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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1153274 |
審判番号 | 不服2004-4837 |
総通号数 | 88 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-03-10 |
確定日 | 2007-03-08 |
事件の表示 | 平成8年特許願第344622号「口紅組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成10年6月23日出願公開、特開平10-167930〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成8年12月9日の出願であって、平成15年5月26日付けで拒絶理由が通知され、平成15年7月24日に意見書及び手続補正が提出されたところ、平成16年1月29日付けで拒絶査定され、これに対し、平成16年3月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年4月8日付けで手続補正がされたものである。 2 平成16年4月8日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年4月8日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 平成16年4月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の請求項1である 「下記平均式『化1』で表される有機シリコーン樹脂1?70重量%と、下記一般式『化2』又は下記一般式『化3』で表される揮発性シリコーン油および/または常圧における沸点が60?260℃の範囲にある揮発性炭化水素油2?98重量%と、下記一般式『化4』で表されるフッ素変性シリコーン2?50重量%とを含有することを特徴とする口紅組成物。 【化1】 RnSiO(4-n)/2(Rは炭素数1?6までの炭化水素基またはフェニル基を表し、nは1.0から1.8までの値を表す。) 【化2】 (式中nは0?3の整数を示す。) 【化3】 (式中nは3?8の整数を示す。) 【化4】 (式中、Rfは炭素数1?12のパーフロロアルキル基、aは0?5の整数、m,nは平均数で,mは1?150、nは0?500の数を表す。)」 を、 「下記平均式『化1』で表される有機シリコーン樹脂1?70重量%と、下記一般式『化2』又は下記一般式『化3』で表される揮発性シリコーン油および/または常圧における沸点が60?260℃の範囲にある揮発性炭化水素油2?98重量%と、下記一般式『化4』で表されるフッ素変性シリコーン2?50重量%とを含有することを特徴とする口紅組成物。 【化1】 RnSiO(4-n)/2(Rは炭素数1?6までの炭化水素基またはフェニル基を表し、nは1.0から1.8までの値を表す。) 【化2】 (式中nは0?3の整数を示す。) 【化3】 (式中nは3?8の整数を示す。) 【化4】 (式中、Rfは炭素数4?12のパーフロロアルキル基、aは0?5の整数、m,nは平均数で,mは1?150、nは0?500の数を表す。)」(以下、「本件補正発明」という。)とする補正を含む補正であり、「化4」で表されるフッ素変性シリコーンの可変置換基であるRfの選択肢を、「炭素数1?12のパーフロロアルキル基」から「炭素数4?12のパーフロロアルキル基」とすることにより選択肢を限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるか(特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に適合するかどうか)について検討する。 (2)引用文献及びその記載 原査定の拒絶の理由に引用された文献2(特開昭62-238212号公報)及び文献3(特開平7-277927号公報)には以下の記載がある。 [文献2(特開昭62-238212号公報)] (A1)「(1)平均式(A)で示される有機シリコーン樹脂と乳化剤、保湿剤及び水を必須成分とすることを特徴とするメーキャップ化粧料。 (A)RnSiO4-n/2(Rは炭素数1?6までの炭化水素基又はフェニル基を表し、nは1.0?1.8までの値を示す。)」(特許請求の範囲、請求項1) (A2)「(3)乳化剤がポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン・・・より選ばれる一種若しくは二種以上である特許請求の範囲第一項記載のメーキャップ化粧料。」(特許請求の範囲、請求項3) (A3)「メーキャップ化粧料にシリコン樹脂を配合することは化粧持ちに関しては抜群の効果がある」(2頁左上欄17?19行) [文献3(特開平7-277927号公報)] (B1)「化粧料全体の重量を基準にして、次の構成成分を含有することを特徴とする口紅組成物。 (a)揮発性液状油分20?60重量% (b)固型油分4?30重量% (c)着色料0.5?50重量% (d)オイル状パーフルオロポリエーテル40重量%以下」(請求項1) (B2)「本発明者は、鋭意研究の結果、オイル状パーフルオロポリエーテルを配合すると光沢が与えられ、他への付着が極めて少なく、かつ、化粧持ちが良好であることを見いだした。その理由は明確ではないが、オイル状パーフルオロポリエーテルは、揮発性油分にも固型油分にも溶解せず、さらに着色料ともなじまないことが一つの要因となっているのではないかと推測される。」(段落【0007】) (B3)「(揮発性液状油分)本発明の口紅組成物で使用できる揮発性液状油分としては、例えば、軽質流動イソパラフィン(沸点260℃以下)などの揮発性イソパラフィン系炭化水素、メチルポリシロキサン(沸点260℃以下)などの揮発性鎖状シリコーン油、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタイロキサンなどの揮発性環状シリコーン油などであるが、これらのみに限定されるわけではない。 