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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D06F
管理番号 1155142
審判番号 不服2004-9125  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-30 
確定日 2007-04-05 
事件の表示 平成10年特許願第 9421号「洗濯機」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 8月 3日出願公開、特開平11-207085号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年1月21日の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年1月19日付けの手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「洗濯物が投入される洗濯槽と、
この洗濯槽内に通じる空気貯溜部と、
この空気貯溜部にエアチューブを介して接続され、空気貯溜部の内圧を検出することに基づいて前記洗濯槽の水位に応じた電気信号を出力すると共にコイルがセンサケースに直接的に巻装された圧力センサと、
この圧力センサが搭載され、圧力センサからの出力信号に基づいて洗濯動作を制御する制御回路基板とを備え、
前記制御回路基板は基板ケース内に収納され、
前記基板ケース内には、前記圧力センサおよび前記制御回路基板を覆う樹脂が充填されていることを特徴とする洗濯機。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平07-68083号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 負荷を入力信号に基づいて制御する制御回路が搭載されたプリント配線基板を備え、該プリント配線基板上に形成された導電パターンの一部により一方の電極を構成し、該一方の電極と対向して他方の電極を配設するとともに、水槽内の水位変化に伴う水圧変化に応動して前記他方の電極を前記一方の電極との相対距離を変化させる方向に変位させる可動体を設け、さらに前記制御回路において前記両電極間距離の変化に伴う両電極間の静電容量の変化に基づき前記水槽内の水位を検知するように構成したことを特徴とする洗濯機の水位検知装置。」(【特許請求の範囲】)
(イ)「【従来の技術】従来より、この種の水位検知装置は、例えば図14に示すように、洗濯機本体(図示せず)に内装された水槽51の下部にエアトラップ52を設け、このエアトラップ52に導圧ホース53を介して水圧検知部54を連結し、さらに該水圧検知部54の出力端をリード線55を介して洗濯機に設けられた制御回路56に電気的に接続してなり、水槽51内の水位変化に伴うエアトラップ52内の空気圧変化を水圧検知部54で電気的に変換し、制御回路56でその圧力変化の検出データに基づき水槽51内の水位変化を検出するように構成されている。
図15は水圧検知部54の一例を示している。この図に示すように、従来の水圧検知部54では、導圧ホース53を介してエアトラップ52と連通するケース57とケースカバー58との間にゴム製のダイアフラム59を挟着し、該ダイヤフラム59上に可動部材60を装着するとともに、該可動部材60をスプリング61によって付勢し、さらに可動部材60にフェライトコア等からなる磁性体62を取り付ける一方、ケースカバー58の内周面にコイル63を固着し、該コイル63から制御回路56に接続されるリード線55を引き出している。」(段落【0002】及び【0003】)
(ウ)「本発明は、上記のような従来の問題点を解決するためになされたもので、水圧検知部を制御回路の内部に一体的に構成した構造とすることにより、大幅なコストダウン、外部ノイズ耐力の向上及び、初期調整の簡略化を図流ことが可能で、しかも優れた水位検知精度を実現し得る新規な洗濯機の水位検知装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明では、洗濯機のモータや給、排水等を行う弁等の負荷を、操作部に設けたスイッチまたは洗濯機の所要個所に設けられたセンサからの入力信号に基づいて制御する制御回路が搭載されているプリント配線基板を利用しており、このプリント配線基板上に形成された導電パターンの一部により一方の電極を構成している。
また、水槽内の水位変化に伴う水圧変化に応動する可動体を設け、この可動体により前記一方の電極と対向して配設される他方の電極を一方の電極との相対距離を変化させる方向に変位させるように構成し、さらに前記制御回路において前記両電極間距離の変化に伴う両電極間の静電容量の変化に基づき前記水槽内の水位を検知するように構成している。」(段落【0011】?【0013】)
