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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1154730 |
審判番号 | 不服2004-1521 |
総通号数 | 89 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-01-22 |
確定日 | 2007-03-29 |
事件の表示 | 平成7年特許願第228898号「カーサミン粉末顔料およびそれを用いた化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成9年3月18日出願公開、特開平9-71508〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成7年9月6日の出願であって、平成15年2月13日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年4月15日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成15年12月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成16年1月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月20日付けで手続補正がなされ、その後、前置審査において平成16年9月17日付けで拒絶理由が通知されたが、これに対して請求人からは何らの応答のないものである。 2.平成16年2月20日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年2月20日付け手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 平成16年2月20日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、本件補正前の特許請求の範囲: 「【請求項1】 酸化チタン粉末、酸化チタン系粉末、黄酸化鉄粉末、黄酸化鉄系粉末、シリカ粉末、シリカ系粉末、グンジョウ粉末、グンジョウバイオレット粉末、グンジョウピンク粉末、酸化亜鉛粉末、タルク粉末、セリサイト粉末、マイカ粉末および合成ケイ酸アルミニウム粉末よりなる群から選ばれた平均粒径が0.015?10μmの少なくとも1種の粉末の表面に該粉末の3?100重量%のカーサミンが付着しているカーサミン粉末顔料。 【請求項2】 酸化チタン粉末、酸化チタン系粉末、黄酸化鉄粉末、黄酸化鉄系粉末、シリカ粉末、シリカ系粉末、グンジョウ粉末、グンジョウバイオレット粉末、グンジョウピンク粉末、酸化亜鉛粉末および合成ケイ酸アルミニウム粉末よりなる群から選ばれた平均粒径が0.015?10μmの少なくとも1種の粉末の表面に該粉末の3?100重量%のカーサミンが付着しているカーサミン粉末顔料。 【請求項3】 酸化チタン粉末、酸化チタン系粉末、黄酸化鉄粉末、黄酸化鉄系粉末、シリカ粉末、シリカ系粉末、グンジョウ粉末、グンジョウバイオレット粉末およびグンジョウピンク粉末よりなる群から選ばれた平均粒径が0.015?10μmの少なくとも1種の粉末の表面に該粉末の3?100重量%のカーサミンが付着しているカーサミン粉末顔料。 【請求項4】 カーサミン乾燥粉末を水に分散させ、該カーサミン水分散物中に請求項1?3のいずれかに記載の粉末を、該粉末に対してカーサミンが3?100重量%の割合で添加混合したのち脱水乾燥することからなるカーサミン粉末顔料の製造法。 【請求項5】 請求項1?3のいずれかに記載のカーサミン粉末顔料を化粧料全量の5?40重量%含有する化粧料。」 は、 「【請求項1】 酸化チタン粉末、酸化チタン系粉末、黄酸化鉄粉末、黄酸化鉄系粉末、シリカ粉末、シリカ系粉末、グンジョウ粉末、グンジョウバイオレット粉末、グンジョウピンク粉末、酸化亜鉛粉末、タルク粉末、セリサイト粉末、マイカ粉末および合成ケイ酸アルミニウム粉末よりなる群から選ばれた平均粒径が0.015?10μmの少なくとも1種の粉末の表面に該粉末の5?33重量%のカーサミンが付着しているカーサミン粉末顔料。 【請求項2】 酸化チタン粉末、酸化チタン系粉末、黄酸化鉄粉末、黄酸化鉄系粉末、シリカ粉末、シリカ系粉末、グンジョウ粉末、グンジョウバイオレット粉末、グンジョウピンク粉末、酸化亜鉛粉末および合成ケイ酸アルミニウム粉末よりなる群から選ばれた平均粒径が0.015?10μmの少なくとも1種の粉末の表面に該粉末の5?33重量%のカーサミンが付着しているカーサミン粉末顔料。 【請求項3】 酸化チタン粉末、酸化チタン系粉末、黄酸化鉄粉末、黄酸化鉄系粉末、シリカ粉末、シリカ系粉末、グンジョウ粉末、グンジョウバイオレット粉末およびグンジョウピンク粉末よりなる群から選ばれた平均粒径が0.015?10μmの少なくとも1種の粉末の表面に該粉末の5?33重量%のカーサミンが付着しているカーサミン粉末顔料。 