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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C08L 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C08L |
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管理番号 | 1154510 |
審判番号 | 不服2002-20928 |
総通号数 | 89 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-10-29 |
確定日 | 2007-03-14 |
事件の表示 | 平成11年特許願第503909号「エラストマーを形成するために硬化性シリコーン中のシリカ懸濁体を調製する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月30日国際公開、WO98/58997、平成12年10月 3日国内公表、特表2000-513047〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1].手続きの経緯 本願は、平成10年6月23日を国際出願日(優先権主張 1997年6月24日 フランス)とする出願であって、平成13年5月25日付けで拒絶理由(特許法第29条第2項、同36条、同37条)が通知され、これに対して平成13年12月5日に意見書および手続補正書が提出され、平成14年7月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成14年10月29日に審判請求がなされ、平成14年11月28日に手続補正書が提出されたところ、平成15年1月24日付けで前置報告がなされ、平成18年5月11日付けで審尋がなされ、平成18年8月16日に回答書が提出されたものである。 [2].平成14年11月28日付けの手続補正についての補正却下の決定 1.補正却下の決定の結論 平成14年11月28日付けの手続補正を却下する。 2.理由 平成14年11月28日付けの手続補正書による補正は、補正前の請求項1(平成13年12月5日付け手続補正書により補正された請求項1)の「Si-アルケニル官能基を保持しているタイプのポリオルガノシロキサン(POS液)を含むシリコーン油によって形成する物質中の、粒状充填剤の懸濁体であって、重付加によって硬化させることができるシリコーン組成物を製造するために使用される懸濁体を調製するにあたり、粒状充填剤を相溶化剤(CA)の助けによって処理する方法において、前記粒状充填剤の15重量%以下の前記相溶化剤(CA)を調製混合物中に導入するに当たり、一方で、前記シリコーン油の少なくとも一部を前記粒状充填剤の少なくとも一部に接触させる前及び/又は接触させるのと実質的に同時に、全粒状充填剤に対して乾燥重量基準により多くて8%の割合に相当するCAフラクションについて一又はそれ以上の工程で導入し、他方で、このPOS/充填剤接触の後に導入することを特徴とする方法。」を、 「Si-アルケニル官能基を保持しているタイプのポリオルガノシロキサン(POS液)を含むシリコーン油中に粒状充填剤を懸濁した懸濁体であって、重付加によって硬化させることができるシリコーン組成物を製造するために使用される懸濁体を調製するにあたり、前記シリコーン油の少なくとも一部を前記粒状充填剤の少なくとも一部に接触させる前及び/又は接触させるのと実質的に同時に、前記粒状充填剤の乾燥重量基準で多くて8%の割合に相当する前記相容化剤(CA)の第一CAフラクションを一又はそれ以上の工程で前記シリコーン油及び前記粒状混合物に導入して混合物を形成し、次いで前記粒状充填剤の乾燥重量基準で残りの15重量%以下の第二CAフラクションを前記シリコーン油の他の部分及び前記粒状充填剤の他の部分と共に前記混合物に導入することを特徴とする、前記懸濁体を調製する方法。」とする補正を含むものである。 この補正は補正前の「前記粒状充填剤の15重量%以下の前記相溶化剤(CA)を調製混合物中に導入するに当たり、」の文言を削除するものであり、導入する相溶化剤(CA)の重量%に関する限定をなくすものであるから、特許請求の範囲を拡張するものである。 したがって、この補正は、特許請求の範囲の減縮とは認められない。また、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものとも認められない。 