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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1154941
審判番号 不服2004-16241  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-05 
確定日 2007-03-28 
事件の表示 特願2001-261121「顧客管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月 5日出願公開、特開2003- 66882〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は平成13年8月30日の出願であって、平成16年6月30日付けで同年4月16日付け手続補正書が却下されると共に、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月1日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年9月1日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年9月1日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「入力データを処理する入力手段と、
商品買上げ情報を保存する買上情報記憶手段と、
顧客情報を保存する顧客情報記憶手段と、
前記入力手段から入力された購入実績に基づいた上位ランクの指定商品名あるいは個別商品名を前記買上げ情報記憶手段に保存している顧客一人ひとりの商品買上げ情報を検索し、前記上位ランクの指定商品あるいは個別商品について購入実績のある複数の顧客を当該商品の全売上額に所定売上率を乗じて算出したマーク金額に達するまで抽出して選別し、該複数の顧客のうちの一部の顧客を購買見込み客として選出する購買見込み客選出手段と、
選出された購買見込み客について過去の購入実績をもとに日付または曜日を選択し、前記日付または曜日に応じて編成された購買見込み客について異なるグループに前記購買見込み客を編成する購買見込み客編成手段と、
この日付または曜日に応じて編成された購買見込み客について前記購買情報記憶手段に保存している顧客情報と照合してダイレクトメール顧客リストを作成する顧客リスト作成手段と、
このダイレクトメール顧客リストに基づいて個別の宛名シールを印刷するように出力データを処理する出力手段と、
を備えてなる顧客管理装置。」
と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定する事項である「購買見込み客選出手段」について、「購入実績に基づいた上位ランクの指定商品名あるいは個別商品名」が、「前記入力手段から入力された」ものであることを明確化するために、「前記入力手段から指定商品名あるいは個別商品名を入力」と表現するに加え、「購入実績に基づいた上位ランクの指定商品名あるいは個別商品名」を用いて「前記買上げ情報記憶手段に保存している顧客一人ひとりの商品買上げ情報」を検索すること、また、前記「上位ランクの指定商品あるいは個別商品」について「購入実績のある複数の顧客」を「当該商品の全売上額に所定売上率を乗じて算出したマーク金額に達するまで抽出」する「選別」を行うことを限定して付加するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に係る特許請求の範囲の減縮或いは同第4号に係る明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

また、上記補正は、同様に、請求項1に記載した発明を特定する事項である「購買見込み客編成手段」について、「選出された購買見込み客について過去の購入実績」をもとに選択される「日付または曜日」を「選択」し、当該選択された「日付または曜日」に応じて「編成された購買見込み客」について、異なるグループに前記購買見込み客を編成するするものであることを限定して追加するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に係る特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
さらに、上記補正は、同様に、請求項1に記載した発明を特定する事項である「顧客リスト作成手段」が、前記「購買見込み客編成手段」で「日付または曜日」が選択されたことに基づいて、「この日付または曜日に応じて編成された購買見込み客」について、前記購買情報記憶手段に保存している顧客情報と照合してダイレクトメール顧客リストを作成することが行われることを限定して追加するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に係る特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

してみると、前記のように、上記補正は、請求項1に記載した発明を特定する事項である「購買見込み客選出手段」、「購買見込み客編成手段」及び「顧客リスト作成手段」について、構成要件を限定して追加するところの、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正を前提として、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
(a)原審の拒絶の理由に引用された特開平5-250384号公報(以下、「引用例1」という。)には、「顧客検索装置」に関して、次の事項が図面と共に記載されている。

