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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B31F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B31F |
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管理番号 | 1153446 |
審判番号 | 不服2005-20436 |
総通号数 | 88 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-10-21 |
確定日 | 2007-03-07 |
事件の表示 | 平成11年特許願第228410号「段ロール及び段ボール製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月20日出願公開、特開2001- 47533〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成11年8月12日の出願であって、平成17年9月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月21日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成17年10月21日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下決定の結論] 平成17年10月21日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本願の補正は、特許請求の範囲の請求項1を以下のとおりに補正することを含むものである。 「所定のロール軸心間距離を隔てて平行に配置され、ロール軸方向を中心に互いに反対方向に回転可能な一対のロールであって、この一対のロールはそれぞれ、ロール周方向全体に亘って、複数の歯底部と歯先部とからなる歯形を有し、一方のロールの歯形が他方のロールの歯形と噛み合いながら、この一対のロールが回転することにより、中芯が一対のロール間のニップ部に送られ、コルゲーション位置で中芯を波状に成形する段ロールにおいて、 少なくとも一方のロールの歯先部の上面にのみ、ロール軸方向に沿って所定間隔を隔てた窪みが設けられ、 この窪みは、コルゲーション位置において他方のロールの歯底部の下面との間に中芯の厚み以上の間隔を確保するような底面を有し、 それにより、一方のロールの歯先部の上面と他方のロールの歯底部の下面とで挟まれる領域では、中芯に対して圧接荷重が負荷され、一方のロールの窪みと他方のロールの歯底部の下面とで挟まれる領域では、中芯に対する圧接荷重の負荷が回避される、 ことを特徴とする段ロール。」 上記補正は、少なくとも、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「コルゲーション位置において他方のロールの歯底部の下面との間に中芯の厚み以上の間隔を確保するような底面を有する」とあるを「コルゲーション位置において他方のロールの歯底部の下面との間に中芯の厚み以上の間隔を確保するような底面を有し、 それにより、一方のロールの歯先部の上面と他方のロールの歯底部の下面とで挟まれる領域では、中芯に対して圧接荷重が負荷され、一方のロールの窪みと他方のロールの歯底部の下面とで挟まれる領域では、中芯に対する圧接荷重の負荷が回避される」とし、「間隔を確保するような底面」が「一方のロールの歯先部の上面と他方のロールの歯底部の下面とで挟まれる領域では、中芯に対して圧接荷重が負荷され、一方のロールの窪みと他方のロールの歯底部の下面とで挟まれる領域では、中芯に対する圧接荷重の負荷が回避される」という現象を生ずるという技術的事項を付加することにより、さらに限定するものである。 したがって、当該補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項を追加するものではなく、発明の産業上の利用分野を変更するものではなく、かつ、当該補正が発明を解決しようとする課題を変更するものでもないから、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当する。 そこで、本願補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)について、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定する要件について検討する。 (2)原査定の理由に引用された刊行物 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、実願平2-64893号(実開平4-24332号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という)および特開平9-52297号公報(以下、「引用例2」という)には、以下の事項が記載されている。 1)引用例の記載事項 1-1)引用例1の記載事項 a.実用新案登録請求の範囲には、 「表面が波型の下段ロールと、該下段ロールに芯紙とライナーとを介して圧接する圧力ロールとからなるシングルフエーサーにおいて、前記下段ロールの段頂部の長手方向及び/又は前記圧力ロールの表面の長手方向に凸部と凹部とを形成させたことを特徴とするシングルフエーサー。」と記載されている。 b.