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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03B |
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管理番号 | 1154309 |
審判番号 | 不服2006-11091 |
総通号数 | 89 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-05-30 |
確定日 | 2007-03-15 |
事件の表示 | 平成11年特許願第368799号「撮像装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月 6日出願公開、特開2001-183735〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年12月27日の出願であって、平成18年4月25日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月28日付で手続補正がなされたものである。 2.平成18年6月28日付の手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成18年6月28日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 〔理由〕 (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項3は、 「【請求項3】 撮影者の視線の先にある被写体を撮像し,被写体像を表す画像信号を得, 撮影者の視線の移動量を検出し,かつ視線の移動量が所定値以下であるときに撮影者の視線の停止を検出し, 撮影者の視線の停止が所定時間以上であるかどうかを判定し, 撮影者の視線の停止が所定時間以上であると判定されるたびに,被写体を撮像することにより得られる画像信号を記録媒体に記録する, 撮像方法。」と補正された。 上記補正は、「撮影者の視線の停止が所定時間以上であると判定されたことに応じて」を「撮影者の視線の停止が所定時間以上であると判定されるたびに」と補正するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項3に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-100148号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。 「撮影レンズにより形成される撮影画面をフィルムに露光させる」(第2頁左欄第3?4行) 「【0011】レンズ鏡筒10をカメラボディ20に装着した場合には、被写体から到来する撮影光束は、撮影レンズ11を通って、カメラボデイ20に設けられたメインミラー21に導かれる。撮影光束の一部は、メインミラー21によってファインダー側に反射され、表示手段23、スクリーン24、ペンタプリズム25、接眼レンズ26を通ることにより、撮影者によりスクリーン像が観察される。」(第2頁右欄第49行?第3頁左欄第6行) 「【0053】(第3の実施例)図25は、本発明による視線検出装置を有するカメラの第3の実施例の動作を示す流れ図である。図25(A)において、ステップ200では、レリーズボタン11の半押し動作でCPU1は動作を開始する。ステップ201では、予め固定して設定された位置および大きさを有する焦点検出領域に対応した光電変換手段35からの出力信号を用いて周知の焦点検出演算を行い、焦点検出結果(デフォーカス量)を得て、ステップ202に進む。ステップ202では、焦点検出結果を表示手段23により画面上に表示し、ステップ203に進む。ステップ203では、焦点検出結果(デフォーカス量)に応じて、モータ60を制御し、撮影レンズ11を合焦点へと駆動して、ステップ204に進む。ステップ204では、焦点検出の結果に基づいて、合焦でない場合はステップ201へ戻り、合焦の場合はステップ205に進む。従って、非合焦中は常時焦点検出をし、その結果に応じてレンズ駆動が行われることになる。 【0054】ステップ205では、ファインダーを観察している撮影者の視線位置を、視線検出手段40からの信号に基づき検出する。この実施例では、一回の焦点検出シーケンスで一度視線位置を検出しているが、焦点検出シーケンスとは独立なタイミング(例えば、所定時間毎のタイマー割り込み)で視線位置検出を行うようにしてもよい。ステップ206では、検出された視線位置が、焦点検出位置と一致していない場合はステップ205に戻り、一致している場合にはステップ207に進む。ただし、位置の一致判定には多少マージンをもたせる。また、視線位置のかわりに注視位置と比較するようにしてもよい。 【0055】ステップ207では、このステップに突入してからの経過時間が測定され、経過時間が所定時間以内の場合には、ステップ205に戻り、所定時間以上の場合はステップ208に進む。ステップ208では、シャッター手段17による露光動作を起動する。 【0056】以上の動作により合焦した後に、合焦が得られた焦点検出位置に一定時間以上視線が保持された場合は、自動的に露光動作を行うことができる。また、以上の説明では、焦点検出位置が固定されていたが、視線ワンショット焦点検出モードで焦点検出位置を決定してもよい。」(第7頁左欄第49行?同頁右欄第39行) 「【0059】(第4の実施例)図26は、本発明による視線検出装置を有するカメラの第4の実施例の動作を示す流れ図である。この実施例では、図25(A)に示した実施例の流れ図のステップ204以降を変更して、ステップ203よりステップ210に進む。 【0060】ステップ210では、焦点検出の結果、合焦でない場合はステップ201へ戻り、合焦の場合はステップ211に進む。従って、非合焦中は常時焦点検出し、その結果に応じてレンズ駆動が行われることになる。ステップ211では、このステップに突入してからの経過時間が測定され、経過時間が所定時間以内の場合はステップ201に戻り、所定時間以上の場合は212に進む。従って、合焦後所定時間は常時焦点検出し、その結果に応じてレンズ駆動が行われることになる。ステップ212では、シャッター手段17による露光動作を起動し、ステップ213に進む。ステップ213では、露光動作の終了を待機し、ステップ201へ戻る。 