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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1155203
審判番号 不服2002-24362  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-19 
確定日 2007-04-02 
事件の表示 平成11年特許願第236637号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月13日出願公開、特開2001- 62059〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成11年8月24日の出願であって、平成13年9月7日付の拒絶理由が通知され、平成13年11月20日付で意見および手続補正がなされ、平成14年6月11日付の拒絶理由が通知され、平成14年8月29日付で意見及び手続補正がなされ、平成14年10月22日付の拒絶査定がなされると同時に補正却下の決定がなされ、平成14年12月19日に審判請求されるとともに平成15年1月16日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年1月16日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年1月16日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の目的
平成15年1月16日付の手続補正は、平成13年11月20日付の手続補正の特許請求の範囲の請求項1?3を減縮するもので、平成13年11月20日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3の内容を下位概念化し、発明を特定するための事項の限定に相当するものであるから、平成15年改正前特許法第17条の2第4項第2号の規定に適合している。
そこで、平成15年1月16日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項に適合するか)について以下に検討する。

(2)補正後の本願発明
平成15年1月16日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に係る発明は、その請求項1?2に記載されたとおりのものであると認められ、その請求項1に係る発明は、その請求項1において特定される下記のとおりのものである。

「【請求項1】遊技領域に設けられて変動図柄を表示する特別図柄表示装置を備え、前記変動図柄が変動後所定の態様で停止すると遊技者に有利な大入賞口が開閉する大当たりが発生するパチンコ機において、
複数のリーチパターンの画像データを記憶するリーチパターン記憶手段と、
前記大当たりを発生させるか否かを決定し、該大当たりを発生させると決定した場合には、前記リーチパターン記憶手段から一のリーチパターンの画像データを所定の第1選択確率に基づいて選択して前記特別図柄表示装置を介して表示するように制御する表示制御手段と、
遊技者に前記大当たりの発生する確率が通常確率よりも高い確率で発生する特典遊技状態を所定確率で発生させるように制御する特典発生制御手段と、
前記特典遊技状態の場合には、前記所定の第1選択確率を異なる所定の第2選択確率に変更する選択確率変更手段とを備え、
前記複数のリーチパターンの画像データは、前記変動図柄がリーチ状態になった後、確実に所定の態様で停止するスペシャルリーチの画像データを含み、前記所定の第2選択確率は、少なくとも前記スペシャルリーチの画像データの選択確率が前記所定の第1選択確率の場合における選択確率よりも高くなるように設定されていることを特徴とするパチンコ機。」(以下、「本願補正発明」という。)

1)引用例について
a)引用例1とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-127889号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の技術事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1
「【発明の属する技術分野】本発明は、複数の可変表示部で識別情報を可変表示すると共に、その表示結果が予め定めた特定表示結果となったときに遊技者にとって有利な特定遊技状態を発生し得る可変表示装置を備えた弾球遊技機に関するものである。」(段落【0001】)

・記載事項2
「【発明が解決しようとする課題】 ・・・本発明は、上記した事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、確変等の特別遊技状態中では、信頼度が高いリーチ変動態様とそれ以外のリーチ変動態様との信頼度の比率差を通常時に比べて大きく設定することで、特別遊技状態で各種リーチ変動態様に対する大当りの期待感に変化を持たせて、遊技の興趣向上を可能にする弾球遊技機を提供することにある。」(段落【0003】:公報第2頁右欄第32行?39行)

・記載事項3
「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明の請求項1が採用した解決手段は、複数の可変表示部で識別情報を可変表示すると共に、その表示結果が予め定めた特定表示結果となったときに遊技者にとって有利な特定遊技状態を発生し得る可変表示装置を備えた弾球遊技機において、特定条件が成立した場合、複数種類のリーチ変動態様の中からいずれかの変動態様を選択するリーチ変動態様選択手段と、該リーチ変動態様選択手段で選択した変動態様に基づいて前記可変表示部の変動を制御するリーチ変動制御手段と、所定条件の成立によって前記特定遊技状態とは異なり且つ遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生する特別遊技発生手段と、を備え、前記複数種類のリーチ変動態様に対して前記特定表示結果となる信頼度を異なって設定すると共に、前記特別遊技状態中では、通常時に信頼度が高いリーチ変動態様とそれ以外のリーチ変動態様との信頼度の比率差を通常時に比べて大きく設定したことを特徴とする。このように構成することにより、確変等の特別遊技状態中には、各種リーチ変動態様に対する大当りの期待感に変化を持たせることができ、ひいては遊技の興趣向上が可能になる。また、特別遊技状態になるとスーパーリーチ(信頼度が高いリーチ変動態様)の大当り信頼度を大幅に向上する構成となるため、スーパーリーチに対する期待感を強烈にアピールすることができる。」(段落【0004】)

・記載事項4
「なお、図1に示す特別可変表示装置40により、複数の可変表示部(特別図柄表示部43?45)で識別情報(特別図柄)を可変表示すると共に、その表示結果が予め定めた特定表示結果(大当り図柄)となったときに遊技者にとって有利な特定遊技状態を発生し得る本発明の可変表示装置の一例を構成している。」(段落【0006】)