A.「【産業上の利用分野】 本発明は大型小売店のダイレクトメール(以下DMと称する)発行業務等における顧客検索装置に関する。(略)DMの回収率を上げるには、買上金額が多い顧客、買上回数が多い顧客を抽出してDMを発行すればよい。また、ある特定の部門の商品のセールを行う場合には顧客が過去にどの店舗で買上げているか、どの商品を買上げているかを記録したデータを利用して過去にその部門の商品を買上げたことのある顧客を抽出する必要がある。」(段落【0001】?【0004】)
B.「【実施例】次に、本発明について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施例を示すブロック図、図2は図1に示す実施例における動作を説明するフローチャート、図3は図1における基本属性データベース17および買上情報データベース18の具体的なデータの概念を示す図である。
11は顧客の検索条件をパラメータとして入力するキーボード等の入力手段である。12は処理部であり、パラメータ解析手段13、使用データベース判定手段14、検索手段15より成る。16は記憶部であり、顧客の氏名、住所、郵便番号、性別といった基本属性のデータを有する基本属性データベース17と、顧客の買上日、買上商品、買上店舗、買上金額といった買上情報を有する買上情報データベース18とを設けている。
パラメータ解析手段13は、入力されたパラメータが顧客の基本属性に関するものであるか、あるいは顧客の買上情報に関するものであるかを解析する。使用データベース判定手段14はパラメータ解析結果に従って買上情報データベースの使用の有無を判定する。検索手段15は入力されたパラメータに合致する顧客データを基本属性データベース17あるいは買上情報データベース18の中から検索する。基本属性データベース17の識別キーは顧客コードであって買上情報データベース18にも顧客コードを持たせることにより2つのデータベースの対応が取られる。
次に、図2により動作を説明する。
まず、顧客を検索するに当ってオペレータは検索条件をパラメータとしてパラメータ入力手段11を操作して入力する(ステップ21)。ここではパラメータの項目として性別、年齢、買上店舗、買上商品、買上金額の5項目が設定されているものとし、性別パラメータと買上店舗パラメータが入力され他の3つのパラメータは未入力であったとする。
パラメータ解析手段13はどのパラメータが入力されたか、さらには入力されたパラメータは顧客の基本属性に関するものであるか、買上情報に関するものであるかを解析する(ステップ22)。ここでは性別パラメータと買上店舗パラメータが入力され、さらに性別パラメータは基本属性に関するもの、買上店舗パラメータは買上情報に関するものであるということが解析される。この買上情報に関するパラメータが入力されたという解析結果を受けて使用データベース判定手段14は買上情報データベース18を使用することを決定する(ステップ23)。
検索手段15はパラメータ解析と使用データベース判定の結果に従ってデータ構成からなる買上情報データベース18を検索し、入力パラメータである買上店舗コードを持つレコードを抽出する(ステップ24)。次に、抽出された買上情報レコードの顧客コードをキーとして基本属性データベース17を読み、もう一つのパラメータである性別を参照する。この性別が、パラメータとして入力された値と合致する時のみ、例えば図3に示すデータ構成からなる基本属性データベース17から氏名、住所、郵便番号といったDM発行に必要な項目を取り込んで、例えば図3に示すデータ構成からなる別ファイル20に出力する(ステップ25)。」(段落【0007】?【0015】)
C.「【発明の効果】以上説明したように本発明によれば一定買上金額、一定買上回数、買上商品部門といった条件により顧客を検索できる。例えば1988年4月1日から1989年9月30日までの間に10万円以上の買上があった20才以上の顧客を検索するといったことが可能となる。このようにして抽出された顧客に対してDMを発行すれば、従来の性別、年齢等によって抽出していた場合と比較してDMの回収率を上げることができる。また、抽出した顧客データを入力して自動的にDM用シールを出力するようにすればDM発行が高速に行える。」(段落【0016】?【0017】)

ここで、買上情報データベースは「顧客の買上日」も買上情報の一つとして含んでおり、また、Cにおいて、「例えば1988年4月1日から1989年9月30日までの間に10万円以上の買上があった20才以上の顧客を検索するといったことが可能となる。」と記載されていることから、引用例1記載の顧客検索装置においては、条件として期間を設定した顧客情報の検索が出来るものと認められる。
また、Bにおいて、「この性別が、パラメータとして入力された値と合致する時のみ、例えば図3に示すデータ構成からなる基本属性データベース17から氏名、住所、郵便番号といったDM発行に必要な項目を取り込んで、例えば図3に示すデータ構成からなる別ファイル20に出力する(ステップ25)。」と記載され、更に、Bには、「基本属性データベース17の識別キーは顧客コードであって買上情報データベース18にも顧客コードを持たせることにより2つのデータベースの対応が取られる。」と、顧客コードが両データベースの対応に用いられていることが記載されている。
さらに、Cにおいては、「抽出した顧客データを入力して自動的にDM用シールを出力するようにすればDM発行が高速に行える。」とも記載されており、これらの記載から、「処理部12」における検索結果を元にして住所及び郵便番号を封筒、宛名シール等に印字するための「印字機」を備えることについて示唆があると認められる。
従って、これらの記載からして、引用例1には次のような発明が記載されていると認められる。

「処理部、記憶部、印字機とからなる顧客検索装置において、
キーボード等の入力手段と、
顧客コード、氏名、年齢、住所、郵便番号、性別の個人情報を登録した基本属性データベースと、顧客の買上日、買上商品、買上店舗、買上金額といった買上情報を有する買上情報データベースと、からなる記憶部と、
買上情報データベースから期間及び買上商品を条件設定して商品購入実績のある顧客の顧客情報を検索する検索手段を有する処理部と、
処理部における検索結果を元にして住所及び郵便番号を封筒、宛名シール等に印字するための印字機と、
からなる顧客検索装置」(以下、「引用例1記載発明」という。)

(b)同じく原審の拒絶の理由に引用された特開2001-142902号公報(以下、「引用例2」という。)には、「顧客分類方法および顧客分析装置」に関して、次の事項が図面と共に記載されている。

