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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B29C 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B29C |
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管理番号 | 1155244 |
審判番号 | 不服2004-399 |
総通号数 | 89 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-01-06 |
確定日 | 2007-04-06 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 84153号「グリ-ス自動給脂装置のコントロ-ル方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月12日出願公開、特開平11-277600〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年3月30日の出願であって、平成14年10月23日付けで拒絶の理由が通知され、平成14年12月27日に意見書及び手続補正書が提出され、平成15年6月25日付けでの拒絶の理由(最後)が通知され、平成15年9月8日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成15年11月27日付けの補正の却下の決定により、当該平成15年9月8日に提出された手続補正書でした明細書又は図面についての補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、その後、平成16年1月6日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、平成16年2月5日付けで手続補正がなされ、さらに、平成18年10月17日付けで前置報告に対する審尋がなされ、これに対して、平成18年12月25日付けで回答書が提出されたものである。 2.平成16年2月5日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年2月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 【理由】 (1)本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を次のとおりに補正することを含むものである。 「【請求項1】(a)サーボモータの回転運動をボールねじ軸に伝達し直線運動を行うボールねじナットと、該ボールねじナットに配管を介し連結されたグリース自動給脂装置とを有する電動式射出成形機において、(b)該グリース自動給脂装置の駆動用ポンプを制御する為の制御コントローラと、(c)前記ボールねじナットへグリース給脂するためのグリース給脂条件を予め設定する設定部と、(d)稼動状況を表示させる表示部とを有することを特徴とする電動式射出成形機。」 (2)当審の判断 本件補正は、「グリース給脂条件を予め設定する設定部」を発明特定事項とする補正(以下、「補正事項1」という。)、 「ボールねじナットに配管を介し連結されたグリース自動給脂装置」及び「ボールねじナットへグリース給脂するためのグリース給脂条件」を発明特定事項とする補正(以下、補正事項2」という。)、 及び「稼動状況を表示させる表示部」を発明特定事項とする補正(以下、「補正事項3」という。)を含むものであり、これらの補正事項が本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて検討する。 補正事項1については、当初明細書の請求項1に「駆動用ポンプのグリ-スの供給/休止の時間設定を、要給脂部を有する機器の時計機能を用い、設定部(62)により機器に設けられた表示部(61)上で任意に設定可能にした」、請求項2に「要給脂部を有する機器側で運転ショット数をカウントし、該運転ショット数が設定部(62)により予め設定されたショット数に達したら、グリ-ス供給の開始を前記制御コントロ-ラ(63)が前記駆動用ポンプに指示する」、段落【0038】に「上記の時間設定を成形機の時計機能、即ち表示部61の画面に表示される運転時間を使って、表示61の画面上において、設定部62により予め設定しておいた時間、例えば500時間に達したならば給脂するよう任意に時間設定できる」、及び段落【0039】に「成形機側で運転ショット数をカウントし、あらかじめ設定部62により設定されたショット数に達したならば、グリ-ス供給を開始する」と記載されている。 すなわち、上記特定のグリース給脂条件を予め設定する設定部は、当初明細書に記載されていたと認められるが、上記特定のグリース給脂条件以外のグリース給脂条件を含む、上位概念化した「グリース給脂条件を予め設定する設定部」は、当初明細書に記載されておらず、当初明細書から自明なものともいえない。 