・記載事項5
「また、図6(A)に示す各ランダム1?3により、前記可変表示部で前記表示結果を導出する以前に該表示結果を決定する本発明の表示結果決定手段の一例を構成している。」(段落【0007】)

・記載事項6
「また、図6(A)に示すランダム6により、特定条件が成立した場合(大当り又はハズレで左右の図柄が揃う場合)、複数種類のリーチ変動態様(リーチ1?3)の中からいずれかの変動態様を選択する本発明のリーチ変動態様選択手段の一例を構成している。」(段落【0008】)

・記載事項7
「また、図17(A)に示す確変制御により、所定条件の成立(確変図柄での大当り)によって前記特定遊技状態とは異なり且つ遊技者にとって有利な特別遊技状態(確率変動)を発生する本発明の特別遊技発生手段の一例を構成している。」(段落【0010】)

・記載事項8
「また、図11(A)(B)に示す通常時及び高確率時のリーチ選択テーブルにより、前記複数種類のリーチ変動態様(リーチ1?3)に対して前記特定表示結果となる信頼度を異なって設定すると共に、前記特別遊技状態中では、通常時に信頼度が高いリーチ変動態様(リーチ3)とそれ以外のリーチ変動態様(リーチ1・2)との信頼度の比率差を通常時に比べて大きく設定した構成を例示している。」(段落【0011】)

・記載事項9
「また、図11(A)(B)に示す通常時及び高確率時のリーチ選択テーブルにより、前記複数種類のリーチ変動態様(リーチ1?3)に対して前記特定表示結果となる信頼度を異なって設定すると共に、前記特別遊技状態中では、通常時に前記表示結果分類手段が最も近い関係(±1図柄ズレのハズレ)に分類する場合での出現率が最も高いリーチ変動態様(リーチ3)とそれ以外のリーチ変動態様(リーチ1・2)との信頼度の比率差を通常時に比べて大きく設定した構成を例示している。」(段落【0013】)

・記載事項10
「【発明の実施の形態】・・・図1を参照して実施形態に係る弾球遊技機(図示ではパチンコ遊技機)の遊技盤1の構成について説明する。・・・該誘導レール2で区画された領域が遊技領域3を構成している。遊技領域3のほぼ中央には、後述する各特別図柄表示部43?45での識別情報(以下、特別図柄という)の可変表示(以下、変動ともいう)を可能にする特別可変表示装置40が配置されている。・・・」(段落【0014】:公報第4頁左欄第5行?14行)

・記載事項11
「・・・なお、普通図柄表示器11は、普通図柄が当り図柄となったときに、普通可変入賞球装置4の可動翼片6a・6bを所定時間が経過するまで開放制御するものであるが、後述する確率変動(大当り判定確率を通常時と異なる確率に変更した遊技状態)が生じたときには、開放時間が長くなるように設定されている。・・・」(段落【0016】:公報第4頁左欄第37行?43行)

・記載事項12
「・・・左・右・中の順で特別図柄が確定され、その確定された図柄の組み合せが大当り図柄(特定表示結果)となったときに特定遊技状態となる。・・・」
(段落【0018】:公報第4頁右欄第32行?35行)

・記載事項13
「・・・大当り図柄の組合せは、図3に示すように、左・中・右の図柄が同一図柄にて揃った組合せであり、この組合せは、ランダム3(0?14)の値に基づいて決定される。また、大当り図柄のうち「1・3・5・7・9」のいずれかで揃った図柄は、確変図柄を構成して確率変動(これを確変ともいう)を発生するようになっている。」(段落【0022】:公報第5頁右欄第10行?16行)

・記載事項14
「そして、図6(B)に示すように、ランダム1から抽出された値が「3」のときは、大当りと判定してランダム3により大当り図柄及び配列を決定し特別可変表示装置40の各特別図柄表示部43?45に表示する。一方、ランダム1から抽出された値が「3」以外のときは、外れと判定してランダム2での抽出値に基づく図柄を外れ図柄として特別可変表示装置40の各特別図柄表示部43?45に表示する。・・・」(段落【0026】:公報第6頁左欄第27行?34行)

・記載事項15
「・・・先ず、図7において、・・・格納したランダム1の値を読み出して当り外れを判定し、それと同時にランダム2の値を抽出する。なお、このとき、ランダム1の値から当りを判定した場合には、格納したランダム3の読み出しを行う。また、ランダム1・2の抽出に伴いリーチになる場合には、始動信号の導出から0.134?0.150秒後にランダム6の値を抽出するものである。その後、・・・左図柄列に対しては、・・・変動させた後、図柄を停止表示させる。右図柄列に対しては、・・・変動させた後、図柄を停止表示させる。・・・」(段落【0027】:公報第6頁左欄第50行、同頁右欄第6行?12行、18行、20行?21行、23行?24行)

