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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1153259
審判番号 不服2003-8134  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-08 
確定日 2007-03-08 
事件の表示 平成10年特許願第 2958号「対人的性質判定装置、対人的性質判定方法及び対人的性質判定プログラム記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月27日出願公開、特開平11-197350〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成10年1月9日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成14年4月1日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対して、拒絶査定不服の審判が請求され、平成15年6月9日に手続補正がなされたものである。



第二.平成15年6月9日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年6月9日付の手続補正を却下する。

[理由]
[1]補正後の本願発明
平成15年6月9日付の手続補正(以下「本件補正」という)により、特許請求の範囲の請求項1は以下のように補正された(以下「本願補正発明」という)。
「複数の判定対象者のそれぞれから対人的性質を反映した複数の動作情報を測定する動作情報測定部と、動作情報測定部が測定した動作情報に基づいて一の判定対象者の他の判定対象者に対する対人的性質を判定する制御部と、
を設け、
前記動作情報測定部は、複数の判定対象者をカメラで撮像した画像中において、動作している特定部分を追跡し、またはフレームモデル化し、複数の判定対象者のそれぞれから少なくとも顔の向きの変化を対人的性質を反映した動作情報として測定し、
前記制御部が判定する対人的性質が、判定対象者同士の相性、又は、各判定対象者の協調性であることを特徴とする対人的性質判定装置。」


[2].補正要件(目的)の検討
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「動作情報」、「対人的性質」について、「動作している特定部分を追跡し、またはフレームモデル化し、複数の判定対象者のそれぞれから少なくとも顔の向きの変化を対人的性質を反映した」、「判定対象者同士の相性、又は、各判定対象者の協調性」との限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。


[3].補正要件(独立特許要件:特許法第36条)の検討
本願補正発明における「前記動作情報測定部は、複数の判定対象者をカメラで撮像した画像中において動作している特定部分を追跡し、・・・・・顔の向きの変化を対人的性質を反映した動作情報として測定し」の点が不明瞭である。
すなわち、
(1).「複数の判定対象者」が不明瞭である。
出願当初の明細書の段落【0049】に「以上の処理により、複数の遊戯者が共同して操作することが要求されるゲームにおいて、各遊戯者の対人的性質である相性度、協調性及び性格を推論し・・・・・各遊戯者の対人的性質の推論結果を印字出力することができる。」と記載されているように、共同して行なう者同士の対人的性質は記載されているが、それ以外の共同して行わない者同士の対人的性質は記載されておらず、しかも、本願補正発明の「複数の判定対象者」が共同して行なう者同士のみを意味するものとは認められない。
してみると、共同して行う者同士と特定されていない本願補正発明において、共同して行わない者同士の相性は如何に判定するのか不明瞭である。
(2).「顔の向きの変化」が不明瞭である。
本願補正発明に「顔の向きの変化を対人的性質を反映した動作情報として測定し」と記載されているが、当該変化は基準方向からの絶対的変化であるのか、現在位置からの相対的変化を指すのか不明瞭であり、さらに、共同して行う者同士と特定されていない本願補正発明において、顔の向きの変化を測定することと対人的性質としての相性とは如何成る関連性を有するのか不明瞭である。

(3).まとめ
以上のように、本願補正発明は、特許法第36条第6項第2号の規定に反し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


