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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680178 審決 特許
無効200680169 審決 特許
無効200680021 審決 特許
無効2010800100 審決 特許
無効200335239 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61K
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1154177
審判番号 無効2006-80053  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-03-30 
確定日 2007-03-12 
事件の表示 上記当事者間の特許第3329818号発明「非揮発性オルガノポリシロキサンと、ホモポリマータイプまたはアクリルアミドとのコポリマーのタイプのメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマーとを基体とする水性分散液の香粧品中での使用または局所的適用」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第3329818号の請求項1に係る発明についての出願は、平成6年(1994年)3月15日(パリ条約に基づく優先権主張 1993年3月16日、仏国)を国際出願日とする出願であって、平成14年7月19日に特許の設定登録がされた。
(2)これに対して特許異議の申立があり、異議2003-70806号として審理され、平成15年6月13日付けで「特許第3329818号の請求項1に係る特許を維持する」との決定がされた。

2.本件発明
本件発明は、特許明細書の請求項1に記載された下記のとおりのものである。
「【請求項1】オルガノポリシロキサンと架橋ポリマーを含む、毛髪あるいは皮膚処理用の水性分散液の化粧品または皮膚科学的組成物であって、
該分散液には、香粧品または生理学的に許容可能な水性媒体に、
ポリアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、変性または未変性ポリシロキサン、シリコーンゴムおよびレジン、ならびにポリエチレンオキシ基および(または)ポリプロピレンオキシ基またはカルボン酸基もしくは重亜硫酸基を有するポリシロキサンを除く有機変性ポリシロキサンから選ばれた少なくとも1つの
非揮発性オルガノポリシロキサンと、
ホモポリマータイプまたはアクリルアミドとのコポリマータイプの
メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマーとを少なくとも含有し、但し、
下記の組成物(1)乃至(2)、即ち、
組成物(1)
・架橋メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドホモポリマーまたはアクリルアミドとのコポリマー/鉱物油、および
・85%の5cstジメチル流体/15%のジメチコノール、
組成物(2)
・架橋メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドホモポリマーまたはアクリルアミドとのコポリマー/鉱物油、
・85%の5cstジメチル流体/15%のジメチコノール、および
・ジメチコン200、
を除く、上記化粧品または皮膚用組成物。」(以下、本件発明という。)

3.請求人の主張

請求人は、下記の理由を挙げて本件請求項1に係る発明の特許は無効とすべきである旨主張し、甲第1号証?甲第7号証及び参考資料1?3を提出している。

(1)本件請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物である甲第1号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、本件発明の特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。(以下、無効理由1という。)
(2)本件明細書の記載に不備があるから、本件発明の特許は、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであって、特許法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきである。(以下、無効理由2という。)

4.被請求人の主張

これに対し、被請求人は乙第1号証?乙3号証を提出し、請求人が主張する無効理由はない旨主張している。

5.刊行物等の記載事項

請求人が提出した甲第1号証?甲第7号証には、以下の事項が記載されている。

(1)甲第1号証「米国特許第4331167号明細書」

(1-ア)「(a)ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサンから選ばれる、沸点範囲が100?190℃であるメチルポリシロキサン、及び/又は沸点範囲が100?190℃である液状のパラフィン及び/又は液状のイソパラフィン
(b)カチオン性で非界面活性の化合物
(c)0.02?3.0重量%の両性で界面活性のイミダゾリン化合物
からなる、毛髪をカーラーに巻きパーマネントウエーブ処理する前に毛髪に使用するための組成物」(claim 1)

(1-イ)「表面不活性なカチオン性化合物が、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート(ジメチルサルフエートで75%まで4級化された)、80%ビニルピロリドン/20%ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物(部分的に4級化された)及びポリアクリルジメチルアミノエチルアンモニウムクロライドから選ばれるclaim 1の組成物」(claim 3)

(1-ウ)「ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルサルフエートで75%まで4級化されたジメチルアミノエチルメタクリレートのホモポリマー、水を含む組成物の例」(4欄、Example 1)

(1-エ)「この処理剤の特徴的な効果は、実質的に櫛のとおりがよいという点、束に分けやすいという点、並びにカーラーに巻きやすいという点にある。さらに、毛髪の先端に対するパーマ処理剤の作用を和らげることができ、それによって根元から先端まで一様なウエーブを可能にする。このパーマネントウエーブは、毛髪を比較的柔かく、比較的自然な状態で、比較的光沢があり、弾力があり、そして比較的良好なスタイリングができるようにする。」(4欄6?16行)