・記載事項16
「次に、リーチ変動について説明する。なお、リーチ変動の種類は、上記した左・右の各停止図柄によってリーチ図柄が構成された後の中図柄列のみのリーチ変動(リーチ1・2)と、左・中・右の各図柄列を同時に停止表示するリーチ変動(リーチ3)と、に大別される。先ず、左・右の各停止図柄によってリーチ図柄が構成された後の中図柄列のみのリーチ変動(リーチ1・2)について説明する。図8において、リーチ1での中図柄列に対しては、・・・変動させて図柄を停止表示させる。また、リーチ2での中図柄列に対しては、・・・変動させて図柄を停止表示させる。一方、左・中・右の各図柄列を同時に停止表示するリーチ変動(リーチ3)では、図9に示すように、各図柄を・・・変動させて全図柄を一斉に停止表示させる。・・・」(段落【0028】:公報第6頁右欄第33行?41行、44行?45行、第7頁左欄第1行?4行、6行?7行)

・記載事項17
「次に、上記した各種リーチ1?3の選択制御を図11乃至図13を参照して説明する。リーチ選択制御の処理プロセスは、図12のフローチャートに示すように、先ず、遊技状態が確率変動中のもの(特別遊技状態)であるか否かを判別する(S1)。S1で確率変動中でないと判別した場合は、次に、始動入賞に伴って導出以前に決定する表示結果が大当り図柄であるか否かを判別する(S2)。S2で表示結果を大当り図柄に決定した場合は、通常時の大当り用リーチ選択テーブルを利用してリーチ選択を行う(S3)。・・・」(段落【0029】:公報第7頁左欄第18行?27行)

・記載事項18
「また、上記したS1で確率変動中であると判別した場合は、次に、始動入賞に伴って導出以前に決定する表示結果が大当り図柄であるか否かを判別する(S8)。S8で表示結果を大当り図柄に決定した場合は、高確率時の大当り用リーチ選択テーブルを利用してリーチ選択を行う(S9)。・・・」(段落【0030】:公報第7頁左欄第39行?44行)

・記載事項19
「・・・具体的に、図11(A)に示す通常時のリーチ選択テーブルおいて、表示結果が大当りとなる場合・・・各々、リーチ1はランダム6の抽出値が「18・19」(2個の乱数)のいずれかのときに選択され、リーチ2はランダム6の抽出値が「12?17」(6個の乱数)のいずれかのときに選択され、リーチ3はランダム6の抽出値が「0?11」(12個の乱数)のいずれかのときに選択される。・・・」
(段落【0031】:公報第7頁右欄第11行?13行、14行?19行)

・記載事項20
「一方、図11(B)に示す高確率時のリーチ選択テーブルおいて、表示結果が大当りとなる場合では、リーチ1はランダム6の抽出値が「19」(1個の乱数)のときに選択され、リーチ2はランダム6の抽出値が「14?18」(5個の乱数)のいずれかのときに選択され、リーチ3はランダム6の抽出値が「0?13」(14個の乱数)のいずれかのときに選択される。・・・」(段落【0032】:公報第7頁右欄第26行?32行)

・記載事項21
「・・・このように、本実施形態では、リーチ3を大当り信頼度の高いスーパーリーチとして設定すると共に、特別遊技状態に伴う高確率時とそれ以外の通常時とで各種リーチ1?3における大当り信頼度の比率を異なって設定している。このため、特別遊技状態中には、各種リーチ1?3に対する大当りの期待感に変化を持たせることができ、ひいては遊技の興趣向上を可能にしている。また、具体的な構成として、特別遊技状態中では、スーパーリーチの大当り信頼度の比率を通常時に比べて大幅に向上しているため、スーパーリーチに対する期待感を強烈にアピールすることができる。なお、リーチ3は、信頼度が最も高いスーパーリーチであると共に、±1図柄ズレの惜しいハズレになり易いリーチとなっている。このため、特別遊技状態が発生すると、通常時では惜しくもハズレとなっていたリーチが大当りになり易くなるので遊技の射幸性が向上できる。」(段落【0034】:公報第8頁左欄第28行?43行)

・記載事項22
「・・・左・中・右の特別図柄は、それぞれ「0?9・F・X・G・P・R」順の15種類から構成されており、その大当り図柄の組合せは、左・中・右の図柄が同一図柄にて揃った組合せである。また、大当り図柄のうち「1・3・5・7・9」のいずれかで揃った図柄は、確変図柄を構成して確率変動を発生するようになっている。・・・」(段落【0051】:公報第11頁右欄第7行?13行)

b)引用例2とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-68027号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の技術事項が図面とともに記載されている。

・記載事項23
「本発明は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となる旨を事前に遊技者に報知して認識させることができながらも、その事前報知がなかったとしても遊技者の期待が完全に消えてしまう不都合が防止できる遊技機を提供することである。」(段落【0005】)

