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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1155032
審判番号 不服2004-12850  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-23 
確定日 2007-04-05 
事件の表示 平成8年特許願第517708号「大形加工物用のプラズマ加工機」拒絶査定不服審判事件〔平成8年6月13日国際公開、WO96/18208、平成13年8月14日国内公表、特表2001-511945〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、1995年12月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1994年12月6日、米国)を国際出願日とする出願であって、請求項1?15に係る発明は、平成16年2月9日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるとおりである。そのうち、請求項7に係る発明(以下、「本願発明7」という。)は、請求項1を引用する請求項7に記載された事項により特定されるものであるから、請求項1及び請求項7に記載された事項をまとめると次のとおりである。

「加工物を取り付ける真空室を備え、加工物をプラズマで処理する装置であって、
加工物を処理するプラズマに変えることができるガスを室内へ導入する手段と、
室の外部で生じる高周波磁界を引き起こすための電源を備え、該電源は、各窓に1つずつ対応する複数の励磁装置を備えており、各励磁装置は対応の窓を介して結合される高周波磁界を発生するように配置されており、ガスをプラズマに変える手段と、
窓を介して結合した磁界がプラズマを励磁するように、室の外表面上に個別に支持されて高周波磁界をガスに結合させるように配置された複数の誘電体窓とを有しており、
室の内部と外部との間の圧力差に耐えるために、窓は、複数の窓と同じ合計面積を備えた単一窓の厚さより相当に薄くなっている
ことを特徴とする装置。」

2.引用刊行物及びその摘記事項
原査定の拒絶の理由に引用した本願の優先日前に国内に頒布された特開平4-362091号公報(以下、「刊行物」という。)、及び拒絶査定の周知例として引用された特開平5-152216号公報(以下、「周知文献」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)刊行物(特開平4-362091号公報)の摘記事項
(1a)「【0010】【課題を解決するための手段】本発明は・・・次の手段を講ずる。
【0011】すなわち、プラズマCVD装置として、(1)誘電体製の窓を持つ真空容器と、同窓に対向して、同真空容器内に配置される基板と、上記窓に対向して上記真空容器外に設けられるアンテナ型放電手段と、同アンテナ型放電手段に電力を供給する高周波電源とを設ける。
(2)請求項1のプラズマCVD装置において、アンテナ型放電手段の軸にその軸を直交し、かつ真空容器を囲んで設けられるコイルと、同コイルに電力を供給する交流電源とを設ける。
【0012】【作用】(1)上記手段により、真空容器に反応ガスが導入され、アンテナ型放電手段に電力が供給されると、アンテナ型放電手段から電波が基板に向けて放射される。この電磁波により真空容器内にプラズマが発生し、これにより反応ガスが反応して、基板上にCVDにより薄膜が形成される。
【0013】このようにして、大形基板に薄膜が形成でき、かつ真空容器内に電極がないため電極からの不純物の発生および膜のはがれが発生しない。
(2)コイルに交流電源から通電すると交流磁界が軸方向に発生する。この磁界は上記(1)の電波の電界と直交する方向に発生するため、電波で発生するプラズマが揺動され、基板上により均一に薄膜が形成される。」
(1b)「【0014】【実施例】本発明の請求項1に係る第1実施例を図1から図5により説明する。
・・・
【0016】図1にて、真空容器21は両側面に石英ガラス窓23を持つ。また真空容器21の中央部には両側面が窓23に平行な面を持つ加熱ヒータ30が設けられる。さらに加熱ヒータ30の両側面上に、ほぼ窓23の大きさの基板22が、配置される。
【0017】また窓23の外側近傍にアンテナ型放電用電極24が軸をほぼ鉛直に設けられ、アルミ製の高周波遮断箱28で覆われる。さらにアンテナ型放電用電極24はそれぞれ高周波(RF)同調回路25を介して高周波(RF)電源27にケーブル26でつながれる。
【0018】アンテナ型放電用電極24部は、その詳細を図2に示すように、ほぼ窓13の外形寸法を持つはしご型に導体素子が配置され、その両側の素子にRFがRF同調回路25を介してフィードされる。またこれらの部分の電気回路図を図3に示す。
【0019】以上において、例えば成膜用の基板22(ガラス、シリコンウエハ等)上にアモルファスシリコンの薄膜を形成するとき、真空容器21内にSiH4ガスが送られる。真空容器21内の圧力は0.1?1Torr程度に維持されるとともに基板22がヒータ30で所定の温度に加熱される。ここで13.56MHzのRF電源27からRF同調回路25を経てアンテナ型放電用電極24にRF電力を供給する。すると図4に示すような電極24から基板22に進むにつれ均一な分布となる電界分布の電波が発生する。すなわち電極24近傍においては電界は、電極素子の中心から同心円方向に放射される凹凸の分布であるが、20mm、40mmと基板22に向け遠ざかるにしたがって電界分布が平坦になる。この平坦な分布の電界により容器21内に均一なプラズマ29が生じる。このプラズマ29により反応ガスは反応して、CVDにより基板22上に均一なアモルファスシリコンの薄膜が形成される。
【0020】ここでRF遮断箱28は電極24からの電波を容器21内に送り外部に漏らさない作用をする。またRF同調回路25はRF電源27からの電力を効率よく電極24に送る作用をする。このようにして、大形基板22に薄膜が形成でき、かつ真空容器21内に電極がないため電極からの不純物の発生および膜のはがれが発生しない。また石英ガラス窓23が曇っても、電波を利用しているため影響を受けない装置がえられる。」
(1c)図1には、真空容器21は両側面に個別に2枚の石英ガラス窓23を持ち、各石英ガラス窓23には1つずつ対応する2枚のアンテナ型放電用電極24を備え、RF電源27からこのアンテナ型放電用電極24にRF電力を供給していること、及び真空容器21の上部には、ガス導入口を備えることが示されている。