第2頁17?19行には、 「(考案が解決しようとする課題) コルゲータマシンのシングルフェーサーにおいて、下段ロールと圧力ロールによる貼合は、段頂部に於ける圧力が…略…高圧力で押し付けないと、製品において良好な接着力が得られないとされ、反面圧力が高い為、ライナー表層側にプレスマークが発生し、段ボール製品の強度を低下させるという不具合がある。」と記載されている。 記載事項「a、b」によれば、 引用例1には、 「コルゲータマシンのシングルフェーサーにおいて、下段ロールと圧力ロールによる複数の歯底部と歯先部とからなる噛合いは、段頂部に於ける圧力は、高圧力で押し付けないと、製品において良好な接着力が得られず、反面、高圧力では、ライナー表層側にプレスマークが発生し、段ボール製品の強度を低下させるという相対する不具合を解消するために、表面が波型の下段ロールと、該下段ロールに芯紙とライナーとを介して圧接する圧力ロールとからなるシングルフエーサーにおいて、前記下段ロールの段頂部の長手方向及び/又は前記圧力ロールの表面の長手方向に凸部と凹部とを形成させたことを特徴とするシングルフエーサー」の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されている。 1-2)引用例2の記載事項 c.第【0001】欄には、 「【発明の属する技術分野】この発明は、中芯紙とライナとを貼合わせた片面段ボールを製造する片面段ボール製造装置に関するものである。」と記載されている。」と記載されている。 d.第【0002】欄には、 「【従来の技術】片面段ボール製造装置(所謂シングルフェーサ)は、円周面に夫々波形の段部を形成した第1段ロールおよび第2段ロールが、前記段部において相互に噛合するようフレームに上下の関係で回転自在に配設され、前記第2段ロールにプレスロールが、片面段ボールの原料紙となる中芯紙およびライナを介して圧接されるようになっている。すなわち中芯紙は第1段ロールおよび第2段ロールの間に供給され、両ロール間を通過する際に所要の段部(フルート)が形成される。得られた波形の段頂部には、糊付機構に設けた糊付ロールにより澱粉系の糊料が塗布される。また中芯紙の反対側からプレスロールを経て供給されるライナは、当該プレスロールと第2段ロールとの間で前記中芯紙の段頂部に挟圧され、これら中芯紙とライナとの貼合わせによって片面段ボールが製造される。」と記載されている。 e.第【0005】欄には、 「【発明の目的】この発明は、前述した従来技術に内在している課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、段形成のなされた中芯紙の段頂部の全体に糊料を確実に塗布してライナとの接着を確実に行ない得る片面段ボール製造装置を提供することを目的とする。」と記載されている。 f.第【0006】欄には、 「【課題を解決するための手段】前述した問題点を解決し、所期の目的を好適に達成するため本発明は、外周面に波形段部を形成した第1段ロールと、この波形段部に噛合する波形段部が外周面に形成され、前記第1段ロールとの間に通紙される中芯紙に所要の段形成を行なう第2段ロールと、この第2段ロールの周面に軸方向に所定間隔で形成され、保持手段と協働して第2段ロールの外周面に前記中芯紙を保持するために機能する複数の周溝と、段形成をされて第2段ロールの外周面に沿って送給される前記中芯紙の段頂部に糊付けを行なう糊付機構と、前記第2段ロールの外周面でかつ前記中芯紙に貼合わされるライナの送給経路に近接して配設され、前記第2段ロールの外周面に沿って送給される中芯紙にライナを圧接して貼合わせる圧着手段とを備えた片面段ボール製造装置において、前記第1段ロールにおける第2段ロールの各周溝と対応する周面に周溝を夫々形成したことを特徴とする。」と記載されている。 g.第【0012】欄には、 「【実施例の作用】次に、前述した実施例に係る片面段ボール製造装置の作用につき説明する。前記第1および第2段ロール16,10を回転駆動すると、原紙供給源から第1段ロール16と第2段ロール10との噛合領域へ供給された中芯紙14は、該領域を通過することにより所要の段形成がなされる。このとき、第1段ロール16と第2段ロール10により所要のニップ圧で挟圧された中芯紙14には、主に幅方向に延びが発生し、この延びた部分は圧力の加わらない個所に逃げ込むこととなる。この場合において、第2段ロール10の周面に形成された中芯紙14を吸着保持するために機能する各周溝12と対応する第1段ロール16の周面には、図2および図3に示すように周溝30が夫々形成されているから、中芯紙14の延びた部分は両周溝30,12に分散して逃げ込むこととなる。すなわち、従来のように第2段ロール10の周溝12側にのみ、中芯紙14の延びた部分が全て逃げ込むことにより生ずる凹部14aに比べて、周溝30または周溝12側に凹状となる量は極く僅かとなる。」と記載されている。 記載事項「c?g」によれば、 引用例2には、「第1段ロールにおける第2段ロールの各周溝と対応する周面に両ロールの溝が中芯紙よりも深い周溝を夫々形成したことにより、図2および図3に示すように周溝30が夫々形成されているから、中芯紙14の延びた部分は両周溝30,12に分散して逃げ込むこととなる。