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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1155251
審判番号 不服2004-17616  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-26 
確定日 2007-04-06 
事件の表示 平成10年特許願第353312号「データ処理システム及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月30日出願公開、特開2000-181954〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年12月11日の出願であって、平成16年7月20日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年8月26日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年9月27日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年9月27日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年9月27日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)本願補正発明
平成16年9月27日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「複数の社員の各社員に対応して所属情報及び役職情報を含む人事情報を管理する人事システムに接続されるデータ処理システムであって、種類が異なる複数の書類毎に、書類が承認される複数の承認順序を構成する複数段階の承認者を示す複数の承認者欄と、各承認者欄に設定され、各段階における承認者の役職を示す役職情報とを記憶する承認階層情報記憶手段と、種類が異なる複数の書類毎に、当該書類を申請した社員を示す申請者名と、当該書類が承認される複数の承認順序を構成する複数段階の承認者を示す複数の承認者欄と、各承認者欄に設定され、各段階における承認者の名前を示す承認者名とを記憶する承認者情報記憶手段と、前記人事システムから前記人事情報の更新に伴って送信される発令発生情報を受信すると、前記人事システムが管理する人事情報から更新後の所属情報及び役職情報を取り込む所属役職情報取得手段と、前記所属役職取得手段により取り込まれた前記更新後の所属情報及び役職情報に基づいて各社員に対応する上司を示す上司情報を生成する上司情報生成手段と、前記上司情報生成手段により生成された上司情報と、前記承認階層情報記憶手段に複数の書類毎に複数の承認者欄に記憶された役職情報とに基づいて、前記承認者情報記憶手段に複数の書類毎に複数の承認者欄に記憶された承認者名を更新する承認者情報更新手段と、を備えたことを特徴とするデータ処理システム。」と補正された。

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「承認階層情報記憶手段」、「承認者情報記憶手段」、「所属役職情報取得手段」、「上司情報生成手段」、及び「承認者情報更新手段」について、具体的な限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)先願明細書
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前の平成10年7月9日の出願であって、本願の出願後に公開された特願平10-193993号(特開2000-29963号公報)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。

(a)「近時では、このような決裁処理を効率化するため、決裁文書をネットワーク上で回覧し、電子的に決裁処理を行うワークフローシステムも利用されている(例えば、特開平10-49598)。しかし、会社組織等では、組織の変更及び人事異動等が多く、決裁伝票の回覧の範囲や回覧のルートが頻繁に変更されるため、その管理が煩雑且つ困難であるという問題があった。」(段落【0004】)

(b)「上記目的を達成するため、この発明の第1の観点にかかる電子決裁システムは、決裁金額を含む決裁文書データを作成する決裁文書作成手段と、前記決裁文書作成手段で作成された決裁文書データを閲覧及び承認又は否決する複数の端末と、前記決裁文書作成手段により作成された決裁文書データを、前記複数の端末の間で電子的に回覧する回覧手段と、前記回覧手段により前記複数の端末の間を電子的に回覧され、かつ、所定の承認を受けた決裁文書データについて、前記決裁文書データに含まれている決裁金額の支払いを支払い装置に指示する支払い指示手段と、を具備することを特徴とする。このような構成とすることにより、この発明によれば、文書を電子的に回覧し、決裁することができる。」(段落【0007】)

(c)「前記回覧手段は、人事担当部署が作成した人事情報を収集する人事情報収集手段と、該人事情報収集手段が収集した人事情報に基づいて回覧対象及び回覧ルートを制御する手段と、を備えてもよい。人事担当部署は、自己の職務として人事関係の情報を作成する。このような情報を用いて回覧対象や回覧ルートを制御することにより、組織や人事が変更になったときに、電子決済のためだけに人事情報や組織情報を入力する必要がなく、電子決済システムのメンテナンスが容易である。」(段落【0009】)

