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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680110 審決 特許
無効200680187 審決 特許
無効200680009 審決 特許
無効200680130 審決 特許
無効200680238 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F24F
管理番号 1155883
審判番号 無効2006-80070  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-04-18 
確定日 2007-03-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3745669号発明「空気調和機の凝縮器の補助冷却装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3745669号の請求項1?9に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3745669号に係る発明は、平成13年10月19日に特許出願され、平成17年12月2日に、請求項1?9に係る発明について特許権の設定登録がされたものである。
これに対して、平成18年4月18日に、因幡電機産業株式会社から、請求項1?9に係る特許について特許無効審判が請求され、特許権者たる株式会社ダイキン工業株式会社及びオーケー器材株式会社に対し審判請求書副本を送達して答弁書提出の機会を与えたところ、平成18年7月21日付けで答弁書並びに訂正請求書及び訂正明細書が提出された。そこで、特許無効審判請求人に対して、平成18年8月11日付け(発送日:同年8月16日)で、上記答弁書の副本並びに訂正請求書及び訂正明細書の副本を送付したところ、平成18年10月2日付けで弁駁書が提出された。
そして、平成18年12月14日に大阪市淀川区西宮原1-3-35の「大阪ガーデンパレス」において口頭審理がなされ、口頭審理の後、書面審理に切り換えて審理されたものである。
なお、特許権者に対して、弁駁書の副本を送付して意見を求めたが、意見書等の提出はなかった。


第2 訂正の適否についての判断
訂正請求について、訂正の適否を検討する。
1.訂正の内容
特許権者の提出した訂正請求書の請求の趣旨は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求める、というものであり、訂正の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
請求項1の末尾の段落における「前記インバータ回路」の後に「への給電をオンオフする電源スイッチ」を挿入する。

(2)訂正事項2
(A) 請求項3の第4段落における「前記インバータ回路」の後に「への給電をオンオフする電源スイッチ」を挿入する。
(B) 請求項3の末尾の段落における「前記インバータ回路」を「前記電源スイッチ」に変更する。

(3)訂正事項3
段落番号【0016】を次のとおりに訂正する。
「【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の局面の補助冷却装置は、空気調和機の凝縮器に水を噴霧する水噴霧手段と、空気調和機の稼動状態を検知する検知手段と、空気調和機の圧縮機への給電を制御するインバータ回路と、このインバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され、検知手段が検知した空気調和機の稼動状態に応じて水噴霧手段への給水を制御する給水制御手段とを備える(請求項1)。」

(4)訂正事項4
段落番号【0018】を次のとおりに訂正する。
「【0018】
上記の給水制御手段には、マイコンボード、パソコンなどの制御手段と電磁バルブとを組み合わせたものなどを用いることができる。給水制御手段が前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側から電力を供給されるので、この補助冷却装置は、インバータ搭載圧縮機などどのようなタイプの圧縮機からも電力を得ることができる。この結果、上記補助冷却装置は適用機種を拡大して、広範な機種の空気調和機の省エネルギおよび能力増強に寄与することができる。」

(5)訂正事項5
段落番号【0025】を次のとおりに訂正する。
「【0024】
本発明の第2の局面の室外機の補助冷却装置は、空気調和機の凝縮器に水を噴霧する水噴霧手段と、空気調和機の稼動状態を検知する検知手段と、空気調和機の圧縮機への給電を制御するインバータ回路と、このインバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され、水噴霧手段への給水を制御する給水制御手段と、検知手段が検知した空気調和機の稼動状態に応じて前記電源スイッチのインバータ回路の電源入力側から給水制御手段にいたる給電経路を遮断する電力遮断手段とを備える(請求項3)。」
なお、特許前に平成17年10月7日付け手続補正書によって削除された段落があったため、今回の訂正で明細書の段落番号を付け直している。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
給水制御手段の接続箇所が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側」であることを構成を限定して明確にしたものであるから、特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この点は、発明の詳細な説明の段落番号【0047】の記載、並びにその段落で引用される図2及び段落【0045】の記載に基づく事項であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
(A) 訂正事項2の(A)は、給水制御手段の接続箇所が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側」であることを構成を限定して明確にしたものであるから、特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この点は、図9の記載、及びそれに対応する図2、発明の詳細な説明の実施の形態1の段落番号【0047】の記載、並びにその段落で引用される図1及び段落【0045】の記載に基づく事項であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものでもない。
(B)訂正事項2の(B)は、上記訂正事項(A)によって給水制御手段の接続箇所が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側」と訂正されたことに伴って、電力遮断手段が遮断するのは「前記電源スイッチの電源入力側から給水制御手段にいたる給電経路」であることを明確にしたものであるから、特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この点は、図9の記載、発明の詳細な説明の段落【0063】?【0065】の記載に基づく事項であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものでもない。

(3)訂正事項3,4について
訂正事項3,4は、いずれも、上記訂正事項1によって請求項1が訂正されたのに伴い、明細書の段落【0016】、【0018】の記載が整合性を失って不明りょうになるのを避けるために、段落【0016】、【0018】の記載を訂正後の請求項1の記載に整合するように訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものでもない。

(4)訂正事項5について
訂正事項5は、上記訂正事項2によって請求項3が訂正されたのに伴い、明細書の段落【0025】の記載が整合性を失って不明りょうになるのを避けるために、段落【0025】(訂正後の段落【0024】)の記載を訂正後の請求項3の記載に整合するように訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものでもない。

3.まとめ
以上のとおりであるから、上記各訂正事項は、特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。
よって、特許権者が請求した訂正を認める。


第3 本件特許発明
「第2」に記載のとおり、上記訂正が認められたので、特許第3745669号に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された次のとおりのものである(以下、「本件特許発明1」?「本件特許発明9」という。)。

「 【請求項1】 空気調和機の凝縮器(35)に水を噴霧する水噴霧手段(3)と、
前記空気調和機の稼動状態を検知する検知手段(Th2,22a、25)と、
前記空気調和機の圧縮機への給電を制御するインバータ回路(33b)と、
前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され、前記検知手段が検知した前記空気調和機の稼動状態に応じて前記水噴霧手段への給水を制御する給水制御手段(2,SV)とを備える、空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。
【請求項2】 外気温を検知する外気温検知手段(Th1)をさらに備え、前記給水制御手段は、前記空気調和機の稼動状態および前記外気温に応じて前記水噴霧手段への給水を制御する、請求項1に記載の空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。
【請求項3】 空気調和機の凝縮器(35)に水を噴霧する水噴霧手段(3)と、
前記空気調和機の稼動状態を検知する検知手段(22a,25)と、
前記空気調和機の圧縮機に備えられたインバータ回路(33b)と、
前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され、前記水噴霧手段への給水を制御する給水制御手段(2,SV)と、
前記検知手段が検知した前記空気調和機の稼動状態に応じて前記電源スイッチの前記インバータ回路の電源入力側から前記給水制御手段にいたる給電経路を遮断する電力遮断手段(22b,25)とを備える、空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。
【請求項4】 外気温を検知する外気温検知手段(Th1)をさらに備え、前記給水制御手段は、前記外気温に応じて前記水噴霧手段への給水を制御する、請求項3に記載の空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。
【請求項5】 前記検知手段と前記電力遮断手段とが一体化された状態値検知スイッチ(22,25)を備える、請求項3または4に記載の空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。
【請求項6】 前記検知手段は、前記空気調和機における冷媒状態値を検知するものである、請求項1?5のいずれかに記載の空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。
【請求項7】 前記検知手段は、前記空気調和機における圧縮機の駆動状態を検知するものである、請求項1?5のいずれかに記載の空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。
【請求項8】 前記検知手段が、前記圧縮機と前記凝縮器との間の配管に外付けされた温度検知器(Th2,22a,25)である、請求項6または7に記載の空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。
【請求項9】 前記検知手段が、前記圧縮機から前記凝縮器にいたる配管内に配置された圧力検知器(25)である、請求項6または7に記載の空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。 」


