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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A45D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A45D
管理番号 1154931
審判番号 不服2004-7827  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-15 
確定日 2007-03-28 
事件の表示 特願2000-157333号「粉末化粧料の塗布具付き容器及びこの容器を利用した粉末化粧料の塗布方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月 4日出願公開、特開2001-333818号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年5月26日の出願であって、平成16年3月5日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年4月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成16年4月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年4月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「パール剤20?80重量%、シリコーン油等のオイル5?20重量%、顔料15?70重量%を含有したアイシャドー用の粉末化粧料を収納する化粧料容器において、容器キャップの内面に帯電防止機能を有する素材で形成した軸体を延伸させ、該軸体の先端に、容器本体を振とうさせた際に浮遊する粉末化粧料を保持することができる塗布具を取り付け、この塗布具をポリカーボ系ウレタン樹脂(硬度15?25度)からなる発泡体で形成し、前記軸体又は塗布具に付着した粉末化粧料の付着量を調節するしごき部材を備えたことを特徴とする粉末化粧料の塗布具付き容器。」(以下、「本願補正発明」という。)とするものである。

本件補正により、平成15年7月1日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。)の請求項1ないし3は削除された。そして、新たな請求項1(上記本願補正発明)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし3を引用した請求項4の、発明を特定するために必要な事項である「塗布具を発泡体又はフロッキー植毛体で形成」する点を、「塗布具をポリカーボ系ウレタン樹脂(硬度15?25度)からなる発泡体で形成」するものとして、択一的記載であった「フロッキー植毛体」を削除したものである。よって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭51-98553号公報(以下、「引用例」という。)には、「粉末状製品特にアイシヤドーのアプリケータ」の発明に関し、図面の1ないし6とともに、以下の記載がされている。
(ア)「第1図はアイシヤドーを調整するために考えられたアプリケータで二つの部分、すなわちびん1と栓兼用アプリケータ8とよりなつている。
びん1の中にはその首4において溶接又は接着を行うことにより、あるいは口金3を使用することにより、プランジヤ管2が位置決めされている。このプランジヤ管2は円筒形中空体で、その両端は開口している。」(2ページ左下欄5?12行)
(イ)「栓兼用アプリケータ8はその上部にいわゆる栓、すなわち柄9を有し、かつその下部には棒10を備え、該棒の端部には繊維又は海綿状プラスチック材料よりなるスポンジまたはタンポン11が接着されている。」(2ページ右下欄5?9行)
(ウ)「アプリケータを上方に向かつて引き抜けば、スポンジ11(またはブラシあるいは筆)の上の余分な粉末がプランジヤ管2の縁6によつて絞り取られる。」(3ページ左下欄1?4行)
(エ)「プランジヤ管2の内面に粉末を付着させる静電集積現象(摩擦に起因する)を軽減するために、該内面に帯電防止剤を塗布することができる。」(4ページ右下欄11?13行)

上記記載事項(ア)ないし(エ)及び図面の1?6の図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「粉末状のアイシヤドーのアプリケータにおいて、
該アプリケータは、びん1と栓兼用アプリケータ8とよりなり、
上記びん1の中にはプランジヤ管2が位置決めされ、
上記栓兼用アプリケータ8はその上部にいわゆる栓、すなわち柄9を有し、かつその下部には棒10を備え、該棒の端部には繊維又は海綿状プラスチック材料よりなるスポンジが接着され、
上記プランジヤ管2には、アプリケータを上方に向かつて引き抜いた際に、スポンジ11の上の余分な粉末が絞り取られる縁6が設けられ、かつ、
プランジヤ管2の内面に粉末を付着させる静電集積現象を軽減するために、該内面に帯電防止剤を塗布した、
粉末状のアイシヤドーのアプリケータ。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比すると、その機能及び構造からみて、後者の「粉末状のアイシヤドー」は、前者の「アイシャドー用の粉末化粧料」に相当し、後者の「粉末状のアイシヤドーのアプリケータ」は前者の「アイシャドー用の粉末化粧料を収納する化粧料容器」に相当する。そして以下同様に、「栓、すなわち柄9」は「容器キャップ」に、「棒10」は「軸体」に、「縁6」は「しごき部材」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「スポンジ11」は、粉末状のアイシャドーを塗布する部材であることは明らかであるから、本願補正発明の「塗布具」又は「発泡体」に相当し、スポンジの一般的に知られた物理的性質である多孔性や柔軟性、並びに引用発明のアプリケータの全体構成からみて、該スポンジが、アプリケータを「振とうさせた際に浮遊する粉末化粧料を保持することができる」ことも明らかである。

そうすると、本願補正発明と引用発明の一致点を、本願補正発明の用語を用いて表すと、以下のとおりである。
〔一致点〕
アイシャドー用の粉末化粧料を収納する化粧料容器において、
容器キャップの内面に軸体を延伸させ、
該軸体の先端に、容器本体を振とうさせた際に浮遊する粉末化粧料を保持することができる塗布具を取り付け、
この塗布具を発泡体で形成し、
前記軸体又は塗布具に付着した粉末化粧料の付着量を調節するしごき部材を備えた粉末化粧料の塗布具付き容器。