A.「【従来の技術】顧客セグメント化によく使われる手法として、RFM分析がある。RFM分析とは、顧客の最終利用日または最終購買日(Recency)、利用回数または購買回数(Frequency)、利用金額または購買金額(Monetory)の組み合わせによって、各顧客に点数を付け、この点数により優良顧客とそうでない顧客等に顧客をセグメント化する方法である。」(段落【0002】)
B.「【発明が解決しようとする課題】従来のRFM分析では、最終利用日Recencyと累積の利用回数Frequencyの2軸を用いるのであるが、累積の利用回数では、顧客の実際の来店間隔(来店頻度)を表していないため、次回来店を見据えた販促を行うことが困難であった。本発明はこのような問題点を考慮してなされたものであり、Frequencyとして顧客の会員加入期間を考慮に入れた、顧客のその店に関する利用行動をより実質的に反映できる数値に基づいて顧客の分析を行うことができるようにする。」(段落【0003】)
C.「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、第1の発明は、顧客の平均来店間隔((最終利用日-初回利用日)÷(累積の利用回数))をFrequencyの値として用いることを基本とし、データベースに蓄積された、顧客マスターデータと、少なくとも最終利用日、累計利用回数、初回利用日を含む顧客毎の利用ポイント履歴データから、セグメントテーブル記憶部を備えたコンピュータにより顧客分類する方法であって、まず、顧客を累計利用回数が一定回数以下の新顧客群とそうでない既存顧客群に分け、既存顧客群に属する顧客に対しては、利用ポイント履歴データから算出した平均来店間隔に応じたFi値と、最終利用日から評価日までの経過日数に応じたRj値を決定し、このFi値とRj値が共に等しい顧客を同一グループとしてこれらのグループ毎に、属する顧客番号を前記セグメントテーブル記憶部に記憶する手順を含む顧客分類を行うことを要旨とする。
また、上記課題を解決するための第2の発明は、データベースに蓄積された、顧客マスターデータと、少なくとも顧客毎の最終利用日、累計利用回数、初回利用日を含む利用ポイント履歴データから、顧客の分析を行う顧客分析装置であって、顧客分類結果を記憶するセグメントテーブル記憶部と、累計利用回数が一定回数以下の新顧客群とそうでない既存顧客群に分け、既存顧客群に属する顧客に対しては、利用ポイント履歴データから算出した平均来店間隔に応じたFi値と、最終利用日から評価日までの経過日数に応じたRj値を決定し、このFi値とRj値が共に等しい顧客を同一グループとしてこれらのグループ毎に、属する顧客番号を前記セグメントテーブル記憶部に記憶する顧客分類手段と、前記セグメントテーブル記憶部に記憶された顧客分類結果に基づいて顧客セグメントの特徴を分析する顧客セグメント分析手段と、を備えることを要旨とする。」(段落【0004】?【0005】)
D.「【発明の実施の形態】図1は本発明の顧客分類手法の概念図を示す。・・・図2は本発明の顧客分類手順を示したフローチャートである。図1のステップS01とS02をより詳細に説明するものである。以下、図2のフローに基づいて、本発明の顧客分類手順を説明する。・・・図3の1行から6行までの既存顧客に関する部分は、平均来店間隔に応じてセグメント化されているので、次回来店を見据えた販促方針を練ることが可能である。例えばセル(4、4)、(4、5)の顧客グループは平均来店間隔が3ヶ月以内であるにもかかわらず、最終利用日が評価日より3月以上経過している顧客であり、それらの顧客143+158=301人に対しては次回の来店を促すダイレクトメール等を打つことが有効であろうと推測することができる。」(段落【0006】?【0014】)

したがって、引用例2には、「顧客毎の平均来店間隔を算出し次回来店時期の予測に合わせてダイレクトメールを出すこと」が記載されている。
また、顧客セグメント化によく使われる手法である「RFM分析」とは、「顧客の最終利用日または最終購買日(Recency)、利用回数または購買回数(Frequency)、利用金額または購買金額(Monetory)の組み合わせによって、各顧客に点数を付け、この点数により優良顧客とそうでない顧客等に顧客をセグメント化する」方法ではあるが、最終利用日Recencyと累積の利用回数Frequencyの2軸を用いており、累積の利用回数が、顧客の実際の来店間隔(来店頻度)を表していないため、次回来店を見据えた販促を行うことが困難であったことを問題点として把握され、Frequencyとして顧客の会員加入期間を考慮に入れた、顧客のその店に関する利用行動をより実質的に反映できる数値に基づいて顧客の分析を行うことができるようにすることが、引用例2記載の発明における目的とされていると把握できる。

