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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1154895 |
審判番号 | 不服2002-22311 |
総通号数 | 89 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-11-20 |
確定日 | 2007-03-30 |
事件の表示 | 平成11年特許願第214598号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月13日出願公開、特開2001- 38007〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
一.手続の経緯 本願は、平成11年7月29日の出願であって、平成14年9月30日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月20日付で手続補正がなされたものである。 二.平成14年12月20日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成14年12月20日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された。 「遊技領域に設けられて変動図柄を表示する図柄表示装置と、始動入賞口と、前記始動入賞口への遊技球入賞に基づいて、大入賞口を遊技者に不利な状態から有利な状態に変動させる特別遊技状態の発生を制御する特別遊技状態発生制御手段と、を備えるパチンコ機において、 前記特別遊技状態発生制御手段を遊技者に有利な状態に制御する特典遊技状態を所定確率で発生させるように制御する特典発生制御手段と、 前記特典発生制御手段が前記特典遊技状態を発生させることを報知する当たり動画映像及び前記特典発生制御手段が前記特典遊技状態を発生させないことを報知するハズレ動画映像の一対の共通した物語で構成される表示画像データを複数個格納した表示画像データ記憶手段とを有し、 前記表示画像データ記憶手段に格納された複数個の表示画像データは互いに動画映像の内容が異なるものであって、 前記特典発生制御手段が前記特典遊技状態を発生させる場合は、複数個の表示画像データの中から、一個の表示画像データを構成する当たり動画映像を一つ選択する一方、前記特典発生制御手段が前記特典遊技状態を発生させない場合は、複数個の表示画像データの中から、一個の表示画像データを構成するハズレ動画映像を一つ選択し、選択された表示画像データの動画映像を前記図柄表示装置にて表示する表示制御手段を有することを特徴とするパチンコ機。」 上記補正は、補正前の請求項1及び請求項2を1つにし、さらに、発明を特定するために必要と認める事項を付加したものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用刊行物記載事項 原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である特開平11-57132号公報(以下「引用例」という。)の記載事項 「【0034】……図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る遊技機10は、……パチンコ機である。…… 【0035】遊技機10は、打ち出された球の流下する場としての遊技盤面11を備えている。……遊技盤面11の略中央部分には、図柄合わせゲームを表示する中央役物としての可変表示手段20が設けられている。……」 「【0049】なお、第1の画面遊技実行手段50、第2の画面遊技実行手段60、確率変更部70は、遊技機10における各種制御の中枢的機能を果たすCPU(中央処理装置)と、ROM(リード・オンリ・メモリ)と、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)を主要部とする回路によって構成されている。ROMは、CPUの実行するプログラムや可変表示手段20上に表示される各種図柄などの固定的データを記憶している。またRAMは、プログラムを実行する上で一時的に必要になるデータを記憶する作業用のメモリである。」 「【0069】次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態における遊技機は、選択スイッチ17を具備しない点を除き図2に示した第1の実施形態と外観構成は同一であり、その説明を省略する。 【0070】図7は、第2の実施の形態における遊技機の回路構成を示している。図1に示したものに比して、第2の画面遊技実行手段60に代えて演出画面展開手段200を有する点と、選択スイッチ17が無い点が相違しており、同一の部分についてはそれらの説明を適宜省略する。