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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1154733
審判番号 不服2004-4872  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-10 
確定日 2007-03-29 
事件の表示 特願2001-250460「携帯端末」拒絶査定不服審判事件〔平成15年2月28日出願公開、特開2003-60365〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成13年8月21日の出願であって、平成16年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月8日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成16年4月8日付けの手続補正(明細書についての手続補正であって、以下、「本件補正」ともいう。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年4月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「筐体と、
前記筐体内に収納された基板と、
前記基板裏面に実装された電子部品と、
前記基板表面を押圧するように移動可能に、前記筐体の一方の表面側に設けられた操作部材とを備え、
前記筐体は、環状のリブを含み、前記リブは、前記一方の表面に向かい合い、他方の表面側の一方の面に前記電子部品を避けて前記基板裏面と接触するように設けられており、かつ、上記環状リブを設けた筐体の他方の表面側の他方の面には上記電子部品に電力を供給する板状電池が接触して設けられている、携帯端末。」(下線部は補正箇所を示す。)と補正された。
上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記基板を押圧するように移動可能に」と、「前記リブは、前記一方の表面に向かい合う他方の表面側に前記電子部品を避けるように設けられている」との構成を、願書に最初に添付された明細書または図面に記載された技術的事項によって、「前記基板表面を押圧するように移動可能に」と、「前記リブは、前記一方の表面に向かい合い、他方の表面側の一方の面に前記電子部品を避けて前記基板裏面と接触するように設けられており、かつ、上記環状リブを設けた筐体の他方の表面側の他方の面には上記電子部品に電力を供給する板状電池が接触して設けられている」とに、それぞれ限定するものであるから、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-151136号公報(以下、「刊行物」という。)には、「携帯端末装置」に関して、図1?10とともに次のような記載がある。
A)「【0009】・・・図10においてキーボタン16が押されることにより、まずプリント基板12が変形し、次いで実装部品13が変形し、さらに実装部品13が下ケース11に当接して、下ケース11も変形してしまうという問題を有している。・・・
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、・・・携帯端末装置本体の小型化、薄型化に伴う曲げやねじりなどに対して機能部品の損傷が起きないようにケースの機械的強度及び剛性を増加させるよう構成した携帯端末装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】・・・本発明の携帯端末装置は、実装部品が搭載されているプリント基板と、前記実装部品の配置位置に対応して前記実装部品を受ける受けリブが植立された下ケースと、前記下ケースの下部にあって前記下ケースの変形を支えるバッテリケースとから構成されることを特徴としている。」
B)「【0015】・・・図1において携帯端末装置は、下ケース1の上部に実装部品3が搭載されたプリント基板2が、また、下部からはバッテリ4が搭載されるように構成されている。
【0016】・・・本発明の実施形態における携帯端末装置の下ケース1には、従来のような当て面の外に、実装部品3の配置位置に対応して実装部品3を支える矩形のリブが植立されている。そうした上で、プリント基板2を下ケース1に載置している。なお、リブの形状は上記した矩形に限定されず、円形でも楕円形でもよく、また実装部品3の四隅だけを支える鈎のような形状でも構わず、その上、形状内がメッシュ状にされていても構わない。さらに、こうしたリブは主に実装部品、特にパッケージ化された機能部品の対応箇所に植立されるのが望ましい。」
C)「【0017】・・・図2において下ケース1、プリント基板2、実装部品3および受けリブ5のそれぞれの配置関係が明らかにされており、下ケース1から植立された受けリブ5によって実装部品3が支えられる構造になっている。
【0018】・・・図3においても下ケース1、プリント基板2、実装部品3および受けリブ5のそれぞれの配置関係が明らかにされており、下ケース1から植立された受けリブ5によって実装部品3が支えられる構造になっているのが理解されるであろう。・・・図3には携帯端末装置の構成として、キーボタン6、上ケース7、バッテリケース8、バッテリセル9およびバッテリケース8に植立された受けリブ10も図示されている。」
D)「【0020】図5は、図4においてキーボタン6を図示した矢印方向から押した場合の動作時の側面断面図である。図5においてキーボタン6が押されることにより、プリント基板2が変形するも実装部品3は受けリブ5によってしっかりと支えられているのでほとんど変形せずにそのまま下ケース1が押されて下ケース1が変形している様子が示されている。
【0021】下ケース1の変形量が大きくてバッテリケース8が変形したと仮定する。しかし、バッテリケース8には、下ケース1に植立された受けリブ5と同一位置に受けリブ10が植立されており、これがバッテリセル9に当接するようになるもこのバッテリセル9の表面は金属で構成されているので変形は起きず、従来のように大きく変形して実装部品が機能しなくなるという虞れは全くない。」
E)「【0023】
【発明の効果】以上のように本発明の携帯端末装置は、実装部品が搭載されているプリント基板と、前記実装部品の配置位置に対応して前記実装部品を受ける受けリブが植立された下ケースと、前記下ケースの下部にあって前記下ケースの変形を支えるバッテリケースとから構成されるものであり、携帯端末装置本体の小型化、薄型化に伴う曲げやねじりなどに対して機能部品の損傷が起きないようにケースの機械的強度及び剛性を増加させることができるという効果を有する。」

