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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B23Q
管理番号 1154153
審判番号 不服2005-1926  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-04 
確定日 2007-03-12 
事件の表示 特願2001-249976「長尺薄肉形材の加工装置と加工設備」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月15日出願公開、特開2002-301631〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成13年8月21日(優先権主張平成12年12月26日)の特許出願であって、同16年5月24日に手続補正がなされ、同年12月22日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同17年2月4日に本件審判の請求がなされ、同年3月3日に手続補正がなされたものである。

第2.平成17年3月3日付けの補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年3月3日付けの補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(1)補正前
「断面形状が一定または長さ方向に間隔を隔てた箇所に同一断面形状を有する長尺薄肉形材(1)を同一断面形状の2箇所で水平に保持する長尺薄肉形材クランプ装置(10)を備え、
該長尺薄肉形材クランプ装置(10)は、同一の挟持装置(12)を備えた駆動クランプ装置(10A)と従動クランプ装置(10B)とからなり、
前記挟持装置(12)は、前記水平軸Oを中心に回転可能に支持された内面が円筒形の中空リング(13)と、該中空リングの内面に取付けられ前記水平軸に平行でありかつ互いに交差する2平面を有する交差平面部材(14)と、該交差平面部材と対向する位置の中空リング内に設けられ、交差平面部材に向けて直径方向に直動されかつ水平軸Oに平行な軸を中心に自由に揺動する単一の挟持ヘッド(15)とを有し、
駆動クランプ装置は長尺薄肉形材の長さ方向に延びる水平軸Oを中心に長尺薄肉形材を回転駆動し、従動クランプ装置は前記水平軸を中心に長尺薄肉形材に従動して空転する、ことを特徴とする長尺薄肉形材の加工装置。」

(2)補正後
「断面形状が一定または長さ方向に間隔を隔てた箇所に同一断面形状を有する長尺薄肉形材(1)を同一断面形状の2箇所で水平に保持する長尺薄肉形材クランプ装置(10)を備え、該長尺薄肉形材クランプ装置(10)は、同一の挟持装置(12)を備えた駆動クランプ装置(10A)と従動クランプ装置(10B)とからなり、
前記挟持装置(12)は、前記水平軸Oを中心に回転可能に支持された内面が円筒形の中空リング(13)と、該中空リングの内面に取付けられ前記水平軸に平行でありかつ互いに交差し基本姿勢においてV字の頂点が下方を向く2平面を有する交差平面部材(14)と、該交差平面部材と対向する位置の中空リング内に設けられ、交差平面部材の交差部に向けて直径方向に直動されかつ水平軸Oに平行な軸を中心に自由に揺動する単一の挟持ヘッド(15)と有し、
駆動クランプ装置は長尺薄肉形材の長さ方向に延びる水平軸Oを中心に長尺薄肉形材を回転駆動し、
従動クランプ装置は前記水平軸を中心に長尺薄肉形材に従動して空転する、ことを特徴とする長尺薄肉形材の加工装置。」

ここで補正前の請求項1の第6行、補正後の請求項1の第6行に、「前記水平軸」とあるが、それぞれ当該記載以前に「水平軸」はないことから、当該「前記水平軸」は「水平軸」の誤記と認める。

2.補正の適否
本件補正の特許請求の範囲の請求項1についての補正は、「交差平面部材」についての事項、「挟持ヘッド」についての事項を追加するものであり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、誤記を訂正した上で、上記1.(2)のとおりのものと認める。

(2)刊行物に記載された発明
これに対し、原査定の拒絶の理由として引用された本件優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-156651号公報には、以下の事項が記載されている。

ア.第2ページ第2欄第27?29行
「この発明は、被加工物を加工する際に、被加工物を固定しておくための方法とこのような固定方法による固定装置に関する。」

イ.第2ページ第2欄第42?47行
「建材に用いるアルミ合金の押し出し成形材は、多くが断面形状において水平部分と垂直部分の組み合わせであるが、断面全体の形状は対称性に乏しい。このような長尺材(被加工物)を水平面に自然に載置すると、バランスの関係から水平や垂直の面が斜めになった状態で安定することが多い。」

ウ.第4ページ第5欄第25?30行
「本クランパーと補助クランパーを選択して個別に作動可能とすることがある。すなわち、場合によっては、本クランパー又は補助クランパーだけで位置決めと固定の十分なことがあり、この構成を採用すると、固定装置の無駄な作動を抑制して段取り時間を削減することができる。」

エ.第5ページ第8欄第2?5行
「図8は、長尺材(被加工物)の加工装置1を示し、クランパーの押圧部を風船としている第5の実施形態例である。機台2上に配置した2基の固定装置3,3と工作機4を備えている。」