(3) 本願補正発明と引用例1記載発明との対比
引用例1の前記A記載によれば、引用例1記載発明の目的とするところは、DMの回収率を上げるには、買上金額が多い顧客、買上回数が多い顧客を抽出してDMを発行することである。
他方、本願明細書の段落【0037】【発明の効果】には、
「本発明においては来店する確率の高い顧客だけに限りDMを送付することができ、来店する顧客数を確実に増すことが可能になる。したがって、本発明によれば、意図したDM掲載商品と顧客の欲する商品との合致から顧客が伸びた分だけその商品の売上げ増加を見込むことが可能で、当該商品についての商圏シェアを大きく伸長することができる。」
と記載されており、これもDMの回収率を上げるためのものである。
してみると、引用例1記載発明と本願補正発明とは目的を同じくするものであるから、引用例1記載発明の「顧客検索装置」は、本願補正発明の「顧客管理装置」と共通する。
そして、引用例1記載発明における「基本属性データベース」には、「顧客コード、氏名、年齢、住所、郵便番号、性別の個人情報」が登録されており、他方、本願明細書の段落【0014】には、
「顧客情報記憶手段12は顧客について個人情報データを保存している。個人情報データには顧客コード、氏名、性別、住所、電話、年令などのデータを含んでいる。顧客コードを除く個人データは顧客自身が記入した申し込み用紙の情報に基づいてデータ入力を行うが、磁気カードによる顧客管理システムが既に構築されている場合、そこに蓄積されているデータを移植してもよい。」
と記載されている。
してみると、引用例1記載発明における「基本属性データベース」を収納する「記憶部」と、本願補正発明における「顧客情報記憶手段」とは、いずれも「顧客について個人情報データを保存している」手段であることにおいて共通する。

また、引用例1記載発明における「買上情報データベース」は、「顧客の買上日、買上商品、買上店舗、買上金額といった買上情報」を有するものであり、他方、本願明細書の段落【0012】には、
「買上げ情報記憶手段11は顧客一人ひとりの購入商品を個別品目レベルで把握できる綿密なデータベースで、詳細データには店舗名、買上げ年月日、商品名、販売単位、数量、金額などのデータを含んでいる。」
と記載されている。
してみると、引用例1記載発明における「買上情報データベース」を収納する「記憶部」と、本願補正発明における「買上情報記憶手段」とは、いずれも「顧客一人ひとりの購入商品を個別品目レベルで把握できるデータベース」を収納するものであることにおいて共通する。

また、引用例1の前記B記載によれば、「処理部12」とは、「パラメータ解析手段13、使用データベース判定手段14、検索手段15より成る」ものであって、これら手段を総称したものであることが把握できる。
他方、本願明細書の段落【0015】には、
「顧客管理装置は入力手段13、購買見込み客選出手段14、購買見込み客編成手段15、顧客リスト作成手段16および出力手段17を備えている。入力手段13は演算処理装置での記憶、照合、検索、編集、作成などのために入力データを処理する。」と記載されており、
本願補正発明における「顧客管理装置」が、「入力手段」、「購買見込み客選出手段」、「購買見込み客編成手段」、「顧客リスト作成手段」および「出力手段」を備えているものであって、「入力手段」および「出力手段」を除いた各手段は「演算処理装置」で行われる演算処理の各機能を表現したものであることが把握できる。
してみると、引用例1記載発明における「処理部」と、本願補正発明における前記「入力手段」および「出力手段」を除いた「購買見込み客選出手段」、「購買見込み客編成手段」及び「顧客リスト作成手段」を総体とする「演算処理装置」とは、いずれもデータ処理を行う手段について総称したものであることにおいて、共通している。

また、引用例1の前記B記載によれば、引用例1記載発明における「入力手段は」、「顧客の検索条件をパラメータとして入力する」ものであり、他方、本願明細書の段落【0015】には、
「入力手段13は演算処理装置での記憶、照合、検索、編集、作成などのために入力データを処理する。」と記載されている。
してみると、引用例1記載発明における「入力手段」と、本願補正発明における「入力手段」とは、いずれも「演算処理装置」で行われるデータ処理のために、データを入力する手段であることにおいて共通する。

また、引用例1記載発明における「印字機」は、前記のように「処理部における検索結果を元にして住所及び郵便番号を封筒、宛名シール等に印字するための印字機」であり、ここでいう「処理部における検索結果」が、ダイレクトメールを出そうとする対象の顧客、すなわち「ダイレクトメール顧客」をリスト化したものであることは、明らかである。
他方、本願補正発明における「出力手段」は「ダイレクトメール顧客リストに基づいて個別の宛名シールを印刷するように出力データを処理する」ものである。
そして、引用例1記載発明における「住所及び郵便番号を封筒、宛名シール等に印字する」ことと、本願補正発明における「ダイレクトメール顧客リストに基づいて個別の宛名シールを印刷する」こととが共通することは明らかである。
してみると、引用例1記載発明における「印字機」と、本願補正発明における「出力手段」とは、いずれも「演算処理装置(処理部)」によるデータ処理で得られた「ダイレクトメール顧客リストに基づいて個別の宛名シールを印刷するように出力データを処理する」手段であることにおいて共通する。

