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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1153283
審判番号 不服2004-10796  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-24 
確定日 2007-03-08 
事件の表示 平成7年特許願第352249号「リード・オン・チップ半導体素子及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成8年12月17日出願公開、特開平8-335664〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯の概要
本願は、平成7年12月28日(パリ条約による優先権主張:1995年1月3日 米国)の出願であって、審査請求にともない平成13年10月2日付けで手続補正書が提出され、平成15年7月18日付けで拒絶理由が通知され、平成16年1月28日付けで手続補正書が提出され、平成16年2月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成16年5月24日に審判請求がなされるとともに、平成16年6月23日付けで手続補正書が提出され、平成16年8月27日付けで前置報告がなされたものである。

II.平成16年6月23日付け手続補正書による補正の却下の決定
(II-1)結論
平成16年6月23日付け手続補正書による補正を却下する。
(II-2)理由
(a)補正の内容
本補正は、明細書の特許請求の範囲を、本手続補正書による補正後の請求項1?3のとおりに補正することを含む補正であるところ、請求項1については次のとおりである。
「【請求項1】リード・オン・チップ(LOC)半導体素子であって:
活性面に複数のボンディング・パッドを有する半導体ダイ;
前記半導体ダイの活性面上に位置する複数のリード;
前記半導体ダイと前記複数のリードとの間に配され、前記複数のリードを前記ダイの活性面に取り付けるための電気絶縁性接着テープであって、前記複数のリードに対応する領域にのみ配され、前記複数のリード各々の間には全く配されない前記接着テープ;および
前記複数のリードを前記複数のボンディング・パッドに接続する複数のワイヤ・ボンド;
から成ることを特徴とするリード・オン・チップ半導体素子。」
(以下、補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明を「補正発明1」という。)

(b)判断
(b-1)補正の目的
請求項1についての上記補正は、当該補正前の請求項1に記載された半導体素子における「前記複数のリード各々の間には配されない前記接着テープ」について、「前記複数のリード各々の間には全く配されない前記接着テープ」と限定して半導体素子を更に限定する補正であるので、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものといえる。

次に、補正発明1の独立特許要件について検討する。
(b-2)引用例及びその記載事実
(1)引用例1:特開平6-151680号公報(平成6年5月31日公開)
(1-1)「【請求項1】表面層に電子回路が形成され、これを外部に接続するためにその表面に形成された複数の電極を備えた半導体素子のその表面に、絶縁性フィルムの両面に有機接着剤層を積層した積層フィルムを介して、複数のインナーリード、アウターリードなどから構成されたリードフレームの、前記インナーリードを接着し、前記複数のインナーリードの内端部を前記複数の電極に接続し、前記半導体素子、前記インナーリードの内端部などを封止樹脂で封止することによりパッケージを形成した樹脂封止型半導体装置において、前記絶縁性フィルムに複数の貫通孔を形成したことを特徴とする樹脂封止型半導体装置。
【請求項2】前記積層フィルムに形成された前記複数の貫通孔は前記複数のインナーリードが接着される部分を避けて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂封止型半導体装置。」(特許請求の範囲)
(1-2)「この発明では、この種表面実装型の樹脂封止型半導体装置の中でも、所謂、リードオンチップ型半導体装置(以下、単に「LOC」と記す)を対象とする」(段落【0004】)
(1-3)「先ず、このLOCの従来技術の構造を図5乃至図8を用いて簡単に説明し、続いてクラック発生の原因を説明する。
図5は従来技術のLOCの一部パッケージを破断した斜視図であり、図6は図5のAーA線上における断面図であり、そして図7は図5に示したLOCのパッケージを除いた構成部品の分解図であり、図8は図5に示したLOCに使用する絶縁性フィルムの構造を拡大して表した一部斜視図である。
符号1は全体としてLOCを指す。このLOC1は、表面層に電子回路が形成され、これらを外部に接続するためにその表面の中央部において並行して2列に形成された複数の電極3を備えた角型の半導体素子2と、それらの電極3が形成された表面の、その電極3の両側に沿って敷き、固定した状態の絶縁性フィルム4と、これらの絶縁性フィルム4の上から、図6に示したような、複数のインナーリード5、アウターリード6などから構成されたリードフレーム7を接着、固定し、前記複数のインナーリード5の内端部を前記複数の電極3にワイヤ8などで接続し、このような状態の前記アウターリード6部を除いた前記電極3、インナーリード5、ワイヤ8そして半導体素子2全体を封止樹脂9で封止することによりパッケージ9(封止樹脂9と同一の符号を用いる)を形成し、そして最終的にアウターリード6をパッケージ2に沿い、その裏面の方に折り曲げた状態の構造にして構成されている。」(段落【0005】?【0006】)
(1-4)「この発明によれば、電子回路と電極が形成された半導体素子の表面と絶縁性フィルムとで挟まれた接着剤層内の水分が加熱されると、前記絶縁性フィルムの貫通孔を通り抜け、その上層の接着剤層及び封止樹脂(パッケージ)を経て外部に放散されるので、パッケージにクラックが発生し難くなる。」(段落【0010】)
(1-5)「図3に示した第3の実施例は、図8に示した積層状の絶縁性フィルム4に、インナーリード5が接着される部分を除いて、やはり貫通状態の長孔11を規則的に開けた構造に形成した絶縁性フィルム4Cである。」(段落【0014】)
(1-6)「この絶縁性フィルム4Cの長孔11の代わりに、その変形として、図4に図示したように、図8の絶縁性フィルム4の一側縁から切り込み状の長孔11Aを形成して構成してもよい。」(段落【0015】)
(1-7)「これら実施例のいずれかの絶縁性フィルムを、その接着剤層4bで、図7に示したようなリードフレーム7の裏面に貼り、その接着剤層4cで半導体素子2の電極3が形成された表面を貼るようにする。」(段落【0016】)
(1-8)「第3及び第4の実施例の絶縁性フィルム4Cまたは4Dを用いた場合は、複数のインナーリード5が存在する部分の絶縁性フィルムには長孔が開けられていないので、従来通りの絶縁性を保ち、そしてそれ以外の部分には比較的広い面積の孔が開けられているので、前記水蒸気の放散を効果的に行うことができるという特長がある。」(段落【0019】)