(エ)「【実施例】以下、本発明に係る洗濯機の水位検知装置の実施例を図面を参照しながら説明する。図1は一般的な洗濯機における制御装置の概略構成を示している。この図において、1は制御回路、2は操作部に設けられた各種スイッチ、3は後述する水圧検知部、4はパルセータや脱水兼洗濯槽の駆動源であるモータ、5は排水弁、6は給水弁である。
また、制御回路1は中央制御部としてのマイクロコンピュータ7、各種スイッチ2に共通のインターフェイス8、後述する発振回路9、操作表示回路10、マイクロコンピュータ7の指令に基づき、負荷としてのモータ4、排水弁5及び給水弁6を駆動する駆動回路11、12、13とにより構成されており、各種スイッチ2及び洗濯機の所要部位に配された各種センサからの入力信号に基づき、負荷の制御を行うものである。
図2は本発明の第1実施例における水圧検知部3を示している。この図において、14は図1に示した制御回路1の構成部品を実装したプリント配線基板である。なお、図2では一例としてプリント配線基板14上に抵抗部品15が実装されている状態を示しているが、その他マイクロコンピュータ7、発振回路9、駆動回路11?13及び、トランジスタ、コンデンサ、トライアック等、回路を構成する電子部品も実装されていることは言うまでもない。
本実施例では、このプリント配線基板14は制御回路1の各部構成間を接続する導電パターンに銅箔パターン16を使用しており、且つ、この銅箔パターン16をプリント配線基板14の下面に形成するとともに、該銅箔パターン16の一部を一方の電極17として機能するように構成している。なお、該一方の電極17にソルダーレジスト処理等の表面処理が施されているものであっても、本発明を何ら特定するものではない。
一方の電極17の形成領域を含むプリント配線基板14の下面部分にはケース18が気密に取り付けられている。このケース18の内部空間は上段が広く、下段が狭い上下2段構成となっており、その段部に可動体としてのゴム製のダイヤフラム19が周端部を挟着固定され、且つ、中央部が上下変形可能な状態で装着されており、該ダイヤフラム19の上面で、一方の電極17と対向する部位に例えば銅箔からなる他方の電極20が形成されている。この他方の電極20はフレキシブルワイヤ21を介してプリント配線基板14に形成された所定の接続用パターン16aに電気的に接続されている。」(段落【0021】?【0025】)
(オ)「図3は本実施例装置Aの洗濯機内における配置構成を示している。この図に示すように、洗濯機本体(図示せず)に内装された水槽Bの下部にはエアトラップCが設けられており、本実施例装置Aはケース18に接続された導圧ホース22を介して該エアトラップCに連通連結されている。なお、図3において、Lは水槽B内の水位を示している。
このような構成においては、水槽B内の水位L、つまり水圧に対応してエアトラップC内の空気圧が変化し、該エアトラップCから与えられた圧力変化に応動してダイヤフラム19が、その中央部が上下方向に移動するように形状変化する。このとき、ダイヤフラム19より上方のケース18内空間部の空気は空気逃がし孔23から大気圧に開放され、これによって水圧側と大気圧側との差圧検知が可能になる。
この場合、ダイヤフラム19に固定された他方の電極20は水槽Bの水位Lが高くなれば図2の矢印aで示すように上方に移動して、一方の電極17との対向距離が狭くなり、両電極17、20が作る静電容量は大きくなり、逆に、水槽B内の水位Lが低くなれば他方の電極20は下方に移動し一方の電極17との対向距離が広がり、静電容量は小さくなる。このようにして水槽B内の水位変化が静電容量変化に変換されるのである。・・・(中略)・・・以上、水圧検知部3の基本構成を示したが、いずれの態様の水圧検知部3においても、ダイヤフラム19のような機械的構成を用いて他方の電極20を上下動させるようにしているため、製品化するにあたっては感度調整工程が必要となる。」(段落【0027】?【0034】)
(カ)「【発明の効果】以上説明したように本発明によるときは、制御回路が搭載されたプリント配線基板上の導電パターンの一部により一方の電極を構成し、該一方の電極と対向する他方の電極を水槽内の水位変化に伴う水圧変化に応動して一方の電極との相対距離を変化させる方向に変位させ、これによって変化する両電極間の静電容量に基づき水槽内水位を検知するようにしているので、水圧検知部の構成を制御回路と一体化することが可能となる。従来の水圧検知部と制御回路とを接続するためのリード線が不要になるなど、大幅な原価低減と外部ノイズ耐力の向上、及び調整の簡略化と水圧検知精度向上が実現できる。」(段落【0055】)

