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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1155260
審判番号 不服2005-22738  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-24 
確定日 2007-04-06 
事件の表示 平成11年特許願第 85447号「カメラのレンズ駆動機構構造」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月 6日出願公開、特開2000-275499〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年3月29日の出願であって、平成17年9月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年11月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。そして、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年8月8日付けの手続補正書(本補正書は、【発明の詳細な説明】の内容のみを補正するものである。)により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「光軸と平行な方向を軸として回動する駆動軸の回動力をレンズを保持させたレンズ枠に伝達して、該レンズを光軸方向に進退させるカメラのレンズ駆動機構構造において、
前記レンズ枠に連繋コマを収容するコマ収容部を設け、
前記駆動軸を前記コマ収容部に挿通させ、
前記コマ収容部に駆動軸を挿通させた状態で前記連繋コマをコマ収容部に収容させて駆動軸に連繋コマを係合させ、駆動軸の回動を該連繋コマを介してレンズ枠に伝達することを特徴とするカメラのレンズ駆動機構構造。」

2.引用例
これに対して原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-122611号公報(以下、「引用例1」という。)には、
「【請求項1】 送りネジを挟持するように位置した歯と抑え片とを有するナット部とガイド軸に案内される被ガイド部とを移動部材に設け、ナット部の歯が送りネジに係合することにより送りネジの回転によりガイド軸に沿って摺動される送りネジ機構であって、上記ナット部を移動部材とは別体に形成してナット部を移動部材に組み付けるようにしたことを特徴とする送りネジ機構。
【請求項2】 上記送りネジ機構をカメラ用レンズ鏡筒の可動型レンズホルダの駆動手段としたことを特徴とする請求項1に記載の送りネジ機構。
【請求項3】 上記ガイド軸と送りネジとが別部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の送りネジ機構。
【請求項4】 上記送りネジがガイド軸を兼ねたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の送りネジ機構。」(【特許請求の範囲】)、

「【0014】
【発明が解決しようとする課題】上記のような送りネジ機構lを用いたカメラ用レンズ鏡筒aの可動型レンズホルダcは、先ず外筐b内へガイド軸kを支持した状態の可動型レンズホルダcを組み込み、次に外筐bの後方より挿入した送りネジnを駆動モータpにより回転させて歯部mに係合させ、その次に駆動モータpを外筐bに固定して組込み作業を完了し、その後に可動型レンズホルダcの位置の調整をする為にもう一度送りネジnを回転させていた為に作業能率が悪かった。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明送りネジ機構は、上記した課題を解決するために送りネジを挟持するように位置した歯と抑え片とを有するナット部とガイド軸に案内される被ガイド部とを移動部材に設け、ナット部の歯が送りネジに係合することにより送りネジの回転によりガイド軸に沿って摺動される送りネジ機構であって、上記ナット部を移動部材とは別体に形成してナット部を移動部材に組み付けるようにしたものである。」(段落【0014】、【0015】)、

