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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A41B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41B
管理番号 1154364
審判番号 不服2005-16303  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-25 
確定日 2007-03-30 
事件の表示 平成10年特許願第122446号「使い捨てパンツの折り畳み構造」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月27日出願公開、特開平11-113956〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成9年10月8日に出願された実願平9-8953号を、平成10年5月1日に特許出願に変更して出願されたものである。
そして、平成17年5月2日付で拒絶理由が通知され、それに対し、同年6月15日付で意見書の提出がなされ、同年7月22日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年17年8月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月26日付で手続補正がなされたものである。そして、平成18年4月10日付で早期審理に関する事情説明書が提出されている。

2.平成17年9月26日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年9月26日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の目的、新規事項の検討
上記補正により、特許請求の範囲の請求項1は
「透液性シートと不透液性シートおよび両シートの間に装填される吸収マットからなる吸収本体と、前記吸収本体が内側に配設されている不織布製の外側シートからなり、ウエスト部開口周囲と脚部開口周囲とに弾性体が添設された使い捨てパンツにおいて、
上記使い捨てパンツの上部には、ウエスト部開口周囲の弾性体と略平行に複数本の弾性体がパンツ全周にわたって添設されており、
パンツの左右両側方部がパンツの前側または後側に折り返されると共に、パンツ上部とパンツ下部とが重ね合わされた状態で折り畳まれてなることを特徴とする使い捨てパンツの折り畳み構造。」
と補正された。

上記請求項1に対する補正は、「透液性シートと不透液性シートおよび両シートの間に装填される吸収マットからなる吸収本体と、前記吸収本体が内側に配設されている不織布製の外側シートからなり」及び「上記使い捨てパンツの上部には、ウエスト部開口周囲の弾性体と略平行に複数本の弾性体がパンツ全周にわたって添設されており、」という事項を付加するものである。
この補正は、出願当初の請求項3の内容及び段落0010の「上記外側シート1は、2枚の不織布11、12から構成されており」という内容を根拠としており、出願当初の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「使い捨てパンツ」の構成をさらに限定しているものである。
よって、上記請求項1に対する補正は、新規事項の追加はなく、限定的減縮を目的とするものに該当する。

そして、出願当初の請求項3の内容を請求項1に取り込んだことに伴い、出願当初の請求項4を請求項3に繰り上げ、引用請求項を「請求項1または2」と補正しているが、新規事項の追加はない。

したがって、平成17年9月26日付手続補正(以下、本件補正という。)は、特許法第17条の2第3項及び第4項各号の要件を満たしている。

(2)本願補正発明
本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、本願補正発明という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するかどうか)について以下に検討する。

(3)引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、登録実用新案第3021190号公報(以下、引用刊行物1という。)には、図2の記載と共に次のことが記載されている。
(a)「本考案は胴部開口と一対の脚部開口を設けた子供用または大人用の使い捨てパンツに関し、詳細には複数枚の使い捨てパンツを包装袋内に収納するに当たり、コンパクトな状態でパンツを整列させて収納できるように整形された使い捨てパンツに関するものである。」(段落0001)
(b)「図5は使い捨てパンツの一例を示す正面説明図である。この使い捨てパンツPはバックシート1、吸収体5およびトップシート2を主構成部材とする略砂時計形状に形成された積層体を前後に2つ折りし、その両側縁を接合線4、4において接着して略五角形に形成され、使い捨てパンツPの上部には胴部開口が、下部の左右には一対の脚部開口が形成される。」(段落0002)
(c)「上記バックシート1は、一般的には、少なくとも1枚の不透液性シート製の防漏シートを含む積層シートが用いられ、また胴部開口の周縁および脚部開口の周縁にはそれぞれ伸長状態の弾性体(複数本の弾性糸や帯状のテープ材など)3a,3cが添設され、肌へ密着するギャザー部が形成される。弾性体3aの下方部には、この弾性体3aと平行に他の弾性体3b(図例においては複数本の弾性糸)が添設され、胴部の密着性をさらに高める構成も採用される。また吸収体5はパルプ繊維、高吸水性樹脂、熱可塑性樹脂の粉末や繊維などを混合し、これを加熱処理することによって、吸収体5全体の保形性を高めてかつ厚みを抑えた略矩形状のものが汎用される。さらにトップシート2は吸収体5へ尿等の液体を導くため、透液性を有する合成繊維製不織布が用いられ、その上面側部には脚部の根元部分の尿漏れを防止する目的で一対の立上がりギャザー(図示しない)が配設される。」(段落0003)
(d)「図2は第2の考案の実施例を示す説明図であり、使い捨てパンツPの左右の耳部S1,S2は共に、パンツ前部F側に折り返されている。すなわち耳部S1,S2のバックシート1と吸収体5側のバックシート1が対面するように、S1,S2を折り重ねた構成である。なお耳部S1,S2は共にパンツ後部Bの外側へ折り返したものであっても良いし、」(段落0016)

ここで、上記(b)、(c)は従来の技術の説明であるが、図2に係る例においても同様の構成を有していることは明らかである。
したがって、これらの記載事項から、引用刊行物1には次の発明(以下、引用発明1という。)が記載されているものと認める。

透液性の不織布製のトップシートと、吸収体と、前記吸収体が内側に配設されている不透液性のバックシートとからなり、胴部開口の周縁と脚部開口の周縁とに弾性体が添設された使い捨てパンツにおいて、
上記使い捨てパンツの上部には、胴部開口の周縁の弾性体と平行に複数本の弾性体がパンツ全周にわたって添設されており、
パンツの左右両耳部がパンツの前側または後側に折り返される使い捨てパンツ。