演出画面展開手段200は、第1の画面遊技実行手段50の実行する図柄合わせゲームで当たりが出たとき、可変表示手段20上で確率変動モードへ移行するか否かを遊技者に通知するための一連の演出画面を表示する機能を備えた回路部分である。 【0071】ここでは、図4bに示すような矢を射る人物の図柄82と矢の的81a、81b、81cとを表示し、遊技者からの操作とは無関係に、遊技機側で矢を射る人物の図柄82を適宜移動させて、その矢を射り、かつ矢の当たった的を反転させて、確率変動モードへ移行するか否かを図4dに示す態様で表示するようになっている。 【0072】確率抽選手段210は、今回の演出画面の結果を確率変動モードへ移行させる大当たりにするか否かを無作為に抽選するための回路部分である。演出画面展開手段200は、確率抽選手段210の抽選結果に従って大当たりの演出を行うか、外れの演出を行うかを表示するようになっている。 【0073】ラッキーチャンス制御部220は、確率変動モードへ移行する大当たりの出現確率の高い高確率演出モードで演出画面を展開表示するか、大当たりの出現確率の低い低確率演出モードで展開表示するかを無作為抽選によって決定する回路部分である。ラッキーチャンス制御部220の有する演出モード切替手段221は、先の無作為抽選の結果に従って、演出画面展開手段200の展開する演出画面を高確率演出モードで実行するか低確率演出モードで実行するかを切り替える回路部分である。 【0074】ここでは、高確率演出モードのとき、通常、3つ表示される的の数を、1つあるいは2つに減らし、高い確率で大当たりの出ることを遊技者が認識し得るように演出画面の表示が行われる。 【0075】図8は、第2の実施の形態における遊技機の行う動作の流れを示したものである。特定入賞口12に球が入賞すると(ステップS301;Y)、画面遊技実行手段50は、可変表示手段20上で図柄合わせゲームを所定時間に渡って展開した後、その実行結果を確定表示する(ステップS302)。 【0076】すなわち、可変表示手段20に表示される数字の図柄を「0」から「9」の範囲でスクロール動作させ、スロットマシーンに見立てた図柄合わせゲームを開始するとともに、抽選手段51によって無作為抽選を行い、その抽選結果に応じて図柄のスクロール動作を停止させる。 【0077】図柄合わせゲームの実行結果が外れの場合には(ステップS303;N)、今回の入賞に基づく画面遊技を終了する(エンド)。一方、図柄合わせゲームで、図4aに示すように「777」の数字の揃う状態が表示されて当たりが出たとき(ステップS303;Y)、アタッカー31の開閉動作を開始し、遊技者に特別価値を付与する(ステップS304)。 【0078】アタッカー31を開閉する動作と並行して、演出画面展開手段200のラッキーチャンス制御部220は、今回、可変表示手段20上で展開する演出画面を高確率演出モード(ラッキーチャンス)で行うか、低確率演出モードで行うかを抽選により決定する(ステップS305)。また確率抽選手段210は、今回の演出画面の最終的結果として、大当たり(確率変動モードへの移行)を出すか否かを決めるための無作為抽選を実行する(ステップS306)。 【0079】この際、確率抽選手段210は、ラッキーチャンス制御部220によって決定された演出モードに従った確率で大当たりが出るように無作為抽選を行う。すなわち、ラッキーチャンス制御部220によって高確率演出モードが選択されている場合には、低確率演出モードが選択されている場合に比べて高い確率で大当たりが出現するように無作為抽選を実行する。 【0080】ラッキーチャンス制御部220は、今回の演出モードが、低確率演出モードのとき(ステップS307;N)、低確率演出モードに対応する一連の演出画面を可変表示手段20上に表示する(ステップS309)。ここでは、低確率演出モードのときは図4bに示すように、矢の的を3つ表示し、矢を射る人物の図柄82を適宜移動させ、人物82がこれらのうちのいずれかの的を矢で射る様子を表示する。 【0081】一方、決定された今回の演出モードが、高確率演出モードのときは(ステップS307;Y)、高確率演出モードに対応する一連の演出画面を可変表示手段20上に表示する(ステップS308)。ここでは、高確率演出モードのときは、矢の的を2つまたは1つだけ表示し、矢を射る人物の図柄82がこれらのうちのいずれかの的を矢で射る様子を表示する。このように、高確率演出モードのとき、可変表示手段20上に表示される的の数を減らすので、遊技者は、大当たりの出る確率が通常よりも高いことを容易に認識することができる。 【0082】確率抽選手段210によって行われた抽選結果が大当たりを示している場合には(ステップS310;Y)、矢の射られた的を裏返し、図4dに示すように裏返った的83に「確変、大当たり」等の文字を表示するとともに、矢を射った人物82が歓喜する様子を表示する。一方、確率抽選手段210によって行われた抽選結果が外れであった場合には(ステップS310;N)、矢の射られた先の的を裏返すとともに、当該的の裏面には何も表示しない。 