• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1154786
審判番号 不服2004-23880  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-22 
確定日 2007-03-28 
事件の表示 平成7年特許願第512040号「組織切除術のための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成7年4月27日国際公開、WO95/10981、平成 9年 4月22日国内公表、特表平9-503942号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1994年10月13日(パリ条約による優先権主張1993年10月13日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成16年8月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同年12月22日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、出願当初の明細書及び図面と平成16年12月22日付け手続補正書により補正された明細書とからみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のとおりのものである。
「【請求項1】
組織切除装置において、
近位端、遠位端、それらの間を延びる管腔及び遠位端近くで管腔を露出する開口部を有する細長い本体、
組織を電気外科的に除くための遠位端近くの手段、
切除すべき組織の深さを決定すべく手術部位の組織を超音波的にイメージ化するための該装置上の超音波変換器、及び
管腔を通じて、切除された組織を取り除くための手段
を含む装置。」

3.刊行物に記載される発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平2-128761号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に、次の事項が記載されている。
(a)「第1図はレゼクトスコープの全体を示し、1はシースである。このシース1の後端部には内部に液体を注入するための注入口体2が設けられており、この注入口体2にはバルブ3が取付けられている。」(第2頁左上欄第16行?第20行)
(b)「次に、上記レゼクトスコープを用いて前立腺の病変部位を切除して治療する場合について説明する。まず、シース1を尿道(図示せず)内を通じて体腔内の前立腺(図示せず)の部分に挿入する。そして、スライダ8を操作して電極6の先端ループ部9をシース1の先端から突出させて病変部位に押し当て、この電極6に高周波電流を通電することによって病変部位を焼灼切除する。このとき、先端ループ部9に設けた超音波素子17を作動させる。すると、超音波素子17から発信された超音波パルスの反射波はこの超音波素子17に受信され、これにより体腔内における電極6の先端ループ部9の位置やその周辺の生体部位の状況がモニタ(図示せず)に表示される。したがって、電極6の先端ループ部9による前立腺の病変部位の切除深さを検知することができ、その治療を安全かつ確実に行なうことができる。」(第2頁左下欄第17行?右下欄第13行)
(c)図面第1図には、電極6の先端ループ9がシース1の先端近くに配設されること、及び、シース1が先端ループ部9の配設箇所に対応して開口を備えることが示されている。

以上の記載事項及び図面の内容を総合すれば、上記刊行物には次の発明が記載されているものと認められる。
「前立腺の病変部位を切除して治療するレゼクトスコープにおいて、
後端、先端、先端近くに形成された開口を有するシース1、
高周波電流を通電することによって病変部位を焼灼切除する、シース1の先端近くの、電極6の先端ループ部9、
先端ループ部9による前立腺の病変部位の切除深さを検知するべく先端ループ部9の位置やその周辺の生体部位の状況をモニタするための超音波素子17、
を含むレゼクトスコープ。」

4.対比・判断
本願発明と刊行物記載の発明とを対比すると、レゼクトスコープは一般に切除鏡のことであるから,刊行物記載の発明の「前立腺の病変部位を切除して治療するレゼクトスコープ」は、本願発明の「組織切除装置」に包含されるものである。
また、刊行物記載の発明の「後端、先端、先端近くに形成された開口を有するシース1」は、その機能及び形状からみて、本願発明の「近位端、遠位端」と「遠位端近くで」「開口部を有する細長い本体」に相当し、同様に、刊行物記載の発明の「高周波電流を通電することによって病変部位を焼灼切除する、シース1の先端近くの、電極6の先端ループ部9」は、本願発明の「組織を電気外科的に除くための遠位端近くの手段」に相当する。
さらに、刊行物記載の発明の「超音波素子17」が、「電極6の先端ループ部9による前立腺の病変部位の切除深さを検知するべく先端ループ部9の位置やその周辺の生体部位の状況をモニタする」のは、先端ループ部9によって切除すべき病変部位の深さを決定するためであることは自明であることから,刊行物記載の発明の「先端ループ部9による前立腺の病変部位の切除深さを検知するべく先端ループ部9の位置やその周辺の生体部位の状況をモニタするための超音波素子17」は、本願発明の「切除すべき組織の深さを決定すべく手術部位の組織を超音波的にイメージ化するための該装置上の超音波変換器」にほかならない。

してみると、両発明は、本願発明の用語を用いて表現すると、
「組織切除装置において、
近位端、遠位端、遠位端近くで開口部を有する細長い本体、
組織を電気外科的に除くための遠位端近くの手段、
切除すべき組織の深さを決定すべく手術部位の組織を超音波的にイメージ化するための該装置上の超音波変換器、
を含む装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
本願発明では、細長い本体が、その近位端と遠位端との間を延びる管腔及び遠位端近くで管腔を露出する開口部を備えるとともに、管腔を通じて切除された組織を取り除くための手段を備えるのに対して、刊行物記載の発明では、シース1が、先端近くに開口を備えるものの管腔を備えず、その結果、管腔を通じて切除された組織を取り除くための手段も備えない点。

上記相違点について検討する。
組織切除装置において、細長い本体内に組織切除手段の配設箇所と装置本体とをつなぐ管腔を設けると共に、当該管腔を通じて切除された組織を取り除くための手段を設けるようなことは、例えば、実願昭63-113955号(実開平2-35718号)のマイクロフィルムや、特開昭55-116346号公報に開示されるように、従来周知である。
刊行物記載の発明においても,本願発明同様,先端ループ部9によって切除された病変部位を取り除くことは当然の技術的課題であるから,刊行物記載の発明に上記周知技術を適用することは当業者が自然に想起し得ることといえる。そして,上記周知技術を適用するにあたって、管腔をシース1の先端近くの開口において露出するように設けるようなことは、管腔が、先端ループ部9が開口において切除した組織を取り除くための通路機能を果たすべきものである以上当然のことである。
したがって、刊行物記載の発明に上記周知技術を適用し相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たことといえる。
また、本願発明の作用効果も、刊行物記載の発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものにすぎない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は拒絶をすべきものである。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-06 
結審通知日 2006-11-06 
審決日 2006-11-17 
出願番号 特願平7-512040
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡崎 克彦  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 中村 則夫
増沢 誠一
発明の名称 組織切除術のための装置  
代理人 松井 光夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