(d)「図2は、決裁センタST1の構成を示す。図示するように、決裁センタST1には、電子決裁用の決裁サーバ11と、決裁用のデータベース12とが配置されている。
データベース12は、決裁文書のフォームを格納するフォームファイル121、決裁文書を格納する決裁文書ファイル122、各事業部門の情報を格納する部門情報ファイル123、社員に関する情報を格納する社員情報ファイル124、決裁のルートなどを決定する承認経路情報ファイル125などを備える。」(段落【0014】?【0015】)

(e)「部門情報ファイル123は、各部門の構成員及び役職等に関する情報を格納する。社員情報ファイル124は、社員に関する情報を格納する。承認経路情報ファイル125は、決裁の内容毎に、図5に例示するような決裁ルートの基本形を予め記憶している。
決裁サーバ11は、決裁文書の作成、決裁文書の回覧、等の処理等を実行する。この処理の内容については、後述する。」(段落【0018】?【0019】)

(f)「また、決裁サーバ11は、人事部のサイトST2に設置されている組織・人事情報データベース22から組織情報及び人事情報(例えば、部署とその構成員名及び役職等)を読み出して、それらの情報をデータベース12の部門情報ファイル123や社員情報ファイル124に格納する。
さらに、決裁サーバ11は、各部門の内部的な人事情報を部門内人事情報データベース23から読み出して、それらの情報をデータベース12の部門情報ファイル123や社員情報ファイル124(審決注:「134」は誤記)に格納する。」(段落【0021】?【0022】)

(g)「起案者(例えば、担当課長)により決裁文書(稟議文書)の作成を指示された者(以下、作成者)は、自己の端末(クライアント)から、決裁サーバ11にログインする。決裁サーバ11は、決裁文書ファイル122の内容を読み出し、図6に示すような決裁文書の一覧を作成し、該当端末に表示する。作成者は、画面に起案者の所属部門を入力する(決裁サーバ11は、部門情報ファイル123の内容から、選択可能な部門のリストを提供してもよい)。さらに、新規起案ボタンをクリックする。」(段落【0027】)

(h)「次に、「備考」のタブをクリックし、必要に応じて、補足事項等を入力する。以上のようにして、決裁の内容を入力した後、作成者は「文書閲覧」のタグを選択し、さらに、「閲覧者の選択」ボタンを選択する。この選択に応答して、決裁サーバ11は、社員情報ファイル124に格納されている人事情報等に基づいて、部門のリストと共に入力されている部門に属す者のリストを図9に示すように表示する。
さらに、決裁サーバ11は、承認経路情報ファイル125に格納されている図5に例示する承認経路のうち、決裁文書の種類に該当するものを選択し、さらに、先に選択されている部門(又は担当)での該当者を特定し、それらの人を回覧対象として予め選択しておく。作成者は、予め登録されている者以外に、回覧をしたい人がいるときには、その人を選択する。」(段落【0032】?【0033】)

(i)先願明細書の図5には、承認経路情報ファイル125に予め記憶され、物品購入、部外セミナー参加伺い、旅費申請等、決済の内容毎に異なる承認経路を有し、該承認経路の各承認段階毎に、作成者、起案者、担当部長、経理部長等の職務名が対応付けられた決裁ルートの基本形が例示されている。

(3)対比
(ア)先願明細書に記載された発明(以下、「先願発明」という。)の決裁センタST1には、電子決裁用の決裁サーバ11と、決裁用のデータベース12とが配置されており(前掲(d))、前記決裁サーバ11は、人事部のサイトST2に設置されている組織・人事情報データベース22から、組織情報及び人事情報、例えば部署とその構成員名及び役職等を読み出して、前記データベース12の部門情報ファイル123及び社員情報ファイル124に格納している(前掲(f))。
したがって、前記「人事部のサイトST2」及び「決裁センタST1」は、本願補正発明の「複数の社員の各社員に対応して所属情報及び役職情報を含む人事情報を管理する人事システム」及び「人事システムに接続されるデータ処理システム」にそれぞれ相当する。

