ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
---|---|
管理番号 | 1154540 |
審判番号 | 不服2003-3539 |
総通号数 | 89 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-03-05 |
確定日 | 2007-03-22 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 99330号「組合せ式遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月22日出願公開、特開平10-337353〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、特願平5-181829号(出願日:平成5年6月15日)の一部を新たな特許出願としたものであって、平成15年1月28日付で拒絶査定がなされ、平成15年3月5日に審判請求がなされ、当審において平成18年6月15日付で拒絶理由が通知され、平成18年8月7日付で意見書並びに手続補正書が提出されたものである。 そして、平成18年8月7日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その請求項1において特定される下記のとおりのものである。 「遊技盤の下方に複数個の入球口を横一列に設け該入球口への入球に対応する番号の入賞図柄表示器を点灯させ、該入賞図柄表示器に表示される番号に対応したマトリックス状表示画面の数字図柄を点灯させて、所定の数字図柄の組合せが成立したとき定められた得点を付与し、所定数の遊技球を遊技盤面に発射することにより1ゲームを成立させる組合せ式遊技機において、前記遊技盤面に設けられ、遊技球が通過可能なゲートと、前記遊技盤面に設けられ、図柄の変動表示を行う図柄表示装置と、前記遊技盤面に設けられ、前記図柄表示装置に大当り図柄が停止表示された場合に開放する役物作動口と、所定の割り込み周期毎に乱数値を更新する乱数更新手段と、前記乱数更新手段により更新された乱数値を記憶する乱数記憶手段と、前記所定の数字図柄の組合せの配置をマトリックス状に規定するテーブルの複数種類を前記乱数値に対応させて電気的に記憶するテーブル記憶手段と、次のゲームに移行する直前において、前記乱数記憶手段に記憶されている乱数値に対応した1種類の前記テーブルを前記テーブル記憶手段から読み込み、該読み込んだ前記テーブルに基づいて前記所定の数字図柄の組合せの配置を前記マトリックス状表示画面に表示させる表示制御手段とを備え、前記1ゲーム中に遊技球が前記ゲートを通過すると、前記図柄表示装置において前記図柄の変動表示が実行されるとともに、前記乱数更新手段により更新された乱数値が前記乱数記憶手段に記憶されることを特徴とする組合せ式遊技機。」(以下、「本願発明」という。) 2.引用刊行物とその記載事項について (1)刊行物1について 当審で拒絶理由として引用した特開平3-29678号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、以下の技術事項が記載されている。 ・記載事項1 「〔従来の技術〕発射球(打球)を案内するガイドレールによって囲まれた遊技領域内に各種入球部が設けられ、所定数の遊技球を1ゲーム単位してそれら遊技球が遊技領域内に発射されてゲームが行なわれるようになっている、いわゆるアレンジボールと呼ばれる遊技装置が知られている。」(公報1頁右下欄4行?10行) ・記載事項2 「その打球発射装置(後述)の作動によって遊技領域2中に打ち込まれた遊技球が障害釘l2や打球方向変換部材13によりランダムに流下方向を変換されながら遊技領域2の下部に至って、その下部の入球領域9のいずれかの入球部(「1」?「l6」)中に流入したきには,その流入した入球部の図柄表示部9a(「l」?「16」の数字表示がされている。)の点灯光が緑色に変化する。」