従って、両者は、「入力データを処理する入力手段と、
商品買上げ情報を保存する買上情報記憶手段と、
顧客情報を保存する顧客情報記憶手段と、
データ処理を行う演算処理装置と、
前記演算処理装置により得られたダイレクトメール顧客リストに基づいて個別の宛名シールを印刷する出力手段と、
を備えてなる顧客管理装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明は、
「前記入力手段から入力された購入実績に基づいた上位ランクの指定商品名あるいは個別商品名を前記買上げ情報記憶手段に保存している顧客一人ひとりの商品買上げ情報を検索し、前記上位ランクの指定商品あるいは個別商品について購入実績のある複数の顧客を当該商品の全売上額に所定売上率を乗じて算出したマーク金額に達するまで抽出して選別し、該複数の顧客のうちの一部の顧客を購買見込み客として選出する購買見込み客選出手段」と、
「選出された購買見込み客について過去の購入実績をもとに日付または曜日を選択し、前記日付または曜日に応じて編成された購買見込み客について異なるグループに前記購買見込み客を編成する購買見込み客編成手段」と、
「この日付または曜日に応じて編成された購買見込み客について前記購買情報記憶手段に保存している顧客情報と照合してダイレクトメール顧客リストを作成する顧客リスト作成手段」を、
有していると特定されているのに対し、
引用例1記載発明では「買上情報データベースから期間及び買上商品を条件設定して商品購入実績のある顧客の顧客情報を検索する検索手段を有する処理部」を備えるものの、当該「処理部」が、前記特定に相当する手段を備えたものか定かでない点。

(4)当審の判断
上記相違点に係る本願補正発明の「購買見込み客選出手段」、「購買見込み客編成手段」及び「顧客リスト作成手段」は、その表現のみからは、どのようなデータ処理を行うことを意図しているのかが定かでないので、以下、本願明細書に記載される実施の形態を参照する。

本願明細書段落【0012】以降には、【発明の実施の形態】として、二つの実施の形態、すなわち、段落【0012】?【0030】の「本発明の一実施の形態」と、段落【0031】?【0035】の「上記と異なる実施の形態」が挙げられている。

(「本発明の一実施の形態」の概要について)
「本発明の一実施の形態」については、以下の記載がある。
段落【0015】「購買見込み客客選出手段14はオペレータがキーボード18から指定する商品または個別商品について買上げ情報記憶手段11に保存している顧客一人ひとりの商品買上げデータを検索し、ある指定期間の範囲で指定商品または指定個別商品について購入した実績のある複数の顧客を選別し、一部顧客について購買見込み客として選出する。」
段落【0016】「購買見込み客編成手段15は見込み客選出手段14で選出された購買見込み客について指定される日付または曜日に応じて異なるグループに編成する。」
同段落【0016】「顧客リスト作成手段16は購買見込み客編成手段15から与えられる個別に編成された購買見込み客について顧客情報記憶手段12に保存している個人情報と照合してDM顧客リストを編集する。」

これらの記載からみて、「本発明の一実施の形態」においては、指定商品または指定個別商品について、これを購入した実績のある複数の顧客を過去蓄積データ量に応じた期間範囲で選別することが想定されており、他方、購買見込み客を編成するに際しては、期間範囲として日付または曜日を指定することを可能としているものと把握できる。

(「本発明の一実施の形態」におけるデータ処理の概要について)
段落【0017】以降では、図2に示すフローチャートを参照しつつ、顧客管理装置の備えるデータ処理の詳細が記載されており、以下のステップが順次行われるものと把握できる。

段落【0017】「予め決められた品目分類に従う商品名を入力するステップ101」
段落【0018】「ある期間範囲に限定するための年月日を入力するステップ102」
段落【0019】「検索コマンドを入力することでステップ101で指定された商品を、ステップ102で指定された期間に購入した顧客一人ひとりの購入金額を集計して個人の購入高が算出され、この購入高に基づいて顧客が上位から降順に整理されるステップ103」
段落【0020】「前記購入高下位ランクの顧客は購入見込み客とせず除外し、上位ランクの顧客の中で前記商品の売上高に対する貢献度の高い顧客を見出すために売上率を入力し、これを指定商品の全売上高に乗じてマーク金額を算出するステップ104」
段落【0021】「前記で算出されたマーク金額を顧客の購入高に当てはめ、マーク金額と関わりのある上位ランクの顧客全員を優先的にDMを発送する購買見込み客として決定するステップ105」
なお、ステップ101で入力する商品名は、上位品目分類に相当する商品とされ、例示として「食料品」が挙げられており、これを商品コードとして入力するものとされ、また、下位品目に分類される商品名、たとえば、食料品の下位品目として、米、野菜、酒、ビール、飲料なども対応する商品コードが決められており、これら下位品目を入力することも可能とされている。