(2)甲第2号証「特開昭63-57512号公報」

(2-ア)「一般式(I)<式省略>で示される第4級トリメチルアンモニウム誘導コラーゲンポリペプタイドと、カチオン性ポリマーを含有する毛髪用化粧料。」(請求項1)

(2-イ)「一方、カチオン性ポリマーとしては、以下に詳述するようなジアリル第4級アンモニウム塩の重合物、カチオン性セルロース、カチオン性澱粉、カチオン性ビニル重合体などがあげられる。」(3頁左下欄9?12行)

(2-ウ)「(3)カチオン性重合体
カチオン性ビニル重合体としては次の式(6)?(8)で示される重合体があげられる。
……


(式中、R10は水素原子またはメチル基、R11、R12、R13は同じかまたは異なって、水素原子、炭素数1?4のアルキル基または置換アルキル基、Yは酸素原子またはアミド結合中のNH基、Xはアニオン、m3は1?10の整数、n1は前記と同じである。
……
これらのカチオン性ポリマーのうち、ジアリルジメチルアンモニウムホモ重合体、カチオン性セルロースなどが特に好ましい。」(4頁右上欄下4行?右下欄下8行)

(2-エ)「上記のようなカチオン性ポリマーは、カチオン性界面活性剤と同様に、毛髪によく吸着し、前記一般式(I)で示される第4級トリメチルアンモニウム誘導コラーゲンポリペプタイド以上に毛髪を柔軟にし、かつ、くし通り性を良くし、毛髪に艶を与え、毛髪のコンディショニングをしやすくするが、長期的な使用によっては、これの蓄積された過剰な吸着と、強い脱脂洗浄作用によって、毛髪がバリバリになるなどの不快な感触を与えることがある。特に損傷毛では吸着が著しいためになおさら毛髪の感触が悪くなることがある。
そこで、このカチオン性ポリマーと、前述の一般式(I)で示される第4級トリメチルアンモニウム誘導コラーゲンポリペプタイドを併用することによって、カチオン性ポリマーの欠点が現れないようにし、長期的に用いても毛髪の損傷や感触の低下を起こさずに、優れたコンディショニング作用を発揮させるのである。」(4頁右下欄下7行?5頁左上欄11行)

(2-オ)「そして、……カチオン性ポリマーは、基本的にはこれら毛髪用化粧料に従来から採用されている組成に、前期の割合で配合すればよい。……。上記毛髪用化粧料に配合されている成分を例示すると、例えばアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などの界面活性剤、……、シリコーンオイル(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、その他各種変性シリコーンオイル)などの油分、……、香料などである。」(5頁右上欄14行?左下欄下2行)

(3)甲第3号証「FRAGRANCE JOURNAL,1990年5月号,第12?47頁」

(3-ア)「香粧品用シリコーンの研究開発の現状と課題」(12?18頁)
(3-ア-1)「3-1. 油分としてのシリコーン
油分として最も広く用いられているシリコーンはジメチルポリシロキサンであり,分子量によっていろいろな粘度のものが作られている。……ジメチルポリシロキサンを製品に配合する目的としては、油分のベタつき感を抑え軽い使用感にすることが最も大きいと考えられる。……更に相溶性を大きくしたものとして、フェニル基を有するメチルフェニルポリシロキサンが用いられている。」(13頁右欄15行?下4行)
(3-ア-2)「環状ジメチルポリシロキサンは揮散性を有するが,水やエタノールよりも蒸発潜熱が低く皮膚に塗布した時に冷たさを感じさせないため揮散性油分として利用されている。揮散性油分は,粉末や効果成分に対して塗布時は油分として働き均一な塗布および使用感を助け,塗布後は揮散して有効成分だけを皮膚や毛髪に残して化粧持ちをよくしたり効果を向上させることができる。」(16頁左欄1?9行)
(3-ア-3)「一方、シリコーンオイルの水や油に対する相溶性を改良したり,他の機能を付加したりするために種々の官能基を導入したシリコーンオイルが作られており,これらは有機変性シリコーンオイルと呼ばれている。」(16頁左欄下9行?下5行)

(3-イ)「頭髪仕上げ剤用シリコーンの開発と課題」(19?26頁)
「メチルポリシロキサンは、化粧品用としては最も以前から使用実績をもつ粧原基材料である。……頭髪用化粧品原料として、以下の特徴を持つものである。
1)べたつきが少なく,さっぱりした仕上がり考えられる。
2)頭髪への伸展性に優れるため,軽い使用感である。
3)頭髪に滑り性を付与することはでき、くし通り性が向上し、優れたつやを付与できる。
……
6)……安定であり、……」(24頁左欄)

