• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1154212
審判番号 不服2004-2355  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-05 
確定日 2007-03-15 
事件の表示 平成9年特許願第38092号「皮膚貼付剤、及び海藻抽出物の、皮膚貼付剤用の保湿性持続剤としての使用」拒絶査定不服審判事件〔平成10年9月8日出願公開、特開平10-236918〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年2月21日の出願であって、拒絶理由に対して平成15年9月22日付けで手続補正書及び意見書が提出され、平成15年12月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成16年2月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月4日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年3月4日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年3月4日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成16年3月4日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、本件補正前の特許請求の範囲:
「【請求項1】ダービリア科(Durvilleaceae)に属する海藻の抽出物から選択される少なくとも1種を必須の成分として含有する膏体を有する、皮膚の保湿性向上持続効果を有する皮膚貼付剤。
【請求項2】含水量30?80%である含水系貼付剤である、請求項1に記載の皮膚貼付剤。
【請求項3】ポリアクリル酸とポリアクリル酸塩と架橋剤とを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の皮膚貼付剤。
【請求項4】 ヒドロキシカルボン酸を含有しない、請求項1?3のいずれかに記載の皮膚貼付剤。
【請求項5】支持体に塗布されてなる、請求項1?4のいずれかに記載の皮膚貼付剤。
【請求項6】ダービリア科(Durvilleaceae)に属する海藻の抽出物から選択される海藻抽出物の、皮膚貼付剤用の保湿性持続剤としての使用。」
は、
「【請求項1】ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、架橋剤、及びダービリア科(Durvilleaceae)に属する海藻の抽出物から選択される少なくとも1種を必須の成分として含有し、かつ含水量35?80重量%である膏体を有する、皮膚の保湿性向上持続効果を有する皮膚貼付剤。
【請求項2】支持体に塗布されてなる請求項1に記載の皮膚貼付剤。
【請求項3】ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、及び架橋剤を必須の成分として含有し、かつ含水量35?80重量%である膏体を有する皮膚貼付剤用の、ダービリア科(Durvilleaceae)に属する海藻の抽出物から選択される海藻抽出物の、保湿性持続剤としての使用。」
と補正された。
上記補正は、本件補正前の請求項1、2を削除し、請求項3に係る発明を実質的に請求項2のみを引用する発明にし、さらに、その発明を特定するために必要な事項である含水量を、35?80重量%に限定することを含むものであって、補正前の請求項3を請求項1とする補正は特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(すなわち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例及び引用例に記載された事項
本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭58-180408号公報(以下、「引用例A」という。)、特開平8-259443号公報(以下、「引用例B」という。)には、それぞれ、以下の事項が記載されている。

引用例A:特開昭58-180408号公報
(摘記A1)「ポリアクリル酸及び/又はポリアクリル酸塩、水、架橋剤を必須成分とする架橋型含水ゲルに、美肌成分が配合されていることを特徴とするシート状パック剤。」(第1頁特許請求の範囲)
(摘記A2)「この発明は整肌および美容のためのパック剤に関し・・・しかも優れた美容効果を発揮するシート状パック剤に関する。」(第1頁左欄下から11行?下から6行)
(摘記A3)「これらのポリアクリル酸及び/又はポリアクリル酸塩と水と架橋剤とから架橋型含水ゲルが構成されるものであるが、ゲル中の水分量は10?95重量%、好ましくは30?80重量%とするのがよい。」(第2頁左下欄下から7行?下から3行)
(摘記A4)「また、美肌成分としては、従来のパック剤などに用いられている各種の美肌用活性物質がいずれも使用でき・・・これらの物質を含水ゲルフィルムもしくはシート中に・・・ブレンド又は吸着などの手段により含ませる。」(第2頁左下欄下から2行?右下欄8行)