ここで、ステップ104及びステップ105におけるデータ処理は、購買貢献度の高い顧客を選定しようとするものである。
このステップ104では、少なくとも、「売上率」が設定されると、「マーク金額」が得られ、ステップ105では、この「マーク金額」との関係で、上位ランクの顧客を選択しようとしていると解される。
段落【0020】に例示されている、全売上高を600万円であるとした場合、売上率として80%を入力すれば、これを全売上高に乗じた金額が480万円となることは容易に理解できる。
そして、既に、ステップ103において指定商品の購入高に基づいて上位から降順に顧客が整理されており、購買額の上位顧客から順に、各々の顧客の購買額を足して合計480万円の購買額に到達するまで顧客を選択すれば、480万円の対象商品購買に貢献した顧客を選択できることは明らかである。

これに続いて、「本発明の一実施の形態」に係るデータ処理は、以下のステップが順次行われるものと把握できる。

段落【0027】「顧客の来店日について買い上げ情報記憶手段11に保存したデータから、各顧客の来店日を見出し、さらに、同時に検索する下位品目に分類される商品の購入実績から先に選ばれた購買見込み客を日付および商品で区分した2つのグループA,Bに編成するステップ106、107」
段落【0026】「グループA,Bとして編成した購買見込み客について宛名シールの印刷に必要な住所などの情報を含むDM顧客リストを編集するステップ108」
同段落【0026】「得られたDM顧客リストに基づいて印刷コマンドの入力により宛名シールを印刷するステップ109,110」
なお、段落【0023】には「顧客が来店する日は不定期に来店する必需品の購入を除けば、月の初め、中間、終わりというように、生活習慣として定着した特定の日に限られる傾向がある。」と指摘され、段落【0024】では、「月初め(1日?10日)」を例として、ステップ106,107で編成される2つのグループが、特定の商品に関する1日から5日までのグループA、前記商品と別の商品に関する5日?10日までのグループBに分けられるものが記載されている。
そして、このようにした場合、選ばれた購買見込み客について顧客が来店し易い日付を中心として複数のグループに編成することが可能となり、来店する確率の高い顧客だけに限りDM送付が可能となることが指摘されている。

ここで、ステップ108?110は、既に編集されたDM顧客リストを元にして、宛名シールを印刷することに係るものである。
してみるに、得られたDM顧客リストを元にして印刷している点では、従来のDM用宛名シール印刷と何ら異なるところはなく、特段に格別なものではない。

(「本発明の上記と異なる実施の形態」の概要について)
次に、段落【0031】?【0035】の「上記と異なる実施の形態」については、以下の記載がある。

段落【0031】「本実施例の形態では購買見込み客の編成は日付を中心に編成するのに代えて、曜日を中心に編成する。図5に示すように、これは購買見込み客を選出するまでは上記の実施の形態と同じステップを実行する。次いで、曜日指定があると判断したこと(ステップ113)、次のように購買見込み客を曜日および商品名で区分した複数のグループに編成する。」
段落【0032】「ディスプレイ20には全曜日が表示されるので、その曜日と一致するチェックマークを切換えて曜日を指定する。これはチェックマーク表示を残したとき、指定ありとして買上げ情報記憶手段11に保存しているデータを検索して各顧客の来店した曜日を見出し、さらに、同時に検索する下位品目に分類される商品(たとえば、酒、ビール、飲料など)の購入実績から先に選ばれた購買見込み客を曜日および商品で区分した2つのグループに編成する(ステップ107)。」

これらの記載からみて、当該「上記と異なる実施の形態」に係るデータ処理は、前記「本発明の一実施の形態」に係るデータ処理のステップ106及び107に代えて、ステップ113及び107が行われる以外、前記で検討したと同じステップが踏まれることが把握できる。

(本願補正発明の容易想到性についての検討)
引用例1記載発明を認定した引用例1には、これにおいて行われるデータ処理詳細について、段落【0007】以降、前記に摘示した記載がある。
これらの記載によれば、キーボード等の入力手段から顧客の検索条件がパラメータとして、入力され(ステップ21:ここでは、例として性別、年齢、買上店舗、買上商品、買上金額の5項目が存在しており、性別パラメータと買上店舗パラメータのみが入力されていることが想定されている。)、これを受けてパラメータ解析手段13において、顧客の基本属性に関するものか、買上情報に関するものかが解析され(ステップ22)、パラメータに応じて使用するデータベースが使用データベース判定手段14により決定され(ステップ23)、その後、検索手段15において、パラメータ解析と使用データベース判定の結果に従って買上情報データベース18を検索し、買上店舗コードを持つレコードを抽出し(ステップ24)、次に、抽出された買上情報レコードの顧客コードをキーとして基本属性データベース17を検索し、もう1つのパラメータである性別を参照して、これが一致する時のみ、基本属性データベース17から氏名、住所、郵便番号といったDM発行に必要な項目が取り込まれ、図3に示されるデータ構成の別ファイル20が出力される(ステップ25)ことが把握できる。
してみるに、当該引用例1においては、段落【0016】【発明の効果】に記載されているごとく、「一定の買上金額、一定買上回数、買上商品部門といった条件」により顧客に係る買上情報を検索できることが記載されている。
そして、データ検索詳細の記載はないものの、当該段落からは、前記のように特定期間を指定したデータ抽出が行われているものの、本願明細書に例示される「本発明の一実施の形態」に係る「月初め(1日?10日)」の「1日から5日まで」と「5日から10日まで」を選択した編成すること、或いは「本発明の上記と異なる実施の形態」に係る「曜日」を中心に編成することを意味する、「日付または曜日」を対象とした編成を行う概念が直ちに想起し得るものとはいえない。

