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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1153276
審判番号 不服2004-5071  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-11 
確定日 2007-03-08 
事件の表示 平成10年特許願第302817号「インクジェット記録ヘッド用ノズル洗浄液および洗浄方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月 9日出願公開、特開2000-127419〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成10年10月23日の出願であって、平成16年2月3日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年3月11日付けで本件審判請求がされるとともに、同年4月6日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成16年4月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正内容
本件補正は、特許請求の範囲の記載を、
補正前の
「【請求項1】
着色剤として顔料を含有するインク組成物を用いるインクジェット記録方法に用いる洗浄液であって、少なくとも界面活性剤、塩基性化合物、水を含有し、かつ洗浄液のpHが9以上であることを特徴とするインクジェット記録ヘッド用ノズル洗浄液。
【請求項2】
洗浄液のpHがアルカリ金属水酸化物によって調整されてなるものである請求項1記載のインクジェット記録ヘッド用ノズル洗浄液。
【請求項3】
洗浄液に含有されている界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット記録ヘッド用ノズル洗浄液。
【請求項4】
洗浄液に含有されている界面活性剤がイオン性界面活性剤であり、かつ界面活性剤の電荷がインク組成物中に分散している顔料粒子の表面電荷と一致することを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット記録ヘッド用ノズル洗浄液。
【請求項5】
着色剤として顔料を含有するインク組成物を用いて印字を行った後に、請求項1?4いずれか一項記載のインクジェット記録ヘッド用ノズル洗浄液を用いて記録ヘッドのノズルを洗浄する洗浄方法。」
から補正後の
「【請求項1】
着色剤として顔料を含有するインク組成物を用いるインクジェット記録方法に用いる洗浄液であって、少なくとも非イオン性界面活性剤、塩基性化合物、水を含有し、かつ洗浄液のpHが9以上であることを特徴とするインクジェット記録ヘッド用ノズル洗浄液。
【請求項2】
洗浄液のpHが無機または有機の塩基性化合物によって調整されてなるものである請求項1記載のインクジェット記録ヘッド用ノズル洗浄液。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤が、エーテル系、エステル系、または、アセチレングリコール系界面活性剤であることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット記録ヘッド用ノズル洗浄液。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤の添加量が、洗浄液の全重量に対して10重量%以下である、請求項1?3のいずれか一項記載のインクジェット記録ヘッド用ノズル洗浄液。
【請求項5】
着色剤として顔料を含有するインク組成物を用いて印字を行った後に、請求項1?4いずれか一項記載のインクジェット記録ヘッド用ノズル洗浄液を用いて記録ヘッドのノズルを洗浄する洗浄方法。」
へと補正する補正事項を含んでいる(補正個所に下線を引いた。)。

2.補正目的違反
特許法17条の2第4項は、審判請求時の補正目的について、請求項削除、特許請求の範囲の限定的減縮、誤記の訂正又は明りようでない記載の釈明のみと規定しており、請求項の新設や1つの請求項を複数の請求項に分割することは、特別の例外を除いて認めていない(東京高判平成15年(行ケ)230号又は知財高判平成17年(行ケ)10192号を参照。)。特別の例外とは、多数項引用形式で記載されていた請求項を個別の請求項に変更する場合であって、補正前後の請求項の対応関係が明確である場合である。
そこで、本件補正後の各請求項は本件補正前の各請求項とどのような対応関係であるかについて検討するに、上記補正後の請求項1は、補正前の請求項3の内容をそのまま請求項1とし補正前の請求項1を削除したもの(前者)かあるいは補正前の請求項1を補正前の請求項3の内容を付加し請求項1とし補正前の請求項3を削除したもの(後者)のいずれかと解されるけれども(請求人の平成16年6月9日付の手続補正書の記載によれば後者の趣旨と解される)、補正後の請求項3と請求項4は一対一で対応すべき補正前の請求項が存在しておらず、補正前の請求項4に対応する補正後の請求項は存在していない。
そうすると、補正後の、請求項1、請求項2及び請求項5は、補正前の、請求項3(又は請求項1)、請求項2及び請求項5にそれぞれ対応していると認められるが、補正後の請求項3と請求項4は、請求項の新設である。
また、補正後の請求項2は、上記のように、補正前の請求項2に対応しているとみることができるものの、補正後の請求項2の「洗浄液のpHが無機または有機の塩基性化合物によって調整され」との特定事項は、補正前の請求項2の「洗浄液のpHがアルカリ金属水酸化物によって調整され」との特定事項をより一般化したものであるから、この点で補正前の請求項2を拡張するものである。
したがって、上記本件補正事項の補正目的は、特許請求の範囲の限定的減縮であるとすることができない。
