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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28D |
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管理番号 | 1154154 |
審判番号 | 不服2005-13583 |
総通号数 | 89 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-07-14 |
確定日 | 2007-03-12 |
事件の表示 | 平成10年特許願第202388号「冷却ユニットおよび冷却構造」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月 2日出願公開、特開2000- 35291〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1. 手続の経緯・本願発明 本願は,平成10年7月17日の出願であって,その請求項1ないし3に係る発明は,平成17年8月25日付け,平成17年8月10日付け及び平成17年4月27日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて,それぞれ特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】携帯型パソコンなどに搭載される冷却ユニットであって、前記冷却ユニットは遠心ファンとダクトとヒートパイプとフィンとを備え、遠心ファンの送風口側に設けられたダクト内にその送風方向に沿って複数のフィンが並列して設けられ、ヒートパイプの放熱部が前記ダクトの幅方向全体に配置され、複数の前記フィンに突き刺すようにヒートパイプの放熱部が取り付けられている、冷却ユニット。 【請求項2】前記ヒートパイプの吸熱部には、冷却すべき発熱部品が熱的な接続をされている、請求項1記載の冷却ユニットを用いた冷却構造。 【請求項3】前記ダクトを前記発熱部品が収容される電機機器の筐体に取り付けてなる、請求項2記載の冷却構造。」 なお,平成17年8月25日付け及び平成17年8月10日付け手続補正は,請求項1の「前記ダクトの長さ方向全体」なる記載を「前記ダクトの幅方向全体」とするものであって,特許法17条の2第4項第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。 2. 引用例に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された,本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-51170号公報(以下,「引用例1」という。)及び特開平4-287350号公報(以下,「引用例2」という。)には,それぞれ図面と共に以下の記載がある。 [刊行物1について] 1a. 「【発明の属する技術分野】本発明は、冷却装置に関し、特に、ノートブック型パーソナルコンピュータ等の筐体内に収納される半導体素子や電子機器等の発熱部品を冷却するための冷却装置に関する。」(段落【0001】) 1b. 「本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、塵や埃が混入するおそれがなく、筐体内に収納される半導体素子や電子機器等の発熱部品を効果的に冷却することができる冷却装置を提供することを目的とする。」(段落【0010】) 1c. 「図1及び図2に示すように、本発明の第1の形態の冷却装置Aは、略L字状に形成された放熱板1と、放熱板1に設けられた伝熱ダクト2と、その伝熱ダクト2内に設置されるファン3と、放熱板1に連結されるヒートパイプ4と、を有する。 ・・・。 伝熱ダクト2は、熱伝導性の優れた金属板で作られており、ファン3によって伝熱ダクト2内に空気を吸入するための吸入口2aと、その吸入した空気を外部に排出するための排出口2bとを備えている。伝熱ダクト2は、放熱板1の他方側の面に締結具2cを介して連結されている。 ファン3は、伝熱ダクト2の吸入口2a近傍に設置され、放熱板1、ヒートパイプ4及び伝熱ダクト2を介して伝導された熱を、吸入された温度の低い空気とともに外部に排出する。 ヒートパイプ4は、両端部が密閉された金属管内に作動液を減圧して封入したものであり、発熱部品5側から伝熱ダクト2側に略L字状に延びて形成され、支持具4aによって放熱板1に連結されている。 」(段落【0017】ないし【0021】) 1d. 「本発明の冷却装置Aによれば、発熱部品5から発生した熱は、放熱板1及びヒートパイプ4を介して、伝熱ダクト2に伝導され、ファン3の回転によって伝熱ダクト2の吸入口2aに吸入された温度の低い空気とともに、排出口2bから外部に排出される。」(段落【0022】) 1e. 「図3は、本発明に係る第2の形態の冷却装置の構成を示す斜視図である。