(公報3頁左下欄2行?9行) ・記載事項3 「アレンジゲームは、この実施例の場合、その各ゲーム中、入球部「1」?「16」の緑色に変化した図柄表示部9aが4つ並ぶごとに、得点が得られて、その得点が得点表示器110に数字表示されるとともに左右の得点アナログ表示器170の表示部がその得点分の個数だけ下から順に点灯される。緑色に変化した図柄表示部9aが4つ並んだ後に、さらに緑色に変化した図柄表示部9aが1つ連続追加するごとに1点ずつ特典が追加される。」(公報4頁右上欄7行?16行) ・記載事項4 「ゲームの終了時に精算スイッチボタン106を押せば、そのときの得点に応じた賞球排出が供給皿102中に行われて、図柄表示器9A、得点表示器120および得点アナログ表示器170がリセットされて初期状態に戻される。」(公報4頁右下欄5行?9行) ・記載事項5 「[第4実施例]この実施例では、通常の遊技領域(上遊技領域)と、遊技者にとって有利となる特別遊技領域(下遊技領域)とを同一の遊技領域内に共存させて、通常遊技時における球の回収時間を短縮できるようにして、各ゲーム間のウェイトタイムをより一層短縮できるように構成した。」(公報23頁右下欄11行?17行) ・記載事項6 「この遊技盤1800の遊技領域1802は中段部に配設された中央の役物装置1810と左右の入球領域1809とにより、上遊技領域l802Aと下遊技領域1802Bとに区分けされている。前記役物装置1810は大当り発生時に遊技者に一定の特典を与えるもので、「3」、「5」、「l2」、「14」の数字の表示された表示部と、マンモスと呼ばれる入球口1812と、常時は突出していて入球1812への入球を阻止し大当り発生時に没して入球口1812への入球を可能にする覆部材18l3を具えている。」(公報23頁右下欄18行?24頁左上欄8行) ・記載事項7 「また、前記入球領域1809は16区画された入球部となっており、各入球部の前面に「○1」?「○5」、「□6」、「□7」、「○8」、「○9」、「□10」、「□11」、「○12」、?「○16」の図柄表示がなされている。それら入球部のうち、「□6」、「□7」、「□10」、「□11」の表示された入球部のみ通過型で、他の入球部はポケット型となっている。また、適宜の配置をもって、障害釘1821や風車と呼ばれる打球方向変換部材l833が設置されている。」(公報24頁左上欄9行?17行) ・記載事項8 「一方、下遊技領域1802Bの略中央部には通過型の2倍チャッカ-1851が設置され、下部には入球領域1859が設けられている。その入球領域1859は10区画されたポケット型の入球部となり、各入球部には「○2」、「○6」、「○7」等の数字表示がなされている。また、下遊技領域1802Bにも適宜の配置をもって、障害釘1821や風車と呼ばれる打球方向変換部材1833が設置されている。」(公報24頁左上欄18行?右上欄6行) ・記載事項9 「また、下遊技領域1802B外の左側にはパネルゲーム表示部1860が設けられ、右側には可変表示ゲーム装置1870が設置されている。前記パネルゲーム表示部1890は透光性板がマトリクス状に16区画され、各区画部には「1」?「16」までの数字表示がなされるとともに各区画部中には表示ランプが設置されている。」(公報24頁右上欄7行?13行) ・記載事項10 「一方、可変表示ゲーム装置1870には十字状配置をもって7セグメント型可変表示部1871が5個設けられている。この実施例の場合、各可変表示部1871の数字表示はそれぞれ「1」、「3」、「7」の3通りに変化するようになっている。」(公報24頁右上欄14行?19行) ・記載事項11 「上記のように概略構成されたこの実施例に係る遊技装置はそれに設置されたコンピュータシステム等の制御手段によって概ね次のように制御される。」(公報24頁右上欄20行?左下欄3行) ・記載事項12 「図外の電源スイッチ操作によりパチンコ遊技機に電気が供給された初期においては、役物装置1810の覆部材1813が手前方向に突出してその下方の入球口1812の上方を覆っていることにより、その入球口l812中には遊技球が流入できないようになっている。