そして、本件補正事項が、誤記の訂正や明りようでない記載の釈明に該当しないことも明らかである。
したがって、本件補正事項を含む本件補正の補正目的は、特許法17条の2第4項の規定に違反している。

3.独立特許要件欠如
(1)補正発明の認定
補正発明は、1.で摘記した本件補正後の請求項1に記載されたとおりの事項で特定されるとおりのものと認める。

(2)引用発明の認定
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-39260号公報(以下「引用例」という。)には、補正発明に関連する事項として以下の事項が記載されている。
ア.「ノズル、スリットまたは多孔質フィルム等から液体または溶融固体インクを吐出し、紙、布、フィルム等に記録を行うインクジェット記録装置」(段落【0002】参照)
イ.「本発明のインクジェットヘッド洗浄方法は、着脱可能なインクカートリッジと加熱ヘッドを有するインクジェット記録装置の加熱ヘッドを洗浄するに際して、インクカートリッジを、洗浄液を保有するヘッド洗浄用カートリッジで置換し、その洗浄液で洗浄することを特徴とする。」(段落【0006】参照)
ウ.「本発明において、洗浄用カートリッジに保有させて使用する洗浄液は、水及び界面活性剤を必須成分とし、必要に応じて水溶性有機溶剤、pH調整剤、ハイドロトロピー剤、キレート化剤、包接化合物、酸化剤、酸化防止剤、還元剤、酵素、殺菌剤、消泡剤、研磨剤、その他添加剤を添加することができる。水としては、イオン交換水または超純水を使用するのが好ましい。本発明において使用する洗浄液に含有させる界面活性剤は、ノニオン、アニオン、カチオンおよび両性界面活性剤のいずれでもよい。例えば、ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、サーフィノール(アセチレングリコール誘導体)等が挙げられる。・・・アニオン界面活性剤としては、・・・高級アルコールリン酸エステル塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、・・・コール酸塩などが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独でもあるいは2種以上混合して用いてもよい。好ましくは、アニオン界面活性剤が洗浄力に優れ望ましい。これらの界面活性剤の含有量は、全洗浄液量に対して0.01?50重量%の範囲、好ましくは界面活性剤の臨界ミセル濃度から30重量%以下の範囲で使用される。 」(段落【0010】?【0012】参照)
エ.「本発明において用いる洗浄液は、pHを高くすることにより、洗浄能力が向上する。ただし、pH12を越えると、洗浄時、ヘッド材料の腐食や溶解、剥離等の悪影響があるため、pH7?12の範囲が好ましい。更に、好ましくはpH7?10の範囲である。また、洗浄効果を上げるため、使用インクより高いpHの洗浄液が望ましい。pHを調整するものとして、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、硫酸ナトリウム、酢酸塩、乳酸塩、安息香酸塩、トリエタノールアミン、アンモニア、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム等があげられる。」(【0015】参照)
オ.「本発明において、洗浄対象となる使用インクは、水性染料インク、顔料分散インク、その他添加剤を含有したインク等があるが、対象インクの種類によらず優れた洗浄効果を発揮するのである。しかしながら、インク構成成分中にカルボン酸またはカルボン酸塩構造を有するインクに対し特に洗浄効果が優れている。すなわち、カルボン酸基を有する高耐水性染料インクやカルボン酸基を有する顔料分散剤およびカルボン酸基を有する水溶性高分子添加剤は、スルホン酸基を有する染料インクや分散剤、添加剤に比べて水溶性が低いため、ヒータ上で焦げ付きを起こした場合、インク構成成分中の水では付着物が再溶解しなくなるが、本発明の洗浄方法において、上記の洗浄液を使用することにより、付着物を効果的に洗浄することができる。」(段落【0019】参照)
カ.「本発明において、洗浄液として、pHを7?12の範囲の物を用いると、洗浄時にヘッド材料に悪影響を与えることなく洗浄能力を高く保つことができる。したがって、本発明の洗浄用カートリッジを用いて本発明により洗浄すると、染料構造制御などの複雑な設計や市販の染料・顔料を更に精製する操作を省くことができ、コスト上昇の問題をクリアすることができる。また、本発明の洗浄方法は、水性染料系インクの他、顔料系・油性染料系・樹脂・ワックス・オイル等のサスペンション・エマルジョン・その他、分散系を用いるインクジェット記録装置の洗浄にも有効である。」(段落【0022】参照)
以上の記載事項を含む引用例には以下の発明が記載されていると認められる。
「水性染料系インクの他、顔料系・油性染料系・樹脂・ワックス・オイル等のサスペンション・エマルジョン・その他、分散系を用いるインクジェット記録装置のインクを吐出させるノズルを有するヘッドの洗浄に有効である洗浄液であって、水、ノニオン界面活性剤、及びpHを調整するものとして、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、硫酸ナトリウム、酢酸塩、乳酸塩、安息香酸塩、トリエタノールアミン、アンモニア、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム等を含有し、pHの範囲が7?12の範囲である洗浄液。」(以下、「引用発明」という。)

(3)補正発明と引用発明との対比・判断
