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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1154920 |
審判番号 | 不服2003-23869 |
総通号数 | 89 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-12-10 |
確定日 | 2007-04-13 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第234634号「半導体露光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月16日出願公開、特開平11- 74334〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成9年8月29日の出願であって、同14年11月18日付で拒絶の理由が通知され、同15年1月24日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同15年10月16日付で拒絶をすべき旨の査定がされ、同15年12月10日に拒絶査定に対する審判の請求がなされるとともに、同16年1月9日に明細書を補正対象書類とする手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。 第2 本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容の概要 本件補正は特許請求の範囲を含む明細書について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。 1-1 補正前の請求項1 「【請求項1】支持部材上に載置された半導体ウエハに対して微細パターンを形成するための露光処理を施こす露光装置において、前記支持部材が、10?40℃における熱膨張率が0.7×10-6/℃以下であり、ヤング率が130GPa以上のセラミックスからなることを特徴とする半導体露光装置。」 1-2 補正後の請求項1 「【請求項1】支持部材上に載置された半導体ウエハに対して微細パターンを形成するための露光処理を施こす露光装置において、前記支持部材が、コージェライトを主体とし、Yまたは希土類元素を酸化物換算で3?15重量%の割合で含有するとともに、10?40℃における熱膨張率が0.7×10-6/℃以下であり、ヤング率が130GPa以上のセラミックスからなることを特徴とする半導体露光装置。」 2.補正の適否 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である支持部材について「コージェライトを主体とし、Yまたは希土類元素を酸化物換算で3?15重量%の割合で含有する」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2-1 本件補正発明 本件補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、前記1-2に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「半導体露光装置」であると認める。 2-2 刊行物記載の発明(事項) これに対し、原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に日本国内で頒布された刊行物である特開平06-100306号公報(以下、「刊行物1」という。)、特開昭56-155068号公報(以下、「刊行物2」という。)、及び特開昭55-24336号公報 (以下、「刊行物3」という。)、並びに前置報告書において周知例として示されたファインセラミックス事典編集委員会編,「ファインセラミックス事典」,技報堂出版株式会社,1版,1987年4月30日,p.185(以下、「刊行物4」という。)及び素木洋一著,「焼結セラミック詳論4 ファインセラミックス」,1版,株式会社技報堂,昭和51年1月25日,p.303(以下、「刊行物5」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)刊行物1 (1-a)特許請求の範囲 「【請求項13】20?30℃の常温域における曲げ強度が、40kg/mm2以上であり、かつ同常温域における平均熱膨張係数が1.5×10-6/K以下であることを特徴とする請求項3?12記載の複合セラミックス焼結体。」 (1-b)段落【0001】 「【産業上の利用分野】本発明は、サイアロン結晶粒子および複合セラミックス焼結体に関し、低熱膨張と同時に機械的強度を満足する材料が要求される精密機器部品、電子工業用部品の分野において好適に用いられる。さらに具体的には、近年、部品の高精度化および高集積化に伴い、材料の要求特性が厳しくなっているハイブリッドIC基板やセラミックス多層基板、半導体製造用露光装置などに用いられるX-Yステージ、プレート、レチクルホルダ、ウェハーホルダなどのステッパー材料、ブロックゲージや定盤などの精密測定用部材として好適に用いられる。」 (1-c)段落【0002】 「【従来の技術】低熱膨張セラミックスとしてよく知られているものに、コーディエライト、リチウムアルミノ珪酸塩、チタン酸アルミニウムなどがある。これらは、いずれも 2.0×10-6/K以下という極めて低い熱膨張係数を有するが、多孔質で機械的強度が著しく低い。このため、保護管、坩堝などの大きな負荷のかからない耐熱、耐衝撃部品に用いられているばかりで、大型構造用途への展開が阻まれている。」 (1-d)段落【0004】,【0005】 「低熱膨張と同時に高強度が要求される用途には、上記に示したような既存の低熱膨張セラミックスは不適であり、新たな素材の研究開発が望まれる。 【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の低熱膨張セラミックスの上述した低強度で多孔質であるという構造材料としては致命的な欠点に鑑み、熱膨張係数が1.5×10-6/K以下と低く、かつ、緻密で機械的性質の優れた複合セラミックス焼結体およびそれに適したサイアロン結晶粒子を提供することを目的とする。」 (1-e)段落【0058】 「さらに本発明の方法による複合焼結体は、常温から200 ℃の温度域において、平均熱膨張係数が、3.0×10-6/K以下であることが特徴である。この程度の熱膨張係数であれば、各種精密部材への適用が可能な数字である。さらに平均熱膨張係数が、2.0×10-6/K以下であれば、半導体製造装置用の超精密ステージなどのステッパー部材としての用途展開が可能である。」 刊行物1において、半導体製造用露光装置が微細パターンを形成するための露光処理を施すことは明らかである。 上記記載事項からみて、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 「X-Yステージ上に載置されたハイブリッドIC基板に対して微細パターンを形成するための露光処理を施こす露光装置において、前記X-Yステージが、20?30℃の常温域における平均熱膨張係数が1.5×10-6/K以下と低く、かつ、同常温域における曲げ強度が40kg/mm2以上である緻密で機械的強度の優れた複合セラミックス焼結体からなる半導体製造用露光装置。」 (2)刊行物2 (2-a)特許請求の範囲 「Y,LaおよびCeから選ばれる希土類元素の少なくとも1種以上の酸化物を重量%で0.3?8%含有せしめてなるコーデイエライト質の緻密質低膨張焼結体。」 (2-b)第2頁左上欄第5行?同頁右上欄第17行 「これら低膨張性酸化物セラミクスを用いる従来の技術は・・・得られた焼成品は気孔を多く含むものであり、強度も充分なものではなかった。 本発明は、・・・強度の大きい緻密質低膨張焼結体を提供するものである。 即ち、コーデイエライトを形成する低膨張性酸化物セラミクスにY,La,Ceからなる希土類元素を酸化物、有機塩、無機塩あるいはその他の形で添加することにより、比較的低温で焼成しても(即ち、焼成中の軟化、変形が生じない程度の低温で焼成しても)、気孔の少ない、よく焼き締つた緻密な焼成品を得ることを可能ならしめたものである。 本発明の骨子は前述の如く、コーデイエライト質の低膨張性酸化物セラミクスにY,La,Ceからなる希土類元素ないしはこれらの酸化物、有機塩、無機塩等の化合物のうち、少くとも1種以上を添加するものであるが、その添加量は低膨張性酸化物セラミックスと希土類元素ないしは希土類元素の化合物の合量に対し、酸化物換算で0.3?8重量%、好ましくは1?4重量%がよい。添加量を上記範囲に制限する理由は、0.3重量%以下では、比較的低温で焼成した場合でも緻密質にできるという本発明の効果が極めて不充分となり、また、8重量%以上では焼結体の熱膨張率が大きくなり、目的とする低膨張性が達成されないことによる。」 (2-c)第2表 曲げ強度(Kg/cm2)が312?483であること。 (3)刊行物3 (3-a)第1頁右下欄第17?19行 「本発明はY2O2成分を重量%で0.3?8%含有せしめた本質的にコージエライト組成からなるセラミツクス材料」 (3-b)第2頁左下欄第6行?同頁右下欄第4行 「ここでY2O2成分の配合割合を0.3?8%とした理由については、0.3%以下では上述した比較的低温で焼成した場合でも緻密質にしうるという効果が不充分となり本発明の目的とする優れた電気的特性が達成されないからであり、また8%以上では得られた焼結体の熱膨張率が大きくなりすぎ低膨張セラミツクスの特質を損なうことになつてしまうからである。・・・ 即ち、物理的性質としては、・・・25?1000℃における熱膨張係数が30×10-7/℃以下であり、曲げ強度も通常300Kg/cm2以上多くは500Kg/cm2以上のものとして容易に得られる。」 (4)刊行物4 (4-a)第185頁 表2 コーディエライト,ムライト,アルミナ焼結体の性質 コーディエライトの線膨張係数(25-800℃)/K-1 が1.5×10-6 、曲げ強度/MPaが245及びヤング率/GPaが139であること。 (5)刊行物5 (5-a)第303頁 表-3.16 LamerとWarnerによるコーディエライト素地の組成と性質 多くのコーディエライトの熱膨張係数が高温になるほど大きくなり、温度が低くなると小さくなること。 2-3 対比 本件補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「X-Yステージ」、「半導体製造に用いられるハイブリッドIC基板」及び「半導体製造用露光装置」は、前者の「支持部材」、「半導体ウエハ」及び「半導体露光装置」に、それぞれ相当することは明らかである。 また、刊行物1記載の発明は「機械的強度に優れた」ものであり、本件補正発明の「ヤング率が130GPa以上」という事項も「機械的強度に優れた」と表現できるものであるから、刊行物1記載の発明の「20?30℃の常温域における平均熱膨張係数が1.5×10-6/℃以下と低く、かつ、同常温域における曲げ強度が40kg/mm2以上である緻密で機械的強度の優れた複合セラミックス焼結体」は、「低熱膨張率であり、機械的強度に優れたセラミックス」である限りにおいて、本件補正発明の「コージェライトを主体とし、Yまたは希土類元素を酸化物換算で3?15重量%の割合で含有するとともに、10?40℃における熱膨張率が0.7×10-6/℃以下であり、ヤング率が130GPa以上のセラミックス」と共通している。 してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 [一致点] 「支持部材上に載置された半導体ウエハに対して微細パターンを形成するための露光処理を施こす露光装置において、前記支持部材が、低熱膨張率であり、機械的強度に優れたセラミックスからなる半導体露光装置。」である点。 [相違点] 本件補正発明では、支持部材が、コージェライトを主体とし、Yまたは希土類元素を酸化物換算で3?15重量%の割合で含有するとともに、10?40℃における熱膨張率が0.7×10-6/℃以下であり、ヤング率が130GPa以上のセラミックスからなるのに対して、 刊行物1記載の発明では、支持部材が、20?30℃の常温域における熱膨張率が1.5×10-6/℃以下であり、また、緻密で曲げ強度の大きい複合セラミックス焼結体からなる点。 2-4 相違点についての判断 本件補正発明において、コージェライトを主体とし、Yまたは希土類元素を酸化物換算で3?15重量%の割合で含有するとすることの技術的意義は、通常、熱膨張率の低い2MgO-2Al2 O3 -5SiO2 の組成からなるコージェライト系セラミックスはヤング率が低いが、Yまたは希土類元素を酸化物換算で3?15重量%の割合で添加することにより焼結性を高めることができる結果、ヤング率を130GPa以上に高めることができることと認められる。(明細書段落【0016】?【0018】参照。) ところで、刊行物1には、コージェライトは、2.0 ×10-6/K以下という極めて低い熱膨張係数を有するが、多孔質で機械的強度が著しく低く、大型構造用途への展開が阻まれていることが記載されており(前記記載事項(1-c)参照。)、このコージェライトが緻密になり高強度化されれば、半導体露光装置における支持部材として有用であるということは、当業者にとって自明な事項である。 そして、刊行物2及び3に記載されているように、コージェライトを主体とする低熱膨張セラミックスに、希土類元素を酸化物換算で0.3?8重量%の割合で添加することにより、緻密質な高強度の低膨張性のコージェライトセラミックスが得られること(前記記載事項(2-b)及び前記記載事項(3-b)参照。)は、周知事項である。 また、刊行物4には、コージェライトの線膨張係数(25-800℃)/K が1.5×10-6 及びヤング率が139GPaであることが記載されており(上記記載事項(4-a)参照。)、この熱膨張係数の値は、刊行物5に記載の多くのコージェライトでは、高温になるほど大きくなり、温度が低くなると小さくなるということ(前記記載事項(5-a)参照。)を参酌すれば、本件補正発明の10?40℃の温度範囲における熱膨張率はより小さな数値になり、また、ヤング率も、Yまたは希土類元素を前記割合で添加すれば大きくなることは明らかである。 そして、X-Yステージ等の支持部材としてできるだけ低熱膨張率で高強度(ヤング率の高い)の材料を用いるべきであることは明らかであるとともに、本件補正発明において、10?40℃における熱膨張率を0.7×10-6/℃以下とし、ヤング率を130GPa以上としたことの数値限定に格別な臨界的意義を見出すこともできない。 してみると、刊行物1記載の発明の支持部材として、刊行物2ないし3記載の周知のコージェライトセラミックスを採用し、本件補正発明のような値にYまたは希土類元素の含有割合、熱膨張係数及びヤング率を特定することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 したがって、本件補正発明は、刊行物1記載の発明及び前記刊行物2ないし5記載の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年1月24日付の手続補正書により補正がされた明細書の特許請求の範囲の請求項1記載された事項により特定される前記第2の1-1に示したとおりのものと認められる。 2.引用刊行物 これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容は、前記第2の2-2に示したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記第2の2.で検討したように、本件補正発明の特定事項から前記限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2-4に記載したとおり、刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、請求項2ないし6に係る発明について検討するまでもなく本件出願は拒絶するべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-03-17 |
結審通知日 | 2006-03-22 |
審決日 | 2006-04-07 |
出願番号 | 特願平9-234634 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柴沼 雅樹 |
特許庁審判長 |
前田 幸雄 |
特許庁審判官 |
鈴木 孝幸 中島 昭浩 |
発明の名称 | 半導体露光装置 |
代理人 | 奥貫 佐知子 |
代理人 | 小野 尚純 |
代理人 | 小野 尚純 |
代理人 | 奥貫 佐知子 |