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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B21B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B21B
管理番号 1155177
審判番号 不服2005-4727  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-17 
確定日 2007-04-05 
事件の表示 特願2000-394092「鍛造・圧延ラインにより大ひずみを導入する金属加工方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月10日出願公開、特開2002-192201〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成12年12月26日の出願であって、平成16年10月28日付で拒絶の理由が通知され、平成17年1月6日に意見書及び手続補正書が提出された。その後、平成17年2月4日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年3月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年3月22日付で手続補正がなされたものである。

II.平成17年3月22日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年3月22日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲を、本件手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1?3のとおりにすることを含む補正であるところ、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は次のとおりに補正された。
「【請求項1】 加工硬化能を有する金属材料を、鍛造及び圧延ラインを組合せた複数の加工段の各工程において、加工硬化能を有する金属材料の加工方向を、前段の圧縮方向と後段の圧縮方向とで異なる方向とすることによって、金属材料に1.415以上の大ひずみを導入することを特徴とする金属加工方法。」

上記補正は、補正前の請求項1において、「金属材料に1.4以上の大ひずみを導入する」を「金属材料に1.415以上の大ひずみを導入する」と補正するものである。
そこで、上記補正を検討すると、金属材料に導入するひずみの量を1.4以上から1.415以上と、より多くのひずみを加えると具体的に限定したものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そして、上記補正については、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内である。

次に、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかについて以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用した本願の出願前に頒布された特開平10-216884号公報(以下、「刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)「【特許請求の範囲】・・・
【請求項2】金属被成形体の長さ方向に直角で、かつ互いに直角な2方向を工具により交互に圧縮し、繰り返しひずみを加える際に、各圧縮パス前の被成形体の縦横比を4.0以下とし、さらに1圧縮パス当たりの圧縮率を50%以下とする圧縮加工を行った後、この金属被成形体に圧延により加工を行うことを特徴とする金属材料の成形加工法。」
(2)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、微細なミクロ組織を有する金属材料を製造するために、熱間あるいは冷間で非常に大きな加工を材料に加える方法に関する。」
(3)「【0002】【従来の技術】通常、金属材料は原料を溶解精錬しこれを鋳造し、さらに加工成形することにより最終製品形状にする。これには、大別して2種類あり、熱間加工後冷却して製品とする熱間製品と、これをさらに冷間で加工成形した冷間製品である。なお、鋳造後加工する際、鋳造材の温度があまり下がらない内に熱間加工する場合と、鋳造材を冷却した後再加熱して加工する場合がある。
【0003】これらのいずれの方法においても、鋳造材に加えられる加工量は製品の材質に大きく影響することが知られている。加工量は、特に、結晶粒などのミクロ組織を微細にする上で有効であり、鉄鋼材料、アルミニウム材料など多くの金属材料でこの方法が使用されている。これは、結晶粒が微細であるほど優れた機械的性質が得られるからである。
【0004】・・・また、冷間製品では冷間における加工量が大きいほどその後に続く焼鈍工程における再結晶粒の大きさを小さくできる。以上のように、大ひずみを加える手段は各種金属材料で利用されているが、通常の手段ではその加工量に限界があった。・・・」
(4)「【0011】【課題を解決するための手段】そこで、このひずみの限界を越えることのできる加工法について種々検討した結果、金属被成形体の長さ方向に直角で、かつ互いに直角な2方向を工具により交互に圧縮し、繰り返しひずみを加える際に、各パス圧縮前の金属被成形体の縦横比を4.0以下とし、さらに1パス当たり圧縮率を50%以下にする金属被成形体の繰り返し圧縮方法が有効であることを明らかにした。このように金属被成形体の長さ方向に対して直角であり、かつ互いに直角な2方向を圧縮鍛造する方法を横鍛造法と称することとする。また、この横鍛造加工の後、圧延加工により圧下することにより延伸させ、累積ひずみを増加させるとともに製品形状に成形加工を施すことが有効であることを明らかにした。ただし、金属被成形体の縦横比とは、被成形体の長さ方向に直角で、かつ互いに直角な2方向の寸法の比をいう。」
(5)「【0012】通常の一方向加工法のように単一のひずみ経路だと加えることのできる累積ひずみに限界があるが、本発明のように金属被成形体の異なった方向に繰り返し交互に圧縮加工を加える方法では、ひずみ経路を逆戻りあるいは変更するので非常に大きなひずみを累積させることができる。・・・」
(6)【0018】【実施例】
〈実施例1〉成分がCu:99.92%,O:0.03%のタフピッチ銅の原板(100mmW ,100mmT ,500mmL )を使用し、通常の加工手段である圧延とその圧延工程の前に本願で提案する横鍛造を施す方法により中厚板(厚さ10mm)を作製した。
【0019】両者の場合の圧下スケジュールとひずみを以下に示す。
・・・
(2)横鍛造+圧延法
横鍛造:100mmW 方向をW方向、100mmT 方向をT方向として、W方向圧縮(100mm→80mm)→T方向圧縮(125mm→80mm)→WあるいはT方向圧縮(125mm→80mm)→・・・・・・+最終パス(125mm→100mm)と圧縮を20回繰り返した。
【0020】これによるひずみは、
0.26×2+0.52×18=9.88
となる。なお、この計算で長さは不変と仮定している。
圧延加工:繰り返し横鍛造により得られた被成形体の形状は、上記(1)の圧延法の原板形状と同じなので、これを(1)の圧延法と同じパスで冷間圧延した。この場合最終の板厚を同じにするので冷間圧延による加工量はやはり、2.66となる。
【0021】全加工量:この方法によるひずみのトータルは、9.88+2.66=12.54となる。
原板の結晶粒径は30μmであった。・・・(2)の方法により得られた結晶粒は非常に微細であり1μm以下であった。得られた強度(引張り強さ)は、原板の200MPa に対して、・・・(2)の場合が440MPa であった。(2)の場合に得られた強度は鉄鋼に匹敵する値であり、銅を建築用として用いることができることを示している。これは、繰り返し横鍛造により加工ひずみが大幅に累積されたことにより結晶粒が非常に微細になったためである。」
(7)「【0029】【発明の効果】本方式によれば、通常の圧延や鍛造などの加工方法で得られる加工ひずみを大きくうわまわる加工ひずみが達成できるので、結晶粒径が1μm以下の超微細粒を得ることができる。」

