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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1154249
審判番号 不服2004-24184  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-25 
確定日 2007-03-15 
事件の表示 平成 8年特許願第 66245号「画像処理装置及び画像処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月 3日出願公開、特開平 9-261537〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成8年3月22日の出願であって、平成16年10月22日に拒絶査定がされ、これに対して同年11月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年12月27日に手続き補正がなされたものである。

第2 平成16年12月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
1 補正却下の決定の結論
平成16年12月27日付けの手続補正を却下する。

2 理由
(1) 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項5は次のとおり補正された。(以下、「補正発明」という。)
「【請求項5】 被写体を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された複数の撮像位置における複数の画像情報を前記撮像位置情報と対応させて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記複数の記憶画像とその対応する撮像位置情報に基づいて任意の視点位置において前記被写体を観察したときの画像を生成する画像生成手段とを備え、
前記画像生成手段は、前記任意の視点位置における仮想画面上の各位置に、前記任意の視点位置と前記撮像位置情報を用いて特定した前記記憶画像上の画像情報を複写することにより、前記仮想画面上に前記任意の視点位置から観察した画像を生成することを特徴とする画像処理装置。」

(2) 本件補正前である拒絶査定時の特許請求の範囲(平成16年9月27日付け手続補正書)の請求項5に記載された発明は、次のとおりである。
「【請求項5】 被写体を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された複数の撮像位置における複数の画像情報を前記撮像位置情報と対応させて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記複数の記憶画像とその対応する撮像位置情報に基づいて任意の視点において前記被写体を観察したときの画像を生成する画像生成手段とを備え、
前記画像生成手段は、任意の視点位置における仮想画面上に前記被写体と前記任意の視点位置とを通る直線と交差する前記記憶画像上の画像情報を複写することにより前記仮想画面を生成する処理を行うものであることを特徴とする画像処理装置。」(以下、「補正前発明」という。)

(3) 補正の適否
補正発明と補正前発明とを対比すると、補正前発明での、「被写体と任意の視点位置とを通る直線と交差する」記憶画像上の画像情報を複写する処理は、本件補正により、「任意の視点位置と撮像位置情報を用いて特定した」記憶画像上の画像情報を複写する、と補正された。
記憶画像上の画像情報を特定するうえで、「被写体と任意の視点位置とを通る直線と交差する」事項と、「任意の視点位置と撮像位置情報を用いて」特定する事項とは技術的に異なり、かつ、単に「任意の視点位置と撮像位置情報を用いて」特定する事項は、「被写体と任意の視点位置とを通る直線と交差する」事項をさらに限定しているとはいえないから、本件補正は、特許法17条の2第4項2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当しない補正であると認められる。
また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、又は明りょうでない記載の釈明を目的としたものにも該当せず、特許法17条の2第4項の規定に違反するものであり、同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 平成16年12月27日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の発明は、平成16年9月27日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載されたものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 複数の視点位置で撮影した画像を入力する画像入力手段と、
観察者の視点位置を検出する視点検出手段と、
前記画像入力手段によって入力された入力画像から前記視点検出手段によって検出された視点位置における画像を生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段によって生成された画像を表示装置に表示する画像表示手段と、
前記画像生成手段によって生成しようとする画像の視点位置と画像生成時に使用する入力画像の視点位置に応じて画像生成に使用する入力画像中のスキャンラインを決定し、観察者の視点位置における画像を生成する制御手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。」

2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された、田村秀行、北村素子、“3次元仮想空間生成・表示へのモデル系&非モデル系アプローチ”、「電子情報通信学会技術研究報告」、社団法人電子情報通信学会、平成6年5月27日、Vol.94、No.77、p.47-54、HC94-8(以下「引用例」という。)には次の事項が図面と共に開示されている。
ア 「4.HoloMediaシステム(非モデル系)
4.1 多眼データからの立体画像表示
ここでは、第2章で提唱した非モデル系アプローチの実現例として、HoloMedia[13]と名付けた立体画像表示方式について紹介する。
VR空間とのリアルタイム対話の必要条件と考えた視点移動に伴う立体知覚の実現には、多眼カメラから得た3D情報をもとに、視点に応じたステレオ画像対を計算・提示すればよい。我々は、予め計算された多数の視点から見た画像をコンピュータのメモリ内に用意しておき、これを視点位置に追従して切り換え、通常のTV型ディスプレイに時分割方式でステレオ表示する方式を採用している。
HoloMediaシステムのver.1の構成は以下の通りである。
(a)画像入力部
画像入力部では、焦点距離12.5mmの広角レンズを装着したカメラを、可動範囲1mのスライド台上に置き、数cm間隔で画像を撮影している。(中略)将来的には多視点動画像入力が可能な複数台カメラ併置方式に移行する予定である。
(b)画像処理部
画像処理部は、後述する補間処理、前後方向の視点移動、CG画像との合成処理等の多視点画像データの編集・加工を行う。(略)
(c)画像表示部
画像表示部は、観察者の視点位置情報を得るための超音波方式ヘッドトラッキングデバイス(Stereo Graphics社 Crystal Eyes)、視点位置に応じた画像を表示装置に合わせて切り出して表示するGWS(SGI IRIS Crimson/Reality Engine)、十分な視野角が得られる70インチ大型ディスプレイで構成されている(図5)。」(第51ページ左欄26行ないし第52ページ左欄9行)