また、原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-21238号公報(以下、引用刊行物2という。)には、第3、4図の記載と共に次のことが記載されている。
(e)「かかる紙おむつにおいて、折り畳みは、まず第3図のように、製品の両側における前後方向折り線Y、Yを境として両側部を内側に折り畳み、その後、第4図のように、製品の前後における横断方向折り線X、Xを境として両端部内側に折り畳むことにより行われる。」(第2頁左下欄第12?17行)
(f)「上記例は、前後方向に3つ折りの例であるが、2つ折りや4つ折り以上の場合、その対応折り線位置に括れ部を形成すればよい。」(第3頁左上欄第2?4行)

したがって、これらの記載事項から、引用刊行物2には次の発明が(以下、引用発明2という。)が記載されているものと認める。

両側部を内側に折り畳み、前後方向に2つ折り以上に折り畳む紙おむつ。

(4)対比
ここで、引用発明1の「胴部開口の周縁」、「脚部開口の周縁」、「耳部」は、本願補正発明の「ウエスト部開口周囲」、「脚部開口周囲」、「側方部」に相当する。また、引用発明1の「バックシート」及び「トップシート」、「吸収体」は本願補正発明1の「外側シート」、「吸収本体」に機能上相当する。また、引用発明1の「平行」と本願補正発明の「略平行」とは、実質的に格別相違のないものである。

よって、本願補正発明と引用発明1とを比較すると、両者は、
吸収本体と、前記吸収本体が内側に配設されている外側シートからなり、ウエスト部開口周囲と脚部開口周囲とに弾性体が添設された使い捨てパンツにおいて、
上記使い捨てパンツの上部には、ウエスト部開口周囲の弾性体と略平行に複数本の弾性体がパンツ全周にわたって添設されており、
パンツの左右両側方部がパンツの前側または後側に折り返されると使い捨てパンツの折り畳み構造。
である点で一致し、次の点で相違するものと認める。
<相違点1>
本願補正発明の「吸収本体」が「透液性シートと不透液性シートおよび両シートの間に装填される吸収マット」からなり、「外側シート」が「不織布製」であるのに対し、引用発明1においては、「吸収本体」は、透液性の不織布製のトップシートと不透液性のバックシートの間に吸収体が装填されるものであり、「外側シート」に相当するバックシート及びトップシートはバックシートのみが不織布製である点。
<相違点2>
本願補正発明が、左右両側方部が折り返されることに加え、「パンツ上部とパンツ下部とが重ね合わされた状態で折り畳まれてなる」ものであるのに対し、引用発明1においては、パンツ上部とパンツ下部は折り畳まれていない点。

(5)判断
上記相違点について検討する。
<相違点1>について
使い捨てパンツにおいて、「吸収本体」が「透液性シートと不透液性シートおよび両シートの間に装填される吸収マット」からなり、「外側シート」を「不織布製」とすることは、従前周知(一例として、特開平6-54878号公報参照。)であり、「吸収本体」、「外側シート」をこのような周知の形式のものとすることは、当業者であれば所望により適宜なし得た設計変更にすぎない。

<相違点2>について
パンツ型ではないものの、使い捨てのおむつにおいて、コンパクト化のため、適宜所望回数前後方向に折り畳むことは、上記引用発明2に示されるように公知技術であり、また、使い捨てではないもののパンツをパンツ上部とパンツ下部とが重ね合わされた状態で折り畳むことも周知(一例として、特開昭59-93625号公報参照。)のことである。そして、引用発明1においてもコンパクト化ということを目的として左右両側方部を折り返すものであるから、さらなるコンパクト化を図るのであれば、さらにパンツの本体を前もしくは後ろに2つ折りすること、すなわちパンツ上部とパンツ下部とが重ね合わされた状態で折り畳むようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明の効果も当業者の予測を越えるような格別のものはない。

したがって、本願補正発明は、引用刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成17年9月26日付手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、出願当初の明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「少なくともウエスト部開口周囲と脚部開口周囲とに弾性体が添設された使い捨てパンツにおいて、パンツの左右両側方部がパンツの前側または後側に折り返されると共に、パンツ上部とパンツ下部とが重ね合わされた状態で折り畳まれてなることを特徴とする使い捨てパンツの折り畳み構造。」

(1)引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載事項は、前記2.(3)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「透液性シートと不透液性シートおよび両シートの間に装填される吸収マットからなる吸収本体と、前記吸収本体が内側に配設されている不織布製の外側シートからなり」及び「上記使い捨てパンツの上部には、ウエスト部開口周囲の弾性体と略平行に複数本の弾性体がパンツ全周にわたって添設されており、」という事項を省いた上位概念のものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに一部の構成要件を限定したものに相当する本願補正発明が、前記2.に記載したとおり、引用刊行物1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。

なお、平成18年5月22日付の審理終結通知(発送日:同年5月23日)の後、同年5月25日付で補正をする用意があるので審理再開を求める旨の上申書が、同年5月31日付で同趣旨の審理再開申立書が提出されているが、このような主張は、補正を補正可能期間に限って認めることとした特許法の定める補正制度と相容れないものである。よって、審理を再開することとはしない。
また、補正案を提示し補正の機会を求める旨の上申書が 平成17年11月17日付で提出されているが、上記と同様に特許法が補正の時期的制限を設けていることの趣旨に鑑みて、本件においてあえて補正の機会を設けることとはしない。
 
審理終結日 2006-05-22 
結審通知日 2006-05-23 
審決日 2006-06-09 
出願番号 特願平10-122446
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A41B)
P 1 8・ 575- Z (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹下 和志内山 隆史  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 宮崎 敏長
一ノ瀬 覚
発明の名称 使い捨てパンツの折り畳み構造  
代理人 植木 久一  
代理人 二口 治  
代理人 伊藤 浩彰  
代理人 菅河 忠志  

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