図3に示すように、この冷却装置Bは、伝熱ダクト2の内面の排出口2b側に複数のフィン7が垂直方向に並んで設けられているので、伝熱ダクト2内の放熱面積を増大させることができ、より高い冷却効果を得ることができる。」(段落【0028】中) また,図3には,伝熱ダクト2の内面の排出口2b側に設けられた複数のフィン7が,ファン3の送風方向に沿って並列して設けられている点が明示されている。 更に,記載事項1cないし1e及び図1ないし図3を参照すると,伝熱ダクト2の送風方向に沿った外側部に支持具4aによって取り付けられたヒートパイプ部分は,ヒートパイプの放熱部であると認められる。 したがって,引用例1には,次の発明(以下,「引用例1の発明」という。)が記載されている。 ノートブック型パーソナルコンピュータ等の筺体内に収納される半導体素子や電子機器等の発熱部品を冷却する冷却装置であって、前記冷却装置はファン3と伝熱ダクト2とヒートパイプ4とフィン7とを備え、伝熱ダクト2の内面の排出口2b側に,複数のフィン7が前記ファン3の送風方向に沿って並列して設けられ,ヒートパイプの放熱部が前記伝熱ダクト2の送風方向に沿った外側部に配置され,支持具4aによって取り付けられている冷却装置。 [刊行物2について] 2a. 「【産業上の利用分野】本発明は、半導体素子やその他発熱体の冷却を行う冷却装置に関する。」(段落【0001】) 2b. 「本発明は以上の課題を解決するためになされたもので、半導体素子等の発熱体から熱を効率的に逃がすことができる高性能な冷却装置を提供することを目的としている。」(段落【0006】) 2c. 「【請求項1】少なくとも一部が発熱体に熱的に取り付けられ、冷媒を封入しヒートパイプ本体を構成する中空容器と、この中空容器に連通し前記ヒートパイプの一部を構成する中空のチューブおよびこのチューブに熱的に接続されるフィンからなるフィンチューブ型熱交換器と、を備え、前記フィンチューブ型熱交換器を前記ヒートパイプの放熱部として構成したことを特徴とする冷却装置。 【請求項2】前記フィンチューブ型熱交換器を含む冷却装置全体を前記発熱体が実装される基板と基板との間の空間に配置し、この空間に冷却用気体を供給する手段を設け、前記フィンの前記冷却用気体の通り抜ける方向と前記基板の平面の方向とをほぼ平行に設定したことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。」(【請求項1】,【請求項2】) 2d. 「請求項2の冷却装置にあっては、半導体素子の実装された基板に平行な空気の流れによる冷却をおこなうことにより,従来ひとつひとつの素子にフィンを取り付けて冷却を行っていた場合と同様の筐体内の冷却空気流路構成で冷却を行うことができるる。また、半導体素子および冷却装置を載せた基板をそのまま筐体内に設けられたスロット内に実装して用いることができ、フィンに送られる空気の利用の効率を基板間の隙間をほとんどフィンで埋めることにより高めることができる。」(段落【0011】) 2e. 「【実施例】以下この発明の実施例を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施例に係わる冷却装置の一実施例を示す概略の断面図である。 基板2上に半導体素子1が載置されている。半導体素子1から発生した熱は中空容器3内の冷媒4に伝えられ、冷媒4の相変化(例えば液体から気体)によりフィン5に伝えられ、空気中へ発散される。 ・・・。 本明細書では、このようなフィン5に予め熱的に接続される中空のチューブを備えたもののことをフィンチューブ型熱交換器10と称するが、このフィンチューブ型熱交換器10は、空調用熱交換器(エアコンの熱交換器に用いられるようなもの)と同様なものである。そして、フィンチューブ型熱交換器10のフィン5に熱的に一体的に取り付けられているチューブ9は、本発明では、ヒートパイプの一部として利用し、中空容器3と連通させて固定し、チューブ9内に冷媒が通流するように構成している。・・・。本発明の冷却装置の第2の特徴は、基板2と冷却装置の配置関係にある。 すなわち、図1に示すようにフィン5に対する冷却気体(例えばエアー)が通り抜ける方向と半導体素子1を実装する基板2とがほぼ平行に設置されている。そして、スロットに複数枚並べられた基板2同士の間に形成される空間をダクト状の冷却流体流路7として利用している。そして、このダクト状の冷却気体流路7の空間内に、本発明のフィン5が収まるように配置して冷却気体が効率よくフィン5に当たる。このようにフィン5が実装された冷却装置で基板2同士の間の空間をほぼ埋め、基板2をダクト壁として用いることにより高い冷却能力が得られる.また、中空容器3内の吸熱部の内面に微細な沸騰用フィン6を形成して、吸熱面積の増大を図り冷却効率のさらなる向上を達成しても良い。」(段落【0013】ないし段落【0017】) また,記載事項2e,特に「半導体素子1から発生した熱は中空容器3内の冷媒4に伝えられ、冷媒4の相変化(例えば液体から気体)によりフィン5に伝えられ、」の記載からみて,フィン5に熱的に一体的に取り付けられているチューブ9がヒートパイプの放熱部であることは明らかである。 