[4].補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1).引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-84850号公報には、以下の事項が記載されている。
(A).特開平8-84850号公報(以下、「刊行物A」いう).
(A-1).「【0006】【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、2人で手をつなぎながらでなければ行えないゲーム装置を提供することによって、2人で遊技することに絶対的必然性を持たせて、ゲームを楽しくしたものである。更には、単に質問に答えるゲームのように、解答者が恣意的に答を変えたりすることがないように、音による入力を遊技客に与え、その音に対する反応を取り出すことによって、その時の2人の精神状態を記録することにより種々の診断を行うようしたものである。」
(A-2).「【0018】更に、データ記憶部11には、2人の相性、2人合わせた状態での不注意な性格、憶病な性格、大胆な性格、優しい性格または感受性の強い性格、無関心型または変人的な性格などのデータを類型化し、このデータを表現する短文のアドバイスや解説、教訓などのデータを記憶させるものである。そして、中央演算処理装置10では、音響装置15を作動させ、三次元的な立体音により遊技者に仮想空間の疑似体験をさせ、安らぎを与える環境音、不安を掻き立てる音、驚かせる状況音などを音響装置15の発音装置18から発して聴取者に聞かせ、発汗センサーの信号の変化分によりデータ記憶部11に記憶された類型から特定のデータを決定してこのデータの短文を読みだし、結果表示部13に転送してモニターに表示したり、またはプリンターによって結果を打ち出すようにするものである。」
(A-3).「【0019】このように、このゲーム装置では、種々の状況の音を聞かせて聴取者の心拍変化や発汗状態により相性等を判断することとしているので、そのときの聴取者の精神状態に応じて正しく相性等を診断することができ、環境音も含めて聴取者を楽しませたり驚かせたりすることができるものである。特にこのゲーム装置では、手をつないだ2人の遊技客が、各々つないでいない手で2つの発汗センサーのいずれかに接触することとしてあるので、2つの発汗センサーの間の電流値の変化を、手をつないでいる2人が一緒の状態で検出されることとなる。」
(A-4).「【0020】したがって、このゲームを行った2人が一緒の状態での遊技者の心の動きを表示することとなり、従来にない遊技となる。更に、このゲーム装置を設置するに際しては、一人または数人が入ることのできる空間を筐体21により形成し、筐体21には適宜の入口を設けて外部からの音や光が筐体21の内部に入らないようにすると共に、この筐体21の内部には、図2に示すように椅子23やテーブル22を配置して室内空間を形成することもできる。」
(A-5).「【0021】更にこのような場合には、筐体21の内部には、照明装置24を適宜に配置し、テーブル22の前方には窓25またはハーフミラーを設け、更にテーブル22には発汗センサーを設けた球体を固定し、または心拍センサーを設けたバンドを取り付けてある。一方、中央演算処理装置10により音響装置15を作動させて音響装置15のスピーカまたはヘッドフォンなどの発音装置18から音を流すに際し、補助制御装置14をも中央演算処理装置10により制御し、照明装置24の照度を低下させ、または点滅させたり、テーブル22の前に設けた窓25またはハーフミラーの裏側に設けたスクリーン26に閃光を光らせたり、映像投影装置27により映像を映し出したりすることによって、音響装置15から流す音に合わせてより臨場感の高い疑似体験をさせることができる。また、床28には振動装置29を設けて音に合わせて床28を振らしたりすると、ボディソニック効果を生じさせることができ、より感情移入を促進することもできる。」
(A-6).してみると、刊行物Aには以下の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
「中央演算処理装置、補助制御装置、音響装置、性格データ記憶部、センサー部、結果表示部から構成されるゲーム装置であって、前記中央演算処理装置は、音響装置を作動して種々の状況の音を遊技者に聞かせて、前記センサー部に配設されている、遊技者の精神状態を表す心拍変化や発汗状体を検出する発汗センサー、心拍センサー等の検出信号に基づいてデータ記憶部に記憶された類型から特定のデータを決定し、当該決定に基づいて二人の相性を結果表示部に表示する、2人用ゲーム装置」

(2).引用発明と本願補正発明との対比
(ア).発明特定事項の対応関係
(i).引用発明における「2人の相性」は、本願補正発明における「対人的性質」である「判定対象者同士の相性」に対応し、以下同様に「2人」は「複数の判定対象者」に対応する。
(ii).引用発明における「遊技者の心拍変化や発汗状態」を検出する「発汗センサー、心拍センサー」と、本願補正発明における「対人的性質を反映した複数の動作情報」を測定する「動作情報測定部」とは、各々「相性を判定するための判定用情報」、当該情報を検出する「判定用情報検出部」において両者は、共通する。
(iii).引用発明における「中央演算装置」は、心拍変化や発汗状体に基づいて相性を判定するものであるから、本願補正発明において同様に相性を判定する「一の判定対象者の他の判定対象者に対する対人的性質を判定する制御部」に対応する。
(iv).引用発明における「2人用ゲーム装置」は、相性を判定するものであり、しかも上記「(i)」の様に、本願補正発明における「対人的性質」が相性であるから、本願補正発明における「対人的性質判定装置」に対応する。
(イ).一致点
「複数の判定対象者のそれぞれから対人的性質を反映した複数の判定用情報を検出する判定用情報検出部に基づいて一の判定対象者の他の判定対象者に対する対人的性質を判定する為の情報制御部を設け、
前記制御部が判定する対人的性質が、判定対象者同士の相性とする対人的性質判定装置。
(ウ).相違点
相性を判定するための判定用情報、及び判定情報検出部に関して、本願補正発明は、複数の判定対象者をカメラで撮像した画像中において、動作している特定部分を追跡し、またはフレームモデル化し、複数の判定対象者のそれぞれから少なくとも顔の向きの変化を対人的性質を反映した動作情報、及び当該情報の検出手段であるのに対し、引用発明は、種々の状況の音を聞かせて遊技者の精神状態を表す心拍変化や発汗状態が相性を反映した情報である点、及び当該情の検出手段である点