引用例B:特開平8-259443号公報
(摘記B1)「【請求項1】(A)ヒドロキシカルボン酸およびその塩から選ばれる少なくとも1種と、(B)アオサ科(Ulvaceae)、オゴノリ科(Gracilariaceae)、テングサ科(Gelidiaceae)、ミリン科(Solieriaceae)・・・ダービリア科(Durvilleaceae)・・・に属する海藻の抽出物から選ばれる少なくとも1種とを含有することを特徴とする皮膚外用組成物。」(第2頁特許請求の範囲の請求項1)
(摘記B2)「【産業上の利用分野】本発明は、刺激の少ない皮膚外用組成物に関する。
【従来の技術】・・・一般に海藻抽出物には保湿作用があることも知られている。」(段落【0001】?【0002】)
(摘記B3)「従来から海藻抽出物は保湿性を高めるなど皮膚に良いとされているが、例えばシオグサ科(Cladophoraceae)、シオミドロ科(Ectocarpaceae)の抽出物には、ヒドロキシカルボン酸およびその塩の刺激を緩和する効果が認められず、この効果は本発明の特定海藻類の抽出物に特異的なものであった。」(段落【0014】)
(摘記B4)「本発明のヒドロキシカルボン酸およびその塩の少なくとも1種と特定の海藻抽出物の少なくとも1種を配合した皮膚外用組成物は、各種化粧用クリーム、乳液、化粧水、美溶液、パック剤、アンダーメークアップ、ファンデーション、ジェル剤、軟膏等の種々の形態で幅広く使用できる。」(段落【0048】)
(摘記B5)「

」(段落【0059】)

(3)対比・判断
引用例Aには、整肌および美容のためのパック剤として、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸塩、水、架橋剤を必須成分とする架橋型含水ゲルに、美肌成分が配合されていることを特徴とするシート状パック剤が記載されており(摘記A1、A2)、さらに、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸塩と水と架橋剤とから架橋型含水ゲルが構成され、ゲル中の水分量は好ましくは30?80重量%とするのがよいこと(摘記A3)、及び、美肌成分は、従来のパック剤などに用いられている各種の美肌用活性物質がいずれも使用でき、それを該含水ゲルフィルムもしくはシート中にブレンド等により含ませることが記載されている(摘記A4)。
してみると、引用例Aには、「ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、架橋剤、及び美肌成分を必須の成分として含有し、かつ含水量30?80重量%である架橋型含水ゲルを有するシート状パック剤。」(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。
そこで、本件補正発明と引用発明Aを対比すると、本願明細書に「膏体(貼付剤組成物)」と記載されている(本願明細書段落【0046】、【0047】)ことからみて、本件補正発明の膏体は、引用発明Aにおける架橋型含水ゲルに該当し、引用発明Aのシート状パック剤は、本件補正発明の皮膚貼付剤に該当する。また、本件補正発明でのダービリア科(Durvilleaceae)に属する海藻の抽出物は、皮膚の保湿性を向上させる成分、すなわち美肌成分であるから、両者は、「ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、架橋剤、及び美肌成分を必須の成分として含有し、かつ含水量35?80重量%である膏体を有する、皮膚貼付剤。」で一致し、美肌成分が本件補正発明は、ダービリア科(Durvilleaceae)に属する海藻の抽出物から選択される少なくとも1種であるのに対し、引用発明Aにはその記載がない点(相違点1)、及び、皮膚貼付剤が、本件補正発明は、皮膚の保湿性向上持続効果を有するものであるのに対し、引用発明Aにはその記載がない点(相違点2)において相違する。
これら相違点について検討する。
引用例Bには、皮膚外用組成物における従来技術として、海藻の抽出物は保湿作用があり、保湿性を高めるなど皮膚に良いとされていること(摘記B2、B3)、及び、海藻として、ダービリア科(Durvilleaceae)に属する海藻が使われることが記載されている(摘記B1、B5)。したがって、引用例Bにはダービリア科(Durvilleaceae)に属する海藻の抽出物は、皮膚の保湿性を高める効果を有することが記載されているといえる。
そして、この「皮膚の保湿性を高める効果」と「皮膚の保湿性向上持続効果」は表現上の差であって実質的に差のないものであるから、引用発明Aにおける美肌成分として、引用例B記載の皮膚の保湿性を高める効果を有するダービリア科(Durvilleaceae)に属する海藻の抽出物を配合し、皮膚の保湿性向上持続効果を有する皮膚貼付剤とすることは、当業者の容易に想到し得るところである。また、本件補正発明の効果も引用例A、Bの記載から当業者の予想するところである。
よって、本件補正発明は、上記引用例A、Bに記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年3月4日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成15年9月22日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記「2.(1)」に記載した、「本件補正前の特許請求の範囲の請求項1」のとおりである。

(1)原査定の理由及び引用例
原査定の拒絶の理由は、本願は、平成15年7月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶すべきものであるというものである。そして、その理由2は、本願に係る発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものであり、本願の出願前に頒布された刊行物として、特開平8-259443号公報(引用例B;拒絶理由での引用文献3)、及び特開平6-65048号公報(以下、「引用例C」という;拒絶理由での引用文献2)が示されている。