・記載事項24
「・・・このランダム1カウンタは、大当りを発生させるか否かを事前に決定するために用いられるカウンタであり、・・・カウント値が抽出順序に従って記憶される。そして、メモリ内の1番古いカウント値がこのS1により読出される。その読出されたカウント値(乱数)が、3のときにはS2以降に示す大当りを発生させるための制御がなされ、3以外のときにはS16以降に示す外れとなる制御が行なわれる。
」(段落【0019】:公報第4頁左欄第28行?43行)

・記載事項25
「S2では、・・・左図柄=中図柄=右図柄とする処理が行なわれる。ランダム2カウンタは、・・・可変表示装置4の停止図柄を決定するものである。そしてS2の処理により、・・・左図柄を決定し、その決定された左図柄と同じ図柄になるように中図柄と右図柄を揃える処理が行なわれる。その結果、可変表示装置4の可変停止時においては、左図柄と中図柄と右図柄とが同じ図柄となりぞろめの状態となり、大当り状態が発生する。次にS3に進み、ランダム3カウンタのカウント値を読出す処理が行なわれる。・・・読出されたカウント値が0のときにS4に進み、大当り予告1を行なうためのフラグがセットされる。・・・S4,S5の処理が行なわれた後にS7に進み、ランダム4カウンタのカウント値が読出される。・・・一方、ランダム4カウンタの値が1のときには、S9に進み、可変表示装置4のLCD表示装置5の表示動作制御を行ない、LCD表示装置5により大当り状態やリーチが発生することを事前に予告表示させる。このS9による表示動作の具体的内容は、S4による大当り予告1のフラグがセットされているときには、図4、図5のそれぞれの(B)に示された表示動作であり、S5によるリーチ予告のフラグがセットされている場合は、図4、図5のそれぞれの(A)に示された表示動作である。一方、ランダム4カウンタの値が2のときには、S10に進み、ラッキーナンバー表示LEDを変動制御させる処理が行なわれる。このS10による処理は、ラッキーナンバー表示LED20をLCD表示装置5の可変開始時から変動させ、大当りが発生して可変入賞球装置9の初回の開放時にその可変表示を停止させることにより、大当り状態が発生することを遊技者に認識させるようにしている。・・・」(段落【0020】:公報第4頁左欄第44行、46行?47行、49行?右欄第1行、同欄第2行?8行、20行?22行、35行?第5頁左欄第1行)

・記載事項26
「(B)は大当り予告1を行なう場合が示されており、LCD表示装置5によりすべての図柄51,52,53が可変表示されている最中に、「フィーバー!」のメッセージ55を表示させ、次に通常の可変表示に戻り左図柄51,右図柄52,中図柄53の順に停止する。」(段落【0038】)

以上の記載事項1?22及び図1?21の記載によれば、引用例1には次の発明が記載されていると認められる。
「遊技領域3に設けられて特別図柄表示部43?45での識別情報を表示する特別可変表示装置40を備え、特別図柄表示部43?45での識別情報が可変表示後特定表示結果で停止すると遊技者に有利な特定遊技状態が発生する弾球遊技機(図示ではパチンコ遊技機)において、
各種リーチ1?3の変動態様を選択するリーチ選択制御と、
通常時に、大当たりと判定して、大当たり図柄配列用のランダム3により大当り図柄及び配列を決定し、特別可変表示装置40の各特別図柄表示部43?45に表示し、
遊技者に大当りである特定遊技状態を発生させるように制御し、
特別遊技状態の場合には、通常時の2/20、6/20、12/20の確率を異なる高確率時の1/20、5/20、14/20に変更し、
各種リーチ1?3のリーチ変動態様は、特別図柄表示部43?45での識別情報がリーチ状態になった後に、特定表示結果で停止するスーパーリーチを含む
ことを特徴とするパチンコ機。」
(以下、「引用例1に記載された発明」という。)

2)対比
引用例1に記載された発明と本願補正発明を対比すると、引用例1に記載された発明の「遊技領域3」は本願補正発明の「遊技領域」に相当している。以下同様に、「特別図柄表示部43?45での識別情報」は「変動図柄」、「特別可変表示装置40」は「特別図柄表示装置」、「可変表示」は「変動」、「特定表示結果」は「所定の態様」、「遊技者」は「遊技者」、「特定遊技状態」は「大入賞口が開閉する大当たり」、「弾球遊技機(図示ではパチンコ遊技機)」は「パチンコ機」、「各種リーチ1?3の変動態様」及び「リーチの変動態様」は「複数のリーチパターン」及び「リーチパターン」、「大当り」は「大当たり」、「通常時」は「通常確率」、「特別遊技状態」は「特典遊技状態」、「スーパーリーチ」は「スペシャルリーチ」にそれぞれ相当している。

