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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 C08L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 C08L
管理番号 1155288
審判番号 不服2004-25828  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-16 
確定日 2007-04-23 
事件の表示 平成 7年特許願第259246号「絶縁電線」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 3月25日出願公開、特開平 9- 77934、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成7年9月11日の出願であって、平成16年5月7日付けで拒絶理由が通知され、平成16年7月5日に意見書とともに手続補正書が提出され、平成16年8月11日付けで拒絶理由(2回目)が通知され、平成16年10月25日に意見書が提出され、平成16年11月18日付けで、2回目の拒絶理由通知に記載した理由によって拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年12月16日に拒絶査定に対する審判が請求され、平成17年1月14日に手続補正書が提出され、平成17年3月10日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出され、平成17年5月20日付けで前置報告がなされ、これに基づいて平成18年12月7日付けで当審で審尋がなされ、平成18年12月13日に回答書が提出されたものである。

II.平成17年1月14日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成17年1月14日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.手続補正の内容
平成17年1月14日付け手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、特許請求の範囲について
「【請求項1】エチレン-プロピレンゴムを主体とした非極性ポリオレフィンポリマー混合物100重量部に対し、粒子径が600μm以下であり、かつ結晶融点が120℃以上のポリオレフィン粉末20重量部以上200重量部以下を含有する電気絶縁組成物からなる架橋被覆層が導体外周に設けられていることを特徴とする絶縁電線。」を
「【請求項1】エチレン-プロピレンゴムを主体とした非極性ポリオレフィンポリマー混合物100重量部に対し、粒子径が600μm以下であるとともに、所定の温度で溶融し、かつ結晶融点が120℃以上のポリオレフィン粉末20重量部以上200重量部以下を含有することを特徴とする電気絶縁組成物。
【請求項2】請求項1に記載の電気絶縁組成物からなる架橋被覆層が導体外周に設けられていることを特徴とする絶縁電線。」と補正するものである。
2.本件手続補正の適否について
本件手続補正は、補正前の請求項1の「絶縁電線」に係る発明を、請求項1の「電気絶縁組成物」および請求項2の「絶縁電線」の2つの請求項とするものである。
そして、このように請求項の数を増加させる補正は、特許法第17条の2第4項の各号に規定する、請求項の削除(第1号)、特許請求の範囲の限定的減縮(第2号)、誤記の訂正(第3号)、明りょうでない記載の釈明(第4号)のいずれにも該当しないものと認められるから、当該規定に適合しない。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
上記II.で示したように、平成17年1月14日付け手続補正は却下されたから、本願請求項1に係る発明は、平成16年7月5日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】エチレン-プロピレンゴムを主体とした非極性ポリオレフィンポリマー混合物100重量部に対し、粒子径が600μm以下であり、かつ結晶融点が120℃以上のポリオレフィン粉末20重量部以上200重量部以下を含有する電気絶縁組成物からなる架橋被覆層が導体外周に設けられていることを特徴とする絶縁電線。」(以下、「本願発明」という。)

2.原査定の拒絶理由の概要
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された刊行物である特開平6-68714号公報に記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。

3.当審の判断
(1)刊行物に記載された事項
拒絶理由通知に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-68714号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がされている。
「【請求項1】導体外周に設けられた絶縁層が、架橋ポリオレフィン粉末1?30重量%と未架橋ポリオレフィン99?70重量%からなる混和物の樹脂分100重量部に対して有機過酸化物1?3重量部を含有する架橋性樹脂組成物の架橋体で形成されていることを特徴とする架橋ポリオレフィン絶縁電気ケーブル。
【請求項3】前記架橋ポリオレフィン粉末の平均粒子径が100μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の架橋ポリオレフィン絶縁電気ケーブル。」(特許請求の範囲)
「【0005】【発明が解決しようとする課題】しかし、再利用となると架橋されたポリオレフィンは三次元ネットワーク構造故に溶融せず、押出加工出来ないことから、電気ケーブル等の被覆成形体へのそのままの再利用は不可能であった。」(段落【0005】)
「【0010】本発明における架橋ポリオレフィンの主成分は、低、中、高密度の各種ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよびエチレン-プロピレンゴムのいずれか1種もしくは2種以上の混合物の架橋体からなる。」(段落【0010】)
「【0014】未架橋ポリオレフィンの主成分は、低、中、高密度の各種ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよびエチレン-プロピレンゴムのいずれか1種もしくは2種以上の混合物からなる。」(段落【0014】)

(2)判断
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、
「エチレン-プロピレンゴムを主体とした非極性ポリオレフィンポリマー混合物100重量部に対し、粒子径が100μm以下であるポリオレフィン粉末20重量部以上42重量部以下を含有する電気絶縁組成物からなる架橋被覆層が導体外周に設けられている絶縁電線」の点で一致し、次の点で相違している。
相違点
ポリオレフィン粉末について、本願発明が、「結晶融点が120℃以上」としているのに対し、刊行物1に記載された発明では、格別明記していない点
この相違点について検討する。
刊行物1には、再利用となると架橋されたポリオレフィンは三次元ネットワーク構造故に溶融せず、押出加工出来ないことから、電気ケーブル等の被覆成形体へのそのままの再利用は不可能であった、と記載され、架橋ポリオレフィンは溶融しないことが記載されている。
しかしながら、これは、押出加工時において溶融しないことを示しているのか、あるいはそれ以外の加工時に溶融しないことを示しているのか明らかでなく、しかも、溶融した場合の温度は記載がされていないのみならず、溶融時の温度が結晶融点と同一の物性であるかどうかも明らかではない。
一方、本件発明は、結晶融点とはASTMD2117の試験方法に準拠して測定した値であることが記載されている。
そうすると、刊行物1に記載されている「再利用となると架橋されたポリオレフィンは三次元ネットワーク構造故に溶融せず、押出加工出来ない」と記載はされているとしても、この記載から、刊行物1に記載の架橋ポリオレフィン粉末が「結晶融点が120℃以上」のポリオレフィン粉末に該当するということはできない。
したがって、本願発明は刊行物1に記載された発明であるということはできない。

IV.むすび
以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2007-03-28 
出願番号 特願平7-259246
審決分類 P 1 8・ 113- WY (C08L)
P 1 8・ 572- WY (C08L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 天野 宏樹倉成 いずみ三谷 祥子  
特許庁審判長 一色 由美子
特許庁審判官 船岡 嘉彦
渡辺 陽子
発明の名称 絶縁電線  

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