上記A)?E)の記載からみて、上記刊行物の携帯端末装置は、上下ケース1,7と、上下ケース1,7内に収納されたプリント基板2と、プリント基板2の裏面に実装された実装部品3と、前記プリント基板2の表面を図5の矢印方向に押圧するように、上ケース7の表面側に移動可能に設けられたキーボタン6とを備えており、下ケース1は、矩形(或いは円形,楕円形)の受けリブ5を含み、前記受けリブ5は、図2?4から明らかなように、前記上ケース7の表面に向かい合い、下ケース1の表面側の一方の面に前記実装部品3と接触するように設けられており、かつ、上記矩形の受けリブ5を設けた下ケース1の表面側の他方の面側には上記電子部品に電力を供給するバッテリセル9がバッテリケース8に接触して設けられているものと認められる。また、リブが矩形(或いは円形,楕円形)に形成されているということは、該リブが環状に形成されているということでもある。
したがって、上記刊行物には、
「上下ケース1,7と、
上下ケース1,7内に収納されたプリント基板2と、
プリント基板2の裏面に実装された実装部品3と、
前記プリント基板2の表面を押圧するように移動可能に、上ケース7の表面側に設けられたキーボタン6とを備え、
下ケース1は、環状の受けリブ5を含み、前記受けリブ5は、前記上ケース7の表面に向かい合い、下ケース1の表面側の一方の面に前記実装部品3と接触するように設けられており、かつ、上記環状の受けリブ5を設けた下ケース1の表面側の他方の面側には上記電子部品に電力を供給するバッテリセル9がバッテリケース8に接触して設けられている、携帯端末装置。」の発明(以下、「刊行物の発明」という。)が記載されているものと認める。

3.本願補正発明と上記刊行物の発明との対比
そこで、本願補正発明と上記刊行物の発明とを対比すれば、上記刊行物の発明の「上ケース7」、「下ケース1」は合わせて本願補正発明の「筐体」に対応しているとともに、「上ケース7」は「筐体の一方」に、「下ケース1」は「筐体の他方」にそれぞれ対応している。また、上記刊行物の発明の「プリント基板2」、「実装部品3」、「キーボタン6」、「環状の受けリブ5」、「携帯端末装置」は、それぞれ本願補正発明の「基板」、「電子部品」、「操作部材」、「環状のリブ」、「携帯端末」に対応している。
したがって、本願補正発明は上記刊行物の発明と、
「筐体と、
前記筐体内に収納された基板と、
前記基板裏面に実装された電子部品と、
前記基板表面を押圧するように移動可能に、前記筐体の一方の表面側に設けられた操作部材とを備え、
前記筐体は、環状のリブを含み、前記リブは、前記一方の表面に向かい合い、他方の表面側の一方の面に設けられている、携帯端末。」
で一致し、以下の<相違点>で相違しているものと認める。
<相違点>
1)本願補正発明のリブは、電子部品を避けて基板裏面と接触するように設けられているのに対し、上記刊行物の発明の受けリブ5は、電子部品である実装部品3と接触するように設けられている点。
2)本願補正発明では、環状リブを設けた筐体の他方の表面側の他方の面に、板状電池が接触して設けられているのに対し、上記刊行物の発明では、環状の受けリブ5を設けた下ケース1の表面側の他方の面側に、板状電池であるバッテリセル9がバッテリケース8に接触して設けられてはいるものの、該バッテリセル9が、前記下ケース1の表面側の他方の面に、直に接触して設けられているものではない点。