揮発性液状油分は良好な塗布感をもたらすのに必要である。この配合量は20?60重量%の範囲内である。好ましい配合量は30?50重量%である。」(段落【0009】?【0010】) (B4)「(固型油分)本発明の化粧料で使用される固型油分は化粧料の保形性および塗布後の皮膜形成性を確保するために必要である。 固型油分の配合量は4?30重量%の範囲内であり、好ましい配合量範囲は6?20重量%である。この配合量が4重量%未満の場合、スティック状やプレスト状にすることが困難となる。一方、固型油分の配合量が30重量%よりも多いと硬くなりすぎて塗布性が悪くなる。更に、色がつきにくくなる。 本発明で使用できる固型油分としては、一般に化粧料に用いられるのであれば何でもよく、例えば、次のものがあげられる。 すなわち、ワックス、油分としては、牛脂、スクワラン、オリーブ油、月見草油、コメヌカ油、キャンデリラロウ、カルナバロウ等の動植物油、炭化水素、イソプロピルミリステート、ペンタエリスリトール-テトラ-2-エチルヘキサノエート等のエステル油、メチルフェニールシリコン、ジメチルシリコン等のシリコン油、2-オクチルドデカノール、2-デシルテトラデカノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール等のアルコール、ベヘン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸等があげられる。」(段落【0012】?【0015】) (B5)「(オイル状パーフルオロポリエーテル)本発明に使用されるオイル状パーフルオロポリエーテルは、例えば次の一般式(I)で表されるものが好ましい。・・・また、次の一般式(IV)で示されるフッ素変性シリコーンをあげることができる。 (式中sは0?100の数、tは1?100の数、uは1?4の数、Rfは炭素数1?12のパーフルオロカーボンを示す。) オイル状パーフルオロポリエーテルの配合量の上限は、40重量%とする。40重量%を超えると成型できなくなるためである。なお、2?20重量%が好ましい。2重量%以上とすると光沢がより一層鮮明になる。一方、20重量%以下とすると、基剤のもろさがなくなり成型性が良好となる。」(段落【0020】?【0027】) (B6)「(製造方法例)オイル状パーフルオロポリエーテルは、固型油分や揮発性油分とは相溶しないため、揮発性油分に乳化させて配合すればよい。乳化に使用する乳化剤については、パーフルオロ基を持つ乳化剤でなくとも乳化は可能であり、揮発性油分と溶解するもの(加熱溶解するものでも可)であれば、通常用いられる乳化剤を使用すればよく、効果を損なわない範囲内で使用することができる。 例えば、・・・等のシリコーン系界面活性剤があげられる。」(段落【0029】?【0030】) (3)本件補正発明と引用文献に記載された発明の対比・判断 文献3には、(a)揮発性液状油分20?60重量%、(b)固型油分4?30重量%、(c)着色料0.5?50重量%及び(d)オイル状パーフルオロポリエーテル40重量%以下の成分を含有する口紅組成物に係る発明が記載されており(摘記B1)、さらに、固形油分は化粧料の保形性及び塗布後の皮膜形成性を確保するために必要なものであること(摘記B4)、揮発性液状油分は良好な塗布感をもたらすのに必要なもので、沸点が260℃以下の軽質流動イソパラフィンなどの揮発性イソパラフィン系炭化水素、沸点が260℃以下のメチルポリシロキサンなどの揮発性鎖状シリコーン油、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどの揮発性環状シリコーン油などが使用できること(摘記B3)、オイル状パーフルオロポリエーテルとして、前記一般式(IV)で示されるフッ素変性シリコーンが使用されることが記載されている(摘記B5)。 本件補正発明の有機シリコーン樹脂は文献3に記載された発明における固型油分に対応する成分であり、また、フッ素変性シリコーンの化学構造についてみると、文献3に記載された発明では、一般式(IV)中のs=0?100、t=1?100、u=1?4、Rfは炭素数1?12のパーフルオロカーボンであり(摘記B5)、本件補正発明では、一般式(化4)中のm=1?150、n=0?500、a=0?5、Rfは炭素数4?12のパーフロロアルキル基であるから、本件補正発明の一般式の記号でいうと、両発明のフッ素変性シリコーンは、m=1?100、n=0?100、a=1?4、Rfが炭素数4?12のパーフロロアルキル基である部分について重複するものである。 以上のことをふまえて、本件補正発明と文献3に記載された発明を対比すると、いずれも、口紅組成物の発明において、固形成分、揮発性液状油分、フッ素変性シリコーンを組成物の成分とする点で一致し、固形成分4?30重量%、揮発性液状油分20?60重量%、フッ素変性シリコーン2?40重量%という各成分の重量割合について重複し、揮発性液状油分が揮発性鎖状シリコーン、揮発性環状シリコーン又は揮発性炭化水素油である点で一致しているが、(1)本件補正発明では着色料を発明の必須成分としていないのに対し、文献3に記載された発明では着色料0.5?50重量%を必須成分としている点、(2)固形成分として、本件補正発明は、平均式(A)RnSiO(4-n)/2(Rは炭素数1?6までの炭化水素基またはフェニル基を表し、nは1.0から1.8までの値を表す。)で表される特定の有機シリコーン樹脂であるのに対し、文献3に記載された発明ではその特定の有機シリコーン樹脂とされていない点、の2点で相違している。 この相違点(1)、(2)について検討する。 相違点(1)について、本件補正発明のものも文献3に記載された発明と同じ口紅組成物であるから、着色料は通常使われる成分であり、その重量割合についてみても、本件補正発明のいずれの実施例においても赤色顔料が2.5?3重量%使用されているので、この点は実質的な相違点ではない。 