• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1154300
審判番号 不服2005-9284  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-18 
確定日 2007-03-15 
事件の表示 特願2004-271197「木造躯体に組込む木質耐震開口フレーム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月24日出願公開、特開2005- 76450〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成15年8月29日に出願した特願2003-347587号の一部を特許法第44条第1項の規定により分割して平成16年9月17日に新たな特許出願としたものであって、平成17年4月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。


【2】平成17年5月18日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成17年5月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]
[1]補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 特許請求の範囲の減縮を目的として、
「土台(2A)や横架材と、土台や横架材上に並立された左右の柱(2B、2C)と、左右の柱の上面に横架された胴差(2D)や桁で形成された出入り口などに使用する正面方形の開口部(22)、あるいはマグサで形成された窓などに使用する正面方形の開口部に、当該開口部内に組み込み状態で取付けられる耐震開口フレーム(4)から構成され、
耐震開口フレーム(4)は、内方に向けL字状に構成された左上方枠(4A)と、内方に向けL字状に構成された左下方枠(4B)と、内方に向けL字状に構成された右上方枠(4C)と、内方に向けL字状に構成された右下方枠(4D)と、これらを連結するべく、クサビ効果を有するウッドタッチパイプ(4E12)を備えた引っ張り縦接合金具部(4E)と、クサビ効果を有するウッドタッチパイプ(4F12)を備えた引っ張り横接合金具部(4F)から構成されていることを特徴とする木造躯体に組込む木質耐震開口フレーム。」
と補正された。
そこで、本願の補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて、以下に検討する。

[2]引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平9-256738号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「木造建築物における開口部用耐震フレーム」に関して、下記の事項が記載されている。
(イ)「11は第2発明の木造建築物における正面方形の開口部用耐震フレームで、基礎2上に積層された土台2Aと、この土台の上面に並立された一対の柱3,4と、これら柱の上面に横架されたマグサ5で形成された正面方形の開口部6内に嵌込まれた正面方形に構成された耐震フレーム本体9から構成されている。8は胴差である。耐震フレーム本体9は、内方に向けL字状に構成された左上枠9Aと、内方に向けL字状に構成された左下枠9Bと、内方に向けL字状に構成された右上枠9Cと、内方に向けL字状に構成された右下枠9Dとを正面方形に連結して構成されている水平構造耐力材である。なお、この場合、耐震フレーム本体9における左上枠9A、左下枠9B、右上枠9C、右下枠9Dは、それぞれL字状の一体に形成されているためラーメン構造の剛接合となっている。・・・」(段落【0007】)
(ロ)「・・・耐震フレーム本体9における左上枠9A,左下枠9B,右上枠9C,右下枠9Dの連結構造は下記の通りである。図6を参照して、所謂三枚組接で連結すると共に、この連結箇所が水平なピン13で貫通固着されている。・・・」(段落【0008】)
(ハ)「【実施例】A.上記各耐震フレーム本体の素材は、木質構造の住宅に好適なエンジニアリングウッドのうちLVL、鉄、合成金属、強化プラスチックなどのように強度、剛性の高いものが使用されている。B.・・・耐震フレーム本体9における左上枠9A,左下枠9B,右上枠9C,右下枠9Dの連結構造は、上述のほか下記の通りにすることができる。a.図7の如く、所謂五枚組接で連結すると共に、この連結箇所を水平なピン13で貫通固着する。・・・d.図10の如く、一方の枠の連結部に突設した横連結パイプ18を、他方の枠の連結部に開設した横連結パイプ用受穴19に貫入すると共に、これら両者はピン20で貫通固着されている。この場合、枠はLVLで構成されている。e.図11の如く、一方の枠の連結部に突設した連結片21を、他方の枠の連結部に開設した連結片用受溝22に嵌込むと共に、これら両者はボルト23で貫通固着されている。この場合、枠はLVLで構成されている。」(段落【0009】)
上記(ハ)の「LVL」は、本願の明細書中にも挙げられているように、木質材であるから、これら(イ)?(ハ)の記載事項等および特に図2,6の記載を含む引用文献1全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「土台2Aと、土台上に並立された一対の柱3,4と、一対の柱の上面に横架された胴差8、あるいはマグサ5で形成された正面方形の開口部6に、当該開口部内に嵌込まれる耐震フレーム本体9から構成され、
耐震フレーム本体9は、内方に向けL字状に構成された左上枠9Aと、内方に向けL字状に構成された左下枠9Bと、内方に向けL字状に構成された右上枠9Cと、内方に向けL字状に構成された右下枠9Dと、これらを連結するべく、所謂三枚組接と水平なピン13,所謂五枚組接と水平なピン13,横連結パイプ18と横連結パイプ用受穴19とピン20,連結片21と連結片用受溝22とボルト23,等の種々の連結部から構成されている木造建築物に嵌込む木質の開口部用耐震フレーム11。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