(2)周知文献(特開平5-152216号公報)の摘記事項
(2a)「【0023】図2は、マイクロ波導入窓5を構成する誘電体円盤状部材の厚さに対するマイクロ波の反射率の変化の様子を示したもので、誘電体媒質を持つ導波管内のマイクロ波波長をλgとすると、マイクロ波の反射率が最小となるマイクロ波導入窓5の厚さtは、t=λg/2で与えられる。
【0024】そして、実用上の許容範囲として、反射率を5%以内に抑える場合、マイクロ波の周波数が2.45GHzとすると、マイクロ波導入窓5の材質が石英の場合にはt=33±1mmであり、アルミナセラミックスを選んだ場合には、t=21±1mmとすればよいことが判る。
【0025】上記の厚みを持つマイクロ波導入窓は、プラズマ処理に必要な真空荷重に対する強度も満たさなければならない。図3は、マイクロ波導波管直径(マイクロ波導入窓5の直径に等しい)Dと反射率が最小となる窓の厚みtの関係とともに、真空荷重について円板に加わる分布荷重モデルを考え、石英及びアルミナセラミックスについて応力に対する安全係数を10としたときのマイクロ波導入窓の直径Dと安全範囲を満たす厚みtの関係を示したものである。
【0026】この図3から明らかなように、直径Dと厚さtの関係を表す直線の上側領域が安全範囲となり、円板の材質が石英の場合にD=200mm以上、アルミナセラミックスの場合でD=100mm以上において、反射率が最小となる厚さtは一定値を取ることが判る。また、強度に関しては、厚さt=33mmの石英に対して円形マイクロ波導入窓直径D=580mm以下、厚さt=21mmのアルミナセラミックスに対して円形マイクロ波導入窓直径D=760mm以下であれば、真空荷重に対する安全範囲を満たしていることが判る。」
(2b)図3には、マイクロ波導波窓の直径Dに対する厚みtの安全限界値を示す特性図であって、マイクロ波導入窓の直径が増加するにつれその厚みも増加する傾向にあること、及び円板の材質が石英であって、マイクロ波導波管直径(マイクロ波導入窓5の直径に等しい)Dが200mmのとき、窓の厚みtが約11mm、マイクロ波導波管直径Dが580mmのとき、窓の厚みtが33mmであることが示されている。