相違点(2)について、口紅組成物も含むメーキャップ化粧料の発明に係る文献2には、本件補正発明と同じ平均式(A)RnSiO4-n/2(Rは炭素数1?6までの炭化水素基またはフェニル基を表し、nは1.0から1.8までの値を表す。)で表される有機シリコーン樹脂が記載され(摘記A1)、シリコーン樹脂をメーキャップ化粧料に配合すると化粧持ちに関して抜群の効果がある成分であることが記載されている(摘記A3)から、文献3に記載された発明における固型油分として文献2に記載された有機シリコーン樹脂を選択することは当業者が容易に行えることである。 なお、請求人は、請求の理由において、「そもそも、相分離を起こさないように、必須成分として、ポリエーテル変性されたポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン等の乳化剤により乳化された引用文献2記載の口紅組成物に対して、有機シリコーン樹脂と相分離を起こす、本願請求項1記載のフッ素変性シリコーンを配合しようとすることは、化粧料の当業者であればおよそ避けるべき配合行為であり有り得ない。このように、引用文献2及び3記載の発明を単純に組み合わせて本願発明を構成することに対しては、当業者にとって重大な阻害要因が存在する。」と主張しているが、文献3には、オイル状パーフルオロポリエーテルは、固型油分や揮発性油分とは相溶しないため、揮発性油分に乳化させて配合すればよく、乳化剤については、パーフルオロ基を持つ乳化剤でなくとも乳化は可能であり、揮発性油分と溶解するものであれば、通常用いられる乳化剤を使用すればよく、効果を損なわない範囲内で使用することができるとされ、シリコーン系界面活性剤も例示されており(摘記B6)、一方、文献2においても、有機シリコーン樹脂をメーキャップ化粧料に配合する際に乳化剤が必要な成分であるとされている(摘記A2)ので、文献3記載の発明における固型油分として文献2記載の有機シリコーン樹脂を選択し、文献3記載の発明の効果、すなわち、パーフルオロポリエーテルを配合することにより光沢が与えられ、他への付着が極めて少なく、かつ、化粧持ちが良好であるという効果(摘記B2)を損なわない範囲で乳化剤を使用して、適当な相溶性を持たせることは当業者にとって困難なことではないと考えられ、その組合せに対して阻害要因となるものはないものと認められる。 さらに、請求人は「本願発明は、唇上にて樹脂皮膜とフッ素変性シリコーン(及び/又はフッ素変性メチルフェニルポリシロキサン)との相分離という新規な口紅メカニズムを用いることにより、「耐色移り性」と「濡れたようなつや」を両立させた口紅である。」と、本願発明の効果を主張するが、文献3に記載された発明も揮発性油分にも固型油分にも溶解せず(すなわち相分離する)オイル状パーフルオロポリエーテルを配合することが一つの要因であると推測される光沢付与と他への付着が極めて少なく、かつ化粧持ちが良好であるという効果を有することが記載されており(摘記B2)、その効果は本件補正発明の効果と軌を一にするものである。また、文献3は製造時に乳化剤を使用することを教示しているが、それは、効果を損なわない範囲での使用が教示されているものであり(摘記B6)、一方、本願明細書において本件補正発明に必要に応じて配合することができるものとして列挙されているものの中に、乳化剤として使用可能なシリコーン系界面活性剤(文献2において使用される乳化剤として挙げられているポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン(摘記A2)もシリコーン系界面活性剤である。)も含まれており、そして、本件補正発明において、乳化剤の使用・不使用いずれについても、それが特定要件とされているものではないことを考慮すると、乳化剤の存在は特に発明の構成上の差となるものではない。 よって、請求人の主張はいずれも採用することができない。 以上のとおり、本件補正発明は、本願出願前に頒布された刊行物である文献2及び文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3 本願発明について (1)本願発明 平成16年4月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成15年7月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明は前記2(1)に摘記したとおりである(以下、「本願発明」という。)。 (2)引用刊行物及びその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された文献2、文献3及びその記載事項は、前記2(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、上記したとおりであって、本件補正発明の「化4」においてRfが「炭素数1?12のパーフロロアルキル基」であるから、本件補正発明を包含するものであるところ、本件補正発明は前記2(3)に記載したとおり、文献2及び文献3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正発明を包含する本願発明も同様の理由により、本願出願前に頒布された刊行物である文献2及び文献3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は、その余について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-01-04 |
結審通知日 | 2007-01-10 |
審決日 | 2007-01-25 |
出願番号 | 特願平8-344622 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福井 悟、福井 美穂 |
特許庁審判長 |
脇村 善一 |
特許庁審判官 |
天野 宏樹 岩瀬 眞紀子 |
発明の名称 | 口紅組成物 |
代理人 | ▲高▼野 俊彦 |