【0061】以上の動作により合焦した後に一定時間以上合焦が保持された場合は、自動的に露光動作を行うことができる」(第8頁左欄第3?22行) カメラは被写体を撮像するものであるので、前記記載事項と図25(A)の記載からみて、引用文献1には、 「被写体を撮像することにより、撮影者によりスクリーン像が観察され、被写体像がフィルムに露光されるものであって、 ステップ206では、検出された視線位置が、焦点検出位置と一致している場合にはステップ207に進み、 ステップ207では、このステップに突入してからの経過時間が測定され、所定時間以上の場合はステップ208に進み、 ステップ208では、シャッター手段17による露光動作を起動する撮像方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (3)対比 視線位置が、予め固定して設定された焦点検出位置と一致しているということは、視線の移動が停止しているということであるので、引用発明の「ステップ206では、検出された視線位置が、焦点検出位置と一致している場合には」は、本願補正発明の「撮影者の視線の移動量を検出し,かつ視線の移動量が所定値以下であるときに撮影者の視線の停止を検出し」に、 引用発明の「ステップ207では、このステップに突入してからの経過時間が測定され、所定時間以上の場合は」は、本願補正発明の「撮影者の視線の停止が所定時間以上であるかどうかを判定し,撮影者の視線の停止が所定時間以上であると判定されると」に、 引用発明の「ステップ208では、シャッター手段17による露光動作を起動する。」は、本願補正発明の「被写体を撮像する。」に、それぞれ相当するものであるので、 本願補正発明と引用発明とを対比すると、 「被写体を撮像し、 撮影者の視線の移動量を検出し、かつ視線の移動量が所定値以下であるときに撮影者の視線の停止を検出し、 撮影者の視線の停止が所定時間以上であるかどうかを判定し、 撮影者の視線の停止が所定時間以上であると判定されると、被写体を撮像する撮像方法。」で両者の構成は一致し、次の点で両者の構成は相違する。 相違点(A): 撮影者の視線の先にあるものが、本願補正発明は、被写体であるのに対して、引用発明は、スクリーン像である点。 相違点(B): 本願補正発明は、被写体を撮像することにより得られる被写体像を表す画像信号を記録媒体に記録するのに対して、引用発明は、被写体を撮像することにより得られる被写体像をフィルムに露光する点。 相違点(C): 本願補正発明は、撮影者の視線の停止が所定時間以上であると判定されるたびに、被写体を撮像するのに対して、引用発明は、撮影者の視線の停止が所定時間以上であると判定されると、被写体を撮像する点。 (4)判断 相違点(A)について: 撮影者の視線の先にある被写体を撮像することは周知技術である。(例えば、特開平8-84280号公報、特開平9-5835号公報参照。) 引用発明に前記周知技術を採用して、本願補正発明における相違点(A)のような構成とすることに、格別の困難性は認められない。 相違点(B)について: 被写体を撮像することにより得られる被写体像を表す画像信号を記録媒体に記録することは、ディジタルカメラ等で周知技術である。 引用発明に前記周知技術を採用して、本願補正発明における相違点(B)のような構成とすることに、格別の困難性は認められない。 相違点(C)について: 撮像方法において、連続撮影(繰り返し撮影)は引例を挙げるまでもなく周知技術である。 さらに、引用文献1の段落【0060】および図26には、「ステップ212では、シャッター手段17による露光動作を起動し、ステップ213に進む。ステップ213では、露光動作の終了を待機し、ステップ201へ戻る。」の記載があり、露光動作をした後で、再度露光動作ができることが記載されており、これは、連続撮影(繰り返し撮影)である。 引用発明の「撮影者の視線の停止が所定時間以上であると判定されると、被写体を撮像する撮像方法」に、前記周知技術あるいは前記引用文献1の記載を採用して、連続撮影(繰り返し撮影)するようにして「撮影者の視線の停止が所定時間以上であると判定されるたびに、被写体を撮像する撮像方法」としたことに格別の困難性は認められない。 本願補正発明の構成による効果は、引用発明及び各周知技術並びに前記引用文献1の記載から予測される範囲のものである。 本願補正発明は、引用文献1に記載された発明及び各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成18年6月28日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成18年4月3日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項3】 撮影者の視線の先にある被写体を撮像し,被写体像を表す画像信号を得, 撮影者の視線の移動量を検出し,かつ視線の移動量が所定値以下であるときに撮影者の視線の停止を検出し, 撮影者の視線の停止が所定時間以上であるかどうかを判定し, 撮影者の視線の停止が所定時間以上であると判定されたことに応じて,被写体を撮像することにより得られる画像信号を記録媒体に記録する, 撮像方法。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の「撮影者の視線の停止が所定時間以上であると判定されるたびに、被写体を撮像する」から「撮影者の視線の停止が所定時間以上であると判定されたことに応じて,被写体を撮像する」と、減縮を外したものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用文献1に記載された発明及び各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 |
審理終結日 | 2007-01-05 |
結審通知日 | 2007-01-16 |
審決日 | 2007-01-30 |
出願番号 | 特願平11-368799 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G03B)
P 1 8・ 121- Z (G03B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柏崎 康司 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
辻 徹二 柏崎 正男 |
発明の名称 | 撮像装置および方法 |
代理人 | 牛久 健司 |
代理人 | 高城 貞晶 |
代理人 | 井上 正 |