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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C30B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C30B |
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管理番号 | 1155119 |
審判番号 | 不服2003-11727 |
総通号数 | 89 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-06-25 |
確定日 | 2007-04-05 |
事件の表示 | 平成10年特許願第88209号「シリコン単結晶の製造方法およびシリコン単結晶」拒絶査定不服審判事件〔平成11年9月28日出願公開、特開平11-263699〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯、本願発明 本願は平成10年3月17日に特許出願され、平成14年12月20日にその明細書の手続補正書が提出されたところ、平成15年5月20日付けで出願拒絶され、平成15年6月25日に本件審判請求がなされたものである。 本願請求項1?3に係る発明は、平成14年12月20日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されるとおりのものであり、その特許請求の範囲の請求項1及び3には、以下のことが記載されている。 【請求項1】チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の育成において、該 単結晶の定径部製造後テール部位の製造に際し、テール先端から異常酸素析出部位置までの距離をaとした時、各条件における酸素析出量調査を行ってa値を確定し、テール部位の長さtをa以上とすることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 【請求項3】請求項1または請求項2に記載の製造方法により製造されたシリコン単結晶。 (以下、必要に応じて、それぞれ、「本願発明1」及び「本願発明3」という) II.前審における拒絶の理由の概要 II-1.理由A 本願請求項1?3に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-295593号公報(以下、適宜、「引用例」という)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当する。 II-1.理由B 本願請求項1?3に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-295593号公報(引用例)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 II-1.理由C 本願請求項1?3に係る発明は、本願出願日前の特許出願であって本願出願後に出願公開された特願平8-357513号(特開平10-194890号公報参照)の願書に最初に添付された明細書又は図面(先願明細書)に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者が上記先願明細書に記載された発明者と同一であるとも、また、本願の出願時にその出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 III.当審の判断 III-1.引用例(特開平8-295593号公報)の記載 (A-1)「【請求項1】実質的に一定の直径(D1)を有する直胴部(1)と前記直胴部(1)の直径(D1)を減少させることにより前記直胴部(1)に連続して形成されたボトム部(2)とを備え、 前記直胴部(1)の外面に対するこの直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の外面の傾斜角(θ)が10?25度であるシリコン単結晶インゴット。」(特許請求の範囲第1項) (A-2)「【請求項4】チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法において、 前記シリコン単結晶(22)のボトム部(2)の形成時に前記ボトム部(2)の直径(D2)の実測値に基づいて前記シリコン単結晶(22)の引上げ速度を制御することにより前記ボトム部(2)の直径(D2)が目標値となるように制御し、 前記ボトム部(2)の直径(D2)を制御する引上げ速度を、その実測値に基づいてシリコン融液の温度を制御することにより引上げ速度の目標値となるように制御することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 【請求項5】直胴部(1)の外面に対して直胴部側ボトム部(2a)の外面が10?25度の傾斜角(θ)を有しかつ連続するようにボトム部(2)の直径(D2)を制御する請求項4記載のシリコン単結晶の製造方法。」