(イ)先願発明においては、データベース12が備える承認経路情報ファイル125に、図5に例示するような決裁ルートの基本形が、決裁の内容毎に予め記憶されている(前掲(d)、(e))。
ここで、前記決裁内容には、物品購入、部外セミナー参加伺い、旅費申請等があり、これらの承認経路のうち、決裁文書の種類に該当するものが選択される(前掲(h)、(i))。
さらに、前記承認経路中の各承認段階に対応付けられた、「担当部長」、「経理部長」等は、各段階における承認者の役職名を示している(前掲(i))。
したがって、前記「承認経路情報ファイル125」は、本願補正発明の「種類が異なる複数の書類毎に、書類が承認される複数の承認順序を構成する複数段階の各段階における承認者の役職を示す役職情報を記憶する承認階層情報記憶手段」に相当する。

(ウ)先願発明の決裁サーバ11は、データベース12の社員情報ファイル124に、部署とその構成員名及び役職等を含む組織情報及び人事情報、並びに各部門の内部的な人事情報を格納している(前掲(f))。
また、先願発明の決裁サーバ11は、「閲覧者の選択」ボタンの選択に応答して、前記社員情報ファイル124に格納された人事情報等に基づき、部門のリストと共に入力されている部門に属す者のリストを表示するとともに、承認経路情報ファイル125に格納されている承認経路のうち、決裁文書の種類に該当するものを選択し、先に選択されている部門での該当者を特定し、それらの人を回覧対象として予め選択する(前掲(h))。
ここで、前記「該当者を特定」することは、前記承認経路中の各承認段階に対応付けられた承認者の役職名等に基づいて行われることは明らかである。
すなわち、前記「社員情報ファイル124」は、選択された承認経路の各承認段階の承認者等に該当する、部署毎の構成員名を格納している。
さらに、先願発明の「起案者」は、図5の決裁ルートを参照すると、作成した決裁文書について担当部長等の承認を受ける者であり(前掲(g)、(i))、本願補正発明の「申請者」に相当する。
したがって、前記「社員情報ファイル124」は、本願補正発明の「種類が異なる複数の書類毎に、当該書類を申請した社員を示す申請者名と、当該書類が承認される複数の承認順序を構成する複数段階の各段階における承認者の名前を示す承認者名とを記憶する承認者情報記憶手段」に相当する。

(エ)先願発明は、作成された決裁文書データを複数の端末の間で電子的に回覧する回覧手段を具備しており(前掲(b))、前記回覧手段は、人事担当部署が作成した人事情報を収集し、該人事情報に基づいて回覧対象及び回覧ルートを制御する手段を備えている(前掲(c))。
ここで、先願発明が解決しようとする従来技術の課題として、会社組織等で組織の変更及び人事異動等が多いと、決裁伝票の回覧の範囲やルートが頻繁に変更されることが挙げられており(前掲(a))、このことを勘案すると、前記「人事情報に基づいて回覧対象及び回覧ルートを制御する」とは、人事異動等により人事情報が更新されると、それに伴い決裁文書データの回覧対象及び回覧ルートを変更するという意味を含んでいる。
また、先願発明の決裁サーバ11は、人事部のサイトST2に設置されている組織・人事情報データベース22から、部署とその構成員名及び役職等の組織情報及び人事情報を読み出して、データベース12のファイルの部門情報ファイル123及び社員情報ファイル124に格納しており(前掲(f))、したがって先願発明は、本願補正発明の「人事システムから人事情報の更新に伴って前記人事システムが管理する人事情報から更新後の所属情報及び役職情報を取り込む所属役職情報取得手段」に相当する構成を備えている。
さらに、人事担当部署である人事部のサイトST2において人事情報が更新されると、それに伴い前記社員情報ファイル124に格納された人事情報も更新され、該人事情報と、承認経路情報ファイル125に格納された承認経路中の各承認段階に対応付けられた役職名とに基づいて、選択された承認経路の各承認段階の承認者名も更新されることは明らかであるから(前掲(ウ)参照)、先願発明は、本願補正発明の「承認階層情報記憶手段に複数の書類毎に記憶された役職情報に基づいて、前記承認者情報記憶手段に複数の書類毎に記憶された承認者名を更新する承認者情報更新手段」に相当する構成を備えている。