第4 当事者の主張
1.特許無効審判請求人の主張の概要
特許無効審判請求人(以下、「請求人」という。)は、審判請求書において、甲第1号証?甲第10号証を提出するとともに、概略次のような無効理由を主張している。
なお、請求人は、審判請求書における新規性に関する主張及び平成18年10月2日付け弁駁書における無効理由15に関する主張は、撤回している(「第1回口頭審理調書」参照)。

(1)無効理由1
本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明と甲第2,5,6号証に記載される周知技術(インバータ回路との接続技術)とに基づいて当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

(2)無効理由2
本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明と甲第1,3,4号証に記載される周知技術(凝縮器に対する水噴霧)とに基づいて当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

(3)無効理由3
本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明と甲第2,5,6号証に記載される周知技術(インバータ回路との接続技術)とに基づいて当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

(4)無効理由4
本件特許発明1は、甲第4号証に記載された発明と甲第2,5,6号証に記載される周知技術(インバータ回路との接続技術)とに基づいて当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

(5)無効理由5
本件特許発明2は、甲第3,5号証に記載される発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

(6)無効理由6
本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明とに基づいて当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

(7)無効理由7
本件特許発明3は、甲第2号証に記載された発明と甲第1,3,4号証に記載される周知技術(凝縮器に対する水噴霧)とに基づいて当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

(8)無効理由8
本件特許発明3は、甲第3号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明とに基づいて当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

(9)無効理由9
本件特許発明4は、本件特許発明3の想到容易性を裏付ける甲号証に加え、甲第3,5号証に記載される発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

(10)無効理由10
本件特許発明5は、本件特許発明3又は本件特許発明4の想到容易性を裏付ける甲号証に加え、甲第7,8号証に記載される発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

(11)無効理由11
本件特許発明6は、本件特許発明1?5の想到容易性を裏付ける甲号証に加え、甲第3,4,6,7?10号証に記載される周知技術に基づいて当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

(12)無効理由12
本件特許発明7は、本件特許発明1?5の想到容易性を裏付ける甲号証に加え、甲第1?4号証に記載される周知技術に基づいて当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

(13)無効理由13
本件特許発明8は、本件特許発明6又は本件特許発明7の想到容易性を裏付ける甲号証に加え、甲第3,8,9,10号証(とくに甲第9,10号証)に記載される周知技術に基づいて当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

(14)無効理由14
本件特許発明9は、本件特許発明6又は本件特許発明7の想到容易性を裏付ける甲号証に加え、甲第3,4,7号証に記載される周知技術に基づいて当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

また、特許権者(特許無効審判被請求人)の訂正請求に対して、請求人は、甲第11号証?甲第18号証を追加する平成18年10月2日付け弁駁書を提出し、甲第2,11?13号証に示されるように、凝縮器に対する水噴霧手段等への給水を給水制御手段により制御する空気調和機において、「圧縮機への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に給水制御手段を接続すること」及び「その給水制御手段を空気調和機の稼働状態に応じて給水制御させること」が周知技術であり、また、甲第2,14?18号証に示されるように、空気調和装置やそれと同類の冷凍装置において「圧縮機への給電を制御するインバータ回路を設ける場合に、そのインバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチを設けること」が当業者が適宜選択し得る設計的事項ともいうべき常套の周知技術であり、訂正後の発明の限定事項である「圧縮機に対するインバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に給水制御手段を接続す」ることは、周知技術の単なる寄せ集めにすぎず、訂正後の請求項1,3記載の発明、及び、それに従属する請求項2,4?9記載の発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、依然として特許無効の理由を回避していない、と主張する。
なお、甲11?18号証の追加は、技術水準を示すためのものであるので、審判請求書の要旨を変更するものには当たらない。

[証拠方法]
(1) 甲第1号証 :特開昭57-192756号公報
(2) 甲第2号証 :特開平4-177040号公報
(3) 甲第3号証 :特開2000-274843号公報
(4) 甲第4号証 :特開2000-205665号公報
(5) 甲第5号証 :実開平2-70135号及び全文明細書
(6) 甲第6号証 :特開昭62-284151号公報
(7) 甲第7号証 :特開平10-26426号公報
(8) 甲第8号証 :特開平7-27429号公報
(9) 甲第9号証 :米国特許第4,290,274号明細書
(10)甲第10号証:特開平8-100957号公報
(11)甲第11号証:実開昭63-22567号公報及び実願昭61-115582号(実開昭63-22567号)のマイクロフィルム
(12)甲第12号証:特開2000-65409号公報
(13)甲第13号証:実願平3-78859号(実開平5-22114号)のCD-ROM
(14)甲第14号証:特開平7-293981号公報
(15)甲第15号証:特開平2-154945号公報
(16)甲第16号証:特開昭62-258965号公報
(17)甲第17号証:特開平1-300076号公報
(18)甲第18号証:特開平5-18617号公報

2.特許無効審判被請求人の主張の概要
特許無効審判被請求人(以下、「被請求人」という。)は、前述した訂正を請求すると共に、答弁書において、概略次のように反論している。

(1)無効理由1について
甲第1号証には「インバータ回路」という明示の記載がない。しかも、請求人が認めているように、『水噴霧手段(散水装置6)に対する給水制御手段(リレー接点X1と外気温サーモ12とスプレー用電磁弁V1との直列回路)をインバータ回路の電源入力側に接続する構成が明示されていない』。それどころか、甲第1号証の第2図に記載のものでは、給水制御手段(リレー接点X1と外気温サーモ12とスプレー用電磁弁V1との直列回路)は、運転スイッチ16の2次側(つまり、電源出力側)に接続されている。
したがって、甲第1号証には、給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」ている点を記載も示唆もされていない。
甲第1号証に記載のものは、給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」た構成によって、「この補助冷却装置は、インバータ搭載圧縮機などどのようなタイプの圧縮機からも電力を得ることができる。」等の作用効果を奏するようにした本件特許発明1とは、実質的に全く相違している。
甲第2号証に記載されている給水制御バルブ制御回路は、「前記開閉スイッチの開閉状態に対応して前記給水バルブの開閉制御を行う」もの(特許請求の範囲)であり、本件特許発明1の「インバータ回路の前段から常に給電される」ようになっているものとは全く相違している。甲第2号証に記載されている給水バルブ制御回路は、制御線19cが開閉スイッチ(上記マグネットスイッチ13)の2次側に接続されているお蔭で『前記開閉スイッチの開閉状態に対応して前記給水バルブの開閉制御を行う』ようになっている。してみれば、甲第2号証に記載の発明と、本件請求項1に係る発明、すなわち、給水制御手段が『前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され』た構成にして、給水制御手段が『インバータ回路の前段から常に給電される』ようにした発明とは、技術の方向性が全く正反対である。
また、甲第5号証には、とくにその第2図にインバータ回路(整流回路11,モジュール9)の電源入力側に接続されたユニット制御部14が記載されているが、電源10とインバータ回路11,9との間に「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチ」が記載も示唆もされていない。したがって、甲第5号証は、給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」ている点を記載も示唆もしていない。
同様に、甲第6号証には、特にその第2図にインバータ回路35の電源入力側に接続された制御部35が記載されているが、電源30とインバータ回路35との間に「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチ」が記載も示唆もされていない。したがって、甲第5号証は、給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」ている点を記載も示唆もしていない。既述のように、甲第1号証には、給水制御手段が『前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され』ている点は記載も示唆もされていない。
このように、甲第1,2,5,6号証には、本件特許発明1の最も重要な特徴が全く記載も示唆もされていないので、当業者が甲第1,2,5,6号証を組み合わせても、本件特許発明1、すなわち、給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」た構成にして、給水制御手段が「インバータ回路の前段から常に給電される」ようにした発明を容易に導くことはできない。
したがって、本件特許発明1は、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。
よって、請求人が主張する無効理由1には根拠がない。