【請求項4】 カーサミン乾燥粉末を水に分散させ、該カーサミン水分散物中に請求項1?3のいずれかに記載の粉末を、該粉末に対してカーサミンが5?33重量%の割合で添加混合したのち脱水乾燥することからなるカーサミン粉末顔料の製造法。 【請求項5】 請求項1?3のいずれかに記載のカーサミン粉末顔料を化粧料全量の5?40重量%含有する化粧料。」 と補正された。 上記請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1において、その発明を特定するために必要な事項である粉末表面のカーサミン付着量「3?100重量%」を、「5?33重量%」に限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(すなわち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引例及び引例に記載された事項 本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭51-38433号公報(以下、「引例1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (摘記1-1)「無機又は有機粉末にカルサミンを発色吸着させて得られた加工粉末体を化粧料成分に配合することを特徴とする化粧料」(第1頁左下欄 特許請求の範囲) (摘記1-2)「本発明は紅花カルサミンを水と一緒に機械的処理を行って発色させ、次いで、無機又は有機の各種無着色粉末を加えて、同様に機械的処理を行って乾燥すると発色したカルサミンがそのまま粉末に吸着された形で得られる加工粉末体を化粧料成分に配合することを特徴とする化粧料に関するものである。」(第1頁左下欄下から10行?下から4行) (摘記1-3)「カルサミンは油には全く溶解せず、又水には僅かに溶解して発色するが、直接メーキャップ化粧料に利用することは難しい。即ち、カルサミンは一種の水溶性染料であるが、水と混合しない油と一緒に機械的処理しても発色しない。従って、本発明は水と混合しない油の中でカルサミンを安定に発色させる方法に関するものである。」(第1頁左下欄下から3行?右下欄4行) (摘記1-4)「無機又は有機の無着色粉末としては例えばマイカ、タルク、カオリン、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化珪素、・・・セルローズパウダー等があげられる。」(第1頁右下欄5行?9行) (摘記1-5)「叙述の様に、力ルサミンが発色した加工粉末体は一般の顔料同様に取扱うことが可能で極めて有用性の高い原料である。このことは一般のメイキャップ製品に優れた用途を有する。特に油性タイプに限らず、乳化タイプ、水で溶いて使用するタイプに応用できる。 口紅の場合は、カルサミン以外の天然色素、食用の合成色素と組み合わせて新しい色調ものを提供できる。又、目の囲りのメイキャップ化粧料の場合には、許可された色素の範囲では出し難い彩度の高いピンクの色調を有するスチック製品、軟コウ製品、ペンシル製品、パウダー製品を提供できる。」(第1頁右下欄10行?第2頁左上欄2行) (摘記1-6)「実施例B (力ルサミン+酸化チタン)の加工粉末 カルサミン12gを擂潰機に3時間摩砕した後、酸化チタン600gと730mlを加えて、更に擂潰機で3時間摩砕して得られスラリーをスプレードライヤーで130℃、1時間処理すればカルサミンと酸化チタンとの加工粉末体が得られる。」(第2頁右上欄下から6行?末行) (3)対比・判断 引例1には、油には全く溶解せず、又水には僅かに溶解して発色するが、直接メーキャップ化粧料に利用することは難しいカルサミンの改善に係る発明(摘記1-3)として、無機又は有機粉末にカルサミンを発色吸着させて得られた加工粉末体を化粧料成分に配合することを特徴とする化粧料(摘記1-1)が記載されており、該無機粉末として、マイカ、タルク、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素などが示され(摘記1-4)、さらに、加工粉末体の具体例として、実施例Bに、カルサミン12gと酸化チタン600gと水730mlを加えて得られるスラリーをスプレードライヤーで130℃、1時間処理して得られたカルサミンと酸化チタンとの加工粉末体が記載されている(摘記1-6)。該実施例の加工粉末体は、酸化チタン粉末600gの表面に12gのカルサミンが吸着したもの、すなわち2重量%のカルサミンが付着したものであるから、引例1には、「酸化チタン粉末の表面に該粉末の2重量%のカルサミンが付着している加工粉末体。」の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。 そこで、本件補正発明と引用発明を対比すると、引用発明のカルサミンは、紅花カルサミンである(摘記1-2)から、本件補正発明のカーサミンに該当するものであり(以下、カルサミンも「カーサミン」に統一して表記する。)