(3-ウ)「シャンプー・リンス用シリコーンの開発と課題」(27?33頁)
「シリコーンのリンス効果として期待される特徴が,以下のように表現されている。
1)……くし通りの悪さがなくなる.
2)……柔軟性のある、シルキータッチの髪の毛に仕上がる.
……
4)髪の毛の艶が増し,……
5)…効果の持続性がよい」(28頁左欄)。

(3-エ)「スキンケア製品へのシリコーンの応用」(34?42頁)
「これらシリコーンが化粧品に使用されてきた主な理由は、
1)……
2)……長期間保管されても腐敗、変質を起こさない。
3)表面張力が低いため,化粧品を薄く広がり易くし, ……
4)……べたつきを低減する。
等であると考える。」(34頁右欄)

(3-オ)「メイクアップ用シリコーンの開発と課題」(43?47頁)
(3-オ-1)「一般に,シリコーンをメイクアップ製品に検討する場合には,”伸びをよくする”,”なめらかな使用感を出す”,”艶を出す”,”撥水性を出す”,”べたつきをおさえる”,”さっぱりした感じを出す”といった効果を期待して使用されていることが多い。」(46頁左欄23?28行)
(3-オ-2)「……そこで、ポリエーテル変性シリコーンオイルを乳化剤として使用することで乳化安定性を向上させるといった方法が提案されている。」(46頁右欄下2行?47頁左欄2行)
(3-オ-3)「シリコーンは,揮発性を有する鎖状,環状物あるいは,低粘度のオイルから,ゴム,レジン状まで、さまざまな形態をとることができる。また,変性のしやすさから,さまざまな変性シリコーンを作ることができる。」(47頁右欄10?14行)

(4)甲第4号証「特開平2-288817号公報」

(4-ア)「1.a)ワックスタイプ凝固剤10?50%;及びb)1種以上の下記式のポリ-α-オレフィン<式省略>を含む化粧用スティック組成物。」(請求項1)

(4-イ)「7.皮膚軟化剤10?50%を更に含む、請求項1?6のいずれか一項に記載の化粧用スティック組成物」(請求項7)

(4-ウ)「本発明の組成物は少なくとも1種の皮膚軟化剤を含有していることが好ましい。好ましい皮膚軟化剤は、揮発性シリコーン油、非揮発性皮膚軟化剤及びそれらの混合物である。」(8頁右下欄12?15行)

(4-エ)「本発明の化粧用スティック組成物において有用な揮発性シリコーン油は、約3?約9、好ましくは約4?約5のケイ素原子を有する環状又は直鎖状ポリジメチルシロキサンであることが好ましい。……直鎖状ポリジメチルシロキサンは1分子当たりケイ素原子約3?約9を有し、……直鎖揮発性シリコーン物質は通常25℃で約5センチストークス以下の粘度を有するが、環状物質は典型的には約10センチストークス以下の粘度を有する。様々な揮発性シリコーン油に関する記載は、トッド(Todd)ら、“化粧品用の揮発性シリコーン液”、コスメティック&トイレタリーズ(Cosmetics & Toi1etries)、第91巻、第27-32頁、1976年でみられるが、その開示は参考のためそれら全体が本明細書に組み込まれる。本発明で有用な好ましい揮発性シリコーン油の例としては、ダウコーニング344(Dow Corning 344)、……;及びSWS-03314[SWSシリコーンズ社(SWS Silicones Inc.)]がある。」(9頁左上欄3行?右上欄下4行)

(4-オ)「スティック形の本組成物は、1種以上の非揮発性皮膚軟化剤も含有していることが好ましい。このような物質としては、… 非揮発性シリコーン油及びそれらの混合物がある。」(9頁右上欄下3行?左下欄2行)

(4-カ)「皮膚軟化物質として有用な非揮発性シリコーン油としては、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルアリ‐ルシロキサン及びポリエーテルシロキサンポリマーがある。本発明で有用な本質上非揮発性ポリアルキルシロキサンとしては、例えば25℃で約5?約100,000センチストークスの粘度を有するポリジメチルシロキサンがある。このようなポリアルキルシロキサンとしては、ビカシル(Vicasil)シリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)……このような液体はSF1066オルガノシリコーン界面活性剤(ゼネラル・エレクトリック社製)として市販されている。」(9頁左下欄下10行?右下欄下4行)

(5-1)甲第5号証の1「International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook, Fifth Edition 1993, Volume 1, pp.573-574,(The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association)」

(5-ア)「POLYQUATERNIUM 32」は、トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートとアクリルアミドの共重合体であり、Salcare SC92としてAllied Colloids(アライドコロイズ)社より市販されていることが記載されている。(573頁)