よって、この補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第4項に規定するいずれの事項をも目的とするものとは認められない。 したがって、平成14年11月28日付けの手続補正は特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 [3].原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶理由通知に記載された拒絶理由の内、特許法第36条第6項2号に関する理由は次のとおりである。(ただし、当該請求項は、平成13年12月5日付けの手続補正前の請求項を意味する。) 「1.特許請求の範囲全体にわたって発明(発明の構成)の記載が不明瞭である。 (特に、「好ましくは」、「随意に」、「本質的に」、「一方で」、「他方で」、「更に一層好ましくは」、「特に、好適である」、「好適である」等の記載は発明を不明確にする(必須の構成要件か否か不明確にする)記載である。) 2.請求項1には「相溶化用剤」、「相溶化剤」という記載があるが、該記載ではどのような化合物を示すものであるか明確でない。 3.請求項7、11の記載は意味不明瞭である。」 そして、拒絶査定の備考には次のように記載されている。(ただし、当該請求項は、平成13年12月5日付けの手続補正後の請求項を意味する。) 「1)請求項1には依然として「一方で」、「他方で」の記載がなされているが、この一方、他方が具体的にどの場所(もの)を指すのか不明である。 2)請求項7の記載は、「CAフラクションの全部又は一部を、粒状シリカ質充填剤がそれ自体の原子の間で及び/又はシリコーン油の原子と生じる水素結合を阻害するように相互作用する………」と補正されたが、請求項7の記載は、補正によって更に意味不明瞭になったというべきである。」 [4].特許法第36条第6項第2号についての判断 平成14年11月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願特許請求の範囲請求項1および7に係る発明は、平成13年12月5日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1および7に記載された次のとおりのものである。 「1.Si-アルケニル官能基を保持しているタイプのポリオルガノシロキサン(POS液)を含むシリコーン油によって形成する物質中の、粒状充填剤の懸濁体であって、重付加によって硬化させることができるシリコーン組成物を製造するために使用される懸濁体を調製するにあたり、粒状充填剤を相溶化剤(CA)の助けによって処理する方法において、前記粒状充填剤の15重量%以下の前記相溶化剤(CA)を調製混合物中に導入するに当たり、一方で、前記シリコーン油の少なくとも一部を前記粒状充填剤の少なくとも一部に接触させる前及び/又は接触させるのと実質的に同時に、全粒状充填剤に対して乾燥重量基準により多くて8%の割合に相当するCAフラクションについて一又はそれ以上の工程で導入し、他方で、このPOS/充填剤接触の後に導入することを特徴とする方法。 ……… 7.CAフラクションの全部又は一部を、粒状シリカ質充填剤がそれ自体の原子の間で及び/又はシリコーン油の原子と生じる水素結合を阻害するように相互作用することができ且つ調製混合物から脱揮発によって除くことができる分子または複数種の分子の組合せから選択ぶ少なくとも一種の加工助剤に代え、この加工助剤が調製混合物中で水の存在下にあることを特徴とする請求項1?6のいずれか一の方法。」 〈1〉.請求項1の記載について 1.請求項1には「………、一方で………他方で、………」と記載されているが、日本語で「一方…他方…」という用語は、並列的に2つの事項を述べる場合に使われ、前段と後段のように経時的に2つの事項を述べる場合には使われない。 そうすると、「前記シリコーン油の少なくとも一部を前記粒状充填剤の少なくとも一部に接触させる前及び/又は接触させるのと実質的に同時に、全粒状充填剤に対して乾燥重量基準により多くて8%の割合に相当するCAフラクションについて一又はそれ以上の工程で導入し」と「このPOS/充填剤接触の後に導入する」の2つの工程が並列的に行われることになり、両者の工程がどのような関係にあるのか(例えば異なる場所で行われるのか?)不明であり、全体としてその意味及び技術的内容が不明確である。 2.請求項1には「……、一方で、……CAフラクションについて一又はそれ以上の工程で導入し、他方で、このPOS/充填剤接触の後に導入する……方法。」