、また引用発明の加工粉末体はカーサミンが付着している粉末であって、一般の顔料同様に取扱うことが可能なものである(摘記1-5)から、本件補正発明のカーサミン粉末顔料に該当する。してみれば、両者は、「酸化チタン粉末の表面にカーサミンが付着しているカーサミン粉末顔料。」である点で一致し、(A)粉末の粒径を、本件補正発明では平均粒径が0.015?10μmと規定しているのに対し、引用発明では粒径の記載がない点(相違点1)、(B)カーサミンの付着量が、本件補正発明では粉末の5?33重量%であるのに対し、引用発明では粉末の2重量%である点(相違点2)で相違する。 これら相違点について検討する。 (A)相違点1について 引用発明は、化粧料に用いられるものである(摘記1-1)ところ、化粧料において、平均粒径が0.015?10μmである顔料は、通常使用されるものであり、通常市販されている顔料である(必要なら、フレグランスジャーナル、1994年4月号(Vol.22,No.4)、第65頁の図1、特開平4-5217号公報第6頁の表-1参照)から、引用発明で用いられる、それ自体周知の顔料である酸化チタン粉末として、平均粒径が本件補正発明で規定する範囲のものを用いることは当業者の通常行うところである。 (B)相違点2について 引用発明は、カーサミンを発色吸着させて得られたカーサミン粉末顔料(加工粉末体)であるから、そのカーサミンの付着量に応じて該顔料の色が変化することは容易に推測されるところである。そして、該カーサミン粉末顔料(加工粉末体)は、口紅等の種々のメイキャップ製品に着色顔料として用いられるものである(摘記1-1?1-3、1-5)から、製品の種類や配色などの必要に応じて、引用発明に記載されている付着量より多いカーサミンを付着させたものとすることは、当業者の適宜行うところであり、本件補正発明で規定する5?33重量%程度の付着量とすることに格別の困難性は認められない。また、本願明細書の記載及び請求人の提出した実験成績証明書をみても、付着量を該数値範囲とすることにより格別の効果を奏するものとも認められない。 そして、鮮明な発色という効果は、引用発明も奏するものであり(摘記1-3,1-5)、カバー力を有することは、引用発明で用いられる酸化チタン粉末の周知の効果である(必要なら特開平4-5217号公報第1頁右欄1行?8行参照)から、本件補正発明の効果も引例1の記載から当業者の予想するところである。 したがって、本件補正発明は、引例1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、その余について検討するまでもなく、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成16年2月20日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成15年4月15日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記「2.(1)」に記載した、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1のとおりである。 (1)拒絶の理由及び引用例 前置審査において示された平成16年9月17日付けの拒絶理由は、本願に係る発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものであり、引例として、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭51-38433号公報(引例1)が示されている。 (2)引例に記載された事項 引例1に記載された事項は、前記「2.(2)」に示した通りである。 (3)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本件補正発明での粉末表面のカーサミン付着量「5?33重量%」を「3?100重量%」としたものである。 そうすると、本願発明の付着量に包含される付着量を有し、他の構成要件は同一である本件補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引例1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引例1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引例1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-01-24 |
結審通知日 | 2007-01-30 |
審決日 | 2007-02-14 |
出願番号 | 特願平7-228898 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大宅 郁治、上條 のぶよ |
特許庁審判長 |
脇村 善一 |
特許庁審判官 |
岩瀬 眞紀子 井上 彌一 |
発明の名称 | カーサミン粉末顔料およびそれを用いた化粧料 |
代理人 | 佐木 啓二 |
代理人 | 朝日奈 宗太 |