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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1154198
審判番号 不服2003-9068  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-22 
確定日 2007-03-15 
事件の表示 平成 5年特許願第344248号「化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 7月11日出願公開、特開平 7-173044〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年12月17日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成13年12月6日付け手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「平均粒子径1?30μ、平均粒子厚さ0.05?0.5μ、アスペクト比が5以上であり、かつシリコーンによる疎水化表面処理を施した薄片状酸化亜鉛を配合したことを特徴とする粉体化粧料。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
当審において、平成18年1月23日付けで通知した拒絶の理由で引用した本願出願前に頒布された刊行物である特開平1-175921号公報(以下、「引用例A」という。)、特開平4-288010号公報(以下、「引用例B」という。)、特開昭62-12711号公報(以下、「引用例C」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)引用例A
(a-1)「平均粒子径0.1?1μm、平均粒子厚さ0.01?0.2μmで、かつ平均板状比が3以上の薄片状酸化亜鉛を含有することを特徴とする外用剤。」(特許請求の範囲、1頁左下欄5?7行)

(a-2)「本発明に係わる薄片状酸化亜鉛は、このまま外用剤に配合可能であるが、必要に応じて、シリコン処理等の撥水処理を行うこともできる。」(3頁左上欄3?5行)

(a-3)「本発明の外用剤は、パウダーファンデーション、クリーム状ファンデーション、油性ファンデーション…等の化粧料…として用いることができる。」(3頁左上欄10?13行)

(a-4)「本発明の外用剤は、薄片状酸化亜鉛を配合することにより、肌への密着性が良く、仕上がり・使用感が良好で、かつ優れた紫外線吸収能を有する。特に化粧料として用いた場合、肌への密着性が良く、化粧持ちに優れ、透明感があり、仕上がりが良好で使用感も良く、また高い紫外線吸収能を持つという非常に優れた特徴を有する。」(3頁左下欄下から3行?右下欄5行)

(a-5)「合成例1?7で得た薄片状の酸化亜鉛は、いずれも比較品のものと官能的に比較して顕著にのびに優れ、きしみが少なく、透明感に優れるものであり、特に皮膚に塗擦したときに白化が消失するまでの時間が著しく短いものであった。」(4頁右下欄1?5行)

(a-6) 実施例1,2として、平均粒子径0.1?1μm、平均粒子厚さ0.01?0.2μmで、かつ平均板状比が3以上の薄片状酸化亜鉛を含有するパウダーファンデーションが記載されている。(4頁右下欄6行?5頁右上欄4行)

(2)引用例B
(b-1)「平均の厚さ0.01?3μm、平均の大きさ1?100μmの薄片状金属酸化物と:紫外線吸収剤と均一混合させた高分子樹脂モノマーを重合させて得られた、紫外線吸収剤を内包させている高分子樹脂粉末と:を含有する化粧料。」(【請求項1】、2頁1欄2?6行)

(b-2)「本発明に用いられる板状金属酸化物は、平均の厚みが0.01?3μm、平均の大きさ1?100μmの寸法を有する。
ここで、平均の厚みとは、100個の薄片についての平均値をいい、平均の大きさとは、100個の薄片についての(薄片の最長さしわたし径+最短さしわたし径)/2の値の平均値をいう。
金属酸化物は、上記の形状、寸法の範囲内にあり、化粧料として使用しうるものであれば、いずれの種類であってもよい。
金属酸化物の種類には、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の無機顔料がある。」(【0014】、2頁2欄50行?3頁3欄9行)

(b-3) 平均の厚さ0.01?3μm、平均の大きさ1?100μmの薄片状酸化亜鉛及びこれを配合した日焼け防止乳液が記載されている。(段落【0028】、【0047】)

(3)引用例C
(c-1)「平均の厚みが0.1μm?2μm、下記で定義する平均の大きさが1μm?100μmで、屈折率が1.45?1.8の合成薄片状金属酸化物を配合して成るメークアップ化粧料。ここで平均の大きさとは、100個の薄片についての(薄片の最長さしわたし径+最短さしわたし径)/2の値の平均値をいう。」(【特許請求の範囲】、1頁左下欄5?11行)

(c-2)「本発明の合成薄片状金属酸化物としては屈折率1.45?1.8のものが適用される。これは通常化粧料に用いられる油類の屈折率が1.5?1.6であるため、この値から著しく離れると、透明感が損なわれるからである。」(2頁左下欄13?17行)

(c-3)「平均の大きさが1μより小さい場合には適度な光沢が失われ、そして、付着性はよいが展延性が全くなくなり、透明感が無くなる。平均の大きさが大きくなるほど展延性は良くなるが、平均の大きさが100μを超えると、粒子が分離し易くなり、肌を均一に覆うという目的が果たせなくなる。このため、平均の大きさは100μ以下が好ましく、更に好ましくは40μ以下である」(3頁左上欄17行?同頁右上欄5行)

3.対比
引用例Aには、「平均粒子径0.1?1μm、平均粒子厚さ0.01?0.2μmで、かつ平均板状比が3以上の薄片状酸化亜鉛を含有することを特徴とする外用剤」(摘記事項(a-1))をパウダーファンデーションに用いること(摘記事項(a-3)、(a-6))が記載されている。ここで、平均板状比とはアスペクト比のことである。
すなわち引用例Aには、「平均粒子径0.1?1μm、平均粒子厚さ0.01?0.2μmで、かつアスペクト比が3以上の薄片状酸化亜鉛を含有することを特徴とするパウダーファンデーション」が記載されている(以下、「引用発明」という。)。
一方、本願発明の粉体化粧料は、パウダーファンデーションを含むものである(本願明細書段落【0038】<実施例2>パウダーファンデーション参照)。

そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、平均粒子厚さの範囲、アスペクト比の範囲は両者で重複し、一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
平均粒子厚さ0.05?0.2μ、アスペクト比が5以上である薄片状酸化亜鉛を配合したパウダーファンデーション

(相違点1)
本願発明が平均粒子径1?30μの薄片状酸化亜鉛を使用するのに対して、引用例Aでは平均粒子径0.1?1μの薄片状酸化亜鉛を使用する点
(相違点2)
本願発明がシリコーンによる疎水化表面処理を施した薄片状酸化亜鉛を使用するのに対して引用例Aに記載の薄片状酸化亜鉛は表面処理を行っていないものである点

4.当審の判断
上記の相違点1及び相違点2について検討する。
(相違点1)について
引用例Aには、引用発明の化粧料が、薄片状酸化亜鉛を配合することにより、肌への密着性が良く、化粧持ちに優れ、透明感があり、仕上がりが良好で使用感も良く、また高い紫外線吸収能を持つという非常に優れた特徴を有することと(摘記事項(a-4))ともに、薄片状酸化亜鉛に関して、平均粒子径0.1?1μm、平均粒子厚さ0.01?0.2μmで、かつ平均板状比が3以上の薄片状酸化亜鉛は、パウダーファンデーションに用いるとのびに優れ、きしみが少なく、透明感に優れるものであることが記載されている(摘記事項(a-5))。
一方、 引用例Cには、平均の厚みが0.1μm?2μm、平均の大きさが1μm?100μmで、屈折率が1.45?1.8の合成薄片状金属酸化物を配合して成るメークアップ化粧料が記載されている(摘記事項(c-1))。
そして、このメークアップ化粧料に使われる合成薄片状金属酸化物に関して以下の記載がある。
まず、合成薄片状金属酸化物の屈折率に関しては、屈折率が1.45?1.8のものを使用するのは、通常化粧料に用いられる油類の屈折率が1.5?1.6であるため、この値から著しく離れると、透明性が損なわれるからであることが記載されている(摘記事項(c-2))。
そして、合成薄片状金属酸化物の大きさに関しては、平均の大きさが1μより小さい場合には適度な光沢が失われ、透明感がなくなり、付着性はよいが展延性が全くなくなること、平均の大きさが大きくなるほど展延性は良くなるが、平均の大きさが100μを超えると、粒子が分離し易くなり、肌を均一に覆うという目的が果たせなくなることが記載されている(摘記事項(c-3))。
この引用例Cの記載から、合成薄片状金属酸化物自体の透明感や展延性に関しては、屈折率ではなく、粒子の大きさが重要であることが理解できる。
すなわち、引用例Cには、合成薄片状金属酸化物自体の性質として、平均の大きさが1μ?100μのものが、適度な光沢と透明感があり、展延性が良いことが記載されている。
また、引用例Bには、「平均の厚さ0.01?3μm、平均の大きさ1?100μmの薄片状金属酸化物と:紫外線吸収剤と均一混合させた高分子樹脂モノマーを重合させて得られた、紫外線吸収剤を内包させている高分子樹脂粉末と:を含有する化粧料。」が記載されており(摘記事項(b-1))、この化粧料に使用される薄片状金属酸化物として、平均の厚さ0.01?3μm、平均の大きさ1?100μmの薄片状の酸化亜鉛が記載されている。(摘記事項(b-2)、(b-3))
してみれば、引用例Cには、引用発明と重複する平均厚さ、アスペクト比を有する合成薄片状金属酸化物に関し、平均の大きさが1μ?100μのものが、適度な光沢と透明感があり、展延性すなわちのびが良いことが記載されており、また、引用例Bに記載されているように、このような平均の大きさ、厚さ、アスペクト比を有する薄片状の酸化亜鉛は公知の化粧料成分であるから、優れたのび、少ないきしみ、優れた透明感を有する薄片状酸化亜鉛を配合するパウダーファンデーションの発明である引用発明において、さらに、優れたのびや透明感を得るために、平均粒子径0.1?1μの薄片状酸化亜鉛に代えて、のびや透明感の点でさらに優れた薄片状酸化亜鉛である平均粒子径1?100μの薄片状酸化亜鉛に含まれる、1?30μの薄片状酸化亜鉛を使用することは当業者が容易に想到し得ることである。

【相違点2】
引用例Aには、「本発明に係わる薄片状酸化亜鉛は、このまま外用剤に配合可能であるが、必要に応じて、シリコン処理等の撥水処理を行うこともできる。」(摘記事項(a-2))と記載されている。
そして、この撥水処理は、化粧用粉体の汗、水等に対する耐水性を高める一般的な処理であり、特定の粒径、厚さ、アスペクト比を有する粉体に対してのみ有用なものではない。
してみれば、引用発明において、薄片状酸化亜鉛として、シリコーン疎水化表面処理を施したものを採用することは、当業者が容易に想到し得る程度のことである。

そして、本願発明の効果は当業者が予想できる程度のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例A?Cに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-20 
結審通知日 2007-01-09 
審決日 2007-01-22 
出願番号 特願平5-344248
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大宅 郁治  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 弘實 謙二
吉住 和之
発明の名称 化粧料  
代理人 小野 信夫  

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