3.当審の判断
3-1.刊行物記載の発明
刊行物には、摘記事項(1)によれば、金属被成形体の長さ方向に直角で、かつ互いに直角な2方向を工具により交互に圧縮し、繰り返しひずみを加え、圧延を行うことが記載されており、摘記事項(4)によれば、金属被成形体の長さ方向に対して直角であり、かつ互いに直角な2方向を圧縮鍛造する方法を横鍛造法と称することが記載され、摘記事項(6)によれば、実施例として、タフピッチ銅の原板を金属被成形体とし、該原板に前段後段で方向を変えながら20回圧縮を行う横鍛造の後、冷間圧延を行うこと、及びこれにより、12.54のひずみが導入されることが記載されている。
そこで、上記摘記事項(1)?(7)を総合すると、刊行物には、「タフピッチ銅の原板に、長さ方向に直角で、かつ互いに直角な2方向を工具により交互に圧縮する20回の鍛造を行った後、さらに冷間圧延を行い、12.54のひずみを導入する成形加工法。」(以下、「刊行物記載発明」という。)が記載されていると言える。

3-2.対比判断
本願補正発明1と刊行物記載発明とを対比すると、刊行物記載発明における「タフピッチ銅の原板」、「長さ方向に直角で、かつ互いに直角な2方向を工具により交互に圧縮する20回の鍛造」、「12.54のひずみ」は本願補正発明1の「金属材料」、「金属材料の加工方向を、前段の圧縮方向と後段の圧縮方向とで異なる方向とすること」、「1.415以上の大ひずみ」にそれぞれ相当し、刊行物記載発明においては、鍛造を行った後に冷間圧延を行うことから、鍛造および圧延ラインを組み合わせた複数の加工段が存在し、金属材料である銅を加工していることから、「成型加工法」は本願補正発明1の「金属加工方法」に相当する。
以上のことから、本願補正発明1と刊行物記載発明は、「金属材料を、鍛造及び圧延ラインを組合わせた複数の加工段の各工程において、金属材料の加工方向を、前段の圧縮方向と後段の圧縮方向とで異なる方向とすることによって、金属材料に12.54の大ひずみを導入する金属加工方法。」の点で一致するものの、次の点で相違する。