また、パネルゲーム表示部1860中のランプは全て消灯し、可変表示装1870の各可変表示部1871の数字表示は「1」、「3」、「7」のいずれかがランダムに停止表示された状態にある。そして、遊技者が操作ダイヤル(図外)を操作することにより、打球発射装置が作動されてゲームが開始される。」(公報24頁左下欄4行?16行) ・記載事項13 「その打球発射装置の作動によって上遊技領域1802A中に打ち込まれた遊技球が、障害釘1821や同転案内部材1833等によりランダムに流下方向を変換されながら、上遊技領域1802Aの下部に至って、その下部の入球部「○1」?「○5」、「○8」、「○9」、「○12」?「○16」中に流入したときや入球部「□6」、「□7」、「□10」「□11」を下方に通過したときには、その流入又は通過した入球部の数字表示と対応する数字表示のあるパネルゲーム表示部1860の区画部分が点灯される。」(公報24頁左下欄17行?右下欄7行) ・記載事項14 「前記「□6」、「□7」、「□10」、「□11」を下方に通過した遊技球は、さらに、下遊技領域1802Bの障害釘182lや回転案内部材1833等によりランダムに流下方向を変換されながら、下遊技領域1802Bの下部に至って、その下部の入球部(「○2」、「○6」、「○7」等)中に流入したときにはその入球部の数字表示と対応する数字表示のあるパネルゲーム表示部1860の区画部が点灯される。下遊技領域I802Bに至った遊技球が2倍チャッカ-1851中を通過したときには後述する得点が2倍となる。」(公報右下欄8行?18行) ・記載事項15 「上遊技領域1802A中に発射された遊技球がポケット型の入球口1832中に流入したときには、その入球口1832の前面に表示された数字表示と対応する数字表示(この実施例では、「1」)のあるパネルゲーム表示部1860の区画部分が点灯される。」(公報24頁右下欄19行?25頁左上欄4行) ・記載事項16 「また、上遊技領域1802A中に発射された遊技球がチャッカ-1831中を通過したときには、その通過ごとに可変表示ゲーム装置1870による可変表示ゲームが行なわれる。ここで行なわれる可変表示ゲームとは、可変表示ゲーム装置l870の5つの可変表示部の表示がそれぞれ一定時間ずつ変化(例えば、「1」、「3」、「7」、「l」、・・・・)された後停止され、その停止時の表示の組合せ如何によって、遊技者に有利となるゲーム上の特典を与えるか否かを決定するゲームである。」(公報25頁5行?15行) ・記載事項17 「例えば、可変表示ゲームの結果としての可変表示部1871の停止表示が偶発的(例えば、1/243の確率)に予め定められた態様(例えば、全て「7」)となったときには、特典として覆部材1813が所定時間後退する方向に引込んでその下方の入球口1812中に流入し得る状態となる。このように、覆部材1813が引込んだときにその役物装置1810のところを流下する遊技球が入球口l812中に流入すると、それらの前面に表示された数字(この実施例では、「3」、「5」、「12」、「14」)と対応する数字表示のあるパネルゲーム表示部1860の区画部分が点灯されるという大きな利益が与えられるとともに、覆部材1813が手前方向に突出して入球口18l2中に流入し得なくなる。」(公報25頁左上欄16行?右上欄10行) ・記載事項18 「アレンジゲームは、この実施例の場合、そのゲーム中、パネルゲーム表示部1860の点灯した区画部分が縦、横、斜め又は四角に4つ揃うごとに得点が得られる。」(25頁左下欄11行?14行) 以上の記載事項1?記載事項18並びに第1図?第37図を総合的に勘案すると、引用刊行物1には、以下の発明が記載されている。 