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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24H
管理番号 1155261
審判番号 不服2006-15390  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-18 
確定日 2007-04-06 
事件の表示 特願2004-272659「ヒートポンプ式給湯装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月27日出願公開、特開2005- 24240〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成13年 2月21日に出願した特願2001-45428号の一部を平成16年 9月21日に新たな特許出願としたものであって、平成18年 6月15日付けで拒絶査定がなされ(平成18年 6月20日発送)、これに対し、同年 7月18日に審判請求がなされたものである。

2.本願発明

本願の請求項1に係る発明は、平成18年 5月30日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された次の事項により特定されるものである(以下、「本願発明」という。)。

「圧縮機、冷媒対水熱交換器及びヒートポンプ熱交換器を冷媒配管によりループ状に接続して成り、かつ、二酸化炭素を冷媒として用いたヒートポンプ冷媒回路と、
縦長な一つの給湯タンク、循環ポンプ及び冷媒対水熱交換器を給湯用水配管によりループ状に接続して成り、給湯タンク内の底部の水を冷媒対水熱交換器に循環させて上記ヒートポンプ冷媒回路の冷媒熱のみで加熱し、この冷媒対水熱交換器で加熱された湯を給湯タンクの天部に戻して給湯タンクに貯溜可能とした給湯用水循環回路とを備えたヒートポンプ式給湯装置であって、
上記給湯タンクの天部に天部出湯配管を接続する一方、上記給湯タンクの中間部に中間部出湯配管を接続し、これら天部出湯配管と中間部出湯配管とを合流部で合流させ、この合流部よりも下流側の給湯配管の途中には、上記合流部で合流した後の給湯配管からの湯と水道水配管からの水道水とを混合させて、利用部での必要温度の湯に調整して、その利用部に供給する混合制御弁を介設し、
上記給湯用水循環回路の給湯用水配管と上記天部出湯配管とは、上記給湯タンクの天部に対し、それぞれ個別に接続されていることを特徴とするヒートポンプ式給湯装置。」

3.引用例

これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-126547号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ「【発明の属する技術分野】本発明はヒートポンプ給湯機に関するものである。
【従来の技術】従来のヒートポンプ給湯機は第1の従来例として特開平1-225838号公報に示す如きものがある。図13において、圧縮機1、凝縮器2、減圧装置3、蒸発器4からなる冷媒回路と、貯湯槽5、循環ポンプ6、上記凝縮器2を接続した給湯回路と、貯湯槽1内の上部に設けたヒータ7と、貯湯槽5の上部および中央部とから各々接続された湯水混合装置8、電動開閉弁9からなり、上記圧縮機1によるヒートポンプ運転で貯湯槽5内部全体を低温湯に沸き上げ、さらに深夜電力を利用して、ヒータ7にて貯湯槽5上部を高温湯に加熱する。そして、通常は電動開閉弁9を閉じて低温湯を貯湯槽5の中央部から湯水混合装置8を介して利用し、高温湯が必要な場合には、電動開閉弁9を開成して高温熱を湯水混合装置8を介して利用する。」(段落【0001】、【0002】)

ロ「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記第1の従来例では、高温湯を出湯した場合に、その出湯停止後には端末(蛇口)までの配管内に高温湯が残り、時間経過とともに配管から放熱し、温度低下する。すなわち、放熱損失が生じるため、その放熱量を余分に沸き上げる必要がある。また、端末で高温湯と市水を混合して適温にする際に、温度調整に手間どり、高温湯をムダに消費する。従って、貯湯槽容量は大きくなるとともに沸き上げるのに必要なエネルギーも増加する。よって、設置スペース、省エネルギー、出湯時の利便性の点で課題を有していた。」(段落【0004】)

以上の記載及び図面によると、引用例1には、
圧縮機、凝縮器及び蒸発器を配管によりループ状に接続して成る冷媒回路と、縦長な一つの貯湯槽、循環ポンプ及び凝縮器を配管によりループ状に接続して成り、貯湯槽の底部の水を凝縮器に循環させて上記冷媒回路の冷媒熱で加熱し、この凝縮器で加熱された湯を貯湯槽の中央部に戻して貯湯槽に貯溜可能とした給湯回路とを備えたヒートポンプ給湯機であって、
上記貯湯槽の上部に上部出湯配管を接続する一方、上記貯湯槽の中央部に配管を接続し、上部出湯配管と中央部に接続した配管とから各々接続されるとともに、端末に湯を供給する湯水混合装置を介設し、
上記給湯回路の給湯用水配管と、上記上部出湯配管とは、上記貯湯槽に対し、それぞれ個別に接続されていることを特徴とするヒートポンプ給湯機(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭55-117991号(実開昭57-40024号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