(5-イ)「POLYQUATERNIUM 37」はトリメチルアンモニウムエチルメタクリレートのホモポリマーであり、Salcare SC95としてAllied Colloids(アライドコロイズ)社より市販されていることが記載されている。(573?574頁)

(5-2)甲第5号証の2「Tara Gottschalck氏、Manager‐Cosmetic Ingredient Database,CTFAよりの回答」
甲第5号証の発行日は1993年1月であることが、発行元によって確認されるている。

(6)甲第6号証「Liquid Grade Rheology Modifiers for Cosmetic Products(Allied Colloids Limited)93?107頁(1992年3月4日)」

(6-ア)「LDP粘度調節剤の化学
Salcare液体分散ポリマー(liquid dispersion polymers)は3つの主要な成分を有する。
……
ポリマー相は、非常に小さい粒子寸法で、架橋された親水性アクリル系ポリマーである。」(94頁下12?下6行)

(6-イ)「Salcare SC91はアニオン性活性ポリマー相を有するのに対し、Salcare SC92はカチオン性ポリマーである。」(99頁2?4行)

(6-ウ)ポストパーマネントコンディショナーの処方例、Salcare SC92、シクロメチコーンが配合されている。(100頁)

(6-エ)プロテイン補給コンディショナーの処方例、ジメチコーンコポリオール、Salcare SC92が配合されている。(102頁)

(6-オ)「LDPの従来の化粧料用増粘剤に対する有利な効果
LDP粘度調節剤を現行の増粘剤と比較すると利点は多い。
1.液状製品であるので取り扱いが容易
2.易分散性
3.撹拌により粘度増加
4.迅速で円滑な粘度増加
5.常温処理
6.多機能-粘度増加
-望ましいレオロジー
-懸濁/安定化
-ゲル化剤
-コンディショニング(カチオンタイプ)
-乳白色化
-皮膚塗布時の良好な伸び感
7.最終製品における多様な剤型
8.アニオン、ノニオンおよびカチオン環境で使用可能なグレード」(106頁下から3行?107頁15行)

(7)甲第7号証(米国特許第4806345号明細書)

(7-ア)「パーソナルケア製品に使用するための架橋カチオン性ビニルポリマ一」(表題)
(7-イ)「本発明は、軽度に架橋したカチオン性ビニルポリマーを増粘剤として含むパーソナルケア組成物を提供する。そのようなポリマーとしてはビニル付加モノマー、アクリルアミドおよび2官能ビニル付加モノマーから得られるホモポリマー四級アンモニウム塩、特にジメチルアミノエチルメタクリレートの四級アンモニウム塩が挙げられる。(第1欄55?61行)

6.無効理由1について

(1) 請求人は、無効理由1について、「本件特許発明は、甲第1号証ならびに甲第5号証および/または甲第6号証に基づいて、あるいはこれらに加えて甲第3号証および/または甲第4号証に基づいて当業者が容易になし得た程度のことにすぎず、得られる効果も当業者の予測し得る程度のものにすぎないというべきである」旨主張している。(請求書9?14頁)

ア.対比

上記(1-ア)?(1-ウ)の記載事項からみて、甲第1号証には、(a)ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンおよびデカメチルテトラシロキサンから選ばれる、沸点範囲が100?190℃であるメチルポリシロキサンおよび(b)ジメチルサルフェートで75%まで四級化されたジメチルアミノエチルメタクリレートのホモポリマーを含む毛髪処理用水性組成物が記載されている。
本件発明と、甲第1号証記載の発明とを比較すると、甲第1号証におけるヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサンは、ポリアルキルシロキサンの一種であり、ジメチルサルフェートで75%まで四級化されたジメチルアミノエチルメタクリレートのホモポリマーはメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムのポリマーの一種であるから、両者はオルガノポリシロキサン及びメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムのポリマーを含む毛髪処理用水性組成物である点で一致する。
また、甲第1号証には四級化されたジメチルアミノエチルメタクリレートのホモポリマーが架橋されたものであるとは記載されていないから、甲第1号証記載の発明が、
「但し、下記の組成物(1)乃至(2)、即ち、
組成物(1)
・架橋メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドホモポリマーまたはアクリルアミドとのコポリマー/鉱物油、および
・85%の5cstジメチル流体/15%のジメチコノール、
組成物(2)
・架橋メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドホモポリマーまたはアクリルアミドとのコポリマー/鉱物油、
・85%の5cstジメチル流体/15%のジメチコノール、および
・ジメチコン200、
を除く、」(以下、「本件除外事項」という。)に該当しないことは明らかである。