(2)無効理由2について
甲第3号証には、インバータ圧縮機1Aに対する給電経路及び補助冷却手段29のシャワーノズル33を駆動する電磁弁32に対する給電経路が全く記載されていず、当然ながら、インバータ圧縮機1Aに対する給電をオンオフする電源スイッチについての記載もない。したがって、本件特許発明1の最も重要な特徴である給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」た点が、全く記載も示唆もされていない。
同様に、甲第4号証には、能力制御回路73と散水装置60とに対する給電経路とに対する給電経路が全く記載されていず、本件特許発明1の最も重要な特徴である給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」た点が、全く記載も示唆もされていない。
既述のように、甲第1,2号証には、給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」ている点を記載も示唆もされていない。
このように、甲第1?4号証には、本件特許発明1の最も重要な特徴が全く記載も示唆もされていないので、当業者が甲第2号証に甲第1,3,4号証を組み合わせても、本件特許発明1を容易に導くことはできない。
したがって、本件特許発明1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。
よって、請求人が主張する無効理由2には根拠がない。

(3)無効理由3について
既述のように、甲第2,3,5,6号証には、本件特許発明1の最も重要な特徴が全く記載も示唆もされていないので、当業者が甲第3号証に甲第2,5,6号証を組み合わせても、本件特許発明1を容易に導くことはできない。
したがって、本件特許発明1は、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。
よって、請求人が主張する無効理由3には根拠がない。

(4)無効理由4について
既述のように、甲第2,4,5,6号証には、本件特許発明1の最も重要な特徴が全く記載も示唆もされていないので、当業者が甲第4号証に甲第2,5,6号証を組み合わせても、本件特許発明1を容易に導くことはできない。
したがって、本件特許発明1は、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。
よって、請求人が主張する無効理由4には根拠がない。

(5)無効理由5について
基本となる本件特許発明1が甲第3,5号証及び既に述べた甲第2,4,6号証に記載された発明から容易想到のものではない以上、本件特許発明1に別の構成要素を付加して特有の作用効果を奏するようにした本件特許発明2も、甲第3,5号証及び甲第2,4,6号証記載された発明から容易想到のものではない。
したがって、本件特許発明2は、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。
よって、請求人が主張する無効理由5には根拠がない。

(6)無効理由6について
甲第1号証に記載のものは、給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」た構成によって、「この補助冷却装置は、インバータ搭載圧縮機などどのようなタイプの圧縮機からも電力を得ることができる。」等の作用効果を奏するようにした発明とは、全く相違している。
甲第2号証に記載されている給水制御バルブ制御回路は、「前記開閉スイッチの開閉状態に対応して前記給水バルブの開閉制御を行う」もの(特許請求の範囲)であり、本件特許発明1の「インバータ回路の前段から常に給電される」ようになっているものとは全く相違している。
甲第1号証には、給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」ている点を記載も示唆もされていない。
このように、甲第1,2号証には、本件特許発明3の最も重要な特徴が全く記載も示唆もされていないので、当業者が甲第1,2号証を組み合わせても、本件特許発明3を容易に導くことはできない。
したがって、本件特許発明2は、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。
よって、請求人が主張する無効理由6には根拠がない。

(7)無効理由7について
甲第3号証には、インバータ圧縮機1Aに対する給電経路及び補助冷却手段29のシャワーノズル33を駆動する電磁弁32に対する給電経路が全く記載されていず、当然ながら、インバータ圧縮機1Aに対する給電をオンオフする電源スイッチについての記載もない。したがって、本件特許発明3の最も重要な特徴である給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」た点が、全く記載も示唆もされていない。
同様に、甲第4号証には、能力制御回路73と散水装置60とに対する給電経路とに対する給電経路が全く記載されていず、本件特許発明3の最も重要な特徴である給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」た点が、全く記載も示唆もされていない。
既述のように、甲第1,2号証には、給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」ている点を記載も示唆もされていない。
このように、甲第1?4号証には、本件特許発明3の最も重要な特徴が全く記載も示唆もされていないので、当業者が甲第2号証に甲第1,3,4号証を組み合わせても、本件特許発明3を容易に導くことはできない。
したがって、本件特許発明3は、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。
よって、請求人が主張する無効理由7には根拠がない。

(8)無効理由8について
既述のように、甲第2,3号証には、本件特許発明3の最も重要な特徴が全く記載も示唆もされていないので、当業者が甲第3号証及び甲第2号証を組み合わせても、本件特許発明3を容易に導くことはできない。
したがって、本件特許発明3は、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。
よって、請求人が主張する無効理由8には根拠がない。

(9)無効理由9について
甲第3号証には、インバータ圧縮機1Aに対する給電経路及び補助冷却手段29のシャワーノズル33を駆動する電磁弁32に対する給電経路が全く記載されていず、また、補助冷却手段29のシャワーノズル33を駆動する電磁弁32に対する給電経路が全く記載されていない。当然ながら、インバータ圧縮機1Aに対する給電をオンオフする電源スイッチについての記載もない。したがって、甲第3号証には、本件特許発明1の最も重要な特徴である給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」た点が、全く記載も示唆もされていない。
また、甲第5号証には、特にその第2図にインバータ回路(整流回路11,モジュール9)の電源入力側に接続されたユニット制御部14が記載されているが、電源10とインバータ回路11,9との間に「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチ」が記載も示唆もされていない。したがって、甲第5号証は、給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」ている点を記載も示唆もしていない。
このように、甲第3,5号証及び既に述べた甲第1,2号証には、本件特許発明4の最も重要な特徴が全く記載も示唆もされていないので、当業者が甲第3号証及び甲第2号証並びに甲第1,2,4号証を組み合わせても、本件特許発明3を容易に導くことはできない。
したがって、本件特許発明4は、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。
よって、請求人が主張する無効理由9には根拠がない。

(10)無効理由10について
甲第7号証に記載された圧力スイッチ8や甲第8号証に記載された感熱筒7は、本件特許発明5における「状態値検知スイッチ」として把握されるかも知れないが、これらの甲第7,8号証は、既に述べた甲第1?6号証と同様に、本件特許発明5が引用する本件特許発明3又は4の最も重要な特徴である給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」た点が、全く記載も示唆もしていない。
したがって、本件特許発明3又は4に別の構成要素を付加して特有の作用効果を奏するようにした本件特許発明5も、甲第7,8号証及び甲第1?6号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、本件特許発明5は、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。
よって、請求人が主張する無効理由10には根拠がない。

(11)無効理由11について
甲第9号証に記載された熱プローブ又はサーミスタ24や甲第10号証に記載された冷媒温度の検知器41は、本件特許発明6における「前記空気調和機における冷媒状態値を検知するもの」として把握されるかも知れないが、これらの甲第9,10号証は、既に述べた甲第1?8号証と同様に、本件特許発明6が引用する本件特許発明1?5の最も重要な特徴である給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」た点が、全く記載も示唆もしていない。
したがって、本件特許発明1?5に別の構成要素を付加して特有の作用効果を奏するようにした本件特許発明6も、甲第9,10号証及び甲第1?8号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、本件特許発明6は、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。
よって、請求人が主張する無効理由11には根拠がない。

(12)無効理由12について
甲第1?4号証は、既に述べた甲第5?10号証と同様に、本件特許発明7が引用する本件特許発明1?5の最も重要な特徴である給水制御手段が「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」た点が、全く記載も示唆もしていない。
したがって、本件特許発明1?5に別の構成要素を付加して特有の作用効果を奏するようにした本件特許発明7も、甲第1?4号証及び甲第5?10号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、本件特許発明7は、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。
よって、請求人が主張する無効理由12には根拠がない。