オ.第5ページ第8欄第20行?第6ページ第9欄第7行
「固定装置3は、機枠7と回転体8を備え、機枠7に取り付けたスライダー9でレール6に沿って移動可能としてある。・・・
機枠7は、XZ面に平行な2枚の基板10を間隔をとって有し、回転体8は同様にXZ面に平行な2枚の回転盤11を備える。機枠7及び回転体8ともにY軸方向から見てX方向の前方(作業者側)の約1/4と中心部を矩形に切欠いている(切欠き部11a)。・・・
回転体8は、基板10の切り抜き丸孔に形成した環状レール12に回転盤11の周縁に形成した溝13を嵌合することによって、機枠7に対して回転可能としてある。2枚の回転盤11は一体的に剛体に結合してあり、これらの間に受け台14、第1クランパー15、第2クランパー16、受け台14の引き寄せ装置17及び回転盤11の駆動装置18を備え付けてある。
受け台14は、交差部Pで交わるX方向に平らな受け面14aとY方向に平らな受け面14bを有し、・・・第1のクランパー15は、本クランパー15aと補助クランパー15bからなり、また、第2のクランパー16も同様に本クランパー16aと補助クランパー16bで構成してある。
そして、第1のクランパー15の本クランパー15a及び補助クランパー15bはそれぞれに押圧部20a,20bを備え、ともにそれぞれのエアアクチュエーターによって、受け台14のXY面に平行な受け面14aに対してほぼ直交する方向に進退する。本クランパー15aの押圧部20aは、硬質ポリエチレンで形成してあるが、補助クランパー15bの押圧部20bは厚手のクロロプレンゴムで形成した丈夫な風船としてある。」

カ.第6ページ第9欄第20?23行
「この実施形態においては、補助クランパー15b,16bにおける押圧部20b,21bの突出方向を受け面14a,14bの交差部Pに向かう方向となるように角度的に少しシフトしている。」

ここで、上記イ、オの記載と図7、図8を考慮すると、押し出し成形材は、同一断面形状の2箇所で固定装置3により水平に保持され、固定装置3は水平軸を中心に回転可能に支持された内面が切り欠き円筒形の回転体8を有することが明らかである。
また、回転体8と受け台14と補助クランパー15bとは、その機能からみて、挟持装置に相当する。

これらの記載事項を、図面を参照しつつ、技術常識を考慮しながら補正発明に照らして整理すると、上記公報には以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されていると認める。
「建材に用いるアルミ合金の押し出し成形材を、同一断面形状の2箇所で水平に保持する押し出し成形材固定装置を備え、該固定装置は2つの挟持装置からなり、
前記挟持装置は、水平軸を中心に回転可能に支持された内面が切り欠き円筒形の回転体と、該回転体の内面に取付けられ前記水平軸に平行でありかつ交差部Pで交わる2受け面を有する受け台と、該受け台と対向する位置の回転体内に設けられ、受け台の交差部に向けて直径方向に直動されるゴム風船からなる補助クランパーを有し、
前記固定装置は押し出し成形材の長さ方向に延びる水平軸を中心に押し出し成形材を回転駆動する長尺薄肉形材の加工装置。」

(3)対比
補正発明と刊行物発明とを対比する。
刊行物発明の「建材に用いるアルミ合金の押し出し成形材」、「固定装置」、「交差部Pで交わる」、「2受け面を有する受け台」は、それぞれ、その機能からみて、補正発明の「断面形状が一定または長さ方向に間隔を隔てた箇所に同一断面形状を有する長尺薄肉形材」、「クランプ装置」、「互いに交差し」、「2平面を有する交差平面部材」に相当する。
また、刊行物発明の「固定装置は2つの挟持装置からなり」と、補正発明の「長尺薄肉形材クランプ装置は、同一の挟持装置を備えた駆動クランプ装置と従動クランプ装置とからなり」とは、「長尺薄肉形材クランプ装置は、2つの挟持装置からなり」である限りにおいて一致し、刊行物発明の「内面が切り欠き円筒形の回転体」と、補正発明の「内面が円筒形の中空リング」とは、「内面が略円筒形の中空輪状部材」である限りにおいて一致し、刊行物発明の「ゴム風船からなる補助クランパー」と、補正発明の「水平軸Oに平行な軸を中心に自由に揺動する単一の挟持ヘッド」とは、「挟持部材」である限りにおいて一致する。
したがって、両者は、次の点で一致している。

「断面形状が一定または長さ方向に間隔を隔てた箇所に同一断面形状を有する長尺薄肉形材を、同一断面形状の2箇所で水平に保持する長尺薄肉形材クランプ装置を備え、該長尺薄肉形材クランプ装置は、2つの挟持装置からなり、
前記挟持装置は、水平軸を中心に回転可能に支持された内面が略円筒形の中空輪状部材と、該中空輪状部材の内面に取付けられ前記水平軸に平行でありかつ互いに交差し2平面を有する交差平面部材と、該交差平面部材と対向する位置の中空輪状部材内に設けられ、交差平面部材の交差部に向けて直径方向に直動される挟持部材を有する押し出し成形材の加工装置。」

