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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1155017
審判番号 不服2004-4594  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-05 
確定日 2007-04-04 
事件の表示 平成9年特許願第331075号「液体吸収性パッドおよびそれを用いた股部を有する衣類」拒絶査定不服審判事件〔平成11年5月25日出願公開,特開平11-137590号〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は,平成9年11月14日の出願であって,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成18年12月20日受付けで補正された明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものと認める。
「装着時に身体の肌側となる側に,身体の肌側となる側より液体を吸収し,身体の外側となる側へ該液体を放出する機能を有する液体吸収放出体を設け,装着時に身体の外側となる側に防水体を設け,該液体吸収放出体と該防水体との間に,表面を多数の亀甲状の区画に区分するよう液体吸収性ポリマー層を設けた液体吸収貯蔵体を設けてなることを特徴とする液体吸収性パッド。」

2.引用発明
平成18年10月16日付けの当審による拒絶理由通知において引用された特公昭58-54826号公報(以下,「引用刊行物」という。)には,第1図及び第2図と共に,次の事項が記載されている。
a.「粉砕パルプ層,水不溶性にして水吸収膨潤性を有する物質が透水性シートに定着されかつ適宜間隔をおいて案内細孔が設けられたポリマー層および吸水紙層が,使用時に肌が接する吸収側から順次積層されることによつて吸収体部が構成されていることを特徴とする生理用品。」(特許請求の範囲第1項)
b.「粉砕(綿状)パルプ層1は,月経液をスポツト状に吸収して第1図上,下方へ導くことを主目的として配置されている。粉砕パルプは,繊維間結合が弱く毛細管現象が少ないので,吸水面積が狭く,透水性が良好である。そのため粉砕パルプ層1の上面に接した月経液を最小面積の拡散にとどめ,前述のようにスポツト状に吸収することができる。このスポツト状吸収に必要な粉砕パルプ層1の量は75?250g/m2であるが,可及的に粉砕パルプ層1に吸収保持される量を少なくし吸水紙層5へ多量の月経液を移行させるよう最小量にとどめるのが好ましく,その量は75?150g/m2である。
ポリマー層2は,透水性シートの下面に,水不溶性にして水吸収膨潤性を有する物質3がバインダー(図示せず)を介して定着されるとともに,ほぼ全面に適宜間隔をおいて案内細孔4が設けられたもので,前記粉砕パルプ層1でスポット状に吸収されて導かれた月経液を吸収するとともに,余剰の月経液を案内細孔4から次層の吸収紙層5へ移行させ,吸収紙層5で吸収拡散された月経液を吸収保持することを主目的として配置されている。」(第3欄第30行?第4欄第8行)
c.「なお第1図は,前述のような構成に係る本発明の吸収体を備える生理用品の一例を示すもので,10は月経液を面方向へ浸透拡散させないいわゆるレーヨン紙・不織布等の透水性シート層で粉砕パルプ層1の上面に配置され,これは主として生理用品の製造工程上,粉砕パルプを支持するために用いられたものである。7は前記吸収体および透水性シート層からなる積層体の下面および両側部を被包するための防水紙・プラスチツクフイルム等の防漏性シート層である。8はレーヨン繊維アクリル繊維等の綿状薄層,9はレーヨン紙・不織布等の透水性シート層で,これ等8,9によつて前記積層体が被覆されている。」(第4欄第40行?第5欄第8行)
d.「前述のような構成に係る本発明の吸収体を備える生理用品において,月経液は,透水性シート層9,綿状薄層8,透水性シート層10を経て粉砕パルプ層1に接すると,この層1でスポツト状に吸収されてポリマー層2に導かれ,この層2で物質3に吸収されるが,大部分の量の月経液は,案内細孔4群を経て吸水紙層5に吸収拡散される。」(第5欄第12行?第18行)
e.第1図には,透水性シート層10及び粉砕パルプ層1と防漏性シート層7との間に,ポリマー層2と吸水紙層5が設けられていることが示されている。
上記記載事項を総合すると,引用刊行物には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「透水性シート層10及び月経液をスポツト状に吸収して吸収紙層5へ移行させる粉砕パルプ層1を設け,防漏性シート層7を設け,該透水性シート層10及び月経液をスポツト状に吸収して吸収紙層5へ移行させる粉砕パルプ層1と該防漏性シート層7との間に,適宜間隔をおいて案内細孔4が設けられたポリマー層2および吸水紙層5を設けてなる生理用品。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると,後者における「透水性シート層10及び月経液をスポツト状に吸収して吸収紙層5へ移行させる粉砕パルプ層1」は,その二層全体で,身体の肌側となる側より月経液を吸収し,身体の外側となる側に該月経液を放出するものであることは明らかであるから,前者における「身体の肌側となる側より液体を吸収し,身体の外側となる側へ該液体を放出する機能を有する液体吸収放出体」に相当する。そして,後者における「防漏性シート層7」は,その構成・機能からみて前者における「防水体」に相当し,同様に「生理用品」は「液体吸収性パッド」に相当する。
また,後者における「適宜間隔をおいて案内細孔4が設けられたポリマー層2および吸水紙層5」と前者における「表面を多数の亀甲状の区画に区分するよう液体吸収性ポリマー層を設けた液体吸収貯蔵体」とは,「表面を多数の区画に区分するよう液体吸収性ポリマー層を設けた液体吸収貯蔵体」という概念で共通する。
さらに,後者において,「透水性シート層10及び月経液をスポツト状に吸収して吸収紙層5へ移行させる粉砕パルプ層1」が装着時に身体の肌側となる側に設けられ,「防漏性シート層7」が装着時に身体の外側となる側に設けられていることも,それらの構成・機能からみて明らかである。
してみれば,両者は,
「装着時に身体の肌側となる側に,身体の肌側となる側より液体を吸収し,身体の外側となる側へ該液体を放出する機能を有する液体吸収放出体を設け,装着時に身体の外側となる側に防水体を設け,該液体吸収放出体と該防水体との間に,表面を多数の区画に区分するよう液体吸収性ポリマー層を設けた液体吸収貯蔵体を設けてなる液体吸収性パッド。」
である点で一致し,次の点で相違する。
相違点:本願発明においては,液体吸収性ポリマー層で区分される区画が亀甲状であるのに対して,引用発明においては,案内細孔4の形状が不明である点。