すなわち、従来のように第2段ロール10の周溝12側にのみ、中芯紙14の延びた部分が全て逃げ込むことにより生ずる凹部14aに比べて、周溝30または周溝12側に凹状となる量は極く僅かとした、中芯紙とライナとを貼合わせた片面段ボールを製造する片面段ボール製造装置」の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されている (3)対比・判断 (3-1)本願補正発明と引用発明1とを対比すると、 引用発明1の、「下段ロールと圧力」、「歯底部」、「歯先部」、「ライナー」、「コルゲータマシン」、「圧力ロールの表面の長手方向」、「凹部」は、本願補正発明の、「一対のロール」、「歯底部」、「歯先部」、「中芯」、「コルゲーション位置で中芯を波状に成形すること」、「歯先部の上面」、「所定間隔を隔てた窪み」に相当する。 したがって、両者は、「所定のロール軸心間距離を隔てて平行に配置され、ロール軸方向を中心に互いに反対方向に回転可能な一対のロールであって、この一対のロールはそれぞれ、ロール周方向全体に亘って、複数の歯底部と歯先部とからなる歯形を有し、一方のロールの歯形が他方のロールの歯形と噛み合いながら、この一対のロールが回転することにより、中芯が一対のロール間のニップ部に送られ、コルゲーション位置で中芯を波状に成形する段ロールにおいて、 少なくとも一方のロールの歯先部の上面にのみ、ロール軸方向に沿って所定間隔を隔てた窪みが設けられたことを特徴とする段ロール。」で一致し、 以下の点で相違している。 相違点1:本願補正発明では、「少なくとも一方のロールの歯先部の上面にのみ、ロール軸方向に沿って所定間隔を隔てた窪みが設けられた窪みが、コルゲーション位置において他方のロールの歯底部の下面との間に中芯の厚み以上の間隔を確保するような底面を有する」ことにより、「一方のロールの歯先部の上面と他方のロールの歯底部の下面とで挟まれる領域では、中芯に対して圧接荷重が負荷され、一方のロールの窪みと他方のロールの歯底部の下面とで挟まれる領域では、中芯に対する圧接荷重の負荷が回避される」のに対し、引用発明1にはその記載がない点。 以下、相違点について検討する。 相違点1について、 引用発明2には、「第1段ロールにおける第2段ロールの各周溝と対応する周面に両ロールの溝が中芯紙よりも深い周溝を夫々形成したことにより…略…第2段ロール10の周溝12側にのみ、中芯紙14の延びた部分が全て逃げ込むことにより生ずる凹部14aに比べて、周溝30または周溝12側に凹状となる量は極く僅かとした」ことが記載されており、この深さは、圧接加重の付加が回避されることに相当するから、この点は当業者が適宜選択しうる設計上の選択にすぎないものである。 よって、本願の補正発明は、その出願前に国内において頒布された引用発明1、2に基づいてその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本願補正発明は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下をすべきものである。 3.本願発明について 平成17年10月21日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成17年6月24日付け手続補正書に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「所定のロール軸心間距離を隔てて平行に配置され、ロール軸方向を中心に互いに反対方向に回転可能な一対のロールであって、この一対のロールはそれぞれ、ロール周方向全体に亘って、複数の歯底部と歯先部とからなる歯形を有し、一方のロールの歯形が他方のロールの歯形と噛み合いながら、この一対のロールが回転することにより、中芯が一対のロール間のニップ部に送られ、コルゲーション位置で中芯を波状に成形する段ロールにおいて、 少なくとも一方のロールの歯先部の上面にのみ、ロール軸方向に沿って所定間隔を隔てた窪みが設けられ、 この窪みは、コルゲーション位置において他方のロールの歯底部の下面との間に中芯の厚み以上の間隔を確保するような底面を有することを特徴とする段ロール。」 (1)引用例およびその記載事項 原査定の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願補正発明1は「2.(1)」で認定したように、前記「2.(3)」で検討した本願発明に対し、技術的事項を付加することにより、さらに限定したものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべてを含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり引用発明1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 それ故本願出願は、請求項2?8に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-01-04 |
結審通知日 | 2007-01-09 |
審決日 | 2007-01-22 |
出願番号 | 特願平11-228410 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B31F)
P 1 8・ 121- Z (B31F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山崎 勝司 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
中西 一友 石田 宏之 |
発明の名称 | 段ロール及び段ボール製造装置 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 箱田 篤 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 熊倉 禎男 |