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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1154414 |
審判番号 | 不服2004-21880 |
総通号数 | 89 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-10-22 |
確定日 | 2007-03-19 |
事件の表示 | 平成11年特許願第337807号「写真フィルム画像読取装置及びそれの調整方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月 8日出願公開、特開2001-157003〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成11年11月29日の出願であって、平成16年9月15日付で拒絶査定がされ、これに対して同年10月22日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年11月18日に手続き補正がなされたものである。 2.平成16年11月18日付の手続き補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年11月18日付の手続き補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項7(請求項の数は全部で7である。)は、「光源から出射する可視光と赤外光とを写真フィルムに照射して、前記写真フィルムの画像を可視光用センサと赤外光用センサにて読み取る写真フィルム画像読取装置の調整方法であって、パターンとして貫通孔が形成された較正用チャートを、画像読み取り対象の前記写真フィルムの配置位置に設置し、この較正用チャートに形成した前記貫通孔を前記可視光と前記赤外光との透過領域に設定し、前記貫通孔以外の領域を前記可視光と前記赤外光との非透過領域に設定すると共に、その較正用チャートのパターンとしての前記貫通孔の像をレンズにて前記可視光用センサ及び赤外光用センサの両方の受光面に結像し、前記可視光用センサが読み取った前記較正用チャートの前記可視光の透過領域と非透過領域との間のエッジ位置と、前記赤外光用センサが読み取った前記較正用チャートの前記赤外光の透過領域と非透過領域との間のエッジ位置とを対比して、前記可視光用センサにて得られる画像情報と前記赤外光用センサにて得られる画像情報との間の前記写真フィルムの画像上の位置関係を特定する写真フィルム画像読取装置の調整方法。」と補正された。 上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項7に記載された発明を特定するために必要な事項である「較正用チャート」について具体的な限定を付加して補正後の請求項7とするものであって、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項7に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-116551号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に、次の記載がある。 ア 「本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ゴミ、傷を正確に修正することができる画像入力装置を提供することを目的とするものである。 [発明の実施例] 第1図は、本発明の一実施例を示す説明図である。 この実施例は、フィルム原稿を照明する光源1と、照明用投影光学系2と、色分解フィルタ3と、フィルタを交換する駆動源のモータ4と、入力したいフィルム原稿5と、フィルム原稿5を副走査方向に走査する走査手段6と、原稿フィルム5を透過した光をセンサ8上に結像する光学系7と、原稿フィルム5の透過光を検出するCCD等のラインセンサ8と、A/Dコンバータ9と、A/D変換された1ライン分の画像データを一時蓄えるラインメモリ10と、アドレス変換回路11と、変換済みの画像データを蓄えるラインメモリ12と、ホストコンピュータまたは画像処理機とのインターフェイス13と、入力機全体をコントロールする制御回路14とが設けられている。 色分解フィルタ3は、R、G、Bの各色用フィルタと、赤外光透過フィルタとを有するフィルタである。センサ8は、原稿フィルム5上の1ライン分を瞬間的に読み取ることができるものである。 また、制御回路14は、ラインセンサ8の出力データのうち、赤外光成分のデータに対して座標変換する座標変換手段の一例である。」(2頁右上欄12行?左下欄19行) イ 「次に、上記実施例の動作について説明する。 まず、光源1の光は、色分解フィルタ3、原稿フィルム5を通った後、センサ8の受光面に結像する。そして、センサ8に読み込まれた画像1ライン分の信号がA/Dコンバータ9でデジタル信号に変換された後、ラインメモリ10に順次、蓄えれる。 ラインメモリ10に蓄えられた1ライン分のデータが座標変換回路11に送られ、読み取られたデータが可視光成分のデータであるならば(つまり、色分解フィルタ3がR、G、B透過フィルタであるならば)、制御回路14は、座標変換回路11を動作させない。つまり、ラインメモリ10中のデータは、そのままラインメモリ12に送られる。逆に、赤外光成分のデータを読み取っているとき(つまり、色分解フィルタ3が赤外光透過フィルタであるならば)、座標変換回路11が動作し、座標変換をして画素のずれを補正し、その補正されたデータがラインメモリ12に書き込まれる。 1ライン分のデータをラインメモリ12へ書き込む動作が終了すると、ラインメモリ12内のデータは、インタフェース13を介してホストコンピュータに送られる。