「遊技盤1800の下部に複数個のポケット型の入球部を横一列に設け、入球部への入球に対応する数字表示のあるパネルゲーム表示部1860の区画部分を点灯させて、点灯された区画部分が縦、横、斜め又は四角に4つ揃ったときに得点が得られ、16個の遊技球を遊技盤面に発射することにより1ゲームを成立させるアレンジゲームにおいて、 遊技領域1802に設けられ、遊技球が通過可能なチャッカー1831と、遊技領域1802に設けられ、図柄の変動表示を行う可変表示ゲーム装置1870と、遊技盤1802に設けられ、可変表示ゲーム装置1870に可変表示部1871の停止表示がすべて「7」になったときに開放する役物装置1810と、を備え、1ゲーム中に遊技球がチャッカー1831を通過すると、可変表示ゲーム装置1870の可変表示部の可変表示が行われ、球が入ったり通過したりした入球部の図柄表示部9aの並びや組合せの如何によって点数が加算されてゆき、点数に応じて賞球が得られ、更に、パネルゲーム表示部1860の区画部分の点灯数字の並びが揃うと得点が得られるアレンジゲーム。」(以下「引用刊行物1に記載された発明」という。) (2)刊行物2について 当審で拒絶理由として引用した実公昭56-37748号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、以下の技術事項が記載されている。 ・記載事項1 「本考案は、所定の個数の球を弾いて、それらの球の入った球穴の場所を、表示部の対応位置に点灯表示すると共に、設定の配列となった場合に所定枚数のメダルを排出する縦型ゲーム機である。いわゆるアレンジボール機のゲーム性を向上させる為の表示部変更装置に関する。」(公報1頁1コラム25行?30行) ・記載事項2 「従来より娯楽性の優秀さによって、いわゆるアレンジボール機は愛用され、製造者も常に新しい機種を求める遊戯者の要求に答えるべく多くの種類のものを提供してきた。しかしながら従来機にあっては、遊技球が盤面下方に設けた球穴に落下する過程に種々の装置、例えばチューリップ等を設けただけであって、落下が終了した後には、常に同一の配列パターンに従って得点が決定されるものであった。従つて遊戯者は常に定められた一種類の番号配列パターンに従つてゲームを行うこととなり、ゲームの内容が画一化される傾向となつていた。」(公報1頁1コラム31行?2コラム5行) ・記載事項3 「本考案は前述の点に鑑みて、球穴との対応位置が異なつている配列パターンを複数設けて、ゲームの開始前又はゲーム中もしくはゲーム終了後に配列パターンの変更が行える様にすることで、ゲーム性を向上させることを目的として案出されたものであつて、」(公報1頁2コラム6行?2コラム11行) ・記載事項4 「第5図は、ドラム112を回転させる為のモーター111の結線図であつて、変更スイツチ105を閉路とすることにより同時に停止スイツチ121が閉路となり、変更スイツチ105を開路とすると、ドラム112の表示部110が表示窓102に合致した時に停止スイツチ121が閉路となる様に形成してある。従つてドラム112は常に表示部110が表示窓102に合致して回転を停止するものである。」(公報2頁3コラム22行?29行) ・記載事項5 「第6図は、ドラム112が回転を停止した時に、どの配列パターンの表示部110が表示窓102に表れているかを示す為のランプ切換回路であつて、ドラム112に設けたカム等により3つの表示スイツチ122A、122B、122Cの内の1つが閉路と成り、それによつてパターン部103上部の3つのランプ104A、104B、104Cの1つが点灯すると共に3つの切換リレー123A、123B、123Cのいずれかが動作状態と成る様に形成してある。」(公報2頁3コラム30行?38行) ・記載事項6 「A、B、Cの内で変更する配列パターンを、前述した実施例としての説明の様に遊戯者が決定できる様にすると、遊戯者の意志をゲームに反映させることができるので、ゲームへの興味が増し、ゲーム性が向上する。又実施例とは異なり、変更スイツチ105を押すとドラムが回転し、遊戯者の意志とは関係なくその回転を停止する様にすると、偶然性がゲームに付加され、ゲーム性の向上につながる。」(公報2頁4コラム20行?28行) ・記載事項7 「配列パターンの変更時を、ゲーム開始前、あるいはゲーム中に行う様にすると、毎回のゲームに於て狙う数字穴101が異なるので、ゲーム内容が豊かになる。又配列パターンの変更をゲーム終了時に行う様にすると、得点を得る機会が増え、ゲームへの興味が増す。