相違点:本願補正発明1では、「加工硬化能を有する金属材料」を鍛造、圧延の金属加工を行うのに対し、刊行物記載発明では、金属材料の加工硬化能の有無について記載されていない点。

そこで、上記相違点について次に検討する。
加工硬化は、ひずみが蓄積することにより金属材料が硬化することであり、そして、摘記事項(6)にある、「繰り返し横鍛造により加工ひずみが大幅に累積された」とは、ひずみが解放されず、累積(蓄積)しているものであるから、加工硬化しているものと認められる。したがって、刊行物記載発明における鍛造は、金属材料が加工硬化能を有する状態で行われているものである。
さらに、刊行物記載発明においては、圧延として冷間圧延が行われているが、冷間で行われる圧延は、金属材料が加工硬化能を有している状態で行われていることに外ならない。
してみると、刊行物記載発明においては、金属材料に鍛造、圧延を行う際、金属材料が加工硬化能を有した状態で行っているものであるから、上記相違点は実質的な相違点とは認められない。

従って、本願補正発明1は、刊行物1に記載された発明と同一であるから、特許法29条第1項第3号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、審判請求書において、「(ロ)について、・・・・(A)本願発明の鍛造工程は実施例2の図4(a)で示しておりますように、材料の広い範囲に大ひずみを拡大するためにひずみの分布を利用するものであるのに対して、引用文献1の発明では「・・金属被成形体の形状比があまり大きくなると各パスの長手方向の不均一な圧縮率分布(ひずみ分布)が生じるので好ましくない」(【0014】)と記載されておりますように、ひずみを均一に設けることを意図しており、本願発明とでは技術思想が全く異なっております。・・・」(2頁6?16行)と主張するが、出願当初の明細書には、図4の説明として、「【0051】図4から、圧延工程の前段に鍛造工程を導入したことにより、材料内部に導入された塑性ひずみが圧延工程のみの場合にくらべ、大きくなっていることが判る」、「【図面の簡単な説明】・・・・【図4】直方体材料を条件を変えて加工した場合の塑性ひずみの分布を示す図であり、(a)は、試料5に対する条件で試料に導入された塑性ひずみの分布を、(b)は、比較例3に対する条件で試料に導入された塑性ひずみの分布を、それぞれ示している。」と記載されているだけであって、請求人の「材料の広い範囲に大ひずみを拡大するためにひずみの分布を利用するものである」との主張は、特許請求の範囲の記載事項に基づかないばかりでなく、明細書の記載にも基づいておらず、また、自明な事項とも認められないから、採用することはできない。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
平成17年3月22日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成17年1月6日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】 加工硬化能を有する金属材料を、鍛造及び圧延ラインを組合せた複数の加工段の各工程において、加工硬化能を有する金属材料の加工方向を、前段の圧縮方向と後段の圧縮方向とで異なる方向とすることによって、金属材料に1.4以上の大ひずみを導入することを特徴とする金属加工方法。」

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶理由に引用した刊行物及びその記載事項は、上記「II.2.引用刊行物とその記載事項」欄に記載されたとおりである。

3.対比・判断
本願発明1は、大ひずみの数値限定において、本願補正発明1の「1.415以上の大ひずみ」が、「1.4以上の大ひずみ」と数値範囲が拡大されているものである。
そうすると、本願発明1を特定するために必要と認める事項を全て含み、さらに大ひずみの数値範囲がさらに限定されたものに相当する本願補正発明1が、前記「II.3.当審の判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明であるから、本願発明1についても、同様の理由により、刊行物に記載された発明である。

4.むすび
以上の通り、本願の請求項1に係る発明は、刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶するべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-02 
結審通知日 2007-02-06 
審決日 2007-02-20 
出願番号 特願2000-394092(P2000-394092)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (B21B)
P 1 8・ 575- Z (B21B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 國方 康伸  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 前田 仁志
市川 裕司
発明の名称 鍛造・圧延ラインにより大ひずみを導入する金属加工方法  

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