(特許請求の範囲第4及び5項) (A-3)「本発明は、シリコン単結晶インゴット及びチョクラルスキー法(以下、CZ法という)によるその製造方法に関する。更に詳しくはシリコン単結晶インゴットのボトム部の形状及びそのボトム部の直径の減少率を制御する方法に関するものである。」(第2頁左欄第48行?右欄第2行) (A-4)「具体的には、従来のCZ法では、図5に示すように、直胴部1の外面に対するボトム部2の外面の傾斜角θを約30?40度の範囲に、ボトム部2の長さLを直胴部1の直径D1の約0.9?1.1倍になるようにボトム部2を形成していた。このようにボトム部を形成したシリコン単結晶を単結晶引上げ装置から取出して次の方法によりボトム部側直胴部1aの特性を観察すると異常が観察される。・・・。図5はその断面図である。図5に示すように、インゴットの直胴部1とボトム部2との境界Aから所定長xだけ入ったボトム部側直胴部1aにおけるB部分と直胴部周囲Cとに酸素析出物3が異常に形成され易かった。この酸素析出物の形成は転位や積層欠陥(OSF:oxidation induced stacking fault)などの欠陥発生の原因となった。・・・。このため、酸素析出物が異常に形成された部分は高品質なシリコン単結晶製品にはならず、その製品としての収率を低下させていた。・・・。本発明の目的は、ボトム部側直胴部のトップ部側直胴部及びミドル部側直胴部に対する特性の変化の程度が少なく、高品質単結晶シリコンの製品収率の高いシリコン単結晶インゴットを提供することにある。本発明の別の目的は、直胴部のほぼ全長にわたって品質が均一なシリコン単結晶を製造し得る方法を提供することにある。」(第2頁右欄第31行?第3頁左欄第13行) (A-5)「請求項1に係る発明は、図1に示すように、実質的に一定の直径を有する直胴部1とこの直胴部1の直径を減少させることにより直胴部1に連続して形成されたボトム部2とを備え、直胴部1の外面に対するこの直胴部1に連続する直胴部側ボトム部2aの外面の傾斜角θが10?25度であるシリコン単結晶インゴットである。傾斜角θを10?25度にすることにより、直胴部側ボトム部の直径の減少率は僅かとなり、直胴部側ボトム部の熱履歴はボトム部側直胴部1aのそれとほぼ同じになる。この結果、ボトム部側直胴部の特性は端部側ボトム部の影響を受けにくく、トップ部側直胴部及びミドル部側直胴部の特性に近似するようになる。これにより異常な酸素析出物3は主として直胴部側ボトム部2aに形成され、ボトム部側直胴部1aには僅かに形成されるか、或いは全く形成されない。」(第3頁左欄第18?32行) (A-6)「図2に示すように、単結晶引上げ装置のチャンバ16内には、シリコン融液を保持する石英るつぼ11が設けられ、石英るつぼ11は黒鉛サセプタ12を介して回転軸13の上端に固定されている。図示しないが、チャンバ16の上方からアルゴンガスがチャンバ16内に供給されるようになっている。 〈中 略〉 引上げ用モータ45の出力軸の回転方向によって、ワイヤケーブル43が上昇又は下降するようになっている。ワイヤケーブル43の下端にはシリコン単結晶のシードを保持するシードホルダ20が取付けられる。」(第4頁左欄第40行?右欄第23行) (A-7)「<実施例1>図2に示す装置を用いて、図3及び図4に示すフローチャートに従って、シリコン単結晶インゴットを製造した。このインゴットは直胴部の直径D1が8インチ(約205mm)であって、p型で面方位が(100)であった。インゴットのボトム部を形成するに際して、その直胴部側ボトム部の直径制御をADC及びAGCにより行った。この例では直胴部側ボトム部の引上げ速度V2をボトム部側直胴部の指定長100mmにおける平均引上げ速度V1と同じ速度、即ちV2/V1=1(100%)にした。また直胴部側ボトム部の外面の直胴部の外面に対する傾斜角θが15度になるように、直胴部側ボトム部と端部側ボトム部の間に段差部を作ることによりボトム部の長さLが360mmになるようにそれぞれボトム部を形成した。ここでボトム部の長さLは直胴部の直径D1の約1.8倍であった。 <実施例2>直胴部側ボトム部の引上げ速度V2をボトム部側直胴部の指定長100mmにおける平均引上げ速度V1の95%(V2/V1=0.95)にした以外、実施例1と同様にシリコン単結晶インゴットを製造した。」(第5頁左欄第48行?右欄第17行) (A-8)「〈比較実験〉実施例1?5及び比較例1?3の各インゴットについて、インゴット中心でその引上げ方向に平行しスライスしてサンプルを作製した。これらのサンプルを乾燥酸素雰囲気中、1000℃で40時間熱処理した。熱処理したサンプルを酸素析出物に選択性のあるエッチング液でスライス面を処理した後、目視により観察した。また実施例1?5及び比較例1?3の結果を表1に示す。