又ゲーム中あるいはゲーム終了時に行う配列パターンの変更を、ゲーム中の特定条件時、例えば遊技球が天穴に入った時等に行える様にすると、遊戯者の技術によつてゲーム内容が左右できるので、遊戯者は一層ゲームに引込まれる。又配列パターンA、B、Cの夫々に優劣を付け、遊戯中の特定条件時に有利な配列パターンに変更させる様に成形するとゲーム性は更に高まる。なお実施例にあつては、配列パターンをA、B、Cの3種で説明したが、2種あるいは4種以上設けることもできる。」(公報2頁4コラム29行?3頁5コラム2行) 以上の記載事項1?記載事項7並びに第1図?第7図を総合的に勘案すると、引用刊行物2には、以下の技術事項が記載されている。 「所定の配列をマトリックス状パターン部の複数種類103A?103Cを記憶するパターン部記憶手段と、ゲーム開始前において、配列パターンを変更し、変更したパターン部に基づいて所定の配列をマトリックス状パターン部に表示させる表示部回路とを備え、1ゲーム中に遊戯球が天穴を通過すると、パターン部の変更を行う様にしたアレンジボール機。」 3.対比 引用刊行物1に記載された発明と本願発明を対比すると、引用刊行物1に記載された発明の「遊技盤1800の下部に」は本願発明の「遊技盤の下方に」に相当し、以下同様に、「複数個のポケット型の入球部」は「複数個の入球口」、「入球部」は「入球口」、「入球に対応する数字表示のある」は「表示される番号に対応した」、「パネルゲーム表示部1860の区画部分」は「マトリックス状表示画面の数字図柄」、「点灯された区画部分が縦、横、斜め又は四角に4つ揃ったときに」は「所定の数字図柄の組合せが成立したときに」、「16個の遊技球」は「所定数の遊技球」、「遊技領域1802」は「遊技盤面」、「アレンジゲーム」は「組合せ式遊技機」、「チャッカー1831」は「ゲート」、「可変表示ゲーム装置1870」は「図柄表示装置」、「可変表示部1871の停止表示がすべて「7」になったとき」は「大当り図柄が停止表示された場合」、「役物装置1810」は「役物作動口」、「可変表示部の可変表示」は「図柄の変動表示」にそれぞれ相当している。 そして、引用刊行物1に記載された発明は、以下の構成を実質的に具備しているといえる。 ・実質的具備事項1 引用刊行物1の記載事項2の「・・・遊技球が・・・遊技領域2の下部に至って、その下部の入球領域9のいずれかの入球部(「1」?「l6」)中に流入したきには、その流入した入球部の図柄表示部9a(「l」?「l6」の数字表示がされている。)の点灯光が緑色に変化する。」なる記載、引用刊行物1の第4実施例において、入球領域に図柄表示部を設けていないものの、第4実施例は引用刊行物1に記載された発明の実施例の一つであること、及び特開平4-89075号公報の「b1、 b2・・・b16は入球表示部で、各入球口al、a2・・・a16に対応して設けられ、点灯によって対応する入球口a1、a2・・・a16に遊技球が入ったことを表示する。」(2頁右上欄第11行?14行)なる記載、並びに特開昭62-133984号公報、特開昭62-139682号公報、特開昭62-139683号公報等(以下、「周知技術A」という)を踏まえれば、引用刊行物1に記載された発明の第4実施例の入球部においても、入球部への遊技球の入球に対応する番号の図柄表示部9aを設けて点灯し、かつ、表示パネルゲーム表示部1860に表示される番号に対応した数字表示を点灯させるようにすることも実施例に含まれると解することができる。 そして、引用刊行物1に記載された発明の「入球部」「入球に対応する数字表示のあるパネルゲーム表示部1860の区画部分」は、本願発明の「入球口」「表示される番号に対応したマトリックス状表示画面の数字図柄」に相当していることは上記3.対比柱書きに示したとおりであり、引用刊行物1の記載事項3の「・・・入球部「1」?「16」の緑色に変化した図柄表示部9aが4つ並ぶごとに、得点が得られて、その得点が得点表示器110に数字表示されるとともに左右の得点アナログ表示器170の表示部がその得点分の個数だけ下から順に点灯される。