更に,図1及び図3には,チューブ9が,ヒートパイプ本体を構成する中空容器3から直角方向に形成されて,冷却気体流路7の幅方向のほぼ全体に配置されている点,及び,前記チューブ9には,複数のフィン5が突き刺すように取り付けられ,前記複数のフィン5が前記冷却気体流路7の送風方向に沿って並列して配置されている点が明示されている。 したがって,引用例2には,次の発明(以下,「引用例2の発明」という。)が記載されている。 筺体内に収納される半導体素子やその他発熱体の冷却を行う冷却装置において,半導体素子を実装した基板2同士の間に形成される空間をダクト状の冷却気体流路7とし,ヒートパイプの放熱部であるチューブ9を,ヒートパイプ本体を構成する中空容器3から直角方向に形成して,前記冷却気体流路7の幅方向のほぼ全体に配置し,また,前記チューブ9に複数のフィン5を突き刺すように取り付けて,前記複数のフィン5を前記冷却気体流路7の送風方向に沿って並列して配置し,高い冷却能力を得るようにしたこと。 3. 対比,一致点・相違点 本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)と引用例1の発明とを対比すると,引用例1の発明の「ノートブック型パーソナルコンピュータ」及び「冷却装置」は,本願発明の「携帯型パソコン」及び「冷却ユニット」に相当する。 また,引用例1の発明の「ファン3」は,伝熱ダクト2内の特に排出口2bに対する設置形態からみて,「遠心ファン」といえることから,引用例1の発明の「ファン3及び伝熱ダクト2」は,本願発明の「遠心ファン」に相当する。 したがって,両発明は, 携帯型パソコンなどに搭載される冷却ユニットであって,前記冷却ユニットは遠心ファンとヒートパイプとフィンとを備え,遠心ファンの送風方向に沿って複数のフィンが並列して設けられた冷却ユニットの点で一致し,次の点で相違する。 [相違点] 本願発明では,冷却ユニットは,遠心ファンとヒートパイプとフィンとに加えてダクトを備え,前記ダクトは,遠心ファンの送風口側に設けられ,複数のフィンが前記ダクト内に設けられ,また,ヒートパイプの放熱部が,前記ダクトの幅方向全体に配置され,複数の前記フィンに突き刺すように取り付けられているのに対して,引用例1の発明では,冷却ユニットはダクトを備えず,複数のフィンは,伝熱ダクト2の内面の排出口側に設けられ,また,ヒートパイプの放熱部が前記伝熱ダクト2の送風方向に沿った外側部に配置され,支持具4aによって取り付けられている点。 4. 相違点についての検討 引用例1の発明において,複数のフィンを,伝熱ダクト2の内面の排出口側に設けることに代えて,遠心ファンの排出口側,すなわち送風口側にダクトを設け,このダクト内に設けることは,当業者が適宜なし得た設計事項である。 また,引用例2には,筺体内に収納される半導体素子やその他発熱体の冷却を行う冷却装置において,半導体素子を実装した基板2同士の間に形成される空間をダクト状の冷却気体流路7とし,ヒートパイプの放熱部であるチューブ9をヒートパイプ本体を構成する中空容器3から直角方向に形成して,前記冷却気体流路7の幅方向のほぼ全体に配置し,前記チューブ9に複数のフィン5を突き刺すように取り付けて,前記複数のフィン5を前記冷却気体流路7の送風方向に沿って並列して配置し,高い冷却能力を得るようにした点が記載されている(引用例2の発明参照)。 そして,引用例2の発明は,筐体内に収納される半導体素子や電子機器等の発熱部品を冷却する冷却装置という発明の属する技術分野のみならず(記載事項2a,記載事項1a参照),解決すべき課題においても(記載事項2b,記載事項1b参照),引用例1の発明と共通するものである。 したがって,引用例1の発明において,遠心ファンの排出口側,すなわち送風口側にダクトを設け,このダクト内に複数のフィンを設け,また,引用例2の発明を参照して,ヒ-トパイプを延長・屈曲し,その放熱部をダクト内に位置させることにより,上記相違点における本願発明の構成を採用することは当業者が容易に想到し得たことである。 そして,本願発明の効果は,引用例1及び2の発明から予測し得た程度のものであって,格別なものではない。 5. むすび したがって,本願発明は,引用例1及び2の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-01-09 |
結審通知日 | 2007-01-12 |
審決日 | 2007-01-26 |
出願番号 | 特願平10-202388 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F28D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 上原 徹、丸山 英行 |
特許庁審判長 |
水谷 万司 |
特許庁審判官 |
岡本 昌直 会田 博行 |
発明の名称 | 冷却ユニットおよび冷却構造 |