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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01H
管理番号 1154570
審判番号 不服2004-11182  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-27 
確定日 2007-03-22 
事件の表示 平成7年特許願第179262号「転倒検知スイッチ」拒絶査定不服審判事件〔平成9年2月7日出願公開,特開平9-35597号〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は,平成7年7月14日の出願であって,平成15年10月6日付けで特許請求の範囲等を補正する手続補正がなされた後に平成16年4月20日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成16年5月27日に審判請求がなされるとともに,平成16年6月28日付けで特許請求の範囲等を補正する手続補正がなされたものである。

II.平成16年6月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年6月28日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願の請求項1に係る発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「内周面の水平断面が円形状かつ下部ほど直径の小さいボウルが形成されたハウジングと,反射性材料よりなり前記ボウルの底面に円形に開口している保持孔の直径よりも直径が大きく前記ボウル内で転動可能な球体と,前記保持孔の開口面より下方に配置され光を上方に放射してその反射光の受光強度が所定値以上であると前記保持孔に前記球体が嵌まっていることを検出する反射型の光電スイッチとを備え,前記ボウルの内周面の要所には前記球体の転動を阻止するとともに前記球体を前記保持孔に案内する程度の段差を有した転動防止凹溝が前記ボウルの上部から下部に亙って形成されて前記保持孔に達していることを特徴とする転倒検知スイッチ。」(下線は補正箇所を示す。)
と補正された。
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記ボウルの下部から上部に亙って形成されて成る」「転動防止凹溝」について,前記ボウルの「上部」から「下部」にわたって形成されて「前記保持孔に達している」との限定を付加するものであって,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された実願平3-15315号(実開平4-112436号)のマイクロフィルム(以下,「引用刊行物」という。)には,図1?図3と共に,次の事項が記載されている。
a.「【実施例】
以下本考案の傾斜スイッチの一実施例を図1(a),(b)により説明する。
同図によると,11は略円すい状の窪み12の先端に円柱状の窪み13を設けたケースで,上記円柱状の窪み13の開口径よりも大きい球体14をその上に乗せ,その上から上記球体14が円すい状の窪み12上を自由に転がるようにカバー15で覆い,かつ,上記円柱状の窪み13の底に,反射型のフォトセンサー16を設けて構成したものである。なお,17はフォトセンサー16のリード端子で,18は空気を通す空気溝である。」(段落【0009】?【0010】)
b.「上記図1(a),(b),図2(a),(b)の各実施例の動作について説明すると,図1(a),図2(a)のように傾斜スイッチが水平の場合は,球体14または24が円柱上の窪み13,または,穴の入口23に転がり込み,フォトセンサー16の場合は反射光を多く検知でき,磁気センサーの場合は球体からの磁束を多く検知でき,スイッチ27の場合はスイッチのレバー26が押さえられて水平を検知するものである。また,傾斜した場合は,球体14または24が円柱上の窪み13,または,穴の入口23から傾斜方向に転がり,フォトセンサー16の場合は反射光を少なく検知し,磁気センサーの場合は球体からの磁束を少なく検知し,スイッチ27の場合はスイッチのレバー26が開放されることにより傾斜を検知するものである。」(段落【0012】)
上記記載事項を総合すると,上記引用刊行物には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「略円すい状の窪み12を設けたケース11と,円柱状の窪み13の開口径よりも大きく円すい状の窪み12上を自由に転がる球体14と,円柱状の窪み13の底に設けられ球体14が円柱上の窪み13に転がり込むと,反射光を多く検知し,球体14が円柱上の窪み13から傾斜方向に転がると,反射光を少なく検知する反射型のフォトセンサー16とを備える傾斜スイッチ。」

3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると,後者における「略円すい状の窪み12を設けたケース11」はその構成・機能からみて前者における「内周面の水平断面が円形状かつ下部ほど直径の小さいボウルが形成されたハウジング」に相当し,以下同様に,「円柱状の窪み13」は「前記ボウルの底面に円形に開口している保持孔」に,「円柱状の窪み13の開口径よりも大きく」は「前記ボウルの底面に円形に開口している保持孔の直径よりも直径が大きく」に,「円すい状の窪み12上を自由に転がる」は「前記ボウル内で転動可能な」に,「球体14」は「球体」に,「円柱状の窪み13の底に設けられ」は「前記保持孔の開口面より下方に配置され」に,「球体14が円柱上の窪み13に転がり込むと,反射光を多く検知し,球体14が円柱上の窪み13から傾斜方向に転がると,反射光を少なく検知する」は「反射光の受光強度が所定値以上であると前記保持孔に前記球体が嵌まっていることを検出する」に,「反射型のフォトセンサー16」は「反射型の光電スイッチ」に,そして「傾斜スイッチ」は「転倒検知スイッチ」にそれぞれ相当する。
また,後者において,球体14が反射性材料よりなること,及び,反射型のフォトセンサー16が光を上方に放射するものであることは,それらの構成・機能からみて明らかである。
してみれば,両者は,
「内周面の水平断面が円形状かつ下部ほど直径の小さいボウルが形成されたハウジングと,反射性材料よりなり前記ボウルの底面に円形に開口している保持孔の直径よりも直径が大きく前記ボウル内で転動可能な球体と,前記保持孔の開口面より下方に配置され光を上方に放射してその反射光の受光強度が所定値以上であると前記保持孔に前記球体が嵌まっていることを検出する反射型の光電スイッチとを備える転倒検知スイッチ。」
である点で一致し,次の点で相違する。
相違点:本願補正発明においては,ボウルの内周面の要所には球体の転動を阻止するとともに前記球体を保持孔に案内する程度の段差を有した転動防止凹溝が前記ボウルの上部から下部にわたって形成されて前記保持孔に達しているのに対して,引用発明においては,そのような転動防止凹溝が形成されていない点。