3.当審の判断
3-1.刊行物記載の発明
上記刊行物の摘記事項(1c)によれば、真空容器21は両側面に個別に2枚の石英ガラス窓23を持ち、各石英ガラス窓23には1つずつ対応する2枚のアンテナ型放電用電極24を備え、RF電源27からこのアンテナ型放電用電極24にRF電力を供給しており、真空容器21の上部には、ガス導入口を備えていることが理解できる。
また、摘記事項(1b)の段落【0019】によれば、図4に示すような電極24から基板22に進むにつれ均一な分布となる電界分布の電波が発生し、この平坦な分布の電界により容器21内に均一なプラズマ29が生じると記載されている。
そして、刊行物に記載のアンテナ型放電用電極において、高周波電流を流すことにより高周波電磁界が発生することは明らかであり、真空容器21内には高周波電界とともに高周波磁界が作用して、反応ガスをプラズマに変えるものと認められる。
そこで、摘記事項(1a)?(1c)を総合すると、刊行物には、「基板を取り付ける真空容器を備え、基板をプラズマで処理するプラズマ処理装置であって、真空容器の両側面に個別に2枚の石英ガラス窓を設け、該真空容器の上部には、基板を処理するプラズマに変えることができる反応ガスを真空容器内へ導入するガス導入口を備え、
真空容器の外部で生じる高周波磁界を引き起こすためのRF電源を備え、該RF電源から2枚の石英ガラス窓に1つずつ対応する2枚のアンテナ型放電用電極にRF電力を供給するもので、
各アンテナ型放電用電極は対応の石英ガラス窓を介して作用する高周波磁界を発生するように配置することで、反応ガスをプラズマに変える手段と、 石英ガラス窓を介して作用する磁界がプラズマを励磁するように、真空容器の外表面上に個別に支持されて高周波磁界を反応ガスに作用させるように配置された2枚の石英ガラス窓とを有しているプラズマ処理装置。」(以下、「刊行物記載発明」という。)が記載されていることになる。

3-2.対比・判断
本願発明7と刊行物記載発明とを対比すると、刊行物記載発明の「基板」、「真空容器」、「アンテナ型放電用電極」、「石英ガラス窓」は、それぞれ本願発明7の「加工物」、「真空室」、「励磁装置」、「誘電体窓」に相当するから、両者は、「加工物を取り付ける真空室を備え、加工物をプラズマで処理する装置であって、加工物を処理するプラズマに変えることができるガスを室内へ導入する手段と、室の外部で生じる高周波磁界を引き起こすための電源を備え、該電源は、各窓に1つずつ対応する複数の励磁装置を備えており、各励磁装置は対応の窓を介して結合される高周波磁界を発生するように配置されており、ガスをプラズマに変える手段と、窓を介して結合した磁界がプラズマを励磁するように、室の外表面上に個別に支持されて高周波磁界をガスに結合させるように配置された複数の誘電体窓とを有している装置。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点:誘電体窓について、本願発明7では、室の内部と外部との間の圧力差に耐えるために、複数の窓と同じ合計面積を備えた単一窓の厚さより相当に薄くなっているのに対し、刊行物記載発明ではこの点が記載されていない点。

そこで、上記相違点について次に検討する。
上記周知文献の摘記事項(2a)の段落【0025】には、マイクロ波導入窓は、プラズマ処理に必要な真空荷重に対する強度も満たさなければならず、図3は、マイクロ波導波管直径(マイクロ波導入窓5の直径に等しい)Dと反射率が最小となる窓の厚みtの関係とともに、真空荷重について円板に加わる分布荷重モデルを考え、石英について応力に対する安全係数を10としたときのマイクロ波導入窓の直径Dと安全範囲を満たす厚みtの関係を示したと記載され、また、摘記事項(2b)によれば、図3には、マイクロ波導入窓の直径が増加するにつれその厚みも増加する傾向にあること、具体的には、マイクロ波導波管直径D:580mmのとき、窓の厚みt:33mmであること、マイクロ波導波管直径D:200mmのとき、窓の厚みt:約11mmであることが示されている。このことは、マイクロ波導入窓は、プラズマ処理室の内部と外部との間の圧力差に耐えなければならないことを考慮すると、マイクロ波導入窓の直径が小さければ、その厚みtも相当に薄くし得ることを示しているものであり、また、当該石英のマイクロ波導入窓と刊行物記載発明の石英ガラス窓とは同じ機能を有しているといえる。
そうすると、刊行物記載発明の2枚の個別に配置された石英ガラス窓の厚さは、当該2枚の合計面積と同じ面積の1枚の石英ガラス窓の厚さよりも、相当に薄くできることは、上記の周知文献に記載のとおり自明の事項にすぎないから、刊行物記載発明の石英ガラス窓を、室の内部と外部との間の圧力差に耐えるために、複数の窓と同じ合計面積を備えた単一窓の厚さより相当に薄くすることは、当業者ならば容易に想到し得ることである。
そして、本願発明7による効果も刊行物の記載、及び周知文献の記載から当業者ならば予測し得る程度のものであって、格別顕著なものとは認められない。

したがって、本願発明7は、刊行物に記載された発明、及び周知文献の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項7に係る発明は特許を受けることができないものであり、他の請求項1?6、8?15に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-22 
結審通知日 2006-10-17 
審決日 2006-10-31 
出願番号 特願平8-517708
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 淳一  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 日比野 隆治
大嶋 洋一
発明の名称 大形加工物用のプラズマ加工機  
代理人 吉田 精孝  

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