以上を踏まえ、本願補正発明と先願発明を対比すると、両者は、
「複数の社員の各社員に対応して所属情報及び役職情報を含む人事情報を管理する人事システムに接続されるデータ処理システムであって、種類が異なる複数の書類毎に、書類が承認される複数の承認順序を構成する複数段階の各段階における承認者の役職を示す役職情報を記憶する承認階層情報記憶手段と、種類が異なる複数の書類毎に、当該書類を申請した社員を示す申請者名と、当該書類が承認される複数の承認順序を構成する複数段階の各段階における承認者の名前を示す承認者名とを記憶する承認者情報記憶手段と、前記人事システムから前記人事情報の更新に伴って前記人事システムが管理する人事情報から更新後の所属情報及び役職情報を取り込む所属役職情報取得手段と、前記承認階層情報記憶手段に複数の書類毎に記憶された役職情報に基づいて、前記承認者情報記憶手段に複数の書類毎に記憶された承認者名を更新する承認者情報更新手段と、を備えたことを特徴とするデータ処理システム。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。

[一応の相違点1]
本願補正発明の「承認階層情報記憶手段」及び「承認者情報記憶手段」が、「承認者を示す複数の承認者欄」を記憶し、前記「承認階層情報記憶手段」の各承認者欄に承認者の役職情報が設定され、前記「承認者情報記憶手段」の各承認者欄に承認者名が設定されているのに対し、先願発明は、前記「複数の承認者欄」に相当する構成を備えていない点。

[一応の相違点2]
本願補正発明の「所属役職情報取得手段」が、「人事システムから人事情報の更新に伴って送信される発令発生情報を受信する」ことにより、前記人事情報の更新後の所属情報及び役職情報を取り込んでいるのに対し、先願発明においては、前記「発令発生情報」の送信及び受信に相当する構成を備えていない点。

[一応の相違点3]
本願補正発明が、「所属役職取得手段により取り込まれた前記更新後の所属情報及び役職情報に基づいて各社員に対応する上司を示す上司情報を生成する上司情報生成手段」を備えており、前記「上司情報」と、承認階層情報記憶手段に承認者欄毎に記憶された役職情報に基づいて、承認者情報記憶手段に承認者欄毎に記憶された承認者名を更新しているのに対し、先願発明は、前記「上司情報」及び「上司情報生成手段」に相当する構成を備えていない点。

(4)判断
上記一応の相違点について検討する。

[一応の相違点1について]
先願発明の承認経路情報ファイル125においても、承認経路の各承認段階に承認者の役職名が対応付けられており(前掲(イ))、各承認者と役職情報とを対応付けて記憶している点において、本願補正発明の「承認階層情報記憶手段」と差異はない。
また、先願発明の社員情報ファイル124も、承認経路の各承認段階の承認者に該当する者の名前を記憶している点において、本願補正発明の「承認者情報記憶手段」と差異はなく(前掲(ウ))、特定された該当者が前記承認者である旨の情報を記憶することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る事項である。
加えて、これらの情報をどのような形式で記憶するかについても、種々の方法が選択可能であり、承認者を示す欄を設けて記憶することは、当業者が適宜採択し得る設計事項にすぎない。