・「本考案は、補助熱源としての熱源を蓄熱槽に一体化した太陽熱利用熱源一体式給湯機に関するものである。」(第2頁第12?14行)

・「第3図において、11は蓄熱槽1の下部に設けた給水口、12は前記上部給湯口8と下部給湯口9および給水口11を結合する四方弁で、この四方弁12の一部には使用給湯口13を結合している。・・・(中略)・・・。この3図において、使用給湯口13を開くと、下部給湯口9より四方弁12を通って給湯が行われる。・・・、例えば太陽熱集熱部の温度、すなわち下部給湯口9の温度が使用給湯口13における給湯口13からの給湯温度が設定温度より高い時は、・・・、給水口11からの配管通路を開き、この配管通路から給水される水と下部給水口9からの湯とを混合させることにより、使用給湯口13における給湯口13からの給湯温度が設定温度となるようにしている。」(第4頁第18行?第6頁第2行)

・「第4図は本考案の他の実施例を示したもので、14は上部給湯口8と下部給湯口9を結合する第1の三方弁、15は給水口11と第1の三方弁の一部とを結合する第2の三方弁で、この第2の三方弁15の一部には使用給湯口13を結合している。そしてこの第4図の実施例においても、第3図の実施例と同様、下部給湯口9の温度と使用給湯口13における給湯温度調節器の設定温度とを比較し、それに応じて給湯温度調節器が第1の三方弁14および第2の三方弁15を調整して使用給湯口13からの給湯温度が設定温度となるようにしている。」(第6頁第11行?第7頁第2行)

これらの記載及び図面によると、引用例2には、
蓄熱槽の上部及び中央部からの給湯を結合する第1の三方弁を設け、その下流側の配管に、第1の三方弁で混合された後の湯と、蓄熱槽の上部、中央部以外からの、より低温の水とを結合する第2の三方弁を設け、該弁を調整することにより使用給湯口からの給湯温度が設定温度になるようにする技術(以下、「引用例2発明」という。)が記載されている。

4.対比・判断

本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「凝縮器」は本願発明の「冷媒対水熱交換器」に相当し、以下同様に「蒸発器」は「ヒートポンプ熱交換器」に、「配管」は「冷媒配管」に、「冷媒回路」は「ヒートポンプ冷媒回路」に、「貯湯槽」は「給湯タンク」に、「配管」は「給湯用水配管」に、「上部」は「天部」に、「上部出湯配管」は「天部出湯配管」に、「中央部」は「中間部」に、「給湯回路」は「給湯用水循環回路」に、「中央部に接続した配管」は「中間部出湯配管」に、「端末」は「利用部」に、「湯水混合装置」は「混合制御弁」に、「ヒートポンプ給湯機」は「ヒートポンプ式給湯装置」に、それぞれ相当する。

そして、技術常識からみて、引用例1発明の「湯水混合装置」は、「端末」での必要温度の湯に調整して供給するものと考えられる。

したがって、両者は、
圧縮機、冷媒対水熱交換器及びヒートポンプ熱交換器を冷媒配管によりループ状に接続して成るヒートポンプ冷媒回路と、
縦長な一つの給湯タンク、循環ポンプ及び冷媒対水熱交換器を給湯用水配管によりループ状に接続して成り、給湯タンク内の底部の水を冷媒対水熱交換器に循環させて上記ヒートポンプ冷媒回路の冷媒熱で加熱し、この冷媒対水熱交換器で加熱された湯を給湯タンクに戻して給湯タンクに貯溜可能とした給湯用水循環回路とを備えたヒートポンプ式給湯装置であって、
上記給湯タンクの天部に天部出湯配管を接続する一方、上記給湯タンクの中間部に中間出湯配管を接続し、これら天部出湯配管と中間部出湯配管からの湯を混合させ、利用部での必要温度の湯に調整して、その利用部に供給する混合制御弁を介設し、
上記給湯用水循環回路の給湯用水配管と上記天部出湯配管とは、上記給湯タンクに対し、それぞれ個別に接続されていることを特徴とするヒートポンプ式給湯装置
の点で一致し、

次のア?エの点で相違している。
相違点ア
本願発明では、冷媒として二酸化炭素を用いているのに対し、引用例1発明では、冷媒についての記載がない点。

相違点イ
本願発明では、給湯タンク内の水を冷媒熱のみで加熱しているのに対し、引用例1発明では、給湯タンク内の水を冷媒熱で加熱するとともに、給湯タンク内上部に設けたヒータで加熱する点。