ア.引用発明の「水性染料系インクの他、顔料系・油性染料系・樹脂・ワックス・オイル等のサスペンション・エマルジョン・その他、分散系を用いるインクジェット記録装置のインクを吐出させるノズルを有するヘッドの洗浄に有効である洗浄液」は、「着色剤として顔料を含有するインク組成物を用いるインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録ヘッド用ノズル洗浄液」ということができる。
イ.引用発明の「ノニオン界面活性剤」と「pHを調整するものとして、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、硫酸ナトリウム、酢酸塩、乳酸塩、安息香酸塩、トリエタノールアミン、アンモニア、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム等」は、それぞれ、「非イオン性界面活性剤」及び「塩基性化合物」ということができる。
ウ.補正発明と引用発明は、洗浄液のpHが特定の範囲であるとしている点で共通している。
以上のことから、両者の一致点と相違点は以下のとおりである。
[一致点]
着色剤として顔料を含有するインク組成物を用いるインクジェット記録方法に用いる洗浄液であって、少なくとも非イオン性界面活性剤、塩基性化合物、水を含有し、かつ洗浄液のpHが特定の範囲であるインクジェット記録ヘッド用ノズル洗浄液。
[相違点]
洗浄液のpHの範囲が、補正発明では9以上としているのに対して、引用発明では、7?12である点。
[相違点の判断]
上記相違点について検討する。
上記引用例には、「本発明において用いる洗浄液は、pHを高くすることにより、洗浄能力が向上する。・・・洗浄効果を上げるため、使用インクより高いpHの洗浄液が望ましい」と記載されている(記載エ参照)。
また、着色剤として顔料を含有するインク(インク組成物ともいえる)のpHを7?10とすることは、例えば、特開平8-218017号公報の「本発明のインクは、好ましくは、インク全体が中性又はアルカリ性に調整されていることが、前記した水溶性樹脂の溶解性を向上させ、一層の長期保存安定性に優れたインクとすることが出来るので望ましい。インクのpHは、インクジェット記録装置に使われている種々の部材の腐食の原因となる場合があるので、好ましくはpH7?10の範囲が望ましい。」(段落【0030】参照)又は再公表特許WO96/23032号公報の「記録液は,記録装置の方式にもよるが,粘度0.8?15cps(25℃)の液体として調整することが好ましい。表面張力は,25?60dyn/cmが好ましく、pHは,特に制約されないが4?12の範囲であり,7?10のアルカリ性が好ましい。」(20頁20?23行)の各記載にみられるように、よく知られている。
そうすると、インクジェット記録装置のインク(インク組成物)として、上記周知の着色剤として顔料を含有するインク(インク組成物)であって、pHの範囲が7?10であるアルカリ性のインク(インク組成物)を選択することは、当業者が想到容易であり、その際洗浄効果を上げるために、洗浄液として使用インク(インク組成物)のpHの範囲よりも高い洗浄液とすること、すなわち上記相違点のように、引用発明における洗浄液のpH7?12の範囲から、pHが高い側である9以上の範囲を選択することも、当業者が容易に想到でき、その作用効果も格別なものでない。
したがって、補正発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.補正の却下の決定のむすび
以上述べたとおり、本件補正は特許法第17条の2第4項及び同条第5項で読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に違反している。
したがって、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、本件補正は却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての当審の判断
1.本願発明の認定
平成16年4月6日付けの手続補正は却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年10月8日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める(上記第2 1.補正前の請求項1参照)。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2 3.(2)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、補正発明の特定事項の「非イオン性界面活性剤」から「非イオン性」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項の全部をその特定事項とし、さらに、他の特定事項をその特定事項としたものに相当する補正発明が、上記「第2 3.(3)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様な理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 結び
以上のとおりであるから、本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-10 
結審通知日 2007-01-11 
審決日 2007-01-25 
出願番号 特願平10-302817
審決分類 P 1 8・ 572- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 時男  
特許庁審判長 番場 得造
特許庁審判官 藤井 勲
尾崎 俊彦
発明の名称 インクジェット記録ヘッド用ノズル洗浄液および洗浄方法  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 田中 克郎  
代理人 大賀 眞司  
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