そして、本件発明が、オルガノポリシロキサンとして、「ポリアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアルキルアリ-ルシロキサン、変性又は未変性ポリシロキサン、シリコーンゴムおよびレジン、ならびにポリエチレンオキシ基および(または)ポリプロピレンオキシ基またはカルボン酸基もしくは重亜硫酸基を有するポリシロキサンを除く有機変性ポリシロキサンから選ばれた少なくとも1つの非揮発性オルガノポリシロキサン」を用いるのに対し、甲第1号証の発明は「ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンおよびデカメチルテトラシロキサンから選ばれる、沸点範囲が100?190℃であるメチルポリシロキサン」を用いる点(以下、相違点1という。)、及び、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムのポリマーとして、前者がホモポリマータイプまたはアクリルアミドとのコポリマータイプのメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマーを用いるのに対して、後者はジメチルサルフェートで75%まで四級化されたジメチルアミノエチルメタクリレートのホモポリマーを使用し、該ポリマーが「架橋」ポリマーであることが記載されていない点(以下、相違点2という。)で両者は相違する。

以下、相違点について検討する。

イ.相違点1について

たとえば、甲第4号証には、揮発性シリコーン油で直鎖状のポリジメチルシロキサンは1分子あたり約3?約9のケイ素原子を有すると記載されているように(4-エ)、甲第1号証における「ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン」は、それぞれケイ素原子が2、3、4の直鎖状のポリジメチルシロキサンであるから、甲第1号証におけるオルガノポリシロキサンは揮発性のものであることは明らかである。

請求人は、本件発明における「非揮発性」の意義が明らかでなく、甲第1号証の「沸点範囲が100?190℃であるメチルポリシロキサン」は少なくとも実質的に本件発明でいう「非揮発性」のポリアルキルシロキサンを包含する旨主張している。
しかし、甲第4号証において、揮発性シリコーンについて公知文献が引用されて記載されており(4-エ)、また、揮発性のものと非揮発性のものが区別して記載されていること(4-エ?4-カ)からみて、両者の区別は当業者にとって明らかな技術的事項ということができる。
したがって、本件発明の「非揮発性オルガノポリシロキサン」と甲第1号証の「沸点範囲が100?190℃であるメチルポリシロキサン」とは重複しないから、請求人の上記主張を採用することはできない。

次に、甲第1号証における「沸点範囲が100?190℃であるメチルポリシロキサン」に代えて「非揮発性オルガノポリシロキサン」を用いることが、当業者が容易に想到することができたものであるか否か、検討する。

甲第3号証は「香粧品用シリコーンの開発と課題」についての特集記事であって、各種の化粧品類に使用されているシリコーン類(すなわちオルガノポリシロキサン)について記載されている。そして、シリコーンは、揮発性を有する鎖状,環状物あるいは,低粘度のオイルから,ゴム,レジン状まで様々な形態をとることができ(3-オ-3)、化粧品の分野においては、各種のシリコーンがその性質に基づいて使用されており、揮発性のものは、揮発性である性質に基づいて使用され、非揮発性のものは非揮発性である性質に基づいて使用されているということができる。

なお、請求人は上申書において、揮発性と非揮発性との定義は必ずしも明確でなく、不揮発性シリコーンオイルである粘度10csのものは揮発分が25%であると主張している(上申書2頁)。
しかし、不揮発性シリコーンオイルの粘度10csのものの揮発分とは150℃24時間における揮発分であって(参考資料4、3頁)通常の化粧料の使用条件である31℃における揮発性の数値(参考資料4、4頁参照)ではないから、上記請求人の主張を採用することはできない。

したがって、甲第3号証には、非揮発性のシリコーンが化粧料に用いられることは記載されているが、甲第1号証における「沸点範囲が100?190℃であるメチルポリシロキサン」に代えて「非揮発性オルガノポリシロキサン」を用いることを動機付ける記載はない。

また、甲第4号証には、揮発性シリコーン油と非揮発性シリコーン油のいずれも皮膚軟化剤として利用できること記載されているが(4-ウ、4-オ)、甲第1号証の発明はパーマネント処理に先立って毛髪に適用される組成物であって、メチルポリシロキサンを皮膚軟化剤として使用するものではないから、甲第4号証には、甲第1号証における揮発性シリコーン類に代えて非揮発性のものを用いることを動機付ける記載があるということはできない。