表1の符号xは図1及び図5の符号xにそれぞれ対応する。言い換えれば、符号xはインゴットの直胴部1とボトム部2との境界Aから異常に形成された酸素析出物のピーク位置までの距離である。符号xがマイナスの場合、図1に示すように酸素析出物はボトム部にのみ存在することを示し、符号xがプラスの場合、図5に示すように酸素析出物のピーク位置がボトム部側直胴部に存在していることを示す。」(第5頁右欄第39行?第6頁左欄第3行) (A-9)「表1から明らかなように、直胴部側ボトム部の引上げ速度V2がボトム部側直胴部の指定長100mmにおける平均引上げ速度V1と同じであって、傾斜角θが15度と比較的小さく、L/D1が比較的長い実施例1及びこの実施例1と比べてV2/V1の比率を僅かに低くした実施例2では、酸素析出物はボトム部にのみ異常に形成された。」(第6頁左欄第15?21行) (A-10)「実施例1と比べて、θを僅かに大きくした実施例3や、或いはL/D1を僅かに小さくした実施例4や、或いはV2/V1の比率を僅かに低くしθを僅かに大きくしかつL/D1を僅かに小さくした実施例5は、それぞれ酸素析出物の一部分がボトム部側直胴部に異常に形成されたが、その大部分は直胴部側ボトム部に異常に形成された。更に実施例1と比べて、V2/V1の比率をかなり低くした比較例1や、L/D1をかなり小さくした比較例2や、或いはθをかなり大きくしかつL/D1をかなり小さくした比較例3は、それぞれ酸素析出物の大部分がボトム部側直胴部に異常に形成された。」(第6頁左欄第21?32行) III-2.理由Aについて III-2-1.本願発明3 本願発明3は、その請求項3の記載からみて明らかなように、「請求項1に記載の製造方法により製造されたシリコン単結晶」をその一態様として含むものであり、この項では、当該態様に係る発明につき対比、検討することとする。 引用例には、その前記(A-1)及び(A-3)によれば、チョクラルスキー法により少なくとも直胴部とボトム部とを備えたシリコン単結晶インゴットを製造する技術が記載されており、そして、その前記(A-7)及びその図2の記載によれば、その具体例として、「直胴部の直径D1が8インチ(約205mm)であるシリコン単結晶インゴットのボトム部を形成するに際し、直胴部側ボトム部の引上げ速度V2とボトム部側直胴部の指定長100mmにおける平均引上げ速度V1との速度比V2/V1=1又は0.95となして、また、直胴部側ボトム部の外面の直胴部の外面に対する傾斜角θが15度になるように、直胴部側ボトム部と端部側ボトム部の間に段差部を作ることによりボトム部の長さLが360mmになるようにそれぞれボトム部を形成して、シリコン単結晶員インゴッドを製造した」こと(実施例1及び2)、かつ、更に(A-8)及び(A-9)の記載を併せてみれば、当該具体例における製造に係るシリコン単結晶員インゴッドは、「酸素析出物はボトム部にのみ異常に形成された」ことが記載される。 そうであれば、引用例には、 「チョクラルスキー法により製造された少なくとも直胴部とボトム部とを備えたシリコン単結晶インゴットであって、直胴部の直径D1を8インチ(約205mm)となし、直胴部側ボトム部の引上げ速度V2とボトム部側直胴部の指定長100mmにおける平均引上げ速度V1との速度比であるV2/V1=1又は0.95となし、直胴部側ボトム部の外面の直胴部の外面に対する傾斜角θを15度となし、直胴部側ボトム部と端部側ボトム部の間に段差部を作り、ボトム部の長さを360mmとなした、酸素析出物がボトム部のみに異常に形成されたシリコン単結晶インゴット」に関する発明(以下、必要に応じて、「引用発明A」という)が記載されているといえる。 そこで、本願発明3と引用発明Aとを対比する。 引用発明Aにおける「シリコン単結晶インゴット」、「直胴部」、「ボトム部」は、本願発明3の「シリコン単結晶」、「定径部」、「テール又はテール部位」に、それぞれ、相当する。 また、この種のチョクラルスキー法においては、通常、当該直胴部(ないしは定径部)を製造した後に当該ボトム部(ないしはテール部位)を製造するものであり、また、当該チョクラルスキー法においては育成によりシリコン単結晶インゴットが製造されるものであるから、引用発明Aは、本願発明3と同じように、単結晶の定径部製造後テール部位を製造するものであり、また、シリコン単結晶を育成により製造するものである。 よって、両者は、 「チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の育成において、該単結晶の定径部製造後テール部位を製造するシリコン単結晶の製造方法により製造された、シリコン単結晶」である点で一致し、以下の点で表現上相違する。 【相違点1】当該テール部位の製造につき、本願発明3では、「該単結晶の定径部製造後テール部位の製造に際し、テール先端から異常酸素析出部位置までの距離をaとした時、各条件における酸素析出量調査を行ってa値を確定し、テール部位の長さtをa以上とする」ところの製造方法を具備するのに対して、引用発明Aでは、当該特定事項が直接表現されない点で相違する。 