また、引用例2においても、前記で認定したように、「平均来店間隔(Fi)」や「最終利用日からの経過日数(Rj)」が検討されているものの、前記例示のような「日付または曜日」を対象とした編成を行う概念が対象とされているところはない。
しかしながら、引用例2においては、顧客の購買行動を分析することにより、次回の来店時期を予想することで、効率的な顧客管理を行うことが可能であることが指摘されている。

そこで、本願補正発明において想定されているデータ処理に沿って、特定されている各手段に係る容易想到性を以下、検討する。

まず、本願補正発明に係る「購買見込み客選出手段」は、前記で検討したように、本願明細書の記載におけるステップ104及びステップ105におけるデータ処理が相当している。
ここで、マーケティングの法則に係る常識として、所得分布の経験則に「パレートの法則」があり、これは、「全体の2割程度の高額所得者が社会全体の所得の約8割を占める」というものである。
そして、この法則は、所得分布の経験則のみならず、本願出願時点においても、いろいろの分野で使用されており、売上高を分析するに際して、全商品の20%が80%の売り上げを作る、全顧客の20%が全体売上の80%を占める等として使用されていることは、周知の事項である。
本願明細書に記載される前記ステップ104におけるマーク金額とは、例示された、商品の全売上高が600万円であるときに売上率80%を乗じて480万円のマーク金額を得るとの記載からすれば、「パレートの法則」を使用して、全体売上の80%を占める全顧客の20%を選出することを意味するものと解される。
そして、このステップ105における、「算出されたマーク金額を顧客の購入高に当てはめ、マーク金額と関わりのある上位ランクの顧客全員を優先的にDMを発送する購買見込み客として決定する」とは、ステップ103で購入高に基づいて指定商品の購入高上位から降順に整理されている顧客を対象として、選出された顧客の前記購入高の合計がマーク金額に概ね対応するまで、上位から順次選出することを意図していると推察される。
しかしながら、商品購買額の高い顧客或いは低い顧客を峻別すれば、効率的な販売促進を図り得ることは、マーケティングに係る常識であり、このような顧客峻別手法を採用することは、例えば、特開2000-187690号公報、特開平11-184926号公報、特開平8-77184号公報等にみられるように、当業者において周知の事項である。

してみるに、本願補正発明に係る「購買見込み客選出手段」において行われているデータ処理は、周知の事項である顧客峻別手法を具現化したに過ぎず、このようなデータ処理を行うように構成することは、当業者であれば容易になし得たものである。

次に、本願補正発明に係る「購買見込み客編成手段」について検討する。

ここで、現実の顧客購買行動がいずれの時期・期間に行われたものであるかに着目し、一日のいずれの時間帯に属するか、いずれの曜日に属するか、また、平日・休日のいずれに属するか、すなわち着目すべき時期・期間の観点から分析を行うことは、従来からも行われており(特開2000-285175号公報、特開2000-56721号公報、特開平5-189406号公報、特開平3-77195号公報、特開平1-236396号公報等参照)、周知の事項に属する。
そして、このような時期・期間に着目して顧客行動を分析するにあたり、まずは顧客の買上情報を記憶しているデータベースから、1年或いは数ヶ月といった期間を対象として分析対象となるデータを検索・抽出し、抽出されたデータを対象として、着目対象とする時期・期間について、再度、検索・抽出する(二次検索をする)ようになすことは、データ検索の一般的手法といえる。
してみれば、本願補正発明における「日付または曜日」を対象とした編成を行うことは、分析対象となるデータに関して対象時期についての二次検索を行うことをいうに過ぎない。

また、本願補正発明における特定では、「日付または曜日を選択し」或いは「過去の購入実績をもとに」「日付または曜日に応じて」とされるものの、前記で検討したように「本発明の一実施の形態」或いは「上記と異なる実施の形態」においても、対象時期を「日付または曜日」に決めることが記載されているに過ぎず、この対象時期指定をどのように入力するかの手法の詳細を明らかにしているものでもない。