そして、補正発明と刊行物発明とは、以下の点で相違している。
(相違点1)2つの挟持装置からなるクランプ装置が、補正発明は、同一の挟持装置を備えた駆動クランプ装置と従動クランプ装置とからなり、駆動クランプ装置は長尺薄肉形材の長さ方向に延びる水平軸Oを中心に長尺薄肉形材を回転駆動し、従動クランプ装置は前記水平軸を中心に長尺薄肉形材に従動して空転するものであるが、刊行物発明は、クランプ装置が2つとも回転駆動するものである点。
(相違点2)内面が略円筒形の中空輪状部材が、補正発明は、内面が円筒形の中空リングであり、中空リング内の交差平面部材が基本姿勢においてV字の頂点が下方を向くが、刊行物発明は、内面が切り欠き円筒形の回転体であり、交差平面部材の頂点が下方を向くものではない点。
(相違点3)挟持部材が、補正発明は、水平軸Oに平行な軸を中心に自由に揺動する単一の挟持ヘッドであるが、刊行物発明は、ゴム風船からなり揺動するものではない点。

(4)相違点の検討
相違点1について検討する。
長尺部材を2点で支持する装置において、一方の支持部材を駆動回転可能とし、他方を従動回転可能とするものは周知である(例えば、実開昭56-67932号に係る全文マイクロフイルムの第9ページ第16?19行、米国特許第3521875号明細書第4欄第62?67行)。
そして、駆動機構が一つで十分であれば、機構の単純化、装置のコスト低減という一般的課題を踏まえて、刊行物発明において、周知技術を考慮し、2つの挟持装置からなるクランプ装置の一方を駆動クランプ装置とし、他方を従動クランプ装置とすることは、設計的事項にすぎない。

相違点2について検討する。
内部に長尺部材が挿入され、円筒部に切り欠きのない保持部材により、回転支持可能とするものは周知である(例えば、特開平5-237653号公報、実開昭56-67932号に係る全文マイクロフイルム、米国特許第3521875号明細書)。
切り欠きをなくすことにより、360度回転が可能となり、加工の利便性が高まることは明らかであるから、刊行物発明に周知技術を適用し、円筒形の中空リングとすることに困難性は認められない。
交差平面部材が基本姿勢においてV字の頂点が下方を向く点については、物品を載置する場合に、V字の頂点が下方を向くような載置部材は周知であり(例えば、特開平5-237653号公報、特開平7-227723号公報、特開昭63-288635号公報)、これにより載置の安定性が向上することは明らかである。
したがって、載置の安定性向上のため、刊行物発明に周知技術を適用し、V字の頂点が下方を向くようにすることに困難性は認められない。

相違点3について検討する。
揺動可能とした挟持部材は周知である(例えば、特開昭59-227342号公報の第3ページ右上欄第11?14行、実開平3-15040号に係る全文マイクロフイルムの第8ページ)。
かかる揺動可能とした挟持部材は、刊行物発明のゴム風船からなるクランプと比較すると、形状合致性は劣るが、クランプ強度が高まることは明らかである。
したがって、この点は、目的に応じて適宜選択しうる設計的事項にすぎない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別の作用効果が生じるとは認められない。
なお、平成18年10月10日の回答書において、請求人は、アルミサッシならではの加工の特徴に関連しての優位な効果を主張するが、「アルミサッシならではの加工」であることは、補正発明の請求項1に記載されていないことから、請求項の記載に基づかない主張である。
また、請求人は、V字の交差平面部材と、揺動する挟持ヘッドによる優位な効果を主張するが、いずれも保持安定性向上のためであり、予測しうる効果にすぎず、格別なものとは認められない。
よって、補正発明は、刊行物発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本件発明について
1.本件発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項に係る発明は、平成16年5月24日に補正された明細書及び図面の記載からみて、誤記を訂正した上で、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示す請求項1に記載されたとおりである。

2.刊行物等
これに対して、原査定の際にあげられた刊行物及びその記載内容は、上記第2.2.(2)に示したとおりである。

3.対比・検討
本件発明は、上記第2.2.で検討した補正発明において、「交差平面部材」についての事項、「挟持ヘッド」についての事項を削除するものである。
そうすると、本件発明を特定する事項のすべてを含み、さらに他の事項を付加する補正発明が、上記第2.2.(4)で示したとおり、刊行物発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-18 
結審通知日 2007-01-19 
審決日 2007-01-30 
出願番号 特願2001-249976(P2001-249976)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B23Q)
P 1 8・ 575- Z (B23Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 泰二郎岡野 卓也田村 嘉章  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 菅澤 洋二
加藤 昌人
発明の名称 長尺薄肉形材の加工装置と加工設備  
代理人 堀田 実  
代理人 堀田 実  
代理人 堀田 実  

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