(13)無効理由13について
甲第3,8,9,10号証(とくに甲第9,10号証)には、本件特許発明8における「前記圧縮機と前記凝縮器との間の配管に外付けされた温度検知器」に相当するものが記載されているといえるかも知れないが、基本となる(本件特許発明8が引用する)本件特許発明6又は7が甲第1?10号証に記載された発明から容易想到のものでない以上、本件特許発明6又は7に別の構成要素を付加して特有の作用効果を奏するようにした本件特許発明8も、甲第1?10号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、本件特許発明8は、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。
よって、請求人が主張する無効理由13には根拠がない。

(14)無効理由14について
甲第3,4,7号証には、本件特許発明9における「前記圧縮機と前記凝縮器との間の配管内に配置された圧力検知器」に相当するものが記載されているといえるかも知れないが、基本となる(本件特許発明8が引用する)本件特許発明6又は7が甲第1?10号証に記載された発明から容易想到のものでない以上、本件特許発明6又は7に別の構成要素を付加して特有の作用効果を奏するようにした本件特許発明9も、甲第1?10号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、本件特許発明9は、特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。
よって、請求人が主張する無効理由14には根拠がない。


第5 特許の無効性についての当審の判断
1.甲号各証に記載された事項

(1)甲第1号証に記載された事項
請求人の提出した甲第1号証(特開昭57-192756号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。

ア.「容量可変型圧縮機、四方弁、空冷式室外側熱交換器、減圧素子、室内側熱交換器を循環状に接続して前記四方弁の切換えにより冷暖房運転を行うヒートポンプ式空気調和機に於いて、冷房時前記容量可変型圧縮機が大容量で運転され且つ外気温度が設定温度以上にある時前記空冷式室外側熱交換器に散水装置でスプレーし、暖房時この散水装置内の水を抜くようにしたことを特徴とする空冷ヒートポンプ式空気調和機。」(特許性球の範囲)

イ.「第1図は空冷ヒートポンプ式空気調和機の冷媒回路図で、(1)は電磁弁(SO)(S1)(S2)(S3)4個を備え、25%乃至100%運転可能なアンローダ機構を有する容量可変型圧縮機」(第1頁右下欄12行目?15行目)

ウ.「(6)は空冷式室外側熱交換器(3)に市水をスプレー散布する散水装置、(V1)は該装置に市水を導入停止させるスプレー用電磁弁」(第2頁左上欄1行目?3行目)

エ.「第2図は空冷ヒートポンプ式空気調和機の電気回路図で、圧縮機(1)のマグネットリレー(Mg)と電磁弁(S1)(S2)(S3)は4段室温サーモ(7)の接点(8)(9)(10)(11)と直列接続され、この直列回路と並列に電磁弁(S0)が接続されている。又、スプレー用電磁弁(V1)は外気温度が設定温度TAの30℃以上になると閉じる外気温サーモ(12)と、電磁弁(S2)と並列接続されたリレー巻線(X)のリレー接点(X1)とを介して冷暖房切換スイッチ(13)の冷房端子(14)に直列接続されており、このスイッチ(13)の暖房端子(15)に水抜き用電磁弁(V2)を接続している。(16)は運転スイッチ、(Y)は四方弁(2)の励磁巻線、(17)は電源である。」(第2頁左上欄6行目?18行目)

オ.「この25%並びに50%容量によるアンロード運転中は外気温度が高くても冷媒の高圧圧力が上昇する虞れがない為、不必要に散水装置(6)を働かせて市水を無駄に使用するのを避けている。即ち第2図に於いて外気温サーモ(12)が投入されてもリレー巻線(X)の非励磁によりこのリレー接点(X1)は開放されているのでスプレー用電磁弁(V1)は閉じており、これは第3図に示すロード≧75のNO信号に相当している。
更に室内負荷が上昇して室内サーモ(7)の接点(10)が投入追加されると電磁弁(S0)(S1)の他に電磁弁(S2)も新たに励磁されて容量可変型圧縮機(1)は75%の大容量で運転され、冷房運転が続行される。斯かる運転中、リレー巻線(X)の励磁によりリレー接点(X1)は投入されており、外気温度が設定温度TA以上になると、外気温サーモ(12)が投入されてスプレー用電磁弁(V1)が開き、市水が水道圧により散水装置(6)から空冷式室外側熱交換器(3)にスプレー散布され、冷却促進される。この冷却効果により高圧冷媒圧力の上昇が押さえられて冷房能力と成績係数がアップし、省エネルギー運転が行われる。」(第2頁左下欄1行目?右下欄2行目)

カ.「尚、容量可変型圧縮機(1)はアンロード機構でなく、極数変換、周波数制御等によるものでも良い。」(第3頁左上欄5行目?8行目)

また、第2図には、「冷暖房切換スイッチ(13)とリレー接点(X1)と外気温サーモ(12)とスプレー用電磁弁(V1)との直列回路をアンロード機構(Mg)(S1)(S2)(S3)(S0)(7?11)の電源入力側に接続すること」も示されている。

(2)甲第2号証に記載された事項
同じく甲第2号証(特開平4-177040号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。

ア.「室外機を通る冷媒配管に水熱交換器を配設し、この水熱交換器へ給水バルブを介して給水を行う空気調和装置において、
室内側からの運転開始指令信号及び運転停止指令信号に基いて、主電源からの電力供給及びその供給停止をコンプレサモータ制御用インバータに対して行う開閉スイッチと、
前記開閉スイッチの開閉状態に対応して前記給水バルブの開閉制御を行う給水バルブ制御回路と、を備えたことを特徴とする空気調和装置。」(特許請求の範囲)

イ.「この空気調和装置は、大別すると、室内機1,2、マルチコントローラ3、室外機4から構成されている。室外機4内のコンプレッサ5は、コンプレッサモータ6で駆動されるようになっており、また、冷媒配管途中には水冷式の熱交換器7,8,9が配設されている。
この水熱交換器7,8,9には、給水バルブとしてのボールバルブBVを介して給水が行なわれるようになっている。」(第1頁右下欄7行目?15行目)

ウ.「本発明は上記課題を解決するための手段として、室外機を通る冷媒配管に水熱交換器を配設し、この水熱交換器へ給水バルブを介して給水を行う空気調和装置において、」(第2頁左上欄17行目?20行目)

エ.「第1図は本実施例における空気調和装置の構成を示すブロック図である。この図において、コンプレッサ5はコンプレッサモータ6により駆動され、コンプレッサモータ6は、コンバータ部10及びインバータ部11を有するインバータ装置12により可変速制御されるようになっている、インバータ装置12は開閉スイッチであるマグネットスイッチ13を介して交流電源14に接続されている。」(第2頁左下欄1行目?9行目)

オ.「一方、マグネットスイッチ13の1次側にはボールバルブ制御回路(給水バルブ制御回路)19の電源線19a、19bが接続され、2次側には制御線19cが接続されている。このボールバルブ制御回路19は、リレー20,リミットスイッチ21,22,平コイル23,開コイル24等により構成されており、」(第2頁左下欄20行目?右下欄6行目)

カ.「ここで、ボールバルブ制御回路19の動作につき説明しておく。第1図に示す状態では、電源線19a、リレー20の接点(b端子側)、リミットスイッチ21の接点(a端子側)、全閉ランプ25,電源線19bの経路に電流が流れ、全閉ランプ25が点灯動作を行なっている。この状態でマグネットスイッチ13の接点が閉じると、制御線19cからの電流が、リレー20内のコイル20aに流れ、その接点がb端子側からa端子側に切換わる。
すると、電源線19a、リレー20の接点(a端子側)、リミットスイッチ22の接点(a端子側)、閉コイル24,電源線19bの経路に電流が流れ、ボールバルブBVのボール28が全閉状態へ向けて回転動作を開始する。」(第3頁左上欄3行目?17行目)