してみるに、本願補正発明に係る「購買見込み客編成手段」において、「過去の購入実績をもとに日付または曜日を選択し」、「前記日付または曜日に応じて」購買見込み客を「編成する」ようになすことは、データ分析を行うに際しての、データ処理方法を記載したに過ぎず、当業者であれば必要に応じて適宜なし得ることである。
また、本願補正発明に係る「購買見込み客編成手段」では、異なるグループを構成し得るとの特定があり、その意図する内容は、前記した本願明細書の「本発明の一実施の形態」或いは「本発明の上記と異なる実施の形態」の記載にあるように、「月初め(1日?10日)」の内「1日?5日まで」と「5日から10日まで」を異なるグループとして選択すること、或いは異なる曜日を異なるグループとして選択することと理解されるが、適宜対象時期を複数設定する場合には、対象時期毎に異なるグループが選択されることとなるのは必然であり、当該特定にある異なるグループを構成することは、設計事項に属するものである。

最後に、前記のように本願補正発明に係る「購買見込み客選出手段」及び「購買見込み客編成手段」を介して編成された顧客リストは、当然に「日付または曜日に応じて編成された」ものとなっており、貢献度の高い顧客を選別するデータ処理を終了した時点で、DM送付に必要な住所、氏名を顧客情報を記憶したデータベースと照合してDM宛名シールを直ちに印刷可能なDM顧客リストを作成すること自体は、前記一致点認定で指摘しているように、引用例1における「演算処理装置(処理部)」によるデータ処理で得られた「ダイレクトメール顧客リスト」においても当然に求められているものであって、この点において何ら異なるものではない。
したがって、本願補正発明に係る「顧客リスト作成手段」を備えることは、前記「購買見込み客選出手段」及び「購買見込み客編成手段」を備えることによる当然の結果であって、これもまた、当業者であれば容易になし得たことといわざるを得ない。

以上のとおりであって、前記で相違点として挙げた手段を、引用例1記載発明におけるデータ処理を行う演算処理装置に備えることは、当業者にとり容易であって、そのようにしたことによる作用効果も、当業者であれば容易に推察可能なものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1、2記載の発明および周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年9月1日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年1月6日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
入力データを処理する入力手段と、
商品買上げ情報を保存する買上げ情報記憶手段と、
顧客情報を保存する顧客情報記憶手段と、
前記買上げ情報記憶手段に保存している顧客一人ひとりの商品買上げ情報を検索し、
指定商品あるいは個別商品について購入実績のある複数の顧客を選別し、
該複数の顧客のうちの一部の顧客を購買見込み客として選出する購買見込み客選出手段と、
選出された購買見込み客について来店が予想される日付または曜日に応じて異なるグループに編成する購買見込み客編成手段と、
この編成された購買見込み客について前記顧客情報記憶手段に保存している顧客情報と照合してダイレクトメール顧客リストを作成する顧客リスト作成手段と、
このダイレクトメール顧客リストに基づいて個別の宛名シールを印刷するように出力データを処理する出力手段と
を備えてなる顧客管理装置。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明と対比すると、以下のごとくに特定事項が一部異なる。
「購買見込み客選出手段」の「検索」に係る「前記入力手段から入力された購入実績に基づいた上位ランクの指定商品名あるいは個別商品名を」を省き、
同じく「指定商品あるいは個別商品について購入実績のある複数の顧客」に係る「前記上位ランクの」を省き、
前記「購入実績のある複数の顧客」を「選別」するに係る「当該商品の全売上額に所定売上率を乗じて算出したマーク金額に達するまで抽出して」を省き、
また、「購買見込み客編成手段」の「異なるグループに前記購買見込み客を編成する」に関して、「選出された購買見込み客について過去の購入実績をもとに日付または曜日を選択し、前記日付または曜日に応じて編成された購買見込み客について」を、「選出された購買見込み客について来店が予想される日付または曜日に応じて」とし、
さらに、「顧客リスト作成手段」の「この日付または曜日に応じて編成された」から「日付または曜日に応じて」を省いたものである。

ここで、「購買見込み客編成手段」に係る「来店が予想される日付または曜日」については、「来店が予想される」の内容が客観的に明らかでないことは、平成16年2月6日付けの拒絶理由通知において指摘されているところであり、請求人は、この指摘された「来店が予想される」の内容を、より詳細に明らかにすべく、前記の「過去の購入実績をもとに日付または曜日を選択し、前記日付または曜日に応じて」なる補正を行ったものと解される。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2(4)」に記載したとおり、引用例1、2記載の発明および周知技術の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、2記載の発明および周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、 引用例1、2記載の発明および周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-15 
結審通知日 2007-01-23 
審決日 2007-02-06 
出願番号 特願2001-261121(P2001-261121)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 史郎赤木 啓二櫻井 茂樹  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 島▲崎▼ 純一
國田 正久
発明の名称 顧客管理装置  
代理人 大川 晃  

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