「【0017】
【実施例】以下に、本発明送りネジ機構の詳細を図示した実施例に従って説明する。
【0018】1はカメラ用レンズ鏡筒である。
【0019】2はカメラ用レンズ鏡筒の外筐であり、円筒状をした前ハーフ3と該前ハーフ3より稍小さい円筒状をした後ハーフ4とを前後で連結することにより形成されている(図1において左側を前方とし、右側を後方とする)。
【0020】5は第1レンズ群、6は第2レンズ群、7は第3レンズ群、8は第4レンズ群である。
【0021】上記4つのレンズ群5、6、7及び8は、外筐2の前後方向から見た中心を通って前後方向へ延びる光軸XーXを共通にして前側から上記した順序で配列されている。
・・・。
【0026】移動枠16の主部17の前後片にはガイド孔19、19が形成され、取付部18の四隅にはガイド孔19、19と直交する向きに係合突起20、20、・・・が突設されている。
【0027】そして、上記移動枠16の主部17に形成されたガイド孔19、19に前ハーフ3の前面板9と後面板10との間で下方に寄った位置に掛け渡されているガイド軸21が挿通されることにより移動枠16はガイド軸21に対して摺動自在に支持される。
【0028】22は送りネジ機構であり、合成樹脂により形成されたナット部材23と送りネジ24とを有する。
【0029】ナット部材23は、板状をした主部25と該主部25の上下両縁から一の方向に突設された係止片26、26と主部25の略中央に係止片26、26と同じ方向に突出した歯部27と該歯部27の上方に離間して位置した抑え片28及びヒス制御アーム29とが一体に形成されている。
【0030】上記ナット部材23の主部25の四隅には係合孔25a、25a、・・・が形成され、係止片26、26の先端には互いに向かい合う方向に突出された係止爪26a、26aが形成され、該係止爪26a、26aの向かい合う面は傾斜面26b、26bとされ、先端で最も遠く後方に行くに従い段々近くなるように傾斜され、係止爪26a、26aの後端には係止面26c、26cが形成されている。
【0031】歯部27の上面には送りネジ24に係合する為の歯27a、27a、・・・が形成されており、歯部27と抑え片28との間の間隔が送りネジ24の直径と同じか若しくは稍小さく形成されることにより、歯部27と押え片28とが送りネジ24を挟んだ時には、歯部27の歯27a、27a、・・・が送りネジ24に係合するようになっている。
・・・。
【0033】30は駆動モータであり前ハーフ3の後面板10に固定され、その回転軸と連結されている送りネジ24は前ハーフ3の前面板9に固定された軸受31と後面板10に固定された軸受32とに回転自在に支持されることにより、ガイド軸21の直下(L字状に形成された移動枠16の内角側)に位置し、ガイド軸21と平行に延びるように配置される。
【0034】そして、移動枠16の取付部18の開口内に、該取付部18の係合突起20、20、・・・側からナット部材23の歯部27、抑え片28及びヒス制御アーム29を挿入し、送りネジ24を歯部27と抑え片28との間に挟み込むようにし、抑え片28により送りネジ24を抑え付ける力を利用して、歯部27の歯27a、27a、・・・を送りネジ24に係合させる。
【0035】また、移動枠16の取付部18の上下両片にナット部材23の係止片26、26の係止爪26a、26aの傾斜面26b、26bを当接し押し込んで行くと、係止片26、26同士の間が広がる方向へ撓まされる。そして、更に押し込んで行くと、取付部18の上下両片が尽きた所で、撓んでいた係止片26、26が元の状態に戻り、係止爪26a、26aの係止面26c、26cが取付部18の上下両片の反係合突起20、20、・・・側の面に係合する。
【0036】以上のように、移動枠16の取付部18の上下両片に係止片26、26の係止爪26a、26aを係合すると共に、ナット部材23の主部25に形成した係合孔25a、25a、・・・に取付部18の四隅に突設された係合突起20、20・・・を係合させ、移動枠16とナット部材23とを確実に位置決めする。
【0037】そして、駆動モータ30の回転軸に連結されている送りネジ24が回転することにより、送りネジ24と係合している歯部27の歯27a、27a、・・・が送られ、レンズホルダ11が前後方向へ移動される。」(段落【0017】?【0037】)、

「【0045】図6は本発明送りネジ機構の第2の実施例を示すものであり、第1の実施例におけると同様の部分については、第1の実施例における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明を省略する。
【0046】22Aは送りネジ機構であり、合成樹脂により形成されたナット部材23Aと送りネジ24Aとを有する。
【0047】44はレンズホルダ11の下方に突設された保持腕14の先端に形成された移動枠であり、上方から見て反保持腕14側に開口したコ字状をした主部45の先端に側方から見てロ字状をした取付部46の上端寄りの部分が一体に連結されて成る。
【0048】移動枠44の主部45の前後片にはガイド孔47、47が形成され、該ガイド孔47、47に送りネジ24Aが挿通されることにより、移動枠44は送りネジ24Aに対して摺動自在に支持される。
【0049】そして、ナット部材23Aが移動枠44の取付部46に位置決めされることにより、送りネジ24Aを歯部27と押え片28との間に挟み込み、抑え片28により送りネジ24Aを抑え付ける力を利用して、歯部27の歯27a、27a、・・・を送りネジ24Aに係合させる。
【0050】そして、駆動モータ38の回転軸に連結されている送りネジ24Aが回転することにより、該送りネジ24Aと係合している歯部27の歯27a、27a、・・・が送られ、レンズホルダ11が前後方向へ移動される。」(段落【0045】?【0050】)
との記載が認められ、これらの記載によれば、送りネジ機構の第2の実施例は、送りネジがガイド軸を兼ねたものであることから、前記送りネジの回転軸が光軸に平行であることは自明であり、さらに、段落【0050】の「レンズホルダ11が前後方向へ移動」は、「レンズが光軸方向に移動」と同義であることも自明であるから、引用例1には、
「光軸と平行な方向を軸として回転する送りネジ24Aが回転することにより、レンズホルダ11が前後方向へ移動されるカメラ用レンズ鏡筒の送りネジ機構において、
レンズホルダ11にナット部材23Aが位置決めされる移動枠44を設け、
前記移動枠44のガイド孔47、47に送りネジ24Aが挿通され、そして、ナット部材23Aが移動枠44に位置決めされることによりナット部材23Aの歯部27の歯27aを送りネジ24Aに係合させ、送りネジ24Aを回転することによりレンズホルダ11が前後方向へ移動されることを特徴とするカメラ用レンズ鏡筒の送りネジ機構。」
との発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