ウ.相違点2について

請求人は、甲第1号証の「ジメチルサルフェートで75%まで四級化されたジメチルアミノエチルメタクリレートのホモポリマー」は、本件発明の「ホモポリマータイプのメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマー」と本体部分が同一であり、発明における効果として差異がなく当業者にとって均等物であると考えられる旨主張している。
しかし、甲第1号証に記載された「ジメチルサルフェートで75%まで4級化されたジメチルアミノエチルメタクリレートのホモポリマー」は、架橋していない鎖状のポリマーであるところ、本件発明の「ホモポリマータイプのメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマー」とは、ポリマーそれ自体としても、発明におけるその効果としても、明らかに相違し明確に区別されるべきものである。
したがって、甲第1号証に記載された「ジメチルサルフェートで75%まで4級化されたジメチルアミノエチルメタクリレートのホモポリマー」は、本件発明の「ホモポリマータイプのメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマー」とは明らかに相違する。

次に、甲第1号証の「ジメチルサルフェートで75%まで四級化されたジメチルアミノエチルメタクリレートのホモポリマー」に代えて、「ホモポリマータイプのメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマーを用いることが、当業者にとって容易であるか否か、検討する。

甲第5号証の2及び甲第6号証の記載事項からみて、甲第5号証の1記載の「POLYQUATERNIUM 32」はトリメチルアンモニウムエチルメタクリレートのホモポリマーであって、Allied Colloids(アライドコロイズ)社からSalcare SC92として市販されており、カチオン性の架橋ポリマーであって、増粘剤として使用されるものであることが理解できる。
また、甲第6号証には、パーマネント処理後に使用されるコンディショナーとして、カチオン性の架橋ポリマーであるSalcare SC92を配合する組成物の例が記載されており(6-ウ、6-エ)、Salcare SC92については従来の増粘剤に比べて有利な効果を有することが記載されており(6-オ)、甲第7号証にも増粘剤として軽度に架橋したカチオン性ポリマーを使用することが記載されている。
しかし、甲第1号証のカチオンポリマーに代えて、架橋されたカチオンポリマーであるSC92を使用することを示唆する記載は、甲第5号証?第7号証のいずれにも見あたらない。
また、化粧料に配合される増粘剤として、カチオン性の架橋ポリマーが公知であるとしても、高分子物質において、架橋の有無でその性質が著しく変わることは、請求人が提出した参考資料1?3をみるまでもなく、当業者に周知の事項であるから、甲第1号証の「ジメチルサルフェートで75%まで四級化されたジメチルアミノエチルメタクリレートのホモポリマー」に代えて、「ホモポリマータイプのメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマーを用いることが、当業者にとって容易であるということはできない。

以上のとおり、甲第1号証記載の発明において、揮発性のポリジメチルシロキサンに代えて非揮発性のポリジメチルシロキサンを用い、かつ、カチオン性ポリマーとして架橋されたカチオンポリマーを使用することが、甲第3号証?甲第7号証の記載事項から示唆されるものということはできない。
これに対し、本件発明は、毛髪や皮膚に柔らかさを与え、梳毛を容易にするために用いられていた陽イオン界面活性剤又はポリマーの反復使用による毛髪や皮膚のべたつきを解消することを目的とし、非揮発性のオルガノシロキサン及びメタクリロイルオキシトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマーを含む水性分散液を用いることにより、軽くて、絹のような光沢ある毛髪を得ることができ、処理した毛髪の梳毛特性、柔らかさ及びもちといった特性が顕著に改善され、更には、毛髪の乾燥時間が短縮され、べとつかない柔らかい手触りを皮膚に与えるができるという効果が得られるのであって、当業者の予測を超えた顕著なものということができる。

したがって、「本件特許発明は、甲第1号証ならびに甲第5号証および/または甲第6号証に基づいて、あるいはこれらに加えて甲第3号証および/または甲第4号証に基づいて当業者が容易になし得た程度のことにすぎず、得られる効果も当業者の予測し得る程度のものにすぎないというべきである」との請求人の主張を採用することはできない。

(2)請求人は、無効理由1について、「本件特許発明は、甲第2号証ならびに甲第5号証および/または甲第6号証に基づいて、あるいはこれらに加えて甲第3号証および/または甲第4号証に基づいて当業者が容易になし得た程度のことにすぎず、得られる効果も当業者の予測し得る程度のものにすぎないというべきである」旨主張している。(請求書14頁?17頁)

