)と記載され、さらに、その第4表には、(f)無蒸煮の「赤香米」から得られるアルコール飲料には、「酢酸エチル」、「乳酸エチル」、「酢酸イソアミル」などのエステルが含まれていることが記載されている。
上記(f)における「酢酸エチル」と「酢酸イソアミル」は、果実臭を呈することが明らかである(必要なら、化学大辞典編集委員会編「化学大辞典3 縮刷版」共立出版株式会社、昭和53年9月10日発行、815頁の“酢酸エチル”の項、及び812頁の“酢酸アミル”の項参照。)から、引用例には「果実臭を有するエステルに由来する香気成分を含有することを特徴とする無蒸煮の赤香米を原料とするアルコール飲料」という発明が記載されていると認定できる。

(2)対比・判断
本願発明と引用例に記載された発明を対比するに、赤香米は米の一種であるから、両者は、「果実臭を有するエステルに由来する香気成分を含有することを特徴とする、米を原料とするアルコール飲料」の点で一致し、ただ、(イ)香気成分が、前者では「ガスクロマトグラフィーにおいて、R.T.5.296付近にピークを有する」ものであるのに対し、後者では、それが明らかでない点、及び(ロ)原料の米として、前者では「無蒸煮の赤香米」が除かれているのに対し、後者では「無蒸煮の赤香米」を用いている点で、両者は一応相違している。
相違点(イ)について
(i)本願明細書の「本発明品(図1)と市販一級清酒(図2)の香気成分を分析してみたところ、R.T.5.296付近に明らかに違うピークが現れた。これが本発明品の主要な特徴となる香気成分であると思われる。R.T.より推定すると、分子量144以上のエステルであると考えられ、これらのエステルは一般的に果実臭を示す。・・・〔中略〕・・・すなわち、5.296のピークを中心としたこれら多くのものが主成分として、本発明によるフルーツ臭のするアルコール飲料であることを特徴づけていることが認められた。」(段落【0024】)との記載からみて、本願発明で特定する「ガスクロマトグラフィーにおいて、R.T.5.296付近にピークを有する」ものは、果実臭を有するエステルに由来する香気成分であると解されるが、引用例に係る「アルコール飲料」においても、酢酸エチル、酢酸イソアミル等の果実臭を呈するエステル成分を含有していること、及び(ii)本願発明と引用例とは、蒸煮米を原料とする従来公知の清酒の製法とは異なり、原料米を蒸煮処理することなくアルコール発酵させてアルコール飲料を得ている点でその製法が類似していること、を併せ考えると、引用例に係る「アルコール飲料」においても、技術常識に照らし、「ガスクロマトグラフィーにおいて、R.T.5.296付近にピークを有する」香気成分が含有されている蓋然性は高いといえる。
そうすると、相違点(イ)は、両発明の実質的な相違点とはならないというべきである。
相違点(ロ)について
相違点(ロ)は、原料米として「無蒸煮の赤香米」を用いるか否かというものであるが、原料米は「製造方法」の構成要件の一部であるから、両者の原料米が異なるということは、両者の製造方法が異なるということになる。
ところで、「物」の発明において、その発明が「製造方法」で特定される場合、その「物」自体が引用発明の「物」と同一であれば、両者の「製造方法」が相違するとしても、両発明は同一となる。すなわち、請求項に記載された製造方法とは異なる方法によっても同一の生産物が製造でき、その生産物が公知である場合は、当該請求項に係る発明は新規性が否定される。
そこで、本願発明に係る「アルコール飲料」と無蒸煮の赤香米を用いて得られた引用例に記載の「アルコール飲料」とは、同一の「アルコール飲料」といえるか否かについてみると、本願明細書の記載によれば、本願発明は、「無蒸煮米」を使用することにより、特定の香気成分を有するアルコール飲料が得られるというものである。無蒸煮米を用いても「赤香米」の場合には上記の特定の香気成分を含まないアルコール飲料になるとは、技術常識上考えられず、また、このことを請求人は立証もしていない。
そうすると、本願発明に係る「アルコール飲料」と引用例に記載の「アルコール飲料」とは、同一の「アルコール飲料」であるといえるから、たとえ相違点(ロ)があったとしても、すなわち、両者の原料米が異なるとしても、両発明は同一であるといえる。
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当する。

3.特許法36条5項について
本願発明は、「ガスクロマトグラフィーにおいて、R.T.5.296付近にピークを有する」ものであるところ、本願明細書には、「本発明品(図1)と市販一級清酒(図2)の香気成分を分析してみたところ、R.T.5.296付近に明らかに違うピークが現れた。これが本発明品の主要な特徴となる香気成分であると思われる。R.T.より推定すると、分子量144以上のエステルであると考えられ、これらのエステルは一般的に果実臭を示す。また、R.T.2.5から5.2の間にも小さいが清酒にはない無数のピークがみられ、これは感度を上げれば検知されることが判明した。すなわち、5.296のピークを中心としたこれら多くのものが主成分として、本発明によるフルーツ臭のするアルコール飲料であることを特徴づけていることが認められた。」(段落【0024】)との記載があるものの、「R.T.5.296付近」の「付近」とはどの範囲まで含まれるか明確ではなく、「香気成分」を十分に特定しているとはいえない。
また、請求項1に記載の「R.T.」は、“保持時間”あるいは“retention time”などの用語で表されるものの略号であると認められるが、種々の因子が「R.T.」(保持時間)に関係してくるのは当業者の技術常識である。(必要なら、原昭二 他1名訳「入門クロマトグラフィー」株式会社東京化学同人、1974年10月15日発行、152頁の“保持時間”の項を参照されたい。)
本願明細書の段落0023には、ガスクロマトグラフィーの測定条件として、測定機種、カラムの種類、カラム温度、キャリアガス流量等が示されているが、上記因子以外にも、サンプルの調製方法、サンプルのカラムへの注入量、検出器の感度、カラムの状態(カラムの劣化度)等が「R.T.」(保持時間)に関係してくるものと認められるが、これらの因子については具体的な記載は何もなく、請求項1に記載の「R.T.」を十分に特定しているとはいえない。
そうすると、本願明細書特許請求の範囲の請求項1に係る記載は、特許法36条5項2号に規定する要件を具備しない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、或いは同36条5項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本出願に係る他の請求項について検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する
 
審理終結日 2006-12-18 
結審通知日 2006-12-19 
審決日 2007-01-23 
出願番号 特願平4-85011
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (C12G)
P 1 8・ 534- WZ (C12G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 恵理子小暮 道明伏見 邦彦  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 高堀 栄二
河野 直樹
発明の名称 米からのアルコール飲料  
代理人 津国 肇  
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