そして、引用例1に記載された発明は、以下の構成を実質的に具備しているといえる。

・実質的具備事項1
引用例1の記載事項14の「そして、図6(B)に示すように、ランダム1から抽出された値が「3」のときは、大当りと判定してランダム3により大当り図柄及び配列を決定し特別可変表示装置40の各特別図柄表示部43?45に表示する。・・・」、及び同記載事項17の「次に、上記した各種リーチ1?3の選択制御を図11乃至図13を参照して説明する。リーチ選択制御の処理プロセスは、図12のフローチャートに示すように、・・・S1で確率変動中でないと判別した場合は、次に、始動入賞に伴って導出以前に決定する表示結果が大当り図柄であるか否かを判別する(S2)。S2で表示結果を大当り図柄に決定した場合は、通常時の大当り用リーチ選択テーブルを利用してリーチ選択を行う(S3)。・・・」なる記載に基づけば、引用例1に記載された発明の各種リーチ1?3の変動態様は、リーチの変動態様を通常時の大当り用リーチ選択テーブルから選択されて特別可変表示装置40に表示されるものである以上、予めROM等の記憶手段にこれらリーチ変動態様の画像データを通常時の大当りリーチ選択テーブルとして記憶されており、これらのテーブルからリーチ変動態様の画像データが選択制御されて特別可変表示装置に表示されることが普通と解される(リーチパターンや当たり図柄をテーブルに画像データとして記憶する点:特開平8-117390号公報、特開平10-290864号公報及び特開平3-77569号公報等参照のこと)。
そして、引用例1に記載された発明の「各種リーチ1?3の変動態様」は本願補正発明の「複数のリーチパターン」に相当し、同様に「特別可変表示装置40」は「特別図柄表示装置」に相当していることは上記したとおりである。
そうすると、引用例1に記載された発明の「各種リーチ1?3の変動態様を選択するリーチ選択制御」は、「複数のリーチパターンの画像データを記憶するリーチパターン記憶手段」と言い換えることができるので、引用例1に記載された発明は、「複数のリーチパターンの画像データを記憶するリーチパターン記憶手段」なる構成を実質的に具備しているということができる。

・実質的具備事項2
引用例1に記載された発明は、リーチパターンの画像データやリーチパターン記憶手段を実質的に備えていることは上記実質的具備事項1で示したとおりであり、かつ、三つの変動態様から一つの変動態様を選択して、特別可変表示装置40に表示するものであるから、このように表示を可能とする機能を有することは普通と解される。
また、引用例1の記載事項19の「・・・具体的に、図11(A)に示す通常時のリーチ選択テーブルおいて、表示結果が大当りとなる場合・・・各々、リーチ1はランダム6の抽出値が「18・19」(2個の乱数)のいずれかのときに選択され、リーチ2はランダム6の抽出値が「12?17」(6個の乱数)のいずれかのときに選択され、リーチ3はランダム6の抽出値が「0?11」(12個の乱数)のいずれかのときに選択される。・・・」なる記載並びに図11(A)に基づけば、 引用例1に記載された発明の通常時のリーチ1?3の変動態様は、予め定められた三つの確率2/20、6/20、12/20に基づいて選択されるのであるから、通常時のリーチ1?3の変動態様は、リーチパターン記憶手段に記憶された通常時のリーチ1?3の変動態様の中から2/20、6/20、12/20のいずれかの確率に基づいて、一つのリーチの変動態様の画像データが選択されているということができ、かつ、それら確率を所定の第1選択確率ということができる。
ところで、請求人は審判の請求の理由の補充書において、「通常の遊技状態において表示制御手段によって大当たりを発生させると決定された場合には、表示制御手段によって変動図柄がリーチ状態になった後、確実に所定の態様で停止するスペシャルリーチの画像データが、複数のリーチパターンの画像データから所定の第1選択確率に基づいて選択されて前記特別図柄表示装置を介して表示される。」と主張しているが、本願補正発明の記載は「大当たりを発生させるか否かを決定し、該大当たりを発生させると決定した場合には、リーチパターン記憶手段から一のリーチパターンの画像データを所定の第1選択確率に基づいて選択して特別図柄表示装置を介して表示するように制御する表示制御手段」であり、請求人が主張するように「確実に所定の態様で停止するスペシャルリーチの画像データ」なる記載はないのであるから、引用例1に記載された発明において、複数のリーチパターン記憶手段の中から、単に、一つのリーチパターンが単に選択されればよいと解される。
そして、引用例1に記載された発明の「大当り」「リーチの変動態様」は、本願補正発明の「大当たり」「リーチパターン」に相当していることは上記したとおりである。
そうすると、引用例1に記載された発明は、「大当たりを発生させるか否かを決定し、大当たりを発生させると決定した場合には、リーチパターン記憶手段から、一のリーチパターンの画像データを所定の第1選択確率に基づいて選択して特別図柄表示装置を介して表示するように制御する表示制御手段」を実質的に具備しているということができる。

