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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01F
管理番号 1154413
審判番号 不服2004-19295  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-16 
確定日 2007-03-19 
事件の表示 平成9年特許願第259381号「液体厚さ測定方法とその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年3月26日出願公開、特開平11-83599〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯及び本願発明
本願は、平成9年9月8日の特許出願であって、拒絶査定が平成16年8月10日付けでされ、同月17日に発送されたところ、この拒絶査定に対する審判が同年9月16日に請求されたものである。
本願の請求項1?5に係る発明は、平成16年7月23日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】 レーザ光が液面で反射できるように、レーザ光線の反射性の良い、赤、白、黄系統の着色剤により着色した計測用液体と、該計測用液体が流れる液受け面と、レーザ光を前記着色した液面に対し反射可能な角度で出射しその反射レーザを受けて前記液受け面及び液面までの距離を測定するレーザ変位計とを用意し、予め計測用液体が流れる前の液受け面までの距離をレーザ変位計で計測して第1の距離データを得た後、該レーザ変位計計測部と液受け面までの位置関係を維持した状態で、前記着色状態にある計測用液体を液受け面に流して前記レーザ変位計により該液体表面までの距離を計測して第2の距離データを得、前記第1の距離データと第2の距離データの差を演算することにより液体厚さを測定することを特徴とした液体厚さ測定方法。」


2 刊行物
(1)特開昭62-229030号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前の昭和62年10月7日に頒布された刊行物である特開昭62-229030号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「この発明は、各種金属の連続製錬法において上部が開放された樋の中を流れる高温な溶融金属の流量を測定する際等に用いて好適な流量測定方法に関するものである。」(第1頁右下欄第3?6行)

イ 「この発明の流量測定方法は、先ず流体のない状態で上部が開放された流路上方において、流体の流れる方向と交差する方向に非接触式の距離計を走行させてこの走行方向に沿う上記距離計から上記流路の底部までの距離を測定し、次いで、流体の流れている状態で上記流路の上方において上記距離計の走行方向と同方向に非接触式のレーザ距離計を走行させてこのレーザ距離計から上記底部の上方に位置する流体表面までの距離を測定し、以上によって得られた流路底部までの距離と流体表面までの距離との差から上記流路の当該箇所における流体の断面積値を算出し、この断面積値から流体の流量を得る構成としたものである。」(第2頁右上欄第6?18行)

ウ 「第1図は、この発明の流量測定方法の一例を説明するための模式図である。第1図において、図中符号lは、上部が開放された流路2を流れる溶融金属(流体)3の流量を測定するためのレーザ距離計を示すものである。このレーザ距離計1は、光源としてHe-Neレーザ光を用いた所謂非接触式の距離計で、上記流路2の上方において上記溶融金属3の流れ方向と直交する方向に移動自在に設けられている。そして、このレーザ距離計1にはインターフェイス4を介して、このレーザ距離計によって得られるデータを演算処理するための計算機5と、その結果得られる流量を表示するための表示器6とが順次接続されている。なお、図中符号7は、流路2の底部に形成される上記溶融金属3の固形物を示すものである。」(第2頁右上欄第20行?同頁左下欄第15行)