キ.「そして、この状態でマグネットスイッチ13が開くと、コイル20aに流れていた電流が遮断されるため、リレー20の接点がa端子側からb端子側に切換わる。すると、電源線19a、リレー20の接点(b端子側)、リミットスイッチ21の接点(b端子側)、閉コイル23,電源線19bの経路に電流が流れ、ボールバルブBVのボール28が全閉状態へ向けて回転動作を開始する。」(第3頁右上欄9行目?17行目)

ク.「まず、室内コントローラ16からの運転開始指令信号の入力により、マグネットスイッチ制御部15はマグネットスイッチ13の接点を閉成する。これにより、インバータ装置12は、交流電源14からの電力を入力し得る状態となり、また、ボールバルブ制御回路19は上述した動作の通り、ボールバルブBVのボール28を全閉位置まで回転させて、水熱交換器7,8,9(第4図)に給水を行う。」(第3頁左下欄11行目?19行目)

(3)甲第3号証に記載された事項
同じく甲第3号証(特開2000-274843号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。

ア.「【請求項1】 圧縮機(1)、空冷の熱源側熱交換器(3)、減圧機構(6)および利用側熱交換器(7)を冷媒配管を介して順次接続してなる冷媒回路(A)を備え、前記熱源側熱交換器(3)に対して水噴霧可能な補助冷却手段(29)を付設した冷凍装置であって、冷房運転時であって前記圧縮機(1)の容量が所定値より大きい時にのみ前記補助冷却手段(29)の作動を許容する作動許容手段を付設したことを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】 周波数制御されるインバータ圧縮機(1A)、空冷の熱源側熱交換器(3)、減圧機構(6)および利用側熱交換器(7)を冷媒配管を介して順次接続してなる冷媒回路(A)を備え、前記熱源側熱交換器(3)に対して水噴霧可能な補助冷却手段(29)を付設した冷凍装置であって、冷房運転時であって前記インバータ圧縮機(1A)の周波数が所定値より大きい時にのみ前記補助冷却手段(29)の作動を許容する作動許容手段を付設したことを特徴とする冷凍装置。
【請求項3】 圧縮機(1)、空冷の熱源側熱交換器(3)、減圧機構(6)および利用側熱交換器(7)を冷媒配管を介して順次接続してなる冷媒回路(A)を備え、前記熱源側熱交換器(3)に対して水噴霧可能な補助冷却手段(29)を付設した冷凍装置であって、冷房運転時であって前記冷媒回路(A)における高低圧差が所定値より大きい時にのみ前記補助冷却手段(29)の作動を許容する作動許容手段を付設したことを特徴とする冷凍装置。
【請求項4】 前記作動許容手段を、前記補助冷却手段(29)への給電を制御するリレー(35)により構成したことを特徴とする前記請求項1,2および3のいずれか一項記載の冷凍装置。」(【特許請求の範囲】)

イ.「前記インバータ圧縮機1Aは、例えば低圧ドームを有する密閉型圧縮機とされており、周波数制御機構8による周波数制御により容量制御運転されることとなっている。前記非インバータ圧縮機1Bは、低圧ドームを有する密閉型圧縮機とされており、定速運転されることとなっている。」(段落【0015】)

ウ.「図面中、符号23は熱源側熱交換器3に熱源となる空気を送風する室外ファン、24は室内ファン、25,26は分流器、27は高圧圧力を検出する高圧圧力検出手段、28は低圧圧力を検出する低圧圧力検出手段である。
そして、前記室外ユニットXには、前記熱源側熱交換器3に対して所定の外気温度条件のもとに水噴霧を行う補助冷却手段29が付設されている。該補助冷却手段29は、オプション部品とされており、水道に接続された水配管30と、該水配管30の先端に設けられた水噴霧用のシャワーノズル31と、前記水配管30に介設された電磁弁32とを備えている。符号33は外気温度を検出する外気温度センサーである。
前記周波数制御機構8、高圧圧力検出手段27および低圧圧力検出手段28からの情報は、図2に示すように、コントローラ34に入力され、該コントローラ34からの制御信号によりリレー35が制御されることとなっている。」(段落【0020】?【0022】)

エ.「前記リレー35の常開接点35aは、図3に示すように、前記補助冷却手段29へ電源を供給するための出力端子36と直列に接続されており、前記常開接点35aの閉成時にのみ補助冷却手段29への給電が可能となっている。
また、前記外気温度センサー33からの温度情報は、図4に示すように、コントローラ37に入力され、該コントローラ37からの制御信号により電磁弁32が開閉制御されることとなっている。
ついで、図5ないし図7に示すフローチャートを参照して、本実施の形態にかかる冷凍装置における補助冷却手段29の運転制御について詳述する。
(I) リレー制御I(図5のフローチャート参照)
ステップS1において冷房運転中であることが確認されると、ステップS2においてインバータ圧縮機1Aの周波数ステップNが4以上か否かの判定がなされる。ここで、インバータ圧縮機1Aの運転周波数はN=1?9の9ステップに分けられ、N=1に相当する周波数を下限周波数とし、N=9に相当する周波数を上限周波数とするようにしている。
ステップS2においてN≧4(即ち、高低圧差が十分ある)と判定された場合には、ステップS3においてリレー35がON作動され、その後ステップS1へリターンする。従って、リレー35の常開接点35aが閉成され、補助冷却手段29への給電が開始されることとなる。
(II) リレー制御II(図6のフローチャート参照)
ステップS1において冷房運転中であることが確認されると、ステップS2において高圧圧力検出手段27および低圧圧力検出手段28により検出された高圧圧力Phおよび低圧圧力Plが入力され、ステップS3において高低圧差ΔP=Ph-Plの演算がなされる。ついで、ステップS4において高低圧差ΔPと設定値ΔPsとの比較がなされ、ここで、ΔP≧ΔPs(即ち、高低圧差が十分ある)と判定された場合には、ステップS5においてリレー35がON作動され、その後ステップS1へリターンする。従って、リレー35の常開接点35aが閉成され、補助冷却手段29への給電が開始されることとなる。なお、冷媒回路Aにおける高低圧差ΔPは、吐出冷媒温度と吸入冷媒温度と、凝縮圧力と蒸発圧力と等から演算することも可能である。」(段落【0023】?【0028】)

オ.「即ち、外気温度Tが第1の設定温度Ts1と第2の設定温度Ts2との間にあるときには、電磁弁32が間欠的に開閉されることとなり、シャワーノズル31からの水噴霧が間欠的に行われるのである。この間欠水噴霧により熱源側熱交換器3の冷却が促進されることとなり、冷媒回路Aにおける高圧上昇が抑制され、結果として電力消費が節約されることとなる。」(段落【0033】)

カ.「即ち、外気温度Tが第2の設定温度Ts2以上となったときには、電磁弁32が開弁状態を保持れることとなり、シャワーノズル31からの水噴霧が連続的に行われるのである。この連続水噴霧により熱源側熱交換器3の冷却がより一層促進されることとなり、冷媒回路Aにおける高圧上昇が抑制され、結果として電力消費が節約されることとなる。」(段落【0035】)

(4)甲第4号証に記載された事項
同じく甲第4号証(特開2000-205665号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。