[一応の相違点2について]
先願発明は、人事異動等により人事情報が更新されると、それに伴い決裁文書データの回覧対象及び回覧ルートを変更するという概念を含んでいる(前掲(エ))。
一般に、会社組織等において人事異動を行う場合、人事異動の発令、及びそれに伴う人事情報が、各部署に対して紙等により通知され、前記人事情報に基づいて例えば決裁処理の変更を行うのが通例である。
先願発明は、人事異動に伴う決裁処理の変更を、コンピュータシステム上で実現させたものであり、また、複数のシステム間において情報の送受信を行うことは情報処理の分野において周知の技術であるから、先願発明において、従来行われていた人事異動の発令の通知を、コンピュータシステム上で実現させるために、発令が行われたことを示す情報の送受信を行わせることは、当業者が必要に応じて適宜採択し得る設計事項にすぎない。

[一応の相違点3について]
先願発明の社員情報ファイル124は、部署とその構成員名及び役職等を含む、組織情報及び人事情報、並びに各部門の内部的な人事情報を格納している(前掲(f))。
一般に、組織及び人事に関する情報が与えられると、該情報に含まれている、各構成員の所属及び役職等の情報に基づき、ある構成員を特定すれば、その上司に関する情報が得られることは自明であるから、前記社員情報ファイル124は、本願補正発明の「上司情報」を含んでいるといえる。
そして、先願発明は、前記社員情報ファイル124に格納された人事情報が更新されると、該人事情報と、承認経路情報ファイル125に格納された承認経路中の各承認段階に対応付けられた役職名とに基づいて、選択された承認経路の各承認段階の承認者名を更新しており(前掲(エ)参照)、前記社員情報ファイル124の人事情報を直接用いることに代えて、該人事情報から各構成員の上司に関する情報を生成し、該上司に関する情報を用いて前記承認者名の更新を行うことは、当業者が適宜採択し得る設計事項にすぎない。

以上の検討を踏まえると、一応の各相違点は、実質的なものとはいえず、本願補正発明と先願発明とは同一であると認められる。
そして、本願補正発明の奏する作用効果も、先願発明の奏する作用効果から当業者が予測できる以上の格別のものとも認められない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第5項で準用する第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成16年9月27日付の手続補正は以上のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年4月2日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「複数の社員の各社員に対応して所属情報及び役職情報を含む人事情報を管理する人事システムに接続されるデータ処理システムであって、書類が承認される複数の承認順序と、各承認順序に対応する承認者の階層を示す承認階層情報とを対応付けて記憶する承認階層情報記憶手段と、書類が承認される複数の承認順序と、各承認順序に対応する承認者の氏名を示す氏名情報とを対応付けて記憶する承認者情報記憶手段と、前記人事システムが送信する発令発生情報を受信すると、前記人事システムが管理する人事情報から所属情報及び役職情報を取り込む所属役職情報取得手段と、前記所属役職取得手段により取り込まれた所属情報及び役職情報に基づいて各社員に対応する上司を示す上司情報を生成する上司情報生成手段と、前記上司情報生成手段により生成された各社員に対応する上司を示す上司情報と前記承認階層情報記憶手段に記憶された複数の承認者の階層を示す承認階層情報に基づいて前記承認者情報記憶手段に記憶された複数の承認者の氏名を更新する承認者情報更新手段と、を備えたことを特徴とするデータ処理システム。」

(1)先願発明
原査定の拒絶の理由に引用された先願発明、及びその他の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「承認階層情報記憶手段」、「承認者情報記憶手段」、「所属役職情報取得手段」、「上司情報生成手段」、及び「承認者情報更新手段」について具体的な限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(3)及び(4)の対比、判断に記載したとおり、先願発明と同一であるから、本願発明も同様の理由により、先願発明と同一である。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が先願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-22 
結審通知日 2007-01-30 
審決日 2007-02-14 
出願番号 特願平10-353312
審決分類 P 1 8・ 161- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 正二  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 青柳 光代
伊知地 和之
発明の名称 データ処理システム及び記録媒体  

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