イ 「4.2 多視点画像データの編集・加工
画像処理部では、次のような工夫を施して、多視点画像データを用意している。
(1)EPIを用いた補間処理
滑らかな視点移動を実現するには、相当数のカメラを設置する必要がある。物理的あるいは経済的な理由から少数台のカメラしか利用できない場合には、画像間で補間を行って、多数台のカメラから得られる画像と等価な画像を生成する。立体視差を与えることを目的としているので、この補間は単純な線形内挿法ではなく、物体のオクルージョンに耐えうる方法でなければならない。
HoloMediaでは、図6に示すような視点間補間処理を行っている。EPI(Epipolar Plane Image)[14]上で直線検出することにより対応点を求めるという概念は[15][16]と同じであるが、直線の検出方法やオクルージョンの処理方法を改善して問題を解決している(詳細は文献[13]に譲る)。
(2)前後方向の視点移動
上記の補間処理で、カメラの移動方向上での任意の視点からの画像が得られる。これに対して、図7の菱形領域の範囲内でならば、観察者の前後・斜め方向の移動に対してもデータ処理で視点追従した画像を生成することができる。
この処理も、HSと同じ原理を用いているので、前後移動に伴って物体像が歪む。これは、上下方向の視差情報がオリジナルデータに含まれていないためである。ここでは、この歪みを目立たないようにするために、画面内の平均的な位置を中心に補正処理を行っている。」(第52ページ右欄2行ないし第53ページ右欄9行、[番号]は、引用例中で引用された参考文献番号)

これら「ア」及び「イ」の記載によると、引用例には、「画像入力部と、超音波方式ヘッドトラッキングデバイスと、補間処理、及び前後移動に伴う物体像の歪みを補正する補正処理を行なう画像処理部と、GWS(グラフィック・ワークステーション)とを備えたHoloMediaシステム」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
前掲「ア」の記載から、引用発明の画像処理部における処理は、多眼カメラから入力された3D情報をもとに、視点移動に伴う視点に応じたステレオ画像対を計算・提示するための処理であるから、入力画像から「観察者の視点位置における画像を生成する」処理、又は「視点検出手段によって検出された視点位置における画像を生成する処理」といえる。
引用発明の「画像入力部」、「超音波方式ヘッドトラッキングデバイス」、「画像処理部」及び「GWS」は、本願発明の「複数の視点位置で撮影した画像を入力する画像入力手段」、「観察者の視点位置を検出する視点検出手段」、「画像入力手段によって入力された入力画像から前記視点検出手段によって検出された視点位置における画像を生成する画像生成手段」、及び「画像生成手段によって生成された画像を表示装置に表示する画像表示手段」にそれぞれ相当し、また、引用発明の「HoloMediaシステム」が、「画像処理装置」であることは明らかである。

以上を踏まえると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
【一致点】
「複数の視点位置で撮影した画像を入力する画像入力手段と、
観察者の視点位置を検出する視点検出手段と、
前記画像入力手段によって入力された入力画像から前記視点検出手段によって検出された視点位置における画像を生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段によって生成された画像を表示装置に表示する画像表示手段とを備えた画像処理装置。」

【相違点】
本願発明では、「画像生成手段によって生成しようとする画像の視点位置と画像生成時に使用する入力画像の視点位置に応じて画像生成に使用する入力画像中のスキャンラインを決定し、観察者の視点位置における画像を生成する制御手段」を備えているのに対して、引用発明では、画像生成手段において「前後移動に伴う物体像の歪みを補正する補正処理」を行っているが、「画像生成手段によって生成しようとする画像の視点位置と画像生成時に使用する入力画像の視点位置に応じて画像生成に使用する入力画像中のスキャンラインを決定し、観察者の視点位置における画像を生成する制御手段」を備えていない点。

4 当審の判断
上記相違点について検討する。
引用発明における「補正処理」は、入力画像の視点位置に対する生成しようとする画像の視点位置の前後方向の移動に伴う物体像の歪みを補正する処理である。
画像処理技術において、物体像の歪みを補正する補正処理は、歪みの原因に基づいて、元の画像中で特定される画像データを、歪みの目立たない位置に再配置して新たな画像を生成する処理である。
画像中の画像データをスキャンラインで特定することは周知技術であるから、引用発明における補正処理を、「画像生成手段によって生成しようとする画像の視点位置と画像生成時に使用する入力画像の視点位置に応じて画像生成に使用する入力画像中のスキャンラインを決定」することにより、元の画像中の画像データを特定し、新たな「観察者の視点位置における画像を生成する」制御手段により行うこと、すなわち、相違点の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得るものと認められる。

なお、当審で発見した特開平7-296195号公報には、「【請求項1】 互いに異なる位置を視点とする複数の画像を多視点画像データとして入力する画像入力手段と、観察者の視点の位置を検出する視点検出手段と、前記視点検出手段により検出された視点位置に基づいて、該位置を視点とする画像を前記多視点画像データから再構成する画像再構成手段と、再構成された画像の歪みを補正する補正手段と、補正された画像を画像出力装置に出力する画像出力手段と、を備えることを特徴とする画像処理装置。」、及び「【0033】[歪み補正]次に、歪み補正部118の処理についてくわしく説明する。多視点画像データベース13の画像は左右方向のみの多視点画像であるため、上下方向の視差情報がない。このため、画像生成部18は、前後方向に視点を移動した画像を光学的に完全に再構成することはできず、上下方向に歪みが生じる。歪み補正部118は利用者の視点位置24に応じて上下方向に画像を拡大・縮小することにより、視点並び直線41から特定の距離にある被写体の像の歪みを補正する。」と、当審の判断を補強する事項について記載されている。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-10 
結審通知日 2007-01-16 
審決日 2007-01-29 
出願番号 特願平8-66245
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06T)
P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村松 貴士  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 松永 稔
青柳 光代
発明の名称 画像処理装置及び画像処理方法  
代理人 内尾 裕一  
代理人 西山 恵三  

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