【0083】大当たりが出たとき(ステップS310;Y)、確率変更部70は、以後、確率変動モードに設定し、画面遊技実行手段50の行う無作為抽選で当たりの出る確率を通常状態よりも高い値に設定する。 【0084】このように、図柄合わせゲームの実行結果として、それが当たりか否かだけを表示し、確率変動モードへ移行するか否かを、図柄合わせゲームの実行結果が表示された後に行う演出画面を通じて遊技者に通知するようにしたので、遊技者の興奮を2段階に渡って喚起でき、ゲームの面白みを増すことができる。 【0085】また一連の演出画面の最終段階になってはじめて大当たりになるか否かが認識できるようにしたので、遊技者の大当たりへの期待感を長く持続させることができる。」 上記記載事項及び図面によれば、引用例には、以下の発明(以下、引用発明という。)が記載されている。 「遊技盤面11に設けられて図柄合わせゲームを表示する可変表示手段20と、特定入賞口12と、を備え、特定入賞口12に球が入賞すると、可変表示手段20上で図柄合わせゲームが実行され、図柄合わせゲームで当たりが出たとき、アタッカー31の開閉動作を開始し、遊技者に特別価値を付与するパチンコ機において、 図柄合わせゲームで当たりが出たとき、高確率演出モードで演出画面を展開表示するか、低確率演出モードで展開表示するかを無作為抽選によって決定し、決定された演出モードに従った確率で大当たりが出るように無作為抽選を行い、大当たりが出たとき、以後、確率変動モードに設定し、無作為抽選で当たりの出る確率を通常状態よりも高い値に設定する確率変更部70と、 CPUの実行するプログラムや可変表示手段20上に表示される各種図柄などの固定的データを記憶しているROMと、プログラムを実行する上で一時的に必要になるデータを記憶する作業用のメモリであるRAMとを有し、 決定された今回の演出モードが、低確率演出モードのとき、低確率演出モードに対応する一連の演出画面(矢の的を3つ表示し、矢を射る人物の図柄82を適宜移動させ、人物82がこれらのうちのいずれかの的を矢で射る様子)を表示し、一方、決定された今回の演出モードが、高確率演出モードのときは、高確率演出モードに対応する一連の演出画面(矢の的を2つまたは1つだけ表示し、矢を射る人物の図柄82がこれらのうちのいずれかの的を矢で射る様子)を表示し、抽選結果が大当たりの場合には、矢の射られた的を裏返し、裏返った的83に「確変、大当たり」等の文字を表示するとともに、矢を射った人物82が歓喜する様子を表示し、一方、抽選結果が外れの場合には、矢の射られた的を裏返すとともに、当該的の裏面には何も表示しないようにして、可変表示手段20上で確率変動モードへ移行するか否かを遊技者に通知するための一連の演出画面を表示する演出画面展開手段200とを有するパチンコ機。」 3.対比 引用発明における「遊技盤面11に設けられて図柄合わせゲームを表示する可変表示手段20」は本願補正発明の「遊技領域に設けられて変動図柄を表示する図柄表示装置」に相当し、以下同様に、「特定入賞口12」は「始動入賞口」に、「球」は「遊技球」に、「アタッカー31の開閉動作を開始し、遊技者に特別価値を付与」及び「当たり」は「大入賞口を遊技者に不利な状態から有利な状態に変動させる特別遊技状態の発生」に、「当たりの出る確率が通常状態よりも高い確率変動モード」及び「大当たり」は「特別遊技状態発生制御手段を遊技者に有利な状態に制御する特典遊技状態」に、「外れ」は「特典遊技状態を発生させない」に相当する。 また、引用発明も、始動入賞口への遊技球入賞に基づいて、大入賞口を遊技者に不利な状態から有利な状態に変動させる特別遊技状態の発生するものであるから、特別遊技状態発生制御手段を備えるものといえる。 さらに、引用発明は、高確率演出モードで演出画面を展開表示するか、低確率演出モードで展開表示するかを無作為抽選によって決定し、決定された演出モードに従った確率で大当たりが出るように無作為抽選を行うものであるから、特別遊技状態発生制御手段を遊技者に有利な状態に制御する特典遊技状態を所定確率で発生させるように制御する特典発生制御手段を備えるものといえる。 そのうえ、引用発明は、決定された今回の演出モードが、低確率演出モードのとき、低確率演出モードに対応する一連の演出画面(矢の的を3つ表示し、矢を射る人物の図柄82を適宜移動させ、人物82がこれらのうちのいずれかの的を矢で射る様子)を表示し、一方、決定された今回の演出モードが、高確率演出モードのときは、高確率演出モードに対応する一連の演出画面(矢の的を2つまたは1つだけ表示し、矢を射る人物の図柄82がこれらのうちのいずれかの的を矢で射る様子)を表示し、抽選結果が大当たりの場合には、矢の射られた的を裏返し、裏返った的83に「確変、大当たり」等の文字を表示するとともに、矢を射った人物82が歓喜する様子を表示し、一方、抽選結果が外れの場合には、矢の射られた的を裏返すとともに、当該的の裏面には何も表示しないようにして、可変表示手段20上で確率変動モードへ移行するか否かを遊技者に通知するための一連の演出画面を表示する演出画面展開手段200を備えるものであるから、特典発生制御手段が特典遊技状態を発生させることを報知する当たり動画映像及び特典発生制御手段が特典遊技状態を発生させないことを報知するハズレ動画映像の一対の共通した物語で構成される表示画像データを複数個有するものといえ、また、特典発生制御手段が特典遊技状態を発生させる場合は、複数個の表示画像データの中から、一個の表示画像データを構成する当たり動画映像を一つ選択する一方、特典発生制御手段が特典遊技状態を発生させない場合は、複数個の表示画像データの中から、一個の表示画像データを構成するハズレ動画映像を一つ選択し、選択された表示画像データの動画映像を図柄表示装置にて表示する表示制御手段を有するものといえる。 