3.対比・判断
本願発明と引用例1発明を対比すると、引用例1発明の「回転」は、本願発明の「回動」に相当し、以下同様に、「送りネジ24A」は「駆動軸」に、「レンズホルダ11」は「レンズ枠」に、「カメラ用レンズ鏡筒の送りネジ機構」は「カメラのレンズ駆動機構構造」に、「ナット部材23A」は「連繋コマ」に、「移動枠44」は「コマ収容部」に、それぞれ相当し、そして、引用例1発明の「ナット部材23Aの歯部27の歯27aを送りネジ24Aに係合」の上位概念である「ナット部材23Aに係合」は、本願発明の「駆動軸に連繋コマを係合」に、さらに、引用例1発明の「ナット部材23Aが位置決めされる」の上位概念である「ナット部材23Aを取り付ける」は、本願発明の「連繋コマを収容」の上位概念である「連繋コマを取り付ける」に相当するから、両者は、
「光軸と平行な方向を軸として回動する駆動軸の回動力をレンズを保持させたレンズ枠に伝達して、該レンズを光軸方向に進退させるカメラのレンズ駆動機構構造において、
前記レンズ枠に連繋コマを取り付けるコマ収容部を設け、
前記駆動軸を前記コマ収容部に挿通させ、
前記コマ収容部に駆動軸を挿通させた状態で前記連繋コマをコマ収容部に取り付けて駆動軸に連繋コマを係合させ、駆動軸の回動を該連繋コマを介してレンズ枠に伝達することを特徴とするカメラのレンズ駆動機構構造。」である点で一致し、

コマ収容部への連繋コマの取り付けの態様が、本願発明では、「連繋コマを収容する」というものであるのに対して、引用例1発明に記載された発明では、「ナット部材23Aが位置決めされる」というものである点(相違点1)、
で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。

相違点1について、
本願発明の「連繋コマをコマ収容部に収容」は、「収容」という表現により、連繋コマをコマ収容部の内部に収容するものであると認めることができる。
また、本願発明の「連繋コマを収容する」という構成は、駆動軸の回動をレンズ枠に伝達して該レンズを光軸方向に進退させるするために、駆動軸に連繋コマを係合させるための構成であることが認められるものの、例えば、引用例1発明や本願の発明の詳細な説明中に記載された実施例に示される送りネジ機構のような具体的な伝達機構を前提としたものではない。
次に、引用例1発明における「ナット部材23Aが移動枠44に位置決めされる」という点について詳細に検討すると、前記「位置決め」は、図6に示されるように、ナット部材23Aの一部である歯部27を移動枠44の内部に挿入する状態で取付部46の四隅に突設された係合突起20を係合させ、移動枠44とナット部材23Aとを確実に位置決めすることにより、ナット部材23Aが送りネジ24Aの軸方向及び軸と直交する方向のいずれにも位置決めされるというものであるから、引用例1発明のナット部材23Aは、その一部を移動枠44に収容していると認めることができる。
そうすると、コマ収容部への連繋コマの取り付けについて、本願発明の「連繋コマをコマ収容部に収容する」という構成と、引用例1発明の「ナット部材23Aが移動枠44に位置決めされる」という構成とは、格別差異がないというべきである。
結局、この相違点に係る本願発明の構成は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到しえたものと認められる。

そして、本願発明の奏する効果も、引用例1に記載の各技術事項が奏する効果以上のものが期待できるとも認められない。

なお、請求人は、審判請求の請求理由3頁の「(3)本願発明と引用文献の発明との対比」において、
「これに対して本願発明は、前記(a)?(e)項の構成を採用するものであり、特に(b)項?(d)項に示すように、連繋コマをコマ収容部に収容させることによって駆動軸と連繋コマとを係合させる構造である。このため、連繋コマとコマ収容部とは移動方向において規制されることになるが、移動方向と交差する方向についてはこれらは規制を受けずに移動することができる。このため、コマ収容部と連繋コマとの関係は、コマ収容部に連繋コマを収容できて、該連繋コマと駆動軸とが連繋すればよいものであり、高い加工精度は要求されない。」
と主張する。
しかしながら、本願の発明の詳細な説明には、その段落【0012】に「連繋コマ11の光軸方向を臨んだ端縁部の適宜位置には、係止突起部11dが形成されており、この連繋コマ11を収容した状態で該係止突起部11dが臨むコマホルダ6の内壁面には適宜な係止穴が形成されている。」と記載されるように、引用例1発明の、送りネジ24Aの軸方向及び軸と直交する方向のいずれにも位置決めされる構成と同様の構成は示されているものの、請求人の主張に係る前記「連繋コマとコマ収容部とは移動方向において規制されることになるが、移動方向と交差する方向についてはこれらは規制を受けずに移動することができる」ように係合させる構成は何ら示されていないし、本願発明においても何ら特定されていない。
そうすると、前記請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であるから採用することができないものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-13 
結審通知日 2007-01-16 
審決日 2007-01-29 
出願番号 特願平11-85447
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 勇  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 青木 和夫
柏崎 正男
発明の名称 カメラのレンズ駆動機構構造  
代理人 望月 秀人  
代理人 望月 秀人  

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