ア.対比

甲第2号証記載の発明は毛髪用化粧料(2-ア、2-イ)であって、式(7)のカチオン性重合体(2-ウ)において、R10?R13がメチル、Yが酸素原子、m3が2、Xが塩素イオンであるものは、メタクリロイルオキシトリメチルアンモニウムクロライドのポリマーに相当し、通常用いられる成分としてシリコーンオイル等の油分を含む(2-オ)ものであるから、本件発明と、甲第2号証記載の発明とを比較すると、オルガノポリシロキサン及びジメチルアミノエチルニウムメタクリレートの4級化物のポリマーを含む、毛髪処理用の水性分散液の化粧品である点において両者は、一致する。
また、甲第2号証には該ポリマーが架橋されてものである点については記載されていないから、”除外事項”には該当しない。

一方、オルガノポリシロキサンとして、本件発明が「ポリアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、変性または未変性ポリシロキサン、シリコーンゴムおよびレジン、ならびにポリエチレンオキシ基および(または)ポリプロピレンオキシ基またはカルボン酸基もしくは重亜硫酸基を有するポリシロキサンを除く有機変性ポリシロキサンから選ばれる非揮発性のオルガノポリシロキサン」を用いるのに対し、甲第2号証にはオルガノポリシロキサンが「非揮発性」であることが明記されていない点、(以下、相違点3という。)、及び、ジメチルアミノエチルニウムメタクリレートの4級化物のポリマーとして、前者が「ホモポリマータイプまたはアクリルアミドとのコポリマータイプのメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマー」を用いるのに対して、後者は「四級化されたジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合体」を使用するものであって、該ポリマーが「架橋」ポリマーであることが記載されていない点(以下、相違点4という。)で両者は相違する。

以下、相違点について検討する。

イ.相違点3について

甲第3号証に記載されているように化粧料に油分として使用されるシリコーン(ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、その他各種変性シリコーンオイル)は周知であり(3-ア-1?3-ア-3)、これらが非揮発性であることは、上記甲第3号証及び第4号証の記載事項からみて当業者が容易に理解できることであり、甲第2号証におけるオルガノポリシロキサンは非揮発性であるといえる。
そうすると、相違点3は実質的な相違点ということはできない。

ウ.相違点4について

請求人は、甲第2号証における一般式(7)のカチオン性ビニル重合体は本発明における架橋メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドホモポリマーを包含する旨主張している。
しかし、甲第2号証に記載された「一般式(7)で示されるカチオン性ポリマー」については、架橋されたものを含むことは何ら記載されていないから、本件特許の「ホモポリマータイプのメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマー」が包含されるとすることはできない。

次に、甲第2号証における一般式(7)の重合体として、架橋されたものを使用することが、当業者にとって容易であるか否か、検討する。

上記6.(1)ウで述べたとおり、甲第5号証及び第6号証の記載事項から、架橋カチオンポリマーであるトリメチルアンモニウムエチルメタクリレートのホモポリマーがAllied Colloids(アライドコロイズ)社からSalcare SC92として市販されており、増粘剤として使用されるものであることは本件優先日において公知であったといえる。
しかし、甲第2号証のカチオンポリマーあるいは、カチオンポリマーと第4級トリメチルアンモニウム誘導コラーゲンポリペプタイドとの組み合わせに代えて、架橋されたカチオンポリマーであるSC92を使用することを示唆する記載は、甲第5号証?第7号証のいずれにも見あたらない。
また、甲第2号証の発明は、従来のカチオンポリマーが有する「長期的な使用によっては、これの蓄積された過剰な吸着と、強い脱脂洗浄作用によって、毛髪がバリバリになるなどの不快な感触を与えることがある」という問題を解決するために、カチオンポリマーと第4級トリメチルアンモニウム誘導コラーゲンポリペプタイドとを併用することを発明の必須の構成要件とするものである(2-エ)。
そして、高分子物質において、架橋の有無でその性質が著しく変わることは、請求人が提出した参考資料1?3をみるまでもなく、当業者に周知の事項であるから、甲第2号証における、架橋されていないカチオンポリマーあるいは架橋されていないカチオンポリマー及び第4級トリメチルアンモニウム誘導コラーゲンポリペプタイドの組み合わせに代えて、架橋カチオンポリマーを使用すること、あるいは架橋カチオンポリマーと非揮発性のオルガノポリシロキサンを組み合わせて用いることが当業者にとって容易であるということはできない。

一方、本件発明は、毛髪や皮膚に柔らかさを与え、梳毛を容易にするために用いられていた陽イオン界面活性剤又はポリマーの反復使用による毛髪や皮膚のべたつきを解消することを目的とし、非揮発性のオルガノシロキサン及びメタクリロイルオキシトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマーを含む水性分散液を用いることにより、軽くて、絹のような光沢ある毛髪を得ることができ、処理した毛髪の梳毛特性、柔らかさ及びもちといった特性が顕著に改善され、更には、毛髪の乾燥時間が短縮され、べとつかない柔らかい手触りを皮膚に与えるができるという効果が得られるのであって、当業者の予測を超えた顕著なものということができる。