以下、上記相違点1に係る特定事項につき検討する。 (1)引用発明Aのシリコン単結晶インゴットにおける「酸素析出物はボトム部にのみ異常に形成された」というところの「酸素析出物が異常に形成されたところの部分」は、本願発明3の「異常酸素析出部」に相当することは明白なことである〔更に必要ならば、前記(A-4)、(A-8)、図1及び5の記載を参照〕。 してみれば、引用発明Aのシリコン単結晶インゴットにおいて、「酸素析出物はボトム部にのみ異常に形成された」との事項から、「ボトム部にのみ異常酸素析出部が位置する」といえるのであるから、引用発明Aにおいても、本願発明3でいう「テール先端から異常酸素析出部位置までの距離をaとした時、テール部位の長さtをa以上とする」との事項を、実質上、具備するものである。 (2)そして、引用発明Aでは、その「酸素析出物はボトム部にのみ異常に形成された」というシリコン単結晶インゴットは、上記した引用発明Aの構成からみて明らかなとおり、直胴部の直径D1、引上げ速度比であるV2/V1、直胴部側ボトム部の外面の直胴部の外面に対する傾斜角θ、及び、ボトム部の長さにつき特定の数値を用い、かつ、直胴部側ボトム部と端部側ボトム部との間の段差部を設定することにより得られるものである〔この点、更に必要ならば、前記(A-10)における当該異常に形成された酸素析出物がボトム部以外に存在する実施例3?5及び比較例1?3に関する記載を参照〕。このように、引用発明Aにおける「酸素析出物はボトム部にのみ異常に形成された」というシリコン単結晶インゴットは、シリコン単結晶インゴットの直胴部製造後であってボトム部を形成する際における諸条件を調整することによって得られるものであって、本願発明3でいうところの「単結晶の定径部製造後テール部位の製造に際し」て、その製造条件を調整することにより製造されるものであるということができる。 そうであれば、上記した引用発明Aが実質上具備するところの「テール先端から異常酸素析出部位置までの距離をaとした時、テール部位の長さtをa以上とする」との事項は、本願発明3でいう「該単結晶の定径部製造後テール部位の製造に際し」実施されるものであり、これにより、引用発明Aは、本願発明3でいう「該単結晶の定径部製造後テール部位の製造に際し、テール先端から異常酸素析出部位置までの距離をaとした時、テール部位の長さtをa以上とする」との事項を、実質上、具備するといえる。 (3)この外、本願発明3では、「各条件における酸素析出量調査を行ってa値を確定し、」との特定事項を更に具備するものの、それは、専ら、製造方法上の特定事項を規定するに過ぎないものである。 すなわち、テール部位の製造に際し、当該異常酸素析出部位置までの距離aと当該テール部位の長さtに関する上記関係を満たせば、それが、当該酸素析出量調査を行ってa値を(予め)確定するか否かにに拘わらず、物発明に係るシリコン単結晶については、同じ構造、組成、物性等を具備し、同一の構成となることは明白なことである。 そうであれば、本願発明3における「各条件における酸素析出量調査を行ってa値を確定し、」との特定事項は、物発明における専ら製造方法上の特定事項を規定したに過ぎず、本願発明3が当該特定事項を具備することが両者の実質上の相違点とはなり得ない。 (4)以上のとおり、本願発明3と引用発明Aとは、実質上、同一であるといえる。 (5)したがって、本願発明3は、本願出願前に頒布された刊行物である引用例1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当する。 III-3.理由Bについて III-3-1.本願発明1 引用例には、シリコン単結晶の製造方法に関し、その前記(A-2)によれば、「シリコン単結晶(22)のボトム部(2)の形成時に、前記ボトム部(2)の直径(D2)が目標値となるように制御し、前記ボトム部(2)の直径(D2)を制御する引上げ速度を引上げ速度の目標値となるように制御する、チョクラルスキー法によるシリコン単結晶(22)の製造方法において、シリコン単結晶(22)の直胴部(1)の外面に対して、直胴部側ボトム部(2a)の外面が10?25度の傾斜角(θ)を有しかつ連続するようにボトム部(2)の直径(D2)を制御する、シリコン単結晶(22)の製造方法」に関する発明(以下、必要に応じて、「引用発明B」という)が記載されているということができる。 そこで、本願発明1と引用発明Bとを対比する。 引用発明Bにおける「シリコン単結晶(22)」、「直胴部(1)」及び「ボトム部(2)」は、本願発明1の「シリコン単結晶」、「定径部」及び「テール又はテール部位」に、それぞれ相当する。 そして、引用発明Bにおいては、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶(22)を製造しているのであるから、そこではシリコン単結晶が育成されていることは明白であり、また、通常、シリコン単結晶(22)の直胴部(1)製造後にボトム部(2)が製造されるものである。 