と記載されているが、CAフラクションが導入される対象がそれぞれ何であるのか(シリコーン油なのか、粒状充填剤なのか、シリコーン油と粒状充填剤の混合物なのか、シリコーン油と粒状充填剤と相溶化剤の3者の混合物なのか、)記載がなく、技術的な内容が不明確である。 3.請求項1には「……懸濁体を調製するにあたり、粒状充填剤を相溶化剤(CA)の助けによって処理する方法において、前記粒状充填剤の15重量%以下の前記相溶化剤(CA)を調製混合物中に導入するに当たり、……」と記載されているが、「調製混合物」とは何なのか、何と何の混合物なのか不明である。 4.請求項1には「……前記シリコーン油の少なくとも一部を前記粒状充填剤の少なくとも一部に接触させる前及び/又は接触させるのと実質的に同時に、全粒状充填剤に対して乾燥重量基準により多くて8%の割合に相当するCAフラクションについて一又はそれ以上の工程で導入し、……」と記載されており、「……シリコーン油の一部を前記粒状充填剤の一部に接触させる前及び/又は接触させるのと実質的に同時に、……CAフラクションについて一以上の工程で導入し、……」の場合は、大部分のシリコーン油、大部分の粒状充填剤及び大部分CAフラクションについては「……接触させる前及び/又は接触させるのと実質的に同時に……」の導入(混合)手順の要件の規制を受けないことになる。 したがって、大部分のシリコーン油、大部分の粒状充填剤及び大部分CAフラクションについては、導入(混合)手順が不明であり、特許を受けようとする発明が明確でない。 〈2〉.請求項7の記載について 1.請求項7には「CAフラクションの全部又は一部を、粒状シリカ質充填剤がそれ自体の原子の間で及び/又はシリコーン油の原子と生じる水素結合を阻害するように相互作用することができ且つ調製混合物から脱揮発によって除くことができる分子または複数種の分子の組合せから選択ぶ少なくとも一種の加工助剤に代え、この加工助剤が調製混合物中で水の存在下にあることを特徴とする請求項1?6のいずれか一の方法。」と記載されているが、当該記載は主語、述語の対応が明確ではなく日本語としてその意味を明確に把握することができない。 2.また、技術的な観点から見ても、次のような点で不明りょうである。 (1)「この加工助剤が調製混合物中で水の存在下にある」とは技術的にはどのようなことか不明である。 水の中に加工助剤が溶解ないし分散しているということなのか、そうであれば、請求項7においては「水」が必須の成分として記載されていなければならないが、水を必須の成分とすることは記載されていない。また、請求項7は請求項1を引用しているが、請求項1においても「水」に関する記載はない。 したがって、請求項7の記載は不明りょうである。 (2)「調製混合物」とは、何と何の混合物なのか不明である。請求項7は請求項1を引用しており、これが請求項1の「調製混合物」と同じであるとしても、請求項1の「調製混合物」とは何と何の混合物なのか不明であることは既に〈1〉.の3.で述べたところであるから、依然としてその技術内容は不明である。 (3)「CAフラクションの全部又は一部」と記載されているが、これは複数あるCAフラクションの全部又は一部なのか、あるいは1つのフラクションの全部又はその一部なのか、その意味が不明である。 仮に「CAフラクションの全部又は一部」が前者の場合は、「CA(相溶化剤)の全部又は一部」を意味することになる。この場合、相溶化剤の全部を加工助剤に代えて用いると相溶化剤を全く用いないことになるが、請求項7は請求項1を引用している以上相溶化剤を必須とするのであるから、自己矛盾した記載を内蔵することになり、不明確である。 [5].むすび 以上のとおり、本願特許請求の範囲の請求項1および請求項7の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-10-13 |
結審通知日 | 2006-10-17 |
審決日 | 2006-11-01 |
出願番号 | 特願平11-503909 |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(C08L)
P 1 8・ 537- Z (C08L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮坂 初男、中島 庸子 |
特許庁審判長 |
一色 由美子 |
特許庁審判官 |
井出 隆一 石井 あき子 |
発明の名称 | エラストマーを形成するために硬化性シリコーン中のシリカ懸濁体を調製する方法 |
代理人 | 倉内 基弘 |
代理人 | 風間 弘志 |