・・・」なる記載、および第30図、第36図、第37図に基づけば、引用刊行物1に記載の「図柄表示部9a」は、本願発明の「入賞図柄表示器」に実質的に相当していると解される。 そうすると、引用刊行物1に記載された発明において、「入球口への入球に対応する番号の入賞図柄表示器を点灯させ、入賞図柄表示器に表示される番号に対応したマトリックス状表示画面の数字図柄を点灯させて」なる構成が実質的に具備しているということができる。 ・実質的具備事項2 引用刊行物1の記載事項18の「アレンジゲームは、この実施例の場合、そのゲーム中、パネルゲーム表示部1860の点灯した区画部分が縦、横、斜め又は四角に4つ揃うごとに得点が得られる。」なる記載に基づけば、引用刊行物1に記載された発明は、パネルゲーム表示部1860の点灯した区画部分が、予め定められた形態である縦、横、斜め又は四角に4つ揃うごとに得点が得られるものであることは明らかであるから、所定の数字図柄の組合せが成立したとき定められた得点を付与されるものといい換えることができる。 そうすると、引用刊行物1に記載された発明は、「所定の数字図柄の組合せが成立したとき定められた得点を付与し」なる構成を実質的に具備しているということができる。 ・実質的具備事項3 引用刊行物1の記載事項9の「・・・前記パネルゲーム表示部1890は透光性板がマトリクス状に16区画され、各区画部には「1」?「16」までの数字表示がなされるとともに各区画部中には表示ランプが設置されている。」なる記載に基づけば、事前に定められた数字図柄の組合せの配置をパネルゲーム表示部1860に4×4の16の区画部で構成されたマトリックス状のテーブルを表示していることは明らかであるから、少なくとも、その1種類のテーブルを記憶しているテーブル記憶手段といい換えることができる。 そうすると、引用刊行物1に記載された発明は、「所定の数字図柄の組合せの配置をマトリックス状に規定するテーブルを記憶するテーブル記憶手段」なる構成を実質的に具備しているということができる。 そこで、本願発明と引用刊行物1に記載された発明を対比すると、 「遊技盤の下方に複数個の入球口を横一列に設け、入球口への入球に対応する番号の入賞図柄表示器を点灯させ、入賞図柄表示器に表示される番号に対応したマトリックス状表示画面の数字図柄を点灯させて、所定の数字図柄の組合せが成立したとき定められた得点を付与し、所定数の遊技球を遊技盤面に発射することにより1ゲームを成立させる組合せ式遊技機において、遊技盤面に設けられ、遊戯球が通過可能なゲートと、遊技盤面に設けられ、図柄の変動表示を行う図柄表示装置と、遊技盤面に設けられ、図柄変動装置に大当り図柄が停止表示された場合に開放する役物作動口と、を備え、1ゲーム中に遊技球がゲートを通過すると、図柄表示装置において図柄の変動表示が実行される組合せ遊技機。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 ・相違点1 本願発明は、所定の割り込み周期毎に乱数値を更新する乱数更新手段と、乱数更新手段により更新された乱数値を記憶する乱数記憶手段と、所定の数字図柄の組合せの配置をマトリックス状に規定するテーブルの複数種類を乱数値に対応させて電気的に記憶するテーブル記憶手段と備え、次のゲームに移行する直前において、乱数記憶手段に記憶されている乱数値に対応した1種類のテーブルを複数種類のテーブルを記憶したテーブル記憶手段から読み込み、その読み込んだテーブルに基づいて所定の数字図柄の組合せの配置をマトリックス状表示画面に表示させる制御手段を備えているのに対して、引用刊行物1に記載された発明は、乱数更新手段と乱数記憶手段を備えず、単に所定の数字図柄の組合せの配置をマトリックス状に規定するテーブルの1種類のみをテーブル記憶手段に記憶するとともに、そのテーブルに基づいて所定の数字図柄の組合せの配置をマトリックス状表示画面に表示させる点。 ・相違点2 1ゲーム中に遊技球がゲートを通過すると、本願発明においては、図柄表示装置において図柄の変動表示が実行されるとともに、乱数更新手段により更新された乱数値が乱数記憶手段に記憶されるのに対して、引用刊行物1に記載された発明は、図柄表示装置において図柄の変動表示を実行するのみである点。 