(2)引用発明
上記摘記事項アより、「各種金属の連続製錬法において上部が開放された樋の中を流れる高温な溶融金属の流量を測定する流量測定方法」が読み取れる。
同摘記事項イより、「先ず流体のない状態で上部が開放された流路上方において、流体の流れる方向と交差する方向に非接触式の距離計を走行させてこの走行方向に沿う上記距離計から上記流路の底部までの距離を測定し、次いで、流体の流れている状態で上記流路の上方において上記距離計の走行方向と同方向に非接触式のレーザ距離計を走行させてこのレーザ距離計から上記底部の上方に位置する流体表面までの距離を測定し、以上によって得られた流路底部までの距離と流体表面までの距離との差から上記流路の当該箇所における流体の断面積値を算出し、この断面積値から流体の流量を得る」点が読み取れる。
同摘記事項ウより、「レーザ距離計1にはインターフェイス4を介して、このレーザ距離計によって得られるデータを演算処理するための計算機5と、その結果得られる流量を表示するための表示器6とが順次接続されている」点が読み取れる。
以上より、引用例には、「各種金属の連続製錬法において上部が開放された樋の中を流れる高温な溶融金属の流量を測定する流量測定方法において、先ず流体のない状態で上部が開放された流路上方において、流体の流れる方向と交差する方向に非接触式の距離計を走行させてこの走行方向に沿う上記距離計から上記流路の底部までの距離を測定し、次いで、流体の流れている状態で上記流路の上方において上記距離計の走行方向と同方向に非接触式のレーザ距離計を走行させてこのレーザ距離計から上記底部の上方に位置する流体表面までの距離を測定し、以上によって得られた流路底部までの距離と流体表面までの距離との差から上記流路の当該箇所における流体の断面積値を算出し、この断面積値から流体の流量を得るものであって、レーザ距離計1にはインターフェイス4を介して、このレーザ距離計によって得られるデータを演算処理するための計算機5と、その結果得られる流量を表示するための表示器6とが順次接続されていることを特徴とする流量測定方法」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3 対比・判断
(1)本願発明1と引用発明との対比
本願発明1(以下、「前者」という。)と引用発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の「上部が開放された流路」の「底部」及び「非接触式のレーザ距離計」は、それぞれ前者の「計測用液体が流れる液受け面」及び「レーザ光を液面に対し反射可能な角度で出射しその反射レーザを受けて前記液受け面及び液面までの距離を測定するレーザ変位計」に相当する。
後者の「先ず流体のない状態で上部が開放された流路上方において、上記距離計から上記流路の底部までの距離を測定」することは、前者の「予め計測用液体が流れる前の液受け面までの距離をレーザ変位計で計測して第1の距離データを得」ることに相当し、後者の「次いで、流体の流れている状態で上記流路の上方において上記距離計の走行方向と同方向に非接触式のレーザ距離計を走行させてこのレーザ距離計から上記底部の上方に位置する流体表面までの距離を測定し、」は、前者の「...後、該レーザ変位計計測部と液受け面までの位置関係を維持した状態で」、「計測用液体を液受け面に流して前記レーザ変位計により該液体表面までの距離を計測して第2の距離データを得、」に相当する。
また、後者の「以上によって得られた流路底部までの距離と流体表面までの距離との差から上記流路の当該箇所における流体の断面積値を算出」することは、『流路底部までの距離と流体表面までの距離との差』が液体の厚さに他ならないから、前者の「第1の距離データと第2の距離データの差を演算することにより、液体厚さを測定する」ことに相当し、後者の「流量測定方法」は、前者の「液体厚さ測定方法」に相当する。
してみれば、前者と後者とは、「計測用液体が流れる液受け面と、レーザ光を液面に対し反射可能な角度で出射しその反射レーザを受けて前記液受け面及び液面までの距離を測定するレーザ変位計とを用意し、予め計測用液体が流れる前の液受け面までの距離をレーザ変位計で計測して第1の距離データを得た後、該レーザ変位計計測部と液受け面までの位置関係を維持した状態で、計測用液体を液受け面に流して前記レーザ変位計により該液体表面までの距離を計測して第2の距離データを得、前記第1の距離データと第2の距離データの差を演算することにより液体厚さを測定することを特徴とした液体厚さ測定方法。」という点で一致し、以下の相違点で相違する。

[相違点]
前者の「計測用液体」は「レーザ光が液面で反射できるように、レーザ光線の反射性の良い、赤、白、黄系統の着色剤により着色」したものであるのに対して、後者では、そのような液体を計測対象としていない点。

(2)判断
以下、上記相違点について検討する。
引用発明の測定原理自体は、「各種金属の連続製錬法において上部が開放された樋の中を流れる高温な溶融金属」だけでなく、種々の計測用液体に適用可能なものであって、例えば、反射性の良くないことはともかくとして、着色状態にない液体をその対象とすることもできるものである。
そして、かかる着色状態にない液体を対象とした場合に、照射光線がその液面で反射できるように当該液体を光線の反射性の良い着色剤により着色することは、例えば、本願の出願前の平成5年2月2日に頒布された刊行物である特開平5-26665号公報に記載されているように周知の事項である(段落【0010】「水槽6にはスリット光を反射させるべく白色に着色した水(その他の液体を含む)7が収容されている。」参照)。
また、着色剤として「赤、白、黄系統」のものとすることは、照射光の波長特性に応じて当業者が適宜選択した設計的事項にすぎない。
したがって、引用発明に上記周知の事項を適用して本願発明1のごとく構成することは当業者が容易になし得たものである。

そして、本願発明1の奏する効果は、引用例及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に予測し得る範囲内のものにすぎない。
したがって、本願発明1は、引用発明及び上記周知の事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。


4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項2?5に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-22 
結審通知日 2007-01-26 
審決日 2007-02-06 
出願番号 特願平9-259381
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 下中 義之  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 山川 雅也
濱野 隆
発明の名称 液体厚さ測定方法とその装置  
代理人 花田 久丸  
代理人 高橋 昌久  

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