相違点ウ
本願発明では、天部出湯配管と中間部出湯配管とを合流部で合流させ、この合流部よりも下流側の給湯配管の配管の途中には、合流部で合流した後の給湯配管からの湯と水道水配管からの水道水とを混合させるのに対し、引用例1発明では、該構成についての記載はない点。

相違点エ
本願発明では、冷媒対水熱交換器で加熱された湯を給湯タンクの天部に戻すと共に、給湯用水循環回路の給湯用水配管と上記天部出湯配管とは、給湯タンクの天部に対し、それぞれ個別に接続されているのに対し、引用例1発明では、冷媒対水熱交換器で加熱された湯を給湯タンクの中間部に戻すと共に、給湯用水循環回路の給湯用水配管と天部出湯配管は、給湯タンクに対し、それぞれ個別に接続されているものとしている点。

そこで、上記相違点について検討する。

まず、相違点アについて検討する。

ヒートポンプ冷媒回路の冷媒として二酸化炭素を用いることは、本件出願前周知の技術である(例えば、原審で拒絶の理由に引用した特開2000-213806号公報「給湯器」における段落【0023】の記載、特開平1-193561号公報「ヒートポンプ」における冷媒についての記載、特開平10-288411号公報「蒸気圧縮式冷凍サイクル」における冷媒についての記載参照。)。

そうすると、引用例1発明において、冷媒として二酸化炭素を用いた点は、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

次に、相違点イについて検討する。

給湯タンク内の水を、冷媒熱のみで加熱するか、冷媒熱で加熱するとともに、給湯タンク内に設けたヒータで加熱するかは、利用する温度に応じて適宜選択できることである。

そうすると、引用例1発明において、給湯タンク内の水を、冷媒熱で加熱するとともに給湯タンク内上部に設けたヒータで加熱することに代えて、冷媒熱のみで加熱するようにした点は、必要に応じて当業者が適宜選択し得た設計的事項である。

次に、相違点ウについて検討する。

引用例2には、給湯タンク(「蓄熱槽」として記載されている。)の天部出湯配管(「上部からの給湯」)と中間部出湯配管(「中央部からの給湯」)とを合流部(「第1の三方弁」)で合流させ、この合流部よりも下流側の給湯配管の途中には、上記合流部で合流した後の給湯配管からの湯と、より低温の水とを混合させて、利用部(「使用給湯口」)での必要温度の湯に調整して、その利用部に供給する混合制御弁(「第2の三方弁」)を介設する技術が開示されている。

また、当該分野において、湯温調整のために水道水配管からの水道水を混合させることは周知の技術(例えば、原審で通知した特開平5-60372号公報「温水器を使った浴槽の湯温管理システム」における「混合栓」についての記載、特開平11-153329号公報「電気温水器」における「湯水混合栓」についての記載参照。)である。

加えて、引用例1において、高温湯と市水を混合して適温にする旨の記載があり(「3.ロ」参照。)、混合湯をさらに水道水と混合することは示唆されている。

そうすると、引用例1発明において、天部出湯配管と中間部出湯配管とを合流部で合流させ、この合流部よりも下流側の給湯配管の配管の途中には、合流部で合流した後の給湯配管からの湯と水道水配管からの水道水とを混合させるものとした点は、引用例2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

さらに、相違点エについて検討する。

ヒートポンプ式給湯器において、冷媒対水熱交換器で加熱された湯を給湯タンクの天部に戻すと共に、給湯用水循環回路の給湯用水配管と上記天部出湯配管とは、給湯タンクの天部に対し、それぞれ個別に接続されているものとした構成は、本件出願前周知の技術である(例えば、特開平11-193958号公報「ヒートポンプ式給湯器」における「貯留槽20」に接続する配管構造の記載、特開2001-41574号公報「給湯機」における「蓄熱タンク16」に接続する配管構造の記載参照。)。

そうすると、引用例1発明において、冷媒対水熱交換器で加熱された湯を、給湯タンクの中間部に戻すことに代えて、給湯タンクの天部に戻すと共に、給湯用水循環回路の給湯用水配管と天部出湯配管は、給湯タンクの天部に対し、それぞれ個別に接続されているものとした点は、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明の奏する作用効果を全体としてみても、引用例1発明、引用例2発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用例1発明、引用例2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例1発明、引用例2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-25 
結審通知日 2007-01-30 
審決日 2007-02-15 
出願番号 特願2004-272659(P2004-272659)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川端 修  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長浜 義憲
佐野 遵
発明の名称 ヒートポンプ式給湯装置  
代理人 小林 武  

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