4.判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 引用刊行物2の明細書に記載された内容、図面等の機能や作用から見て、引用刊行物2に記載された技術事項の「所定の配列」「ゲーム開始前」「変更し」「マトリックス状パターン部」「表示部回路」「遊戯球」「天穴」「アレンジボール機」は、本願発明の「所定の数字図柄の組合せの配置」「次のゲームに移行する直前」「読み込み」「マトリックス状表示画面」「表示部制御手段」「遊技球」「ゲート」「組合せ遊技機」にそれぞれ相当している。 そして、上記引用刊行物2の記載事項6の「・・・又実施例とは異なり、変更スイツチ105を押すとドラムが回転し、遊戯者の意志とは関係なくその回転を停止する様にすると、偶然性がゲームに付加され、ゲーム性の向上につながる。」なる記載、および上記引用刊行物2の記載事項7の「・・・なお実施例にあつては、配列パターンをA、B、Cの3種で説明したが、2種あるいは4種以上設けることもできる。」なる記載に基づけば、引用刊行物2に記載された発明は、所定の数字図柄の組合せの配置をマトリックス状に規定する複数種類のパターン部を記憶するパターン部記憶手段を有するとともに、遊戯者の意志に関わりなく、複数種類のパターン部の中からランダムに1種類のパターン部を選び、そのパターン部を表示するようにドラムの表示部を停止させる表示部制御手段を有していることが開示されていることは明らかである。 また、引用刊行物2の記載事項7の「配列パターンの変更時をゲーム開始前、あるいはゲーム中に行う様にすると、毎回のゲームに於て狙う数字穴101が異なるので、ゲームの内容が豊かになる。・・・」なる記載に基づけば、次のゲームに移行する直前において、複数種類のテーブル状のパターン部を記憶するパターン部記憶手段からランダムに選択した1種類のテーブル状のパターン部に基づいて所定の数字図柄の組合せの配置をマトリックス状表示画面に表示させる表示部制御手段を有するとともに、入球した数字穴とその対応する表示マトリクス画面上の位置をテーブル状のパターン部に基づいて対応させているということができる。 したがって、引用刊行物2には、「所定の数字図柄の組合せの配置をマトリックス状に規定するテーブルの複数種類を記憶する記憶手段と、次のゲームに移行する直前において、ランダムに複数種類のテーブルを記憶した記憶手段から1種類のテーブルをテーブル記憶手段から選び、選んだテーブルに基づいて所定の数字図柄の組合せの配置をマトリックス状表示画面に表示させる表示部制御手段とを備え、1ゲーム中に遊技球がゲートを通過又は入球すると、テーブルの変更を行うようにした組合せ遊技機。」なる発明が実質的に記載されているということができる。(以下、「引用刊行物2に記載された発明」という。) ところで、当審における拒絶理由において示した特開平4-138186号公報、特開平4-138188号公報、特開平4-138189号公報、特開平3-286789号公報、および特開平4-224780号公報等には、乱数を発生させる乱数発生手段と、所定の割り込み周期毎に乱数値を更新する乱数更新手段と、その乱数更新手段により更新された乱数値を記憶する乱数記憶手段と備えることは周知技術(以下、「周知技術A」という。)にすぎない。 また、上記実質的具備事項1において提示した刊行物である特開昭62-133984号公報、特開昭62-139682号公報、および特開昭62-139683号公報等に記載されているように、アレンジボール機等のパチンコ遊技機技術分野において、入球した数字穴とその対応するマトリクス状表示画面上の位置をテーブルに基づいて対応付けすることは、周知技術(以下、「周知技術B」という。)にすぎない上、引用刊行物2に記載された発明は、複数種類記憶されたテーブルの中から1種類のテーブルをランダムに選択する際に、その選択されたテーブルに基づいて所定の数字図柄の組合せの配置をマトリックス状表示画面に表示させることにより、テーブルに基づいてマトリクス状表示画面上の位置と入球した数字穴との対応付けを変えるようにしていることは明らかである。 