ア.「【請求項1】
冷凍回路(1R)の熱源側熱交換器(22)に冷却水を散布する散水手段(60)が設けられた冷凍装置において、
上記冷凍回路(1R)の冷却能力が増大する際、上記散水手段(60)が熱源側熱交換器(22)に冷却水を散布するように該散水手段(60)を制御する散布制御手段(7a)を備えている冷凍装置。
【請求項2】
冷凍回路(1R)の高圧冷媒圧力を検出する圧力検出手段(PS)が設けられる一方、
散布制御手段(7a)は、上記圧力検出手段(PS)の検出圧力が冷却運転時に所定値以上になると、散水手段(60)が熱源側熱交換器(22)に冷却水を散布するように該散水手段(60)を制御する請求項1記載の冷凍装置。
【請求項3】
熱源側熱交換器(22)における冷媒の凝縮温度を検出する温度検出手段(TS)が設けられる一方、
散布制御手段(7a)は、上記温度検出手段(TS)の検出温度が冷却運転時に所定値以上になると、散水手段(60)が熱源側熱交換器(22)に冷却水を散布するように該散水手段(60)を制御する請求項1記載の冷凍装置。
【請求項4】
冷凍回路(1R)の圧縮機(21)の能力を制御する能力制御手段(73)が設けられる一方、
散布制御手段(7a)は、上記能力制御手段(73)の制御能力が冷却運転時に所定値以上になると、散水手段(60)が熱源側熱交換器(22)に冷却水を散布するように該散水手段(60)を制御する請求項1記載の冷凍装置。」(【特許請求の範囲】、【請求項1】?【請求項4】)

イ.「上記高温側冷媒回路(20)における熱源側熱交換器(22)は、空気熱交換器で構成されているが、冷却水の散水手段である散水装置(60)が設けられて蒸発式凝縮器に構成されている。」(段落【0031】)

ウ.「また、上記高温側冷媒回路(20)における圧縮機(21)の吐出側の冷媒配管(24)には、高圧冷媒圧力である吐出圧力Pdを検出する圧力センサ(PS)が設けられ、上記熱源側熱交換器(22)には冷媒の凝縮温度Tcを検出する温度センサ(TS)が設けられている。上記圧力センサ(PS)が圧力検出手段を、温度センサ(TS)が温度検出手段を構成している。」(段落【0032】)

エ.「一方、上記冷凍回路(1R)の制御系(70)は、熱源機(1A)を制御する制御装置(7a)を備えている。そして、上記圧力センサ(PS)は圧力検知回路(71)を介して制御装置(7a)に接続され、温度センサ(TS)は温度検知回路(72)を介して制御装置(7a)に接続され、上記圧力検知回路(71)から圧力信号が、温度検知回路(72)から温度信号がそれぞれ制御装置(7a)に入力されている。」(段落【0033】)

オ.「上記圧縮機(21)には能力制御回路(73)が接続され、該能力制御回路(73)は、例えば、圧縮機(21)のインバータの出力周波数を制御して圧縮機能力を制御する能力制御手段を構成する一方、圧縮機能力信号を制御装置(7a)に出力している。」(段落【0034】)

カ.「一方、上記散水装置(60)には、該散水装置(60)の散水又は噴霧を制御する散布回路(74)が接続され、該散布回路(74)は、制御装置(7a)の指令信号によって散水装置(60)を駆動制御するように構成されている。」(段落【0035】)

キ.「上記制御装置(7a)は、圧力センサ(PS)が検出する吐出圧力Pdが所定値以上になると、散水装置(60)が熱源側熱交換器(22)に冷却水を散布するように該散水装置(60)を制御する散布制御手段を構成している。」(段落【0036】)

ク.「また、上記制御装置(7a)は、温度センサ(TS)が検出する凝縮温度Tcが所定値以上になると、散水装置(60)が熱源側熱交換器(22)に冷却水を散布するように該散水装置(60)を制御する散布制御手段を構成している。」(段落【0037】)

ケ.「また、上記制御装置(7a)は、能力制御回路(73)が制御する圧縮機能力Hzが所定値以上になると、散水装置(60)が熱源側熱交換器(22)に冷却水を散布するように該散水装置(60)を制御する散布制御手段を構成している。」(段落【0038】)

(5)甲第5号証に記載された事項
同じく甲第5号証(実開平2-70135号及び全文明細書)には、次の事項が図面と共に記載されている。

ア.「複数のスイッチング素子で構成されたインバータ回路の出力で能力可変に制御される圧縮機、送風装置を有する熱源側熱交換器、減圧装置、及び利用側熱交換器を用いて構成した冷凍サイクルを備えると共に、インバータ回路の放熱板を送風装置の風路内に配設して成る空気調和機において、インバータ回路または放熱板の温度を検出する温度検出器と、この温度検出器の検出する温度が第1の設定温度以上の時に圧縮機の運転を停止させる停止動作手段と、前記温度が第1の設定値より低い第2の設定値以下の時に外気温度もしくは冷媒圧力、冷媒温度等に基づいて送風装置の送風量を変化させる制御手段と、前記温度が第1の設定値と第2の設定値との間にある時に送風装置の送風量を増加させる増加手段とを備えたことを特徴とする空気調和機の保護装置。」(実用新案登録請求の範囲)

イ.「第1図は空気調和機の圧縮機を収納したユニットの断面図である。1は圧縮機であり、底板2に振動が吸収される構造(ゴムブッシュ)で支持されている。3は電動機であり、送風ファン4と共に送風装置を構成している。この送風装置は電動機3の回転数が変わることによって送風量が変えられる。5は熱源側熱交換器であり、電動機3が駆動することによって空気が実線矢印のように流れ空気(熱源)と熱交換するように配置されている。」(明細書第5頁9行目?18行目)

ウ.「6が電装箱であり、この箱に設けられた放熱板7のフィン8が送風装置によって生じる風路内に位置するように配置されている。尚、放熱板7にはインバータ回路を構成する複数のスイッチング素子をモールドしたモジュール9が取付けられている。
第2図は第1図に示した電装箱6に収納される制御部品と圧縮機1,電動機3との関係を示す制御ブロック図である。図中10は交流電源であり、整流回路11へ電力を供給している。12は平滑用コンデンサであり、整流回路11の出力を平滑した後モジュール9へ直流電力を供給している。このモジュール9は複数のスイッチング素子、例えばトランジスタ素子、FET素子、SCR素子などをブリッジ状に接続している。この実施例では三相の圧縮機1を駆動するため、6個の主スイッチング素子を用いて三相ブリッジを構成している。」(明細書第5頁18行目?第6頁15行目)

エ.「13はスイッチング信号発生回路であり、ユニット制御部14からの周波数信号に基づきモジュール9の夫々のスイッチング素子へこの周波数の電力が得られるようなON-OFF信号を出力する。一般にこのスイッチング信号はPWM(パルス幅変調)理論に基づいて作られている。
ユニット制御部14は主制御部(室内側ユニット、又は中央ユニットなど)からの制御信号S(圧縮機1へ供給する電力の周波数を決める信号、電動機3の回転数を決める信号など)を入力し、さらに外気温度を検出する温度センサ15,放熱板7の温度を検出する温度センサ16の温度を入力して、スイッチング信号発生回路へ周波数信号を出力し、また電動機3の回転数を制御する。」(明細書第7頁1行目?16行目)

(6)甲第6号証に記載された発明
同じく甲第6号証(特開昭62-284151号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。

ア.「第2図は制御回路である。
30は商用交流電源で、この電源30に制御部31を接続する。そして、制御部31に運転操作部32,室内温度センサ33,熱交温度センサ23,四方弁12,電磁開閉弁18を接続する。ここで、制御部31は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路などからなり、空気調和機全般にわたる制御を行なうものである。
また、電源30にファンモータ駆動回路34を接続する。このファンモータ駆動回路34は、制御部31からの指令に応じて室内ファンモータ22Mおよび室外ファンモータ21Mをそれぞれ駆動するものである。さらに、電源30にインバータ回路35を接続する。このインバータ回路35は、電源電圧を直流に変換し、それを制御部31からの指令に応じた周期でスイッチングすることにより所定周波数(および電圧)の交流に変換し、圧縮機モータ11Mに供給するものである。」(第2頁右下欄12行目?第3頁左上欄9行目)