上記記載事項(ア)、(ウ)?(カ)を総合すると、引用刊行物1には、
「洗濯機本体に内装された水槽Bと、
この水槽Bの下部に設けられているエアトラップCと、
このエアトラップCに導圧ホース22を介して連通連結され、水槽B内の水位L、つまり水圧に対応してエアトラップC内の空気圧が変化し、ケース18内に該エアトラップCから与えられた圧力変化に応動して他方の電極20と一方の電極17との相対距離を変化させる方向に変位させる可動体を設け、両電極間距離の変化に伴う両電極間の静電容量の変化に基づき水槽B内の水位を検知する水圧検知部3と、
洗濯機のモータや給、排水等を行う弁等の負荷を、操作部に設けたスイッチまたは洗濯機の所要個所に設けられたセンサからの入力信号に基づいて制御する制御回路1が搭載されると共に、水圧検知部3をも形成して、水圧検知部3を制御回路1の内部に一体的に構成しているプリント配線基板14と
を備えた洗濯機。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

3.対比
そこで、本願発明(以下、「前者」という。)と引用発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、
後者の「洗濯機本体に内装された水槽B」が、その機能・構造等からみて前者の「洗濯物が投入される洗濯槽」に相当し、以下同様に、「エアトラップC」が「空気貯留部」に、「導圧ホース22」が「エアチューブ」に、「連通連結され」が「接続され」に、「エアトラップC内の空気圧」が「空気貯溜部の内圧」に、それぞれ相当している。
また、後者の「水槽Bの下部に設けられているエアトラップC」は、水槽B内の水位L、つまり水圧に対応してエアトラップC内の空気圧が変化するのであるから「エアトラップC」は水槽B内に通じていることは明らかである。
また、後者の「水槽B内の水位L、つまり水圧に対応してエアトラップC内の空気圧が変化し、ケース18内に該エアトラップCから与えられた圧力変化に応動して他方の電極20と一方の電極17との相対距離を変化させる方向に変位させる可動体を設け、両電極間距離の変化に伴う両電極間の静電容量の変化に基づき水槽B内の水位を検知する水圧検知部3」は、エアトラップC内の内圧を検出することに基づいて水槽B内の水位Lに応じた他方の電極20と一方の電極17間の静電容量に関する信号を出力している水圧検知部3であるといえ、前者の「空気貯溜部の内圧を検出することに基づいて前記洗濯槽の水位に応じた電気信号を出力すると共にコイルがセンサケースに直接的に巻装された圧力センサ」とは、「空気貯溜部の内圧を検出することに基づいて前記洗濯槽の水位に応じた電気信号を出力すると共にセンサケースを有する圧力センサ」である点で共通している。
また、後者の「水圧検知部3」は、プリント配線基板14に形成されて制御回路1の内部に一体的に構成され、制御回路1もプリント配線基板14に搭載されているのであり、後者の「水圧検知部3」は「洗濯機の所要個所に設けられたセンサ」の一つであるから、後者の「洗濯機のモータや給、排水等を行う弁等の負荷を、操作部に設けたスイッチまたは洗濯機の所要個所に設けられたセンサからの入力信号に基づいて制御する制御回路1が搭載されると共に、水圧検知部3をも形成して、水圧検知部3を制御回路1の内部に一体的に構成しているプリント配線基板14」は前者の「圧力センサが搭載され、圧力センサからの出力信号に基づいて洗濯動作を制御する制御回路基板」に相当するといえる。

したがって、両者は、
「洗濯物が投入される洗濯槽と、
この洗濯槽内に通じる空気貯溜部と、
この空気貯溜部にエアチューブを介して接続され、空気貯溜部の内圧を検出することに基づいて前記洗濯槽の水位に応じた電気信号を出力すると共にセンサケースを有する圧力センサと、
この圧力センサが搭載され、圧力センサからの出力信号に基づいて洗濯動作を制御する制御回路基板とを備えた洗濯機。」
である点で一致しており、以下の相違点1、2で相違している。
相違点1:圧力センサに関し、前者では、コイルがセンサケースに直接的に巻装されているのに対して、後者では、そのような構成となっていない点。
相違点2:前者では、制御回路基板は基板ケース内に収納され、前記基板ケース内には、圧力センサおよび前記制御回路基板を覆う樹脂が充填されているのに対して、後者では、そのような構成となっていない点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
まず、相違点1について検討する。
洗濯槽の水位に応じた電気信号を出力する圧力センサとしてコイルを有する圧力センサを用いることは、引用刊行物1の記載事項(イ)や実願昭61-109811号(実開昭63-17456号)のマイクロフィルム、登録実用新案第3003245号公報にも記載されているように周知の事項であり、引用発明の圧力センサとしてコイルを有する圧力センサを採用することができない特段の事情も見当たらない。また、圧力センサにおいてコイルを圧力センサの構成要素に巻装して形成することは常套手段にすぎず(必要であれば、特開平9-318472号公報、特開平6-317489号公報等参照)、コイルを圧力センサを構成する構成要素であるセンサケースに巻装することも単なる設計的事項にすぎないから、引用発明の圧力センサとしてコイルを有する圧力センサを採用し、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

次に、相違点2について検討する。
基板ケース内に回路基板等を収納し、樹脂を充填して回路基板等の防水性等を必要する部材を樹脂で覆うことは、特開平9-173687号公報、特開平9-321446号公報にも記載されているように周知の事項であり、引用発明の制御回路基板やそこに搭載される圧力センサ等に適用して、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

また、本願発明の効果も、引用発明、周知の事項及び常套手段に基づいて当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明、周知の事項及び常套手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-31 
結審通知日 2007-02-06 
審決日 2007-02-19 
出願番号 特願平10-9421
審決分類 P 1 8・ 121- Z (D06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金丸 治之  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 稲村 正義
平上 悦司
発明の名称 洗濯機  
代理人 佐藤 強  
代理人 佐藤 強  

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