・実質的具備事項3
引用例1の記載事項20の「一方、図11(B)に示す高確率時のリーチ選択テーブルおいて、表示結果が大当りとなる場合では、リーチ1はランダム6の抽出値が「19」(1個の乱数)のときに選択され、リーチ2はランダム6の抽出値が「14?18」(5個の乱数)のいずれかのときに選択され、リーチ3はランダム6の抽出値が「0?13」(14個の乱数)のいずれかのときに選択される。・・・」なる記載及び図6(A)(B)に基づけば、通常時では、大当り判定用ランダム1から抽出された値が「3」のときは大当りと判定し、ランダム3データにより、大当たり図柄および配列を決定する一方、高確率時(確変時)では、大当り判定用ランダム1から抽出された値が「3」「7」「79」「103」「107」のときは、大当りと判定し、ランダム3データにより、大当たり図柄および配列を決定しているのであるから、高確率時(確変時)における大当りはランダム3データの0?14の内「3」「7」「79」「103」「107」の時に発生し、その確率が5/15である一方で、上記相違点2において示したように通常時の確率は1/15であるので、いずれの確率も所定の確率ということができる。
したがって、引用例1に記載された発明は、大当りの発生する確率が通常確率よりも高い確率で発生する特別遊技状態を所定確率で発生させるように制御されており、かつ、このような制御を実現し得る手段を有することは普通のことと解されるので、引用例1に記載された発明の「遊技者に大当りである特別遊技状態を発生させるように制御し」は、「遊技者に大当たりの発生する確率が通常確率よりも高い確率で発生する特別遊技状態を所定確率で発生させるように制御する特別遊技状態制御手段」と言い換えることができる
そして、引用例1に記載された発明の「遊技者」「大当り」「通常時」「特別遊技状態」は、本願補正発明の「遊技者」「大当たり」「通常確率」「特典遊技状態」に相当していることは上記したとおりである。
そうすると、引用例1に記載された発明は、「遊技者に大当たりの発生する確率が通常確率よりも高い確率で発生する特典遊技状態を所定確率で発生させるように制御する特典発生制御手段」なる構成を実質的に具備しているということができる。

・実質的具備事項4
通常時のリーチ1?3のリーチ変動態様の予め定められた三つの確率2/20、6/20及び12/20は所定の第1選択確率ということができることは、上記実質的具備事項2において示したとおりである。
同様に、引用例1の記載事項20の記載及び図11(A)(B)に基づけば、高確率時(確変時)のリーチ1?3の変動態様は予め定められた三つの確率1/20、5/20及び14/20に基づいて選択されているのであるから、これを所定の第2選択確率ということができることも明らかである。
したがって、引用例1に記載された発明は、高確率(確変時)には、通常時の所定の第1選択確率と異なる所定の第2選択確率に変更しているということができ、かつ、そのような選択確率を変更する機能を実現し得る手段を有していることが普通のことと解される。
また、同記載事項17の「・・・遊技状態が確率変動中のもの(特別遊技状態)であるか否かを判別する(S1)。S1で確率変動中でないと判別した場合は、・・・」なる記載に基づけば、引用例1に記載された発明の「高確率(確変時)」は、「特別遊技状態」であり、かつ、引用例1に記載された発明の「特別遊技状態」は、本願補正発明の「特典遊技状態」に相当していることは上記したとおりであるから、引用例1に記載された発明の「高確率(確変時)」は本願補正発明の「特典遊技状態」に相当していることになる。
そうすると、引用例1に記載された発明の「特定遊技状態の場合には、通常時の2/20、6/20、12/20の確率を異なる高確率時の1/20、5/20、14/20に変更し」は、「特典遊技状態の場合には、所定の第1選択確率を異なる所定の第2選択確率に変更する選択確率変更手段とを備え」と言い換えることができるから、引用例1に記載された発明は、「特典遊技状態の場合には、所定の第1選択確率を異なる所定の第2選択確率に変更する選択確率変更手段とを備え」なる構成を実質的に具備しているということができる。

・実質的具備事項5
上記実質的具備事項1で示したように、引用例1に記載された発明は、複数のリーチパターンの画像データを記憶するリーチパターン記憶手段を実質的に具備していること、及び、引用例1の記載事項20の記載及び図11(A)(B)に基づけば、特別図柄表示部43?45での識別情報がリーチ状態になった後、通常時及び高確率時(確変時)において各種リーチ1?3の変動態様はそのリーチ3であるスーパーリーチをリーチパターン記憶手段に画像データとして含んでいることは明らかである。
また、実質的具備事項3において示したとおり、リーチ3の選択率は、通常時では12/20であるのに対して、高確率時(確変時)では14/20であり、通常時の確率は所定の第1選択確率であり、高確率時(確変時)は所定の第2選択確率であるから、リーチ3の選択率は、通常時<高確率時(確変時)であることは明らかである。
そして、 引用例1に記載された発明の「各種リーチ1?3の変動態様」「特別図柄表示部43?45での識別情報」「特定表示結果」「スーパーリーチ」「高確率時」は、本願補正発明の「複数のリーチパターン」「変動図柄」「所定の態様」「スペシャルリーチ」「所定の第2選択確率」に相当していることは上記したとおりである。
そうすると、引用例1に記載された発明は、「複数のリーチパターンの画像データは、変動図柄がリーチ状態になった後に、所定の態様で停止するスペシャルリーチの画像データを含み、所定の第2選択確率は、少なくともスペシャルリーチの画像データの選択確率が所定の第1選択確率の場合における選択確率よりも高くなるように設定されている」なる構成を実質的に具備しているということができる。