イ.「また、制御部31は熱交温度センサ23の検知温度(凝縮温度)tcと設定温度TC1,TC2(TC1>TC2)とを比較し、検知温度tcが設定温度TC1とTC2との間に収まるように、インバータ回路35の出力周波数fを一定値△fずつ低減または上昇制御する。」(第3頁右上欄7行目?12行目)

(7)甲第7号証に記載された事項
同じく甲第7号証(特開平10-26426号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。

ア.「本発明実施例は、加圧された冷媒を外気により冷却するラジエータ1を備えた室外機2と、この室外機2から冷却された冷媒を取込み冷風を供給する室内機3と、この室内機3内に放散され低圧となった冷媒を圧縮する圧縮機4とが備えられ、さらに、本発明の特徴として、水槽5と、この水槽5の水を加圧する電動ポンプ6と、この電動ポンプ6の出力水をラジエータ1にかけるノズル7と、電動ポンプ6の電源回路に接続されラジエータ1の出力の冷媒圧力が第一の圧力(P1 )を越えたときオン状態となり第二の圧力(P2 ,P2 <P1 )を下回るときにオフ状態となる圧力スイッチ8と、室内機3の結露水を管路9を介して回収する結露水受皿10と、ラジエータ1にかけた水の余剰分を管路11を介して回収する散水受皿12と、管路9および管路11と水槽5との間に設けられたストレーナ13とが備えられる。
水槽5内には、その水位が所定値以下になったときにオフ状態となり電動ポンプ6への電源を遮断するフロート・スイッチ14が備えられる。このフロート・スイッチ14は圧力スイッチ8に直列に接続される。電動ポンプ6には圧力スイッチ8およびフロート・スイッチ14を介して交流を直流に変換するアダプタ15からの直流電源が供給される。」(段落【0016】?【0017】)

(8)甲第8号証に記載された事項
同じく甲第8号証(特開平7-27429号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。

ア.「図1は、本発明の一実施例に係る凝縮器冷却装置の構成図である。同図において、1は図示しない圧縮機からの高温高圧冷媒を受け入れる受入管路1aと、液化された冷媒を吐出する吐出管路1bとを備えた凝縮器である。なお、矢印は冷媒の流れる方向を示している。
また、2は凝縮器1を冷却するための凝縮器空冷用ファンであり、3はファンモータである。そして、この凝縮器空冷用ファン2により、通常凝縮器1は冷却されるようになっている。さらに、4は凝縮器1の上方に配され、例えば散水管路である水道管路5からの水道水を凝縮器1に例えばシャワー状に散水するための散水器である。なお、この水道管路5には、水道管路5を開閉する電磁弁6が設けられている。
一方、凝縮器1の吐出管路1bには、この吐出管路1bを通過する冷媒温度を検知するための温度検知部である感熱筒7が設けられている。そして、この感熱筒7は、サーモスタット8と、このサーモスタット8に接続されたデューティタイマ9とよりなる弁開閉制御手段10に接続されている。
ここで、このサーモスタット8は感熱筒7からの温度情報に応じて冷媒温度が所定温度以上となったことを検知すると作動してデューティタイマ9に通電するためものであり、デューティタイマ9は通電されると周期的に電磁弁6をオンオフするためのものである。」(段落【0012】?【0015】)

(9)甲第9号証に記載された事項
同じく甲第9号証(米国特許第4,290,274号明細書)には、図面と共に次の事項が記載されている。 なお、甲第9号証は、英文で表記されたものであるため、英文の記載箇所を挙げつつ日本語翻訳文を掲げた。

ア.「本発明は空気調和機や加湿器のための省エネ制御に関し、特に、空気調和ユニットや加湿器に利用される液噴霧装置のデューティーサイクルを制御箇所の検出温度にしたがって適切に制御する方法や装置に向けられたものである。」(第1欄5行目?12行目)

イ.「図2において、サーマルプローブあるいはサーミスタ24は、コンデンサコイル16に入る前の冷媒温度を検出するため、コンデンサコイル16の入口における冷媒管14に隣接して配置されている。」(第5欄21行目?25行目)

ウ.「図2に見られるように、ユニット28は給水管34を通じて水が供給される水バルブ32の動作を制御する。ユニット28によりバルブ32が開かれたとき、給水管34からの水はスプレーノズル38に対する導出管36に送られる。スプレーノズル38はコンデンサコイル16の冷媒入口における直前の冷媒管に対して水噴霧するように配置されている。冷媒管14上での噴霧液の蒸発は冷媒管14における液冷媒から熱を奪い去り、その結果、コンデンサコイル16に入る冷媒に対して予冷作用する。」(第5欄34行目?45行目)

エ.「遠隔制御ユニット28はノズル38からの液噴霧のデューティーサイクルを制御するためにプローブ24による検出温度に応じて動作する。すなわち、以下に詳しく説明するように、ユニット28はノズルからの液噴霧がいったんオンされてオフされる時間間隔を設定する。スプレーがオンオフされる期間において、その設定時間間隔はプローブ24による検出温度に比例する。プローブ24による検出温度が高いほど、ノズル38からの水噴霧におけるON時間が長くなる。」(第5欄46行目?56行目)

オ.「図4には図1の回路のためのいくつかの可能な運転曲線A,B,C,Dが示されている。図4において、X軸はサーミスタT1による検出温度を示し、Y軸はスプレーノズル38の1サイクル当りのオン時間を示す。このグラフはタイマー42により設定される1サイクルの総時間が20秒である場合を仮定としている。図4から分かるように、曲線A,B,C,Dの下限としては100°における水噴霧オン時間を1?5秒の範囲で選択できる。運転範囲の上限(160°)では、1サイクルあたりの水ノズルのオン時間が10?15秒に及ぶものになる。例えば曲線Cを採った場合、100°における下限のオン時間3.6秒に設定され、160°における上限のオン時間がおよそ12.2にされるが、中間温度の140°では、リレーK1が9秒間閉じられて1サイクルあたり9秒間の噴霧が行われ、そして、20秒サイクルのうち11秒間スプレーが停止される。したがって、その温度では、タイマー44からの出力信号のパルス幅あるいは長さはおよそ11秒になる。」(第7欄36行目?56行目)

(10)甲第10号証に記載された事項
同じく甲第10号証(特開平8-100957号公報 )には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「また、水冷凝縮器24に接続された冷却水管路30には自動給水弁31が設置され、自動給水弁31は、圧縮機21から一次空冷凝縮器23までの間の冷媒通路における冷媒液の温度または圧力の高低を検知することにより開閉制御されており、この検知部分が高圧側に配置されているため、冷媒流れの圧力損による検知誤差が少なくなるようにされている。さらに、圧縮機21の冷媒吐出管近傍には冷却ファン40が設置されていると共に、圧縮機21の温度、例えばその冷媒吐出管温度または圧縮機21から吐出される冷媒温度の検知器41が設置されている。」(段落【0009】)

(11)甲第11号証に記載された事項
同じく甲第11号証(実開昭63-22567号公報及び実願昭61-115582号(実開昭63-22567号)のマイクロフィルム )には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「圧縮機(2)と空冷凝縮器(3)とを備え、高負荷冷房運転時、前記空冷凝縮器(3)に散水を行う如く成した空気調和機であって、入力電源線路(a)に、該電源線路(a)における入力負荷を検出する検出手段(10)を介装する一方、この検出手段(10)による検出負荷に基づいて、前記空冷凝縮器(3)への散水を制御する制御手段(11)を設けたことを特徴とする空気調和機。」(実用新案登録請求の範囲)