4.当審の判断
引用発明において,案内細孔4の形状は,当業者が適宜設計できる事項に過ぎず,また,平面に設ける孔の形状として亀甲状のものは,様々な分野で採用されている周知のものに過ぎない。さらに,引用発明において,案内細孔4の形状を亀甲状とするだけで引用発明と異質な効果又はきわだって優れた効果が生じるともいえない。
よって,引用発明において案内細孔4の形状を亀甲状とすることに格別の困難性があるとはいえず,案内細孔4の形状を亀甲状とすれば,吸水紙層5の表面は必然的に亀甲状の区画に区分されることとなることは明らかである。

そして,本願発明により奏される効果も,引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

審判請求人は,平成18年12月20日受付けの意見書において,引用発明における「ポリマー層2」及び「吸水紙層5」は,本願発明における「液体吸収性ポリマー層」及び「液体吸収貯蔵層」とは,その構成,目的,効果が異なる旨,本願発明は繰り返し使用が可能であるが,引用発明は,繰り返し使用は実質的に不可能である旨主張している。
しかしながら,本願特許請求の範囲の記載には,引用発明における「ポリマー層2」及び「吸水紙層5」は,「液体吸収性ポリマー層」及び「液体吸収貯蔵層」に相当しないとする根拠はない。さらに,本願発明の詳細な説明を参酌しても,それには「本発明において,液体吸収貯蔵体とは,尿,経血,おりもの等の液体吸収性,液体拡散性,液体保持性を有するものを意味し,シート状の形状を有する。液体吸収貯蔵体を形成する素材としては,上記作用を有すれば特に限定されず,例えば,綿,吸水アクリル,吸水ポリエステル,キュプラ,レーヨン等の織物,ニット,不織布等が挙げられる。」(段落【0018】),「本発明の液体吸収性ポリマー層を形成する素材としては,通常一般の生理用パッドや使い捨ておむつに用いられる液体吸収性ポリマーを使用することができ,例えばビニルアルコール-アクリル酸塩共重合体,アクリル酸ソーダ重合体等の吸水性ポリマーが挙げられる。」(段落【0019】)等と記載されており,引用発明における「適宜間隔をおいて案内細孔4が設けられたポリマー層2および吸水紙層5」と本願発明における「表面を多数の亀甲状の区画に区分するよう液体吸収性ポリマー層を設けた液体吸収貯蔵体」とは,区画が「亀甲状」である点を除き,構成が異なるものではないことは明らかである。
そして,引用発明において案内細孔4の形状を亀甲状とするだけで引用発明と異質な効果又はきわだって優れた効果が生じるものではないので,結局,引用発明における「ポリマー層2」及び「吸水紙層5」は,本願発明における「液体吸収性ポリマー層」及び「液体吸収貯蔵層」とは,その構成,目的,効果が異なるという主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものであり,これを採用することはできない。
さらに,本願特許請求の範囲に,液体吸収性パッドを繰り返し使用可能とするための事項が記載されているともいえないので,本願発明は繰り返し使用が可能であるという主張も,特許請求の範囲の記載に基づかないものであり,これを採用することはできない。

また,審判請求人は,同意見書において,引用刊行物には,液体吸収性ポリマー層で区分される区画を「多数の亀甲状の区画」とすることにより,「(本願明細書)図3に示すように,亀甲状模様のaの方向への液体拡散速度が,bの方向に比べて大きくなり,迅速でスムーズな吸収が可能になる」効果を得ることは記載されていない旨主張している。
しなしながら,特許請求の範囲には,亀甲状の大きさや正六角形からなるものであるかどうかはもちろん,亀甲状がどのような向きで配置されているのかも特定されていないのであるから,本願発明は,液体拡散速度が大きい液体吸収性パッド上の方向が特定されているものではないことは明らかである。
よって,本願発明が液体吸収性パッドの縦方向の液体拡散速度が大きいという効果を有することを前提とする,この主張も,特許請求の範囲の記載に基づかないものであり,これを採用することはできない。

5.むすび
したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-24 
結審通知日 2007-01-30 
審決日 2007-02-13 
出願番号 特願平9-331075
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 克夫  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 山本 信平
和泉 等
発明の名称 液体吸収性パッドおよびそれを用いた股部を有する衣類  
代理人 ▲吉▼川 俊雄  
代理人 ▲吉▼川 俊雄  

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