補正事項2については、当初明細書の段落【0001】に「射出成形機のボールねじ部等の各部へグリースを自動的に給脂するのに好適なグリース自動給脂装置」、段落【0006】に「過剰なグリースをボールねじ部等に給脂することになり」、段落【0007】に「グリースが不足し、ボールねじが異常に発熱して」、段落【0028】に「ボールねじ51?84に対し最適なる給脂を行なうことが重要となる」、段落【0029】に「過剰な潤滑剤がボールねじ51?54に給脂されて」、段落【0031】に「グリース自動給脂装置56は・・・ボールねじ51,52,53,54等の要給脂部に接続」、段落【0036】に「配管57を介し射出成形機のボールねじ51?54等に給脂される」と記載されている。 してみると、当初明細書に「ボールねじ部等へグリースを給脂」することは記載されていると認められるが、「ボールねじナットへグリースを給脂」することは、当初明細書のどこにも記載されておらず、当初明細書から自明なものともいえない。 この点について、本願明細書添付図面の【図1】に、「ボールねじナット20」及び「ボールねじナット31」にグリース自動給脂装置からの配管を接続したものが図示されていると認められるが、発明の詳細な説明に何ら説明されておらず、また、特定の「ボールねじナット」以外の「ボールねじナット」を含む、概念的に上位の「ボールねじナット」に給脂することまでも図示されていたとはいえない。 補正事項3については、当初明細書の段落【0037】に「稼働状況欄61aやグリ-ス給脂条件欄61bが設けられている。たとえば稼働状況欄には運転時間(2時間19分)と運転ショット数(20,000ショット)等が表示される。」と記載され、また、図面の【図2】(b)には、【稼働状況】欄61aに運転時間と運転ショット数が図示されていると認められるから、当初明細書には、運転時間と運転ショット数の具体的な「稼働状況を表示させる表示部」は記載されていたと認められるが、これら以外のものも含む一般化した「稼動状況を表示させる表示部」まで記載されていたとはいえない。 (3)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成15年9月8日付けの手続補正については、上記1.のとおり却下の決定がなされ、これについて請求人は、不服を申し立てておらず、該却下の決定は妥当なものと認められ、また、平成16年2月5日付け手続補正は、前記2.のとおり却下されたので、本願明細書は、平成14年12月27日付け手続補正書により補正されたとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 (a)要給脂部と配管を介し連結されたグリ-ス自動給脂装置と、 (b)該グリ-ス自動給脂装置の駆動用ポンプを制御する為の制御コントロ-ラを有し、 (c)表示部上に稼動状況を表示させ、前記駆動用ポンプのグリ-スの供給/休止の時間設定を設定部により任意に設定し、要給脂部を有する機器の時計機能を用いて前記駆動用ポンプへの指令を、前記制御コントローラを介して出すことを特徴とするグリ-ス自動給脂装置のコントロ-ル方法。」 4.引用例について 原査定の拒絶の理由の理由2(特許法第29条第1項第3号違反)で引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭60-159025号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。 ア.「射出成形機において、可動盤、射出ユニット、ベアリングハウジングの各摺動面及び他の給油個所等の給油面に給油ポンプから給油分配弁を経て給油する給油装置において、機械を制御すると共に、ショット数のカウント、摺動距離(型開閉動作回数×ストローク)の計測を行なうことができる制御装置を備え、同制御装置は前記計測値と、ショット数、摺動距離を数段階に区分してインプットしてなるデータ設定器より送られた設定値とを比較し、これが一致した時給油条件成立と判断し、前記給油ポンプに給油指令を行なうことを特徴とするショット数に連動した給油制御装置。」(特許請求の範囲) イ.「第2図は本発明方法を実施する給油回路図で、図中・・・14、15は摺動面、16、17、18、19は配管、20は給油分配弁、21は他の給油個所、22は給油ポンプ・・・第2図において第1図と異なる点は、制御装置24にデータ設定器25を連結した点である。制御装置24はタイマーが組込まれると共に、給油ポンプに指令を出すもので、かつ機械を制御しており、ショット数のカウント、摺動距離(型開閉動作回数×ストローク)の算出を行なうことができる。」(第2頁左下欄3?20行) ウ.「第3図は給油ポンプ制御装置24の前面図であり、図中26は自動給油設定用押ボタンスイッチ、27は自動給油設定確認用ランプ、38はショット数Xによる給油か、摺動距離Yによるかの選択スイッチ、29はデジタル設定表示器で、ショット数又は摺動距離に範囲を設け、数段階に区分して設定しておき、オペレータの希望区分を表示するものである。