そして、引用発明は、プログラムや可変表示手段20上に表示される各種図柄などの固定的データを記憶しているROMとプログラムを実行する上で一時的に必要になるデータを記憶する作業用のメモリであるRAMを備えるものであり、表示画像データがこれらの記憶手段に格納されることは自明である。 したがって、両者は、 「遊技領域に設けられて変動図柄を表示する図柄表示装置と、始動入賞口と、前記始動入賞口への遊技球入賞に基づいて、大入賞口を遊技者に不利な状態から有利な状態に変動させる特別遊技状態の発生を制御する特別遊技状態発生制御手段と、を備えるパチンコ機において、 前記特別遊技状態発生制御手段を遊技者に有利な状態に制御する特典遊技状態を所定確率で発生させるように制御する特典発生制御手段と、 前記特典発生制御手段が前記特典遊技状態を発生させることを報知する当たり動画映像及び前記特典発生制御手段が前記特典遊技状態を発生させないことを報知するハズレ動画映像の一対の共通した物語で構成される表示画像データを複数個格納した表示画像データ記憶手段とを有し、 前記特典発生制御手段が前記特典遊技状態を発生させる場合は、複数個の表示画像データの中から、一個の表示画像データを構成する当たり動画映像を一つ選択する一方、前記特典発生制御手段が前記特典遊技状態を発生させない場合は、複数個の表示画像データの中から、一個の表示画像データを構成するハズレ動画映像を一つ選択し、選択された表示画像データの動画映像を前記図柄表示装置にて表示する表示制御手段を有するパチンコ機。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> 本願発明の複数個の表示画像データは、互いに動画映像の内容が異なるものであるのに対して、引用発明の複数個の表示画像データは、矢の的を3つ表示するものと、矢の的を2つまたは1つだけ表示するものである点。 4.判断 遊技者に有利な遊技状態を発生させることを報知する当たり動画映像及び遊技者に有利な遊技状態を発生させないことを報知するハズレ動画映像の一対の共通した物語で構成される複数個の表示画像データが、互いに動画映像の内容が異なるものは、例えば、特開平8-309002号公報(レースゲーム、アミダくじゲーム及びガン射撃、段落【0038】参照。)及び特開平8-141170号公報(ゴルフ及びバスケット)に記載されているように、パチンコ機の技術分野では周知技術であるので、この周知技術を引用発明の複数個の表示画像データに適用して本願発明に想到することは、当業者が容易になし得るものである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 三.本願発明について 1.本願発明 平成14年12月20日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10に係る発明は、平成13年12月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される「パチンコ機」にあると認められる。そして、原査定の拒絶理由に引用された上記引用例(特開平11-57132号公報)は、出願当初明細書の特許請求の範囲の請求項5に対して引用されたものであり、平成13年12月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項7に対応する。その請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項7】 遊技領域に設けられて変動図柄を表示する図柄表示装置と、始動入賞口とを備え、前記始動入賞口への入賞に基づいて変動図柄が変動後所定の態様で停止すると遊技者に有利な特別遊技状態が発生するパチンコ機において、 遊技者に前記特別遊技状態とは異なる有利な特典遊技状態を所定確率で発生させるように制御する特典発生制御手段と、 前記特典遊技状態の発生を報知する複数の第1表示画像データが格納される表示画像データ記憶手段と、 前記特典遊技状態が発生する場合に、前記複数の第1表示画像データから一の第1表示画像データを選択して前記図柄表示装置を介して表示するように制御する表示制御手段とを備え、 前記複数の第1表示画像データは、抽選遊技の種類が互いに異なる画像データから構成されており、 前記特典遊技状態は、前記特別遊技状態の発生する確率が通常確率よりも高い高確率で発生する遊技状態を含むことを特徴とするパチンコ機。」 