(3).相違点の検討
心理と行動に相関関係が存すること、すなわち、行動から心理状態を推測する推測手法、心理状態から行動を推測する推測手法は行動心理学として、例えば、以下に記載の刊行物B、C、Dに見られるように周知の手法である。
してみると、引用発明においても、相性を判定するための情報として用いられる精神状態情報の検出手段として、遊技者の心拍変化や発汗状態等の検出に代えて、当該精神状態情報、すなわち、心理状態情報を検出する手段として周知の、行動から心理状態を推測する前記推測手法を採用することは、当業者ならば容易に想到できることであり、当該行動の情報を得る手段として、監視カメラなどを用いる行動情報収集手段は周知の手段である。
したがって、当該相違点は、格別のものではない。

刊行物B:特開平7-182837号公報
「【0021】この理由は、媒体商品が・・・・・、他の商品と同様に「欲しいと思うものを手に取って確かめてから購入判断をする」という人間の行動心理様式に依存しているためである。・・・・・。」


刊行物C:特開平3-271996号公報
「[発明が解決しようとする課題] 上述した従来の買物経路追跡方法は、・・・・・という問題点がある。
また、買い物からの推測、行動心理学からの予測方法についてはあくまで推測、予測であり、実際とは異なる可能性があるという問題点がある。」

刊行物D:特開平6-282797号公報
「【0012】実施例2(請求項2対応)・・・・・。駐車場20の利用者は駐車場20が目的地でなく、車から降りて目的の施設9の入口10の方向に、一点鎖線で示す人の流れ11が起こる。人間の行動心理から目的の施設9までの歩く距離の少ない駐車区画4に駐車しようとする。」

(4).まとめ
以上のように、本願補正発明は、刊行物Aに記載された発明、及び周知の行動心理学に基づいて当業者が容易になし得たものであるから、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものではない。


[5].むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。



第三.本願発明について
[1].本願発明
平成15年6月9日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年4月1日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?18に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された発明は、以下のとおりのものである。
「複数の判定対象者のそれぞれから対人的性質を反映した複数の動作情報を測定する動作情報測定部と、動作情報測定部が測定した動作情報に基づ
いて一の判定対象者の他の判定対象者に対する対人的性質を判定する制御部と、
を設け、
前記動作情報には、複数の判定対象者を撮像した画像から測定した情報が含まれていることを特徴とする対人的性質判定装置。」


[2].引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物、および、その記載事項は、前記「第二.[4].(1)」に記載したとおりである。


[3].引用発明と本願発明との対比
本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明から、「動作情報」、「対人的性質」各々の限定事項である、「動作している特定部分を追跡し、またはフレームモデル化し、複数の判定対象者のそれぞれから少なくとも顔の向きの変化を対人的性質を反映した」、「判定対象者同士の相性、又は、各判定対象者の協調性」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.[4].」に記載したとおり、刊行物Aに記載された発明、及び、周知慣用事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物Aに記載された発明、及び、周知慣用事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


[4].むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物Aに記載された発明、及び、周知慣用事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-04 
結審通知日 2007-01-09 
審決日 2007-01-24 
出願番号 特願平10-2958
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 榎本 吉孝松川 直樹  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 宮本 昭彦
川島 陵司
発明の名称 対人的性質判定装置、対人的性質判定方法及び対人的性質判定プログラム記録媒体  
代理人 村上 辰一  
代理人 小森 久夫  

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