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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08G |
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管理番号 | 1155116 |
審判番号 | 不服2002-13447 |
総通号数 | 89 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-07-18 |
確定日 | 2007-04-05 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第109034号「エポキシ樹脂組成物とそれを用いた積層板用材料」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年11月22日出願公開、特開平 6-322073〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成5年5月11日の出願であって、平成13年5月17日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成13年7月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成14年6月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年7月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成18年7月20日付けで拒絶理由が通知されるとともに審尋がなされ、その指定期間内である平成18年9月25日に意見書及び手続補正書、回答書が提出されるとともに平成18年9月26日に手続補足書(参考資料1)が提出されたものである。 II.本願発明 本願の請求項1?4に係る発明は、平成13年7月27日付け手続補正書、平成18年9月25日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されたとおりのものと認められ、請求項1?4には次のとおり記載されている。 「(a)一般式〔1〕 【化1】 (式中、Rは水素原子またはメチル基を示し互いに異なっていてもよい、nは0?2の整数を示す。)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂、 (b)一般式〔2〕 【化2】 (式中、mは1?10の整数を示す。)で表される硬化剤、 (c)一般式〔3〕 【化3】 (式中、R1?R6はフェニル基、ブチル基、シクロヘキサン環を示し互いに異なっていてもよい。)で表される硬化促進剤を含み、 前記(c)の硬化促進剤は、予め前記(b)の硬化剤に加熱溶解して用いることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。 【請求項2】 (d)平均粒径0.1から30μmの無機充填剤を組成物全体に対して50?90容量%含む請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。 【請求項3】 前記一般式〔2〕で表される硬化剤は、前記一般式〔1〕で表されるエポキシ樹脂に対して0.5?1.5当量配合されている請求項請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物。 【請求項4】 前記一般式〔3〕で表される硬化促進剤は、前記一般式〔1〕で示されるエポキシ樹脂100重量部に対して1?15mmol配合されている請求項1?3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。」 III.当審の拒絶理由の概要 1.補正前の請求項1?8に係る発明は、本願出願前日本国内において頒布された刊行物である、刊行物1(特開昭60-18521号公報)、刊行物2(特開平3-207714号公報)、刊行物3(特開平4-226123号公報)、刊行物4(特開平5-17558号公報)、刊行物5(特開昭58-76421号公報)、刊行物6(特開昭61-162514号公報)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 IV.拒絶理由の妥当性について 1.拒絶理由において引用された刊行物1、2には、以下の事項が記載されている。 刊行物1について (ア)「(1)架橋剤を含むエポキシ樹脂を主成分とし、硬化促進剤として有機ホスフイン・有機ボロンコンプレツクスを含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。 (2)コンプレツクスがトリフエニルホスフイン・トリフエニルボロン、トリブチルホスフイン・トリフエニルボロン、トリシクロヘキシルホスフイン・トリフエニルボロンからなる群の中から選ばれた少なくとも1種である特許請求の範囲第1項記載のエポキシ樹脂組成物。 ・・・・・」(特許請求の範囲) (イ)「〔技術分野〕 この発明は、半導体素子等の電子部品の封止用あるいは、積層板製造用に適したエポキシ樹脂組成物に関する。」(1頁右欄1?4行) (ウ)「〔背景技術〕 半導体素子やチップ等の封止のため、架橋剤を含むエポキシ樹脂を主成分とし、硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物が用いられることがある。