そして両者の相違点は以下のとおりである。
〔相違点1〕
粉末化粧料が、本願補正発明は「パール剤20?80重量%、シリコーン油等のオイル5?20重量%、顔料15?70重量%を含有した」ものであるのに対し、引用発明はそのようなものであるか否か不明な点。
〔相違点2〕
本願補正発明は、「軸体」を「帯電防止機能を有する素材で形成」しているのに対し、引用発明は、「プランジヤ管2の内面に粉末を付着させる静電集積現象を軽減するために、該内面に帯電防止剤を塗布」したものである点。
〔相違点3〕
本願補正発明の塗布具は「ポリカーボ系ウレタン樹脂(硬度15?25度)からなる発泡体」であるのに対し、引用発明の塗布具はスポンジであるから、発泡体である点で共通するものの、「ポリカーボ系ウレタン樹脂(硬度15?25度)からなる」のか否か不明な点。

(4)当審の判断
〔相違点1について〕
上記相違点1について検討する。
一般に、粉末化粧料として、パール剤、シリコーン油等のオイル、及び顔料を含有させることは、例えば、原査定の理由で引用された特開平11-236315号公報のほか、特開平4-21622号公報、特開平4-217907号公報等にみられるように、本願出願前より周知の技術であり、これら粉末化粧料に配合される成分のうち、パール剤や顔料の含有比率は、粉末化粧料として求められる光沢や色調等に応じて、そして、シリコーン油等のオイルの含有率は、同じく、柔軟性、伸び、保湿性あるいはべたつき感等に応じて適宜定められるべきものである。
以上を前提に、本願補正発明の相違点1について検討すると、上述した特開平11-236315号公報には、その一例として、パール剤としての複合粉末を80重量%含有すること(特に第10ページのルースパウダーに関する実施例2を参照のこと)が、また、上記特開平4-21622号公報には、その一例として、顔料及びパール剤等の粉体を50.0?95.0重量%、シリコンオイルを3.0?20.0重量%含有すること(特に第2ページ右上欄8行?同ページ左下欄5行を参照のこと)が、そして、上記特開平4-217907号公報には、顔料(マイカ、タルク、赤色226号)を60重量%、パール剤を30重量%含有すること(特に第3ページの段落【0016】の実施例1を参照のこと)が、それぞれ示されている。
してみると、本願補正発明の相違点1に係る構成のように、粉末化粧料を、パール剤20?80重量%、シリコーン油等のオイル5?20重量%、顔料15?70重量%含有したものとすることは、上述した周知技術からみて、何ら特別なものではなく、当業者が予測し得ないような配合ということはできない。しかも、このように含有比率を定めたことにより格別顕著な作用効果が奏されるとの技術的根拠も見いだせない。
よって、上記相違点1に係る発明特定事項は、引用発明及び周知技術から、当業者が容易に想到し得たものである。

〔相違点2について〕
引用発明において、プランジヤ管2の内面に粉末化粧料が付着すれば、それは軸体(棒10)にも付着する要因となることは明らかであるから、引用発明が「プランジヤ管2の内面に粉末を付着させる静電集積現象を軽減するために、該内面に帯電防止剤を塗布」しているのは、「プランジヤ管2の内面に粉末を付着させる静電集積現象を軽減する」ばかりでなく、軸体(棒10)への粉末の付着を軽減していることは明らかである。してみると、該目的効果に照らせば、相違点2に係る発明特定事項は、当業者による設計的事項にすぎないものである。

〔相違点3について〕
塗布具を「ポリカーボ系ウレタン樹脂からなる発泡体」にて構成することは、特開平7-256810号公報(段落【0004】参照)、特開平9-308523号公報(段落【0016】参照)等に記載の如く周知であり、また、その硬度については、当業者が適宜選択し得るものである。

上記相違点1ないし3を総合して判断しても、本願補正発明が引用発明及び周知技術から予測し得ない格別な作用効果を奏するものとも認められない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年7月1日付け手続補正書により補正書された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。

「パール剤を20重量%以上配合した粉末化粧料を収納する化粧料容器において、容器キャップの内面に帯電防止機能を有する素材で形成した軸体を延伸させ、該軸体の先端に、容器本体を振とうさせた際に浮遊する粉末化粧料を保持することができる塗布具を取り付け、この塗布具を発泡体又はフロッキー植毛体で形成し、前記軸体又は塗布具に付着した粉末化粧料の付着量を調節するしごき部材を備えたことを特徴とする粉末化粧料の塗布具付き容器。」

第4 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、上記「第2 (2)」に記載したとおりである。

第5 対比
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から、発明を特定するために必要な事項である、「塗布具」が「発泡体」である点を「発泡体又はフロッキー植毛体」であるとし、「発泡体」について「ポリカーボ系ウレタン樹脂(硬度15?25度)」という限定を省き、「粉末化粧料がパール剤20?80重量%、シリコーン油等のオイル5?20重量%、顔料15?70重量%を含有する」点を「パール剤20重量%以上」とし、「粉末化粧料」が「アイシャドー」であるとの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-18 
結審通知日 2007-01-23 
審決日 2007-02-06 
出願番号 特願2000-157333(P2000-157333)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A45D)
P 1 8・ 575- Z (A45D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨江 耕太郎  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 稲村 正義
和泉 等
発明の名称 粉末化粧料の塗布具付き容器及びこの容器を利用した粉末化粧料の塗布方法  
代理人 松浦 恵治  

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