そこで、本願補正発明と引用1に記載された発明を対比すると、
「遊技領域に設けられて変動図柄を表示する特別図柄表示装置を備え、変動図柄が変動後所定の態様で停止すると遊技者に有利な大入賞口が開閉する大当たりが発生するパチンコ機において、
複数のリーチパターンの画像データを記憶するリーチパターン記憶手段と、
大当たりを発生させるか否かを決定し、大当たりを発生させると決定した場合には、リーチパターン記憶手段から、一のリーチパターンの画像データを所定の第1選択確率に基づいて選択して特別図柄表示装置を介して表示するように制御する表示制御手段と、
遊技者に大当りの発生する確率が所定の確率で発生するように制御する特典発生制御手段と、
特典遊技状態の場合には、所定の第1選択確率を異なる所定の第2選択確率に変更する選択確率変更手段とを備え、
複数のリーチパターンの画像データは、変動図柄がリーチ状態になった後に、所定の態様で停止するスーパーリーチを含み、変動図柄がリーチ状態になった後、所定の態様で停止するスペシャルリーチの画像データを含み、
所定の第2選択確率は、少なくともスペシャルリーチの画像データの選択確率が所定の第1選択確率の場合における選択確率よりも高くなるように設定されているパチンコ機。」の点で一致し、以下の点で相違している。

・相違点
複数のリーチパターンの画像データが、本願補正発明においては「変動図柄がリーチ状態になった後、確実に所定の態様で停止するスペシャルリーチの画像データを含むものである」のに対して、引用例1に記載された発明が「変動図柄がリーチ状態になった後、一定の信頼度に応じて所定の態様で停止するスペシャルリーチの画像データを含むものである」である点。

3)判断
上記相違点について検討する。
引用例2の記載事項24の「・・・このランダム1カウンタは、大当りを発生させるか否かを事前に決定するために用いられるカウンタであり、・・・カウント値(乱数)が、3のときにはS2以降に示す大当りを発生させるための制御がなされ、・・・」、同記載事項25の「・・・S2の処理により、・・・可変表示装置4の可変停止時においては、左図柄と中図柄と右図柄とが同じ図柄となりぞろめの状態となり、大当り状態が発生する。次にS3に進み、ランダム3カウンタのカウント値を読出す処理が行なわれる。・・・カウント値が0のときにS4に進み、大当り予告1を行なうためのフラグがセットされる。・・・S4,S5の処理が行なわれた後にS7に進み、ランダム4カウンタのカウント値が読出される。・・・一方、ランダム4カウンタの値が1のときには、S9に進み、可変表示装置4のLCD表示装置5の表示動作制御を行ない、LCD表示装置5により大当り状態やリーチが発生することを事前に予告表示させる。・・・一方、ランダム4カウンタの値が2のときには、S10に進み、ラッキーナンバー表示LEDを変動制御させる処理が行なわれる。・・・大当り状態が発生することを遊技者に認識させるようにしている。・・・」なる記載並びに図3に基づけば、
引用例2には、大当たりを発生するか否かを決定し、大当たりを発生させると決定した場合に、大当たり予告を経て、LCD表示装置上に、通常リーチ、特別リーチ1、特別リーチ2のいずれかのリーチ状態をランダム5(0?5)のいずれの値が選択されても、大当たり図柄が表示され、確実に信頼度100%で大当り状態が発生することを遊技者に認識させる点が記載されているということができる。
また、同記載事項23の「可変表示装置の表示結果が特定の表示態様となる旨を事前に遊技者に報知して認識させることができながらも、その事前報知がなかったとしても遊技者の期待が完全に消えてしまう不都合が防止できる遊技機を提供することである。」なる記載において、引用例2には、遊技者に大当たりになることを事前に報知して認識させることが目的であると記載されている。
ところで、請求人は、その請求の理由の補充書において、『引用文献2に記載される「大当たり予告1」を遊技者が見逃した場合には、遊技者が表示されているリーチパターンの画像データの何れの部分を見ても、大当たりに至るということを確実に予見できるものではありませんし、むしろ、「大当たり予告1」は遊技者にリーチパターンでの大当たりの発生を予見しにくくすることを本来の目的とするものであります。』と主張しているが、上記引用例2の目的は、大当たりになることを事前に遊技者に表示することにより報知して遊技者にリーチ図柄を通じて大当たりとなることを認識させることにあり、かつ、報知と認識の用語の意味から見て、引用例2の記載は見逃すことが前提となっているとの主張はその意味に反するのであるから、請求人の主張を採用できない。
さらに、引用例2の記載は、通常リーチ、特別リーチ1及び特別リーチ2からなる複数のリーチパターンの画像データを有しており、そのいずれのリーチパターンの画像データにおいても、変動図柄がリーチ状態になった後に、確実に大当たり図柄で停止するリーチの画像データを含むものであるということができる。
そうすると、引用例1に記載された発明と引用例2に記載された発明は共に、パチンコ機の表示制御装置において、予め遊技者に少なくとも大当たりになることをリーチ状態の表示を通じて報知して、遊技者の興趣を高める点で共通するものであるので、それらの相互利用に格別の困難性を見出すことができないことから、より遊技者への一層の興趣を高める趣旨の下、引用例1に記載された発明における興趣を高める手法である「リーチ状態になった後に、一定の信頼度に応じてスペシャルリーチの画像データである大当たり図柄で停止して表示する制御」に替えて、引用例2の記載の「リーチ状態になった後に、確実にリーチの画像データである大当たり図柄で停止して表示する制御」を採用すること、すなわち上記相違点に係る構成となすことは、引用例1に記載された発明及び引用例2の記載に基づいて当業者が容易になし得る程度のことということができ、その作用効果も予測の範囲を超えるものでもない。