さらに、パチンコ等の遊技機技術分野に限らず、機能上代替可能な機械的手段、電気的手段及び光学的手段の中から、それらを用いる機器のコスト、構成、スペースを勘案して所望の手段を適宜選択して用いることは、例示するまでもなく、技術常識というべき事項にすぎない。 そして、引用刊行物1に記載された発明と引用刊行物2に記載された発明は、共にアレンジボール機の表示画面において、ゲームの興趣を高めるために、マトリックス状の数字図柄の組合せを表示画面に表示する点で共通するので、両者の間において相互に技術を利用することに格別の困難性がない。 そうすると、上記周知技術A、周知技術Bおよび上記技術常識を参酌しつつ、引用刊行物1に記載された発明の組合せ遊技機のテーブルに代えて、引用刊行物2に記載された発明の複数種類のテーブルを記憶したテーブル記憶手段から1種類のテーブルを選択し、その選択したテーブルに基づき所定の数字図柄の組合せの配置をマトリックス状表示画面に表示させる表示制御手段を採用して、電気的なテーブル記憶手段とする際に、所定の割り込み周期毎に乱数値を更新する乱数更新手段と、乱数更新手段により更新された乱数値を記憶する乱数記憶手段と、所定の数字図柄の組合せの配置をマトリックス状に規定するテーブルの複数種類を乱数値に対応させて電気的に記憶するテーブル記憶手段とを備えるようにするととともに、次のゲームに移行する直前において、乱数記憶手段に記憶されている乱数値に対応した1種類のテーブルを複数種類のテーブルを記憶したテーブル記憶手段から読み込み、その読み込んだテーブルに基づいて所定の数字図柄の組合せの配置をマトリックス状表示画面に表示させる制御手段を備えるようにすること、すなわち上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到にし得る程度のことということができる。 (2)相違点2について 引用刊行物2に記載された発明は、1ゲーム中に遊技球がゲートを通過又は入球すると、テーブルの変更を行うようにする組合せ遊技機であることは、上記相違点1において示したとおりである。 そして、上記相違点1と同じ理由により、引用刊行物1に記載された発明と引用刊行物2に記載された発明は、相互に技術を利用することに格別の困難性がない。 そうすると、引用刊行物1に記載された発明の組合せ遊技機に、引用刊行物2に記載された発明の1ゲーム中に遊技球がゲートを通過すると、テーブルの変更を行うようにする組合せ遊技機を適用する際に、上記周知技術Aを参酌しつつ、引用刊行物1に記載された発明の1ゲーム中に遊技球がゲートや始動入賞口を通過又は入球すると、図柄表示装置の図柄の変動表示を実行することに加えて、乱数更新手段により更新された乱数値が乱数記憶手段に記憶されるようにすること、すなわち上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到にし得る程度のことということができる。 5.作用効果 本願発明によって奏する効果も、引用刊行物1に記載された発明、引用刊行物2の記載、および周知技術A、周知技術B並びに技術常識から普通に予測できる範囲内のものであって格別のものがあるとは認められない。 6.むすび 上記のとおりであるので、本願発明は、引用刊行物1に記載された発明、引用刊行物2の記載、および周知技術A、周知技術B並びに技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-01-17 |
結審通知日 | 2007-01-23 |
審決日 | 2007-02-05 |
出願番号 | 特願平10-99330 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 神 悦彦 |
特許庁審判長 |
三原 裕三 |
特許庁審判官 |
林 晴男 辻野 安人 |
発明の名称 | 組合せ式遊技機 |
代理人 | 足立 勉 |