(2)引用例に記載された事項
引用例Bに記載された事項は、前記「2.(2)」に示したとおりである。

引用例C:特開平6-65048号公報
(摘記C1)「【従来の技術】美肌・整肌効果を与える化粧料としてのパック剤は、1)張りと潤いの付与、2)皮膚水分の保持、3)保水成分の経皮吸収、4)清浄作用を与えるものとして広く用いられている。従来のパック剤は、泥状物を皮膚に塗布し、乾燥した後、一定時間の放置後、洗い流すか、剥がすかして使用されている。このようなパック剤は、塗布時に手指が汚れ、又乾燥時間を必要とするなどの欠点があった。このために、ポリアクリル酸類から成る乾燥性フィルム状ないしシート状パック剤(特開昭58-180408号公報)や、ポリアクリル酸ソーダ等の層を設け、使用時に水を付与するシート状パック剤(特開昭60-165902号公報)が提案され
ている。
その他、アルギン酸、水溶性高分子物及び架橋剤を必須成分とするシート状含水パック剤(特開平2-145505号公報)・・・等の多数のシート状パック剤が提案されている。」(段落【0002】?【0003】)

(3)対比・判断
引用例Bには、皮膚外用組成物における従来技術として、海藻の抽出物は保湿作用があり、保湿性を高めるなど皮膚に良いとされていること(摘記B2、B3)、及び、海藻として、ダービリア科(Durvilleaceae)に属する海藻が使われることが記載されている(摘記B1、B5)。したがって、引用例Bにはダービリア科(Durvilleaceae)に属する海藻の抽出物は、皮膚の保湿性を高める効果を有することが記載されているといえる。
よって、引用例Bには、「ダービリア科(Durvilleaceae)に属する海藻の抽出物から選択される少なくとも1種を必須の成分として含有する、皮膚の保湿性を高める効果を有する皮膚外用組成物。」(以下、「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。
そこで、本願発明と引用発明Bを対比すると、「皮膚の保湿性向上持続効果」と「皮膚の保湿性を高める効果」は表現上の差であって実質的に差のないものであるから、両者は、組成物として、「ダービリア科(Durvilleaceae)に属する海藻の抽出物を必須の成分として含有する、皮膚の保湿性向上持続効果を有する皮膚外用組成物。」である点で一致し、本願発明は皮膚外用組成物の使用形態を、膏体を有する皮膚貼付剤とするものであるのに対し、引用発明Bにはその記載がない点で相違している。
この相違点を検討する。
引用例Bに記載されているように、皮膚外用組成物の使用形態として、皮膚貼付剤であるパック剤はごく普通の使用形態であり(摘記B4)、しかも、引用例Cに、「美肌・整肌効果を与える化粧料としてのパック剤は、1)張りと潤いの付与、2)皮膚水分の保持、3)保水成分の経皮吸収、4)清浄作用を与えるものとして広く用いられている。」と記載されている(摘記C1)ように、パック剤が美肌・整肌効果を与えるのに有効な使用形態であることは周知である上、パック剤として、膏体を有する皮膚貼付剤も当業者に周知の技術的事項である(摘記C1。必要なら引用例Cに例示されている特開昭58-180408号公報、特開平2-145505号公報参照)。
したがって、引用発明Bの皮膚外用組成物を使用するに際し、その形態を、本願発明のように膏体を有する皮膚貼付剤とすることは、当業者の容易に想到し得るところである。そして、本願発明の効果も、引用例B、Cの記載から、当業者の予想するところである。
よって、本願発明は、引用例B、Cに記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、平成15年9月22日付けの意見書において、「本願発明は、海藻抽出物の中で、ダービリア科に属する海藻の抽出物を特に選択し、その海藻抽出物を含有する膏体を有する皮膚貼付剤とすることにより、高い保湿性、保湿持続性が得られるとの知見に基づいてなされた発明であります。」と主張しているが、本願明細書の保湿性、持続性の評価結果の表1(本願明細書段落【0059】)には、ダービリア科に属する海藻以外の海藻の抽出物で、ダービリア科に属する海藻の抽出物より優れた保湿性を示し持続性が同等であるもの(例えば、海藻抽出物参考例2)が記載されており、上記請求人の主張は該評価結果からみて根拠に乏しいものであり、採用できない。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例B、Cに記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-26 
結審通知日 2007-01-09 
審決日 2007-01-29 
出願番号 特願平9-38092
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福井 美穂  
特許庁審判長 脇村 善一
特許庁審判官 塚中 哲雄
岩瀬 眞紀子
発明の名称 皮膚貼付剤、及び海藻抽出物の、皮膚貼付剤用の保湿性持続剤としての使用  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