2.引用刊行物記載事項 原査定の拒絶理由に引用された引用例の記載事項は、上記「二.2」に記載したとおりである。 3.対比 引用発明における「遊技盤面11に設けられて図柄合わせゲームを表示する可変表示手段20」は本願発明の「遊技領域に設けられて変動図柄を表示する図柄表示装置」に相当し、以下同様に、「特定入賞口12」は「始動入賞口」に、「図柄合わせゲームで当たりが出た」は「変動図柄が変動後所定の態様で停止する」に、「アタッカー31の開閉動作を開始し、遊技者に特別価値を付与」及び「当たり」は「遊技者に有利な特別遊技状態が発生」に、「当たりの出る確率が通常状態よりも高い確率変動モード」は「特別遊技状態とは異なる有利な特典遊技状態」に相当する。 また、引用発明は、高確率演出モードで演出画面を展開表示するか、低確率演出モードで展開表示するかを無作為抽選によって決定し、決定された演出モードに従った確率で大当たりが出るように無作為抽選を行うものであるから、特別遊技状態発生制御手段を遊技者に有利な状態に制御する特典遊技状態を所定確率で発生させるように制御する特典発生制御手段を備えるものといえる。 さらに、引用発明は、決定された今回の演出モードが、低確率演出モードのとき、低確率演出モードに対応する一連の演出画面(矢の的を3つ表示し、矢を射る人物の図柄82を適宜移動させ、人物82がこれらのうちのいずれかの的を矢で射る様子)を表示し、一方、決定された今回の演出モードが、高確率演出モードのときは、高確率演出モードに対応する一連の演出画面(矢の的を2つまたは1つだけ表示し、矢を射る人物の図柄82がこれらのうちのいずれかの的を矢で射る様子)を表示し、抽選結果が大当たりの場合には、矢の射られた的を裏返し、裏返った的83に「確変、大当たり」等の文字を表示するとともに、矢を射った人物82が歓喜する様子を表示する演出画面展開手段200を備えるものであるから、特典遊技状態の発生を報知する複数の第1表示画像データを有し、特典遊技状態が発生する場合に、複数の第1表示画像データから一の第1表示画像データを選択して前記図柄表示装置を介して表示するように制御する表示制御手段とを備えるものといえる。 そのうえ、引用発明は、プログラムや可変表示手段20上に表示される各種図柄などの固定的データを記憶しているROMとプログラムを実行する上で一時的に必要になるデータを記憶する作業用のメモリであるRAMを備えるものであり、第1表示画像データがこれらの記憶手段に格納されることは自明である。 したがって、両者は、 「遊技領域に設けられて変動図柄を表示する図柄表示装置と、 始動入賞口とを備え、前記始動入賞口への入賞に基づいて変動図柄が変動後所定の態様で停止すると遊技者に有利な特別遊技状態が発生するパチンコ機において、 遊技者に前記特別遊技状態とは異なる有利な特典遊技状態を所定確率で発生させるように制御する特典発生制御手段と、 前記特典遊技状態の発生を報知する複数の第1表示画像データが格納される表示画像データ記憶手段と、 前記特典遊技状態が発生する場合に、前記複数の第1表示画像データから一の第1表示画像データを選択して前記図柄表示装置を介して表示するように制御する表示制御手段とを備え、 前記特典遊技状態は、前記特別遊技状態の発生する確率が通常確率よりも高い高確率で発生する遊技状態を含むことを特徴とするパチンコ機。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> 本願発明の複数の第1表示画像データは、抽選遊技の種類が互いに異なる画像データから構成されているのに対して、引用発明の複数の第1表示画像データは、矢の的を3つ表示するのものと、矢の的を2つまたは1つだけ表示するものから構成されている点。 4.判断 遊技者に有利な遊技状態を発生させることを報知する表示画像データが、抽選遊技の種類が互いに異なる画像データから構成されているものは、例えば、特開平8-309002号公報(レースゲーム、アミダくじゲーム及びガン射撃、段落【0038】参照。)及び特開平8-141170号公報(ゴルフ及びバスケット)に記載されているように、パチンコ機の技術分野では周知技術であるので、この周知技術を引用発明の複数個の表示画像データに適用して本願発明に想到することは、当業者が容易になし得るものである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-12-01 |
結審通知日 | 2007-01-09 |
審決日 | 2007-01-22 |
出願番号 | 特願平11-214598 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 塩崎 進 |
特許庁審判長 |
三原 裕三 |
特許庁審判官 |
川島 陵司 藤田 年彦 |
発明の名称 | パチンコ機 |
代理人 | 富澤 孝 |
代理人 | 山中 郁生 |
代理人 | 岡戸 昭佳 |