よって、両者は、 「チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の育成において、該単結晶の定径部製造後テール部位を製造する、シリコン単結晶の製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。 【相違点a】当該テール部位の製造につき、本願発明1では、「該単結晶の定径部製造後テール部位の製造に際し、テール先端から異常酸素析出部位置までの距離をaとした時、各条件における酸素析出量調査を行ってa値を確定し、テール部位の長さtをa以上とする」との特定事項を具備するのに対して、引用発明Bでは、当該特定事項を全て具備しない点で相違する。 以下、上記相違点aに係る特定事項が容易に想到できるか否かにつき検討する。 引用発明Bは、引用例1の前記(A-4)によれば、「従来のチョクラルスキー法では、シリコン単結晶のボトム部側直胴部に酸素析出物が異常に形成され易いところ、これを解消し、シリコン単結晶の直胴部のほぼ全長にわたって品質が均一なシリコン単結晶を製造する」ことを発明の目的とするものであるところ、同前記(A-5)によれば、「直胴部の外面に対し、直胴部側ボトム部の外面の傾斜角θを10?25度にすることにより、異常な酸素析出物は直胴部側ボトム部に形成され、ボトム部側直胴部には全く形成されない」場合がある旨教示される。 そうであれば、引用発明Bにおいて、そのボトム部(2)の製造に際し、酸素析出物が直胴部(1)に存在せず、シリコン単結晶(22)の直胴部(1)のほぼ全長にわたって品質が均一なシリコン単結晶(22)を製造することを意図して、当該傾斜角θを10?25度となして、異常な酸素析出物は直胴部側ボトム部(2a)に形成し、直胴部(1)には全く形成されないようにすることは当業者であれば直ちに着想し得るものである。この場合、当該傾斜角の数値θを設定することはそのボトム部(2)断面の形状からみて明らかなとおりボトム部(2)の長さの数値を設定することに外ならない。 そして、引用発明Bにおいて、ボトム部(2)の製造に際して、異常な酸素析出物は直胴部側ボトム部(2a)に形成して直胴部(1)には全く形成されないようにシリコン単結晶(22)を製造する場合においては、そのために、予め、各製造条件における酸素析出量調査を行ってボトム部(2)の先端から異常な酸素析出物が存在する位置までの距離を測定し、その距離に見合うところの当該傾斜角θを設定して、すなわち、ボトム部(2)の長さを当該距離以上となして、異常な酸素析出物は直胴部側ボトム部(2a)に形成して直胴部(1)には全く形成されないシリコン単結晶(22)を製造することは当業者であれば、普通になし得るところに過ぎない。 この場合、「ボトム部(2)の製造に際して、予め、各製造条件における酸素析出量調査を行ってボトム部(2)の先端から異常な酸素析出物が存在する位置までの距離を測定し、ボトム部(2)の長さを当該距離以上となして、異常な酸素析出物は直胴部側ボトム部(2a)に形成して直胴部(1)には全く形成されないシリコン単結晶(22)を製造する」ことにより、本願発明1でいう「該単結晶の定径部製造後テール部位の製造に際し、テール先端から異常酸素析出部位置までの距離をaとした時、各条件における酸素析出量調査を行ってa値を確定し、テール部位の長さtをa以上とする」との特定事項を自ずと具備するに至るものである。 また、引用発明Bにおいて、当該相違点aに係る特定事項を具備することにより格別顕著な効果を奏したものであるということはできない。 したがって、本願発明1は、本願出願前に頒布された刊行物である引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 IV.むすび 本願請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、また、本願請求項3に係る発明は特許法第29条第1項第3号の規定に該当する。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-01-31 |
結審通知日 | 2007-02-06 |
審決日 | 2007-02-19 |
出願番号 | 特願平10-88209 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C30B)
P 1 8・ 113- Z (C30B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 三崎 仁、横山 敏志 |
特許庁審判長 |
多喜 鉄雄 |
特許庁審判官 |
増田 亮子 斉藤 信人 |
発明の名称 | シリコン単結晶の製造方法およびシリコン単結晶 |
代理人 | 好宮 幹夫 |