[3]対比
補正発明と引用文献1記載の発明とを比較すると、その機能ないし構造等からみて、引用文献1記載の発明の「一対の柱3,4」,「開口部6」,「開口部内に嵌込まれる」,「耐震フレーム本体9」,「左上枠9A」,「左下枠9B」,「右上枠9C」,「右下枠9D」,「木造建築物に嵌込む木質の開口部用耐震フレーム11」は、補正発明の「左右の柱(2B、2C)」,「出入り口などに使用する正面方形の開口部(22)、あるいは窓などに使用する正面方形の開口部」,「開口部内に組み込み状態で取付けられる」,「耐震開口フレーム(4)」,「左上方枠(4A)」,「左下方枠(4B)」,「右上方枠(4C)」,「右下方枠(4D)」,「木造躯体に組込む木質耐震開口フレーム」にそれぞれ相当し、
また、引用文献1記載の発明の「所謂三枚組接と水平なピン13,所謂五枚組接と水平なピン13,横連結パイプ18と横連結パイプ用受穴19とピン20,連結片21と連結片用受溝22とボルト23,等の種々の連結部」と、補正発明の「クサビ効果を有するウッドタッチパイプ(4E12)を備えた引っ張り縦接合金具部(4E)と、クサビ効果を有するウッドタッチパイプ(4F12)を備えた引っ張り横接合金具部(4F)」とは、何れも、「各枠を連結する接続部」である点で技術的に共通するものであるから、両者は、
「土台や横架材と、土台や横架材上に並立された左右の柱と、左右の柱の上面に横架された胴差や桁で形成された出入り口などに使用する正面方形の開口部、あるいはマグサで形成された窓などに使用する正面方形の開口部に、当該開口部内に組み込み状態で取付けられる耐震開口フレームから構成され、
耐震開口フレームは、内方に向けL字状に構成された左上方枠と、内方に向けL字状に構成された左下方枠と、内方に向けL字状に構成された右上方枠と、内方に向けL字状に構成された右下方枠と、これらを連結するべく、各枠を連結する接続部から構成されている木造躯体に組込む木質耐震開口フレーム。」
の点で一致し、次の点で相違している。
<相違点>
各枠を連結する接続部が、補正発明では、「クサビ効果を有するウッドタッチパイプ(4E12)を備えた引っ張り縦接合金具部(4E)と、クサビ効果を有するウッドタッチパイプ(4F12)を備えた引っ張り横接合金具部(4F)」であるのに対して、引用文献1記載の発明では、所謂三枚組接と水平なピン13,所謂五枚組接と水平なピン13,横連結パイプ18と横連結パイプ用受穴19とピン20,連結片21と連結片用受溝22とボルト23,等の種々の連結部であるものの、上記のようなものであるのか定かでない点。

[4]判断
木質部材相互の接続部を、補正発明のように、クサビ効果を有する管状部や柱状部を備えた引っ張り接合金具部で構成することは、周知技術(例えば、特開平10-311095号公報,原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-231561号公報等を参照。)にすぎず、該技術を、引用文献1記載の発明の各枠を連結する接合部として採用することは当業者が適宜なしうることにすぎない。
そして、補正発明全体の効果も引用文献1記載の発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができないから、補正発明は、引用文献1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものといわざるをえない。

[5]むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。


【3】本願発明について
平成17年5月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】土台(2A)や横架材と、土台や横架材上に並立された左右の柱(2B、2C)と、左右の柱の上面に横架された胴差(2D)や桁で形成された出入り口などに使用する正面方形の開口部(22)、あるいはマグサで形成された窓などに使用する正面方形の開口部に、当該開口部内に組み込み状態で取付けられる耐震開口フレーム(4)から構成され、
耐震開口フレーム(4)は、内方に向けL字状に構成された左上方枠(4A)と、内方に向けL字状に構成された左下方枠(4B)と、内方に向けL字状に構成された右上方枠(4C)と、内方に向けL字状に構成された右下方枠(4D)と、これらを連結する引っ張り縦接合金具部(4E)と、引っ張り横接合金具部(4F)から構成されていることを特徴とする木造躯体に組込む木質耐震開口フレーム。
【請求項2】?【請求項7】(記載を省略する。)」(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明」という。)

[1]引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物の記載事項は、上記【2】[2]に記載したとおりである。

[2]対比・判断
本願発明は、上記【2】で検討した補正発明における「引っ張り縦接合金具部(4E)」についての「クサビ効果を有するウッドタッチパイプ(4E12)を備えた」との限定事項および「引っ張り横接合金具部(4F)」についての「クサビ効果を有するウッドタッチパイプ(4F12)を備えた」との限定事項を削除したものであって、本願発明の構成に欠くことができない事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明が、上記【2】[4]に記載したとおり、引用文献1記載の発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1記載の発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[3]むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-21 
結審通知日 2007-01-09 
審決日 2007-01-22 
出願番号 特願2004-271197(P2004-271197)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E04B)
P 1 8・ 121- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 智也  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 宮川 哲伸
西田 秀彦
発明の名称 木造躯体に組込む木質耐震開口フレーム  
代理人 小島 高城郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