(b-3)対比・判断
(i)引用例1には、表面層に電子回路が形成され、これを外部に接続するためにその表面に形成された複数の電極を備えた半導体素子のその表面に、絶縁性フィルムの両面に有機接着剤層を積層した積層フィルムを介して、複数のインナーリード、アウターリードなどから構成されたリードフレームの、前記インナーリードを接着し、前記複数のインナーリードの内端部を前記複数の電極に接続し、前記半導体素子、前記インナーリードの内端部などを封止樹脂で封止することによりパッケージを形成した樹脂封止型半導体装置において、前記絶縁性フィルムに複数の貫通孔を形成した樹脂封止型半導体装置(摘記1-1【請求項1】)が記載され、併せて、前記積層フィルムに形成された前記複数の貫通孔は前記複数のインナーリードが接着される部分を避けて形成されていること(摘記1-1【請求項2】)が記載されている。
(ii)また、引用例1には、上記半導体装置として、リードオンチップ型半導体装置を対象とすること(摘記1-2)が記載されている。
(iii)また、引用例1には、図3と共に、積層状の絶縁性フィルム4に、インナーリード5が接着される部分を除いて、貫通状態の長孔11を規則的に開けた構造に形成した絶縁性フィルム4C(摘記1-5)が記載されている。

以上、(i)?(iii)によれば、引用例1には、
「リード・オン・チップ半導体装置であって:
表面に複数の電極を有する半導体素子;
前記半導体素子表面上に位置する複数のリード;
前記半導体素子と前記複数のリードとの間に配され、前記複数のリードを前記素子の表面に取り付けるための積層フィルムであって、前記複数のリードに対応する領域にのみ配され、前記複数のリード各々の間には配されない前記積層フィルム;
から成ることを特徴とするリード・オン・チップ半導体装置。」
が記載されているといえる。(以下、「引用発明」という。)

そこで、補正発明1と引用発明とを対比すると、(a)引用発明の「半導体装置」は補正発明1の「半導体素子」に、(b)引用発明の「表面」は補正発明1の「活性面」に、(c)引用発明の「電極」は補正発明1の「ボンディング・パッド」に、(d)引用発明の「半導体素子」は補正発明1の「半導体ダイ」に相当する。また、(e)引用発明の「積層フィルム」は、絶縁性フィルムの両面に有機接着剤層を積層した(摘記1-1)ものであるので、補正発明1の「電気絶縁性接着テープ」に相当する。
してみれば、両者は、
「リード・オン・チップ(LOC)半導体素子であって:
活性面に複数のボンディング・パッドを有する半導体ダイ;
前記半導体ダイの活性面上に位置する複数のリード;
前記半導体ダイと前記複数のリードとの間に配され、前記複数のリードを前記ダイの活性面に取り付けるための電気絶縁性接着テープであって、前記複数のリードに対応する領域にのみ配され、前記複数のリード各々の間には配されない前記接着テープ;
から成ることを特徴とするリード・オン・チップ半導体素子。」
の点で一致し、そして、