また、制御回路14は、原稿走査手段6に信号を送り、原稿フィルム5を1ライン分動かし、次のラインの読み取りをスタートさせる。 以上の動作を繰り返し、原稿フィルム5全体を入力する。1画面分の画像読み取りが終ると、制御回路14からフィルタ変換手段4に信号が送られ、色分解フィルタ3が交換され、その交換された色分解フィルタ3を透過した成分のデータが入力される。」(2頁右下欄12行?3頁右上欄4行) ウ 「座標変換回路11は、カウンタ15、18と、座標変換の情報を記憶する座標変換テーブル16と、比較器17と、データを一時保存するラッチ19、20とを有する。」(3頁右上欄9行?12行) エ 「座標変換テーブル16は、座標変換前の各画素が、座標変換後に、どの画素に対応するかという情報を有している。 第5図に示すテーブルの値は、画像入力装置の光学系7が変更されず、しかも光学系7とセンサ8との位置関係が変化しなければ一定である。したがって、座標変換テーブル16として、たとえばPROMのようなデバイスを用い、入力装置の組み立て、調整後に、そのテーブルの内容をPROMに書き込めばよい。この場合、第7図に示すように、素通しガラスに21に細い線22がアルミ蒸着されている試料を原稿フィルム5の代りに使用して、その可視光データと赤外光データとを対応させて入力し、座標変換テーブル16に書き込む値を求めることができる。」(4頁左上欄3行?17行) オ 「上記実施例においては、色分解フィルタ3のみで色分解を行ない、センサは1つしか使用していないが、センサを複数用い、プリズム、ミラー、フィルタを併用し、各成分の光をそれぞれのセンサーに導き、各成分を並行して取り込むようにしてもよい。」(4頁右上欄12行?17行) したがって、上記アないしオの記載及び図面から、引用例には、 「原稿フィルムを照明する光源と、入力したい原稿フィルムと、原稿フィルムを透過した光をセンサ上に結像する光学系と、可視光成分と赤外光成分の各成分の光をそれぞれのセンサに導くプリズム、ミラー、フィルタと、各成分を並列して取り込む複数のセンサと、該センサの出力データのうち、赤外光成分のデータに対して座標変換することで、可視光成分のデータと赤外光成分データとの画素ずれを補正する座標変換回路とを有する画像入力装置において、座標変換回路は、座標変換前の各画素が、座標変換後に、どの画素に対応するかという情報を記録する座標変換テーブルを備えており、素通しガラスに細い線がアルミ蒸着されている試料を原稿フィルムの代りに使用して、その可視光データと赤外光データとを対応させて入力し、座標変換テーブルに書き込む値を求める方法」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。 (3)対比 引用発明の「各成分を並列して取り込む複数のセンサ」は、可視光成分と赤外光成分の各成分のデータをそれぞれ入力するものであるから、本願補正発明の「可視光用センサ」および「赤外光用センサ」に相当する。 引用発明の「可視光データ」、及び「赤外光データ」は、本願補正発明の「可視光用センサにて得られる画像情報」、及び「赤外光用センサにて得られる画像情報」に相当する。 画像読み取り装置において、原稿フィルムとして原稿画像が写された写真フィルムを用いることは、普通に行われていることである。そうすると、引用発明の「原稿フィルム」も画像が写された「写真フィルム」であるといえる。 引用発明は、「原稿フィルムを照明する光源」から出射された光のうち、可視光成分と赤外光成分の各成分の光をそれぞれのセンサにて取り込むものであるから、該光源から出射される光には、可視光成分と赤外光成分とが含まれている。そうすると、引用発明の「原稿フィルムを照明する光源」は、可視光と赤外光とを出射する光源であるといえる。 引用発明の「画像入力装置」は、光源からの出射される光によって写真フィルムを照明し、写真フィルムを透過した光の可視光成分と赤外光成分とを、それぞれのセンサによって読み取るものであるから、本願補正発明の「光源から出射する可視光と赤外光とを写真フィルムに照射して、前記写真フィルムの画像を可視光用センサと赤外光用センサにて読み取る写真フィルム画像読取装置」に相当する。 一般に画像読み取り装置において、画像読み取りのためのセンサを複数備え、レンズを用いてそれぞれのセンサの受光面上に読み取りのための像を結像させることは、普通に行われていることである。そうすると、引用発明の画像入力装置も、「センサ上に結像する光学系」としてレンズを用い、「各成分を並列して取り込む複数のセンサ」それぞれの受光面上に読み取りのための像が結像されるものであるといえる。 引用発明の「試料」は、原稿フィルムの代りに使用することで、可視光データと赤外光データとの画素のずれを補正するもの、つまり、「可視光用センサにて得られる画像情報と、赤外光用センサにて得られる画像情報との間の写真フィルムの画像上の位置関係を特定する」ために用いられるものであるから、本願補正発明の「較正用チャート」に相当する。 引用発明の「素通しガラスに細い線がアルミ蒸着されている試料を原稿フィルムの代りに使用して、その可視光データと赤外光データとを対応させて入力し、座標変換テーブルに書き込む値を求める」ことは、試料を画像読み取り対象の原稿フィルムの配置位置に設置し、それを透過した光の可視光成分と赤外光成分とを、それぞれのセンサによって読み取り、可視光用センサで得られる原稿フィルムの画像情報と、赤外光用センサにて得られる原稿フィルムの画像情報とを対応させることで、画素のずれを補正するための座標変換値を求めることであるから、本願補正発明の「較正用チャートを、画像読み取り対象の写真フィルムの配置位置に設置し」、「可視光用センサが読み取った較正用チャートと、赤外光用センサが読み取った前記較正用チャートとを対比して」、「可視光用センサにて得られる画像情報と赤外光用センサにて得られる画像情報との間の写真フィルムの画像上の位置を特定する」ことに相当する。 