なお、請求人は上申書において、甲第6号証には本件発明の架橋ポリマーであるSalcare SC92と非揮発性オルガノポリシロキサンに相当するジメチコンポリオールを含む組成物の例が記載されている(上記6-エ)から、非揮発性オルガノポリシロキサンと架橋ポリマーとを併用することは容易である旨主張している。(上申書8頁)
しかし、ジメチコンコポリオールは、本件発明で除くとされる「ポリエチレンオキシ基および(または)ポリプロピレンオキシ基を有するポリシロキサン」に相当する成分であって、甲第3号証における「ポリエーテル変性シリコーン」に相当し、化粧料において乳化剤として使用される成分である(上記3-オ-2)。
そうすると、非揮発性オルガノポリシロキサンとして、甲第6号証記載の組成物におけるジメチコンポリオールに代えて、乳化剤として通常使われるものではない「ポリエチレンオキシ基および(または)ポリプロピレンオキシ基を有するポリシロキサン」以外の有機変性オルガノポリシロキサンを用いることが容易であるとすることはできない。

したがって、「本件特許発明は、甲第2号証ならびに甲第5号証および/または甲第6号証に基づいて、あるいはこれらに加えて甲第3号証および/または甲第4号証に基づいて当業者が容易になし得た程度のことにすぎず、得られる効果も当業者の予測し得る程度のものにすぎないというべきである」との請求人の主張を採用することはできない。

7.無効理由2について

無効理由2についての請求人の主張は必ずしも明確ではないが、「(なお、仮に「架橋」ポリマーの架橋の種類、程度等に意味があるとすれば、その構成、効果等についての記載を発明の詳細な説明等において欠くものであり、特許法第36条第4項もしくは第6項に規定する要件を満たしていないことは明らかである。)」(請求書12頁末行?13頁3行)と記載されていることからみて、架橋ポリマーの種類、架橋度及び効果に関する発明の詳細な説明の記載が不備である点を主張するものと解される。
なお、本件は平成6年改正前の特許法第36条が適用される出願であるから、上記請求人の主張は、特許法36条4項、第5項及び第6項に規定する要件を満たしていないとの主張であると解される。

しかし、本件明細書には、本件発明において使用される架橋ポリマーについて、具体的に記載されており(特許公報3頁6欄40?48行)、アクリルアミドノメタクリロイルオキシトリメチルアンモニウムクロライド(重量比20/80)架橋コポリマーを鉱油中に約50重量%含有する分散液として、アライドコロズ社により「SALCARE SC92」が、また、メタクリロイルオキシトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ホモポリマーを鉱油中に約50重量%含有する分散液として、アライドコロズ社により「SALCARE SC95」市販されていることが記載されている(特許公報3頁6欄49行?4頁7欄8行)。
さらに、架橋ポリマーを使用することによる効果についても、「軽くて、絹のような光沢ある毛髪を得ることができ、処理した毛髪の梳毛特性、柔らかさ及びもちといった特性が顕著に改善され、更には、毛髪の乾燥時間が短縮され、べとつかない柔らかい手触りを皮膚に与えるができる」と記載されている(特許公報2頁3欄19?23行)。

そうすると、本件明細書に架橋ポリマーの種類、架橋度及び効果に関して記載不備があるということはできないから、本件明細書の記載が特許法第36条第4項、第5項及び第6項に規定する要件を満たしていないとの請求人の上記主張を採用することはできない。

8.むすび

以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠によっては、請求項1に係る発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-16 
結審通知日 2007-01-18 
審決日 2007-01-30 
出願番号 特願平6-520706
審決分類 P 1 113・ 534- Y (A61K)
P 1 113・ 531- Y (A61K)
P 1 113・ 121- Y (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小堀 麻子田村 聖子森井 隆信  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 横尾 俊一
弘實 謙二
登録日 2002-07-19 
登録番号 特許第3329818号(P3329818)
発明の名称 非揮発性オルガノポリシロキサンと、ホモポリマータイプまたはアクリルアミドとのコポリマーのタイプのメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの架橋ポリマーとを基体とする水性分散液の香粧品中での使用または局所的適用  
代理人 青木 篤  
代理人 浅村 肇  
代理人 田崎 豪治  
代理人 浅村 皓  
代理人 石田 敬  
代理人 古賀 哲次  
代理人 歌門 章二  
代理人 長沼 暉夫  
代理人 金森 久司  

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