以上のとおり、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2の記載に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

4)作用効果
本願補正発明によって奏する効果も、引用例1に記載された発明及び引用例2の記載から普通に予測できる範囲内のものであって格別のものがあるとは認められない。

5)むすび
上記のとおりであるので、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項により特許を受けることができない。

(3)補正却下の判断
上記(2)のとおり、本願補正発明は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるので、平成15年1月16日付の手続補正は、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年1月16日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成13年11月20日付の手続補正書における特許請求の範囲の請求項1において特定される以下のものである。
「【請求項1】 遊技領域に設けられて変動図柄を表示する特別図柄表示装置を備え、前記変動図柄が変動後所定の態様で停止すると遊技者に有利な特別遊技状態が発生するパチンコ機において、
複数のリーチパターンを記憶するリーチパターン記憶手段と、
前記特別遊技状態が発生した場合には、前記リーチパターン記憶手段から一のリーチパターンを所定の第1選択確率に基づいて選択して前記特別図柄表示装置を介して表示するように制御する表示制御手段と、
遊技者に前記特別遊技状態とは異なる有利な特典遊技状態を所定確率で発生させるように制御する特典発生制御手段と、
前記特典遊技状態の場合には、前記所定の第1選択確率を異なる所定の第2選択確率に変更する選択確率変更手段とを備え、
前記複数のリーチパターンは、前記変動図柄が変動後確実に所定の態様で停止するスペシャルリーチを含み、
前記所定の第2選択確率は、少なくとも前記スペシャルリーチの選択確率が前記所定の第1選択確率の場合における選択確率よりも高くなるように設定されていることを特徴とするパチンコ機。」(以下、「本願発明」という。)

1)引用例について
引用例1、引用例2の記載およびその記載事項は上記2.(2)1)に記載したとおりである。

2)対比・判断
特別遊技状態は大入賞口を開閉する大当たりであり、特別遊技状態と入賞口を開閉する大当たりの意味することは同じであることは明確であるので、上記2.(2)で検討した本願補正発明の「遊技者に有利な大入賞口が開閉する大当たりが発生する」は、本願発明の「特別遊技状態」を単に「遊技者に有利な大入賞口が開閉する大当たりが発生する」と表現を変えたものにすぎない。
また、上記2.(2)で検討した本願補正発明の「リーチパターンの画像データ」は、本願発明の「リーチパターン」に「画像データ」の構成要件を付加して、減縮したものである。
特別遊技状態は大当たり状態を意味し、大当たり状態になるためには大当たりの決定が行われるのであり、特別遊技状態と大当たりの決定はその意味するところは結局同じとなるから、上記2.(2)で検討した本願補正発明の「大当たりを発生させるか否かを決定し、該大当たりを発生させると決定した場合」は、本願発明の「特別遊技状態が発生した場合」を単に言い換えたものにすぎない。
特別遊技状態が大当たりであり、その特別遊技状態の確率より特典遊技状態は有利な高い確率であることは明確であるから、上記2.(2)で検討した本願補正発明の「遊技者に大当たりの発生する確率が通常確率よりも高い確率で発生する特典遊技状態」は、本願発明の「遊技者に特別遊技状態とは異なる有利な特典遊技状態」を、単に言い換えたにすぎない。
リーチ状態は図柄の変動の後に図柄が停止されて表示されるものであるから、上記2.(2)で検討した本願補正発明の「変動図柄がリーチ状態になった後」は、本願発明の「変動図柄が変動後」の「変動後」を「変動図柄がリーチ状態になった後」と単に言い換えたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び引用例2の記載に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び引用例2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-30 
結審通知日 2007-01-09 
審決日 2007-01-26 
出願番号 特願平11-236637
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩崎 進  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 渡部 葉子
宮本 昭彦
発明の名称 パチンコ機  
代理人 富澤 孝  
代理人 岡戸 昭佳  
代理人 山中 郁生  

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