そして、装置構成が変更されない限り変動しない画像処理のパラメータや、個々の装置に依存した補正パラメータを、画像読み取り前の該装置の調整処理として求めておくことは、画像読み取り装置において普通に行われていることであるから、引用発明の「画像入力装置」においても、「画像入力装置の光学系が変更されず、しかも光学系とセンサとの位置関係が変化しなければ一定である」座標変換テーブルの値を求めることは、「画像入力装置」の調整として行われる処理であるといえる。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「光源から出射する可視光と赤外光とを写真フィルムに照射して、前記写真フィルムの画像を可視光用センサと赤外光用センサにて読み取る写真フィルム画像読取装置の調整方法であって、較正用チャートを、画像読み取り対象の前記写真フィルムの配置位置に設置し、較正用チャートの像をレンズにて前記可視光用センサ及び赤外光用センサの両方の受光面に結像し、前記可視光用センサが読み取った前記較正用チャートと、前記赤外光用センサが読み取った前記較正用チャートとを対比して、前記可視光用センサにて得られる画像情報と前記赤外光用センサにて得られる画像情報との間の前記写真フィルムの画像上の位置関係を特定する写真フィルム画像読取装置の調整方法。」で一致し、次の点で相違している。 [相違点1]本願補正発明の「較正用チャート」は、パターンとして貫通孔が形成されており、この較正用チャートに形成した前記貫通孔を可視光と赤外光との透過領域に設定し、前記貫通孔以外の領域を可視光と赤外光との非透過領域に設定したものであるのに対し、引用発明の「試料」は、素通しガラスに細い線がアルミ蒸着されているものである点。 [相違点2]本願補正発明では、可視光用センサと赤外光用センサとが読み取った較正用チャートの位置関係を特定するために、それぞれの「透過領域と非透過領域との間のエッジ位置を対比する」のに対し、引用発明では、該位置関係を特定するために、それぞれの「透過領域と非透過領域との間のエッジ位置を対比する」ことが認められない点。 (4)判断 [相違点1]について 引用発明の「素通しガラスに細い線がアルミ蒸着されている試料」において、アルミ、及び、素通しガラスの物理的性質から、「アルミの蒸着された細い線の部位」は、可視光及び赤外光を透過しない「非透過領域」であり、それ以外の「素通しガラスの部位」は、可視光及び赤外光を透過する「透過領域」であること、及び、該「非透過領域」と該「透過領域」とが所定の光学的なパターンを構成するものであることは、当業者にとって自明の事項である。 そして、光学的なパターンを構成する要素として広く一般に用いられている「貫通孔」が、可視光及び赤外光を透過する性質を有することは明らかであるから、引用発明の「試料」において、「素通しガラスの部位」に換えて、可視光及び赤外光を透過するという性質で共通する「貫通孔」を用いて光学的なパターンを構成することは、当業者が適宜実施できた設計事項である。 [相違点2]について 画像上のパターンのエッジ位置の対比によって、複数の画像間の位置関係を特定することは、画像処理の技術分野において周知技術であり、さらに、引用発明において、センサによって得られた「試料」の可視光データと赤外光データとは、それぞれが「透過領域」と「非透過領域」とからなるパターンを表す画像情報であることは、当業者にとって自明の事項である。 そうすると、引用発明において、可視光用センサと赤外光用センサとが読み取った較正用チャートとの位置関係を特定するために、それぞれの「透過領域と非透過領域との間のエッジ位置を対比する」ことは、当業者が容易に想到できたものである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明から、当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されるべきである。 3.本願発明について 平成16年11月18日付の手続き補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年12月24日付手続き補正書の特許請求の範囲の請求項7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「光源から出射する可視光と赤外光とを写真フィルムに照射して、前記写真フィルムの画像を可視光用センサと赤外光用センサにて読み取る写真フィルム画像読取装置の調整方法であって、パターンが形成された較正用チャートを、画像読み取り対象の前記写真フィルムの配置位置に設置し、その較正用チャートのパターンの像をレンズにて前記可視光用センサ及び赤外光用センサの両方の受光面に結像し、前記可視光用センサが読み取った前記較正用チャートの光線の透過領域と非透過領域との間のエッジ位置と、前記赤外光用センサが読み取った前記較正用チャートの光線の透過領域と非透過領域との間のエッジ位置とを対比して、前記可視光用センサにて得られる画像情報と前記赤外光用センサにて得られる画像情報との間の前記写真フィルムの画像上の位置関係を特定する写真フィルム画像読取装置の調整方法。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から「較正用チャート」について具体的な限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-01-17 |
結審通知日 | 2007-01-18 |
審決日 | 2007-01-30 |
出願番号 | 特願平11-337807 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮島 潤 |
特許庁審判長 |
杉山 務 |
特許庁審判官 |
松永 稔 脇岡 剛 |
発明の名称 | 写真フィルム画像読取装置及びそれの調整方法 |
代理人 | 北村 修一郎 |