硬化促進剤としては、第2級アミン化合物、フツ化ホウ素等が一般的に使用されるが、このような硬化促進剤を用いたのでは、充分満足の得られる硬化特性が得られなかった。また、硬化促進剤として第3級アミン、ピペリジン、イミダゾール類を使用することも考えられているが、このような硬化促進剤を用いたのでは、樹脂組成物は高温電気特性、耐湿特性および潜在硬化性に劣つたものとなり、半導体素子等の封止用として満足のいくものとはならなかった。 〔発明の目的〕 この発明は、このような事情に鑑みなされたもので、電気特性、耐湿特性および潜在硬化性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することを目的としている。 〔発明の開示〕 前記の目的を達成するため、・・・硬化促進剤として有機ホスフイン・有機ボロンコンプレツクス(・・・)を用いればよいということを見出し、ここにこの発明を完成した。 すなわち、この発明は、架橋剤を含むエポキシ樹脂を主成分とし、硬化促進剤として有機ホスフイン・有機ボロンコンプレツクスを含むことを特徴とするエポキシ樹脂をその要旨としている。以下に、この発明を詳しく説明する。 ここで、エポキシ樹脂としては、種類は特に限定されない。たとえば、ノボラツク型エポキシ樹脂等があげられる。架橋剤(硬化剤も含むものとする)は、エポキシ樹脂の種類や反応条件等に応じて決められ、種類は特に限定されない。たとえば、ノボラツク型フエノール樹脂(フエノールノボラツク樹脂)等が使用される。」(1頁右欄5行?2頁右上欄1行) (エ)「コンプレツクスは、エポキシ樹脂に対して0.1重量%以上10重量%以下、・・・含ませるようにするのがよい。また、架橋剤(硬化剤)としてノボラツク型フエノール樹脂等を用いる場合、コンプレツクスは、架橋剤の軟化点以上で架橋剤と溶融混合したのち、エポキシ樹脂に加えるようにするのがよい。 この発明にかかるエポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤として前記のような有機ホスフイン・有機ボロンコンプレツクスが配合されているので、耐湿信頼性(耐Al腐食)、電気特性、潜在硬化性のいずれもが優れているのである。」(2頁右上欄下から6?左下欄7行) 刊行物2について (オ)「(1)エポキシ樹脂の一部又は全部として式(I): で示されるビフェニル型エポキシ樹脂を含有し、硬化剤として式(II): (式中、nは正の整数)で示されるα、α’-ジメトキシパラキシレン結合フェノール樹脂を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物。」(特許請求の範囲) (カ)「本発明は、かかる問題を解決するためになされたもので、高いガラス転移温度を有し、高温強度が高く、リードフレームや素子との接着力が大きく、低熱膨張性で発生応力が小さく、低吸湿性でハンダ浴に浸漬したときの水の膨張により発生する応力も小さく、耐ヒートショック性が高く、高温保存安定性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物をうることを目的とする。」(2頁左下欄3?10行) (キ)「本発明においては、エポキシ樹脂の一部または全部として式(I):・・・で示されるビフェニル型エポキシ樹脂が用いられる。該ビフェニル型エポキシ樹脂は、接着強度および曲げ強度が大きく、吸湿率が小さいエポキシ樹脂である。」(2頁右下欄5?下から8行) (ク)「本発明においては、硬化剤として式(II):・・・(式中、nは正の整数)で示されるα、α’-ジメトキシパラキシレン結合フェノール樹脂が用いられる。このような硬化剤を用いることにより、耐熱性が向上し、吸湿率が低下する。」(3頁左上欄16行?右上欄3行) (ケ)「硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂中のエポキシ基に対する硬化剤中のフェノール性水酸基の当量比(・・・)が0.9?1.1の範囲になるような量であるのが、耐熱性、耐湿性および耐ヒートショック性の点から好ましい。 本発明の組成物には、通常、硬化促進剤、充填剤、離型剤、表面処理剤、さらにその他の添加剤が配合される。 前記硬化促進剤としては、従来から触媒として使用されているものを特に制限なく使用することができる。その具体例としては、たとえばトリフェニルホスフィン、・・・などのリン化合物、2-メチルイミダゾール、・・・などのイミダゾール類、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、・・・などの第三アミン類、・・・の有機酸塩類などがあげられる。」(3頁右上欄10?左下欄13行) (コ)「以上説明したとおり、エポキシ樹脂の一部または全部として式(I):・・・で示されるビフェニル型エポキシ樹脂を用い、硬化剤として式(II):・・・で示されるα、α’-ジメトキシパラキシレン結合フェノール樹脂を用いることにより、ガラス転移温度が高く、高温強度が高く、吸湿率が小さく、接着力が大きく、耐ヒートショック性と高温保存時の重量減少が少ない高温保存安定性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物をうることができる。」(5頁左上欄) 2.対比・判断 請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と刊行物1に記載された発明は、共に、半導体素子等の電子部品の封止用あるいは積層板製造用に適したエポキシ樹脂組成物に関する技術分野に属するものであり、刊行物1に記載された架橋剤は硬化剤でもある。 