4.当審の判断
一般にボウル内に転動可能に配置された球体の移動により,各種機器の振動等を検出するものにおいて,振動等を正確に検出するため,凹溝や突条を適当な箇所・範囲に設けることにより球体の挙動を抑制することは,特開平4-52522号公報,特開平4-52523号公報,特開平6-58803号公報,特開平6-58804号公報,実公昭63-5964号公報,実公平2-33178号公報,実公平2-34614号公報,特開平6-196059号公報,実願昭48-43711号(実開昭49-145156号)のマイクロフィルム,実願昭50-168921号(実開昭52-82768号)のマイクロフィルム等にみられるように本願出願前より周知の技術である。
こうした周知の技術は,ボウル内に転動可能に配置された球体の移動を検出する点で引用発明と共通し,しかも,球体の挙動を抑制するという課題においても共通することは明白であるから,引用発明にみられるような傾斜スイッチに適用してみようとすることは,当業者がごく自然に想起し得ることというべきである。
そして,転動を阻止するものは,球体が乗り越えられない程度の突条でも球体を保持孔に案内する程度の段差を有した凹溝でもよいことは当業者にとって明らかであり,さらに,それらを保持孔に達するものにするか,達するものにしないかも,当業者が適宜選択できる事項である。
よって,引用発明において,ボウルの内周面の要所に球体の転動を阻止するとともに前記球体を保持孔に案内する程度の段差を有した転動防止凹溝が前記ボウルの上部から下部にわたって形成されて前記保持孔に達しているようにすることは,上記周知の技術に基づき当業者が容易に想到し得たことである。

審判請求人は,審判請求書において,本願補正発明は,球体が転動防止凹溝に嵌った状態で保持孔まで導かれることとなり,球体の転動をより確実に抑制できて球体が保持孔に戻るまでの時間をより短縮でき,しかも球体に摩耗粉が付着しにくくなるという顕著な作用効果を奏すると主張している。
しかしながら,上記の効果は,上記周知の技術から当業者が予測できる程度のものに過ぎず,上記の効果があるからといって,本願補正発明に進歩性があるとすることはできない。

したがって,本願補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
よって,本件補正は,特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり,特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

III.本願発明について
平成16年6月28日付けの手続補正は上記II.のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成15年10月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「内周面の水平断面が円形状かつ下部ほど直径の小さいボウルが形成されたハウジングと,反射性材料よりなり前記ボウルの底面に円形に開口している保持孔の直径よりも直径が大きく前記ボウル内で転動可能な球体と,前記保持孔の開口面より下方に配置され光を上方に放射してその反射光の受光強度が所定値以上であると前記保持孔に前記球体が嵌まっていることを検出する反射型の光電スイッチとを備え,前記ボウルの内周面の要所には前記球体の転動を阻止するとともに前記球体を前記保持孔に案内する程度の段差を有した転動防止凹溝が前記ボウルの下部から上部に亙って形成されて成ることを特徴とする転倒検知スイッチ。」

1.引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は,前記「II.2.引用刊行物記載事項」に記載したとおりである。

2.対比・当審の判断
本願発明は,前記「平成16年6月28日付けの手続補正についての補正却下の決定」で検討した本願補正発明から「前記ボウルの下部から上部に亙って形成されて成る」「転動防止凹溝」についての限定事項である,前記ボウルの「上部」から「下部」にわたって形成されて「前記保持孔に達している」との事項を省いたものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「II.4.当審の判断」に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-17 
結審通知日 2007-01-23 
審決日 2007-02-07 
出願番号 特願平7-179262
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01H)
P 1 8・ 121- Z (H01H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岸 智章  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 山本 信平
和泉 等
発明の名称 転倒検知スイッチ  
代理人 森 厚夫  
代理人 西川 惠清  

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