(イ)補正発明1では、電気絶縁性接着テープは、「複数のリード各々の間には全く配されない」とされているのに対して、引用発明では、「複数のリード各々の間には配されない」ものであり、「全く」との特定がない点、及び、
(ロ)補正発明1では、「前記複数のリードを前記複数のボンディング・パッドに接続する複数のワイヤ・ボンド」のとおり、リードをボンディング・パッドに接続するワイヤ・ボンドに係る特定がなされているのに対して、引用発明では、そのようなワイヤ・ボンドに係る特定がなされていない点、
の各点で相違している。

そこで、これら相違点について、以下検討する。
相違点(イ)について
引用例1には、絶縁性フィルムの貫通孔を、インナーリードが接着される部分を避けて形成すること(摘記1-1【請求項2】)、及び、インナーリードが接着される部分を除いて開けること(摘記1-5)が記載されている。また、同引用例1には、比較的広い面積の孔が開けられることにより、水蒸気の放散を効果的に行うことができること(摘記1-8)が記載されている。
してみれば、貫通孔を大きくすることにより、水蒸気の放散をより効果的に行えることは当業者が容易に想到できることであり、そのために、絶縁性フィルムをリード各々の間に全く配されない様にすることは、当業者が容易に想到できることである。
以上のとおりであるから、相違点(イ)は、当業者が容易になし得たことである。

相違点(ロ)について
引用例1には、従来技術の説明として、リードオンチップ型半導体装置では、複数のインナーリード、アウターリードなどから構成されたリードフレームを接着、固定し、複数のインナーリードの内端部を複数の電極にワイヤなどで接続することが記載されている。そして、前記したと同様、上記「インナーリード」は補正発明1の「リード」に相当し、上記「電極」は補正発明1の「ボンディング・パッド」に相当する。
してみれば、引用発明のリード・オン・チップ半導体装置において、リードとボンディング・バッドとをワイヤ・ボンドして接続することは、リード・オン・チップ半導体装置における常套手段といえ、よって、相違点(ロ)とした点に、格別の困難性があるとはいえない。

以上のとおり、相違点(イ)及び(ロ)は当業者が容易になし得たことであり、また、本願明細書及び図面の記載をみても、上記相違点(イ)及び(ロ)に基く補正発明1の効果は、当業者が予期し得なかったほど格別のものということはできない。
以上のとおりであるから、補正発明1は、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明である。

(b-4)補正についての結論
上記のとおりであるから、補正発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものとはいえず、したがって、補正発明1についての上記補正を含む本補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
(III-1)本願発明
平成16年6月23日付け手続補正書による補正は、上記II欄に記載したとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、上記補正前の、平成16年1月28日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1については次のとおりである。
「【請求項1】リード・オン・チップ(LOC)半導体素子であって:
活性面に複数のボンディング・パッドを有する半導体ダイ;
前記半導体ダイの活性面上に位置する複数のリード;
前記半導体ダイと前記複数のリードとの間に配され、前記複数のリードを前記ダイの活性面に取り付けるための電気絶縁性接着テープであって、前記複数のリードに対応する領域にのみ配され、前記複数のリード各々の間には配されない前記接着テープ;および
前記複数のリードを前記複数のボンディング・パッドに接続する複数のワイヤ・ボンド;
から成ることを特徴とするリード・オン・チップ半導体素子。」
(以下、「本願発明1」という。)

(III-2)原査定で引用された刊行物、及びその記載事実
(1)引用例1:特開平6-151680号公報(原査定の引用文献1)
原査定で引用された刊行物のうち、上記引用例1は、「(b-2)引用例及びその記載事実」欄の引用例1に対応し、その記載事実は同欄に摘記したとおりである。

(III-3)対比・判断
本願発明1について
補正発明1は、半導体素子における「前記複数のリード各々の間には配されない前記接着テープ」について、「前記複数のリード各々の間には全く配されない前記接着テープ」と限定して、本願発明1を減縮した発明であるところ、本願発明1は、当該減縮された点に係る特定がない点で、補正発明1よりも更に広い範囲を包含した発明である。
したがって、本願発明1は、上記II欄で補正発明1について記載したと同様、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

IV.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2006-09-20 
結審通知日 2006-09-26 
審決日 2006-10-12 
出願番号 特願平7-352249
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂本 薫昭  
特許庁審判長 池田 正人
特許庁審判官 大嶋 洋一
川真田 秀男
発明の名称 リード・オン・チップ半導体素子及びその製造方法  
代理人 池内 義明  

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