したがって、本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、 「エポキシ樹脂と硬化剤とトリフェニルホスフィン・トリフェニルボロンからなる硬化促進剤を含む半導体素子等の電子部品の封止用あるいは積層板製造用に適したエポキシ樹脂組成物」の点で一致し、次の点で相違している。 (1)エポキシ樹脂と硬化剤について、本願発明が一般式〔1〕で表されるビフェニル型エポキシ樹脂と一般式〔2〕で表される硬化剤を用いるのに対し、刊行物1に記載された発明では格別明記していない点 (2)硬化促進剤について、本願発明が予め硬化剤に加熱溶融して用いるのに対し、刊行物1に記載された発明では格別明記していない点 この相違点(1)について検討する。 刊行物2には、ビフェニル型エポキシ樹脂は接着強度および曲げ強度が大きく、吸湿率が小さいこと、また、硬化剤としてジメトキシパラキシレン結合フェノール樹脂を採用することで耐熱性が向上し、吸湿率が低下することも記載され[摘示記載(キ)(ク)]、得られるエポキシ樹脂組成物は、ガラス転移温度が高く、高温強度が高く、吸湿率が小さく、接着力が大きく、耐ヒートショック性と高温保存時の重量減少が少ない高温保存安定性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物であることが記載されている[摘示記載(コ)]。 一方、刊行物1には、エポキシ樹脂としては種類は特に限定されないこと、架橋剤(硬化剤も含むものとする)はエポキシ樹脂の種類や反応条件等に応じて決められ、種類は特に限定されないことが記載されている[摘示記載(ウ)]。また、エポキシ樹脂組成物において、従来の硬化促進剤として、第2級アミン化合物、フツ化ホウ素等の一般的に使用されているものでは硬化特性が不十分であること、第3級アミン、ピペリジン、イミダゾール類を使用したものでは、高温電気特性、耐湿特性、潜在硬化性が劣り、半導体素子等の封止材として不満足であったことが記載され、硬化促進剤として有機ホスフィン・有機ボロンコンプレックスであるトリフェニルホスフィン・トリフェニルボロン化合物を採用することにより、耐湿信頼性(耐Al腐食)、電気特性、潜在硬化性のいずれもが優れたエポキシ樹脂組成物が得られることが記載されている[摘示記載(ウ)(エ)]。 そうすると、刊行物1に記載された半導体封止用エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂、硬化剤の種類は特に限定されないのであるから、エポキシ樹脂、硬化剤として、刊行物2に記載されているビフェニル型エポキシ樹脂とジメトキシパラキシレン結合フェノール樹脂の組合せを採用し、耐湿信頼性(耐Al腐食)、電気特性、潜在硬化性とともに接着強度、曲げ強度、低吸湿性、耐熱性等に優れたエポキシ樹脂組成物を得ようとすることは当業者であれば適宜想到し得るものである。 相違点(2)について検討する。 刊行物1に記載された硬化剤は、上記のとおりその種類は特に限定されるものではないし、ノボラック型フェノール樹脂等(「等」と記載されていることからノボラック型フェノール樹脂に限られるものではなく、ノボラック型フェノール樹脂以外のフェノール樹脂も含まれるものと解される)を硬化剤とし、これを有機ホスフィン・有機ボロンコンプレックスからなる硬化促進剤と併用する場合、当該硬化促進剤は、予め硬化剤と加熱溶融して用いることも記載されているのである[摘示記載(エ)]。 そうすると、刊行物1に記載の硬化剤として、同じくフェノール樹脂である刊行物2に記載のジメトキシパラキシレン結合フェノール樹脂硬化剤を採用する場合であっても、同様に硬化促進剤を予め硬化剤と加熱溶融して用いようとすることは当業者であれば適宜なし得ることであって、格別創意工夫を要するものではない。 そして、本願発明によって得られる効果も、格別予想外のことということはできない。 また、本願発明の効果としている、ボイドの発生が少ないとのことに関しても、刊行物1、2には明記されてはいないが、本願発明は、ボイドの発生を抑制することのみが効果として挙げられているのではなく、貯蔵安定性、成形性が優れ、低吸湿性、高接着性の硬化物を与えることを主な効果とするものである。 そうであれば、刊行物2には、高温保存安定性、低吸湿性、高接着性に関して記載がされているのであるから、これらの効果を期待し、さらに刊行物1に記載の耐湿信頼性の効果を期待して、刊行物1に記載の発明に刊行物2に記載の発明を適用してみようとすることは当業者であれば適宜想到し得ることである。そして、その際、ボイドの発生を抑制するという効果は付随的に生じるものにすぎず、当該効果が予測の範囲外であるとまではいえない。 V.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-01-31 |
結審通知日 | 2007-02-06 |
審決日 | 2007-02-20 |
出願番号 | 特願平5-109034 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C08G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小林 均 |
特許庁審判長 |
宮坂 初男 |
特許庁審判官 |
高原 慎太郎 船岡 嘉彦 |
発明の名称 | エポキシ樹脂組成物とそれを用いた積層板用材料 |
代理人 | 小川 勝男 |
代理人 | 小川 勝男 |
代理人 | ポレール特許業務法人 |
代理人 | ポレール特許業務法人 |