例えば、ショット数0?1000は区分I・・・とする。」(第2頁右下欄1?10行) エ.「次に作用を説明すると、成形運転時可動盤2はタイバー4に沿ってA(前進)B(後退)方向に摺動する。・・・またデータ設定器25にショット数(間隔)、摺動距離(型開閉動作回数×ストローク)を数段階に区分してインプットしておく。 制御装置24はデータ設定器25より送られた信号を記憶すると共に、・・・ショット数のカウント、摺動距離(型開閉動作回数×ストローク)の算出を行なうことができる。この計測値とデータ設定器25からの設定値とを比較し、一致したら給油条件成立と判断し、給油ポンプ22に給油指令を行なう。データ設定器25にはショット数、摺動距離の選択スイッチ28を設け、かつオペレータの希望区分・・・がデジタル設定表示できるようにしておく。 次に給油ポンプ22は制御装置24からの指令により一定時間給油動作を行なう。給油時間は制御装置24に組込まれたタイマーにより希望の給油時間が設定できる。また給油分配弁20は、・・・分配弁20より各給油面までの配管16、17、18、19により・・・給油を行なう。」(第2頁右下欄11行?第3頁左上欄16行) 5.対比・判断 本願発明(前者)と引用例に記載された発明(後者)との対比・検討 引用例には、射出成形機の給油制御装置が記載され、上記アより、各摺動面及び他の給油個所等の給油面に給油ポンプから給油分配弁を経て給油する給油装置において、ショット数のカウント、摺動距離の計測を行なうことができる制御装置を備え、同制御装置は前記計測値と、データ設定器より送られた設定値とを比較し、これが一致した時給油条件成立と判断し、前記給油ポンプに給油指令を行なう給油制御装置が、上記イ、エより、給油回路は、給油分配弁から給油個所等の給油面に配管により給油を行なうことが、上記エより、給油ポンプは制御装置からの指令により一定時間給油動作を行ない、給油時間はデータ設定器より送られた信号により制御される制御装置に組込まれたタイマーにより希望の給油時間が設定できることが、上記ウより、給油ポンプ制御装置には、自動給油設定用押ボタンスイッチとデジタル設定表示器が設けられ、デジタル設定表示器は、ショット数又は摺動距離を数段階に区分し、設定し、オペレータの希望区分を表示するものであることが記載されていると認められるから、引用例には、 「各摺動面及び他の給油個所等の給油面に配管により給油を行なう自動給油回路において、自動給油回路の給油ポンプを制御する為の制御装置を有し、デジタル設定表示器にショット数又は摺動距離を表示させ、給油ポンプの給油時間はデータ設定器で希望の給油時間が設定でき、給油時間は、タイマーが組込まれた制御装置からの指令により給油ポンプを動作して行なう自動給油回路の制御方法」(「引用例に記載された発明」(後者)とする。)の発明が記載されているといえる。 そして、後者における「各摺動面及び他の給油個所等の給油面」、「油」、「給油」、「自動給油回路」、「給油ポンプ」、「制御装置」、「デジタル設定表示器」、「ショット数又は摺動距離」、「給油時間」、「データ設定器」、「タイマー」、「制御方法」は、その機能からみて各々前者における「要給脂部」、「グリ-ス」、「給脂」、「自動給脂装置」、「駆動用ポンプ」、「制御コントローラ」、「表示部」、「稼動状況」、「グリ-スの供給/休止の時間」、「設定部」、「時計機能」、「コントロ-ル方法」に相当することは明らかである。 したがって、両者は、「要給脂部と配管を介し連結されたグリ-ス自動給脂装置と、該グリ-ス自動給脂装置の駆動用ポンプを制御する為の制御コントロ-ラを有し、表示部上に稼動状況を表示させ、前記駆動用ポンプのグリ-スの供給/休止の時間設定を設定部により任意に設定し、要給脂部を有する機器の時計機能を用いて前記駆動用ポンプへの指令を、前記制御コントローラを介して出すことを特徴とするグリ-ス自動給脂装置のコントロ-ル方法」である点において一致する。 してみると、両者は、実質的に差異がなく同一であるといえる。 なお、回答書に記載する特許請求の範囲の補正案についてみても、上記2.の補正却下の決定において述べた特許法第17条の2第3項の規定違反を解消するものとはいえない。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-01-24 |
結審通知日 | 2007-01-30 |
審決日 | 2007-02-13 |
出願番号 | 特願平10-84153 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(B29C)
P 1 8・ 561- Z (B29C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩田 行剛、中村 浩、山本 晋也 |
特許庁審判長 |
松井 佳章 |
特許庁審判官 |
鴨野 研一 川端 康之 |
発明の名称 | グリ-ス自動給脂装置のコントロ-ル方法 |
代理人 | 羽片 和夫 |