4.判断
(1)相違点1)に関して
上記刊行物の発明の受けリブ5のような、プリント基板の変形を抑制する部材を筐体内に形成した携帯端末装置において、該プリント基板の変形を抑制する部材を、電子部品を避けて基板裏面と接触するように設けることは周知技術(例えば、特開平10-32625号公報における【0003】、又は特開平8-287763号公報における【0004】の記載を参照。)である。
してみれば、上記刊行物の発明で、受けリブ5を、電子部品を避けて基板裏面と接触するように設けることは、上記刊行物の発明に上記周知技術を適用することにより、当業者が容易に行い得たものである。
(2)相違点2)に関して
プリント基板の変形を抑制する部材を、筐体の一方の表面に向かい合って筐体の他方の表面側の一方の面に設けたものにおいて、変形を抑制する部材が設けられた筐体の他方の表面側の他方の面に、電池を接触して設けるようにすることは周知技術(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された実公平2-43363号公報を参照。)である。
してみれば、上記刊行物の発明で、環状の受けリブ5を設けた下ケース1の表面側の他方の面側に、板状電池であるバッテリセル9を接触して設けるようにすることは、上記刊行物の発明に上記周知技術を適用することにより当業者が容易に行い得たものである。

そして、本願補正発明が奏する作用効果は、上記刊行物の発明と上記各周知技術に示唆された事項から予測される程度以上のものではない。
したがって、本願補正発明は、上記刊行物の発明と上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、上記刊行物の発明と上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

なお、審判請求人は、平成16年5月6日付けの上申書で、平成16年4月8日付けの手続補正書では、特許請求の範囲に係る携帯端末について明確に規定されていない点があるので補正したい旨、上申しているが、平成16年4月8日付けの手続補正書における特許請求の範囲の記載は明確であり、携帯端末についても明確に規定されているから、そのために再度の拒絶理由を通知することは行わない。

【3】本願発明について
平成16年4月8日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成15年9月19日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「筐体と、
前記筐体内に収納された基板と、
前記基板裏面に実装された電子部品と、
前記基板を押圧するように移動可能に、前記筐体の一方の表面側に設けられた操作部材とを備え、
前記筐体は、環状のリブを含み、前記リブは、前記一方の表面に向かい合う他方の表面側に前記電子部品を避けるように設けられている、携帯端末。」

1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「【2】2.」に記載したとおりである。

2.本願発明と刊行物との対比・判断
本願発明は、前記「【2】」で検討した本願補正発明から、環状リブに関する「前記基板裏面と接触するように」との構成と、「上記環状リブを設けた筐体の他方の表面側の他方の面には上記電子部品に電力を供給する板状電池が接触して設けられている」との構成とを、実質的に省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものである本願補正発明が、前記「【2】4.」に記載したとおり、刊行物の発明と上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の上位概念発明である本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、刊行物の発明と上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物の発明と上記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そして、このような進歩性を有しない発明を包含する本願は、本願の請求項2?4に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-17 
結審通知日 2007-01-23 
審決日 2007-02-13 
出願番号 特願2001-250460(P2001-250460)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新海 岳  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 永安 真
ぬで島 慎二
発明の名称 携帯端末  
代理人 野田 久登  
代理人 酒井 將行  
代理人 森田 俊雄  
代理人 仲村 義平  
代理人 堀井 豊  
代理人 深見 久郎  

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