イ.「即ち、第1図に示す如く、前記室外ユニット(U)への入力電源線路(a)に、該電源線路(a)の入力負荷を検出する検出手段(10)を介装すると共に、該検出手段(10)による検出負荷に基づき、前記給水管(9)の電磁開閉弁(8)を開閉操作して、前記散水ノズル(7)からの散水を制御する制御手段(11)を設けたのである。
具体的には、外部電源(E)と、前記圧縮機(2)の圧縮モータ(MC)などとを接続する接続線路で、前記電源(E)側の入力電源線路(a)に、前記検出手段(10)を設けるのであって、この検出手段(10)は、前記電源線路(a)に介装する変流器(CT)と、この変流器(CT)を介して前記電源線路(a)から誘起される電流値に基づいてオン・オフ動作するメータリレー(MR)とから構成するものである。
そして前記圧縮モータ(MC)と並列状に、前記室外ユニット(U)の各機器を制御する操作回路(12)を設けると共に、該操作回路(12)と並列に前記制御手段(11)を設けるのであって、この制御手段(11)は、前記検出手段(10)のメータリレー(MR)に連動する常開接点(MR-a)と、該常開接点(MR-a)のオン・オフ動作で励磁・非励磁されて、前記電磁開閉弁(8)を開閉操作する電磁リレー(RD)とから構成するのである。」(明細書第6頁13行目?第8頁1行目)

ウ.「従来この種空気調和機として、例えば実公昭57-54526号公報に記載されたものが知られている。この公報記載の空気調和機は、室外ユニットに圧縮機と空冷凝縮器とを備え、前記空冷凝縮器に散水ノズルを付設すると共に、冷媒回路の高圧圧力を検知する圧力検知器あるいは外気温度を検知する温度検知器を設けて、冷房運転時に、前記検知器による検出負荷に基づいて過負荷運転状態を察知し、前記散水ノズルから前記空冷凝縮器に散水を行なうことにより、過負荷運転を回避するようにしている。」(明細書第2頁3行目?13行目)

また、第1図には、入力電源線路(a)の検出手段(10)と圧縮機の圧縮モータ(MC)との間に電源スイッチを介装することも示されている。

(12)甲第12号証に記載された事項
同じく甲第12号証(特開2000-65409号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「【請求項1】 熱交換器(3)に水を噴射するノズル(4)を有する補助冷却手段(4,7,51,52)と、
消費電力が設定値を越えたときに、上記補助冷却手段(4,7,51,52)のノズル(4)から凝縮器として働く熱交換器(3)に水を噴射するように制御する水噴射制御手段(60)とを備えたことを特徴とする空気調和機の制御装置。
【請求項2】 請求項1に記載の空気調和機の制御装置において、
消費電力を検出する電力検出手段(23,71)を備え、
上記水噴射制御手段(60)は、
上記電力検出手段(23,71)で検出した消費電力に基づいて、上記補助冷却手段(4,7,51,52)が水を噴射する量または水を噴射する時間を増減させることを特徴とする空気調和機の制御装置。」(特許請求の範囲、請求項1及び2)

イ.「室外機11は、三相交流電源からの三相配線20でもってブレーカ21を経由して端子台22に三相交流電力を得る。この端子台22は、カレントトランス23,開閉器25,過電流継電器26を経由して、三相交流電動機が構成する圧縮機27に接続されている。また、上記端子台22,カレントトランス23は水噴霧制御部51の検出部71に接続されている。水噴霧制御部51は、上記検出部71,制御部72,入出力部73,水噴霧部75で構成されている。検出部71は、室外機11が消費する電力を検出し、検出した消費電力を表す電力信号を制御部72に入力する。制御部72は、上記電力信号および上記電力信号に基づいた電力制御信号を入出力部73に入力する。この入出力部73は、上記電力制御信号に基づいた水噴霧制御信号を水噴霧制御部51に入力し、上記電力信号を主コントローラ60の入力部61に入力する。」(段落【0028】)

ウ.「まず、ステップS1では、水噴霧制御部51によって、通常の水噴霧制御を実行する。この通常の水噴霧制御とは、例えば、外気温度が所定温度を越えたときに、水噴霧部75のソレノイドバルブを開き、モータポンプを駆動して、ノズル4から室外機11の熱交換器3に水を間欠的に噴霧する。これにより、少ない消費電力で冷房能力を上げ、消費電力のピーク値を下げる。」(段落【0031】)

(13)甲第13号証に記載された事項
同じく甲第13号証(甲第13号証:実願平3-78859号(実開平5-22114号)のCD-ROM)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「一実施例を示す図1に対応付けて説明すると、本考案は、コンプレッサ11およびコンデンサ12を有する冷房手段10と、コンプレッサ11の作動を指令するコンプレッサ指令手段34とを備えた作業車両の冷房装置に適用される。
そして、コンデンサ12に水を噴射する水噴射装置40と、車両のメインスイッチ32がオンされているときに最初のコンプレッサ作動指令が出力されると、その指令から第1の所定時間経過後に第2の所定時間だけ水噴射装置40を作動せしめる制御手段52とを具備し、これにより上記問題点を解決する。
また特に請求項2の考案は、図3に示すように、手動操作により水噴射装置40の作動を指令する噴射指令手段61を更に備え、車両のメインスイッチがオンされ且つコンプレッサ作動指令が出力されているときに噴射装置作動指令が出力されると、これに応答して第2の所定時間だけ噴射装置40を作動せしめるよう上記制御手段52を構成したものである。」(段落【0005】)

イ.「図1および図2により本考案の第1の実施例を説明する。
図1は本考案に係る作業車両の冷房装置の構成を示す図である。10は、コンプレッサ11,コンデンサ12,リキッドタンク13,膨張弁14,および室内ユニット20内に設けられたエバポレータ21から成る圧縮冷凍サイクルのクーラーユニットである。コンプレッサ11は、車体電源31,メインスイッチ32,ヒューズ33,冷房スイッチ34から成る駆動回路30を介して駆動される。」(段落【0008】)

ウ.「また40は、給水タンク41,ポンプ42,配管43,噴射ノズル44から構成される水噴射装置であり、給水タンク41内の水をノズル44から上記コンデンサ12に噴射するものである。ポンプ駆動用のモータ51は、コントローラ52に接続され、コントローラ52からの作動信号により駆動される。コントローラ52は、メインスイッチ32オン時にヒューズ53を介して車体電源31から給電される。またコントローラ52には、上記駆動回路30が接続され、これによりクラッチ11aのオン・オフ、すなわちコンプレッサ11の作動/非作動が検知できるようになっている。」(段落【0010】)

エ.「次に、図4により本考案の第3の実施例を説明する。
本実施例は、乗員の意志により水噴射装置40の作動を禁止できるようにしたものである。そのため上記ヒューズ52とコントローラ52を接続するラインには手動の噴射禁止スイッチ(噴射禁止操作部材)71が設けられ、このスイッチ71がオフ操作されると、コントローラ52が給電されず、したがって、メインスイッチ32オン後の最初の冷房スイッチ34のオンにも拘らず水噴射装置40は作動しない。」(段落【0019】)

(14)甲第14号証?甲第18号証に記載された事項
同じく甲第14号証(特開平7-293981号公報)、甲第15号証(特開平2-154945号公報)、甲第16号証(特開昭62-258965号公報)、甲第17号証(特開平1-300076号公報)及び甲第18号証(特開平5-18617号公報)には、圧縮機への給電を制御するインバータ回路を設ける場合に、そのインバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチを設けることが、記載されている。

2.甲第3号証に記載された発明
(1)「第5 1.(3)」に摘記した事項及び図面の記載内容からみて、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3の第一発明」という。)が記載されていると認める。

「周波数制御されるインバータ圧縮機(1A)、空冷の熱源側熱交換器(3)、減圧機構(6)および利用側熱交換器(7)を冷媒配管を介して順次接続してなる冷媒回路(A)を備え、前記熱源側熱交換器(3)に対して水噴霧可能な補助冷却手段(29)を付設した冷凍装置であって、
冷房運転時であって前記インバータ圧縮機(1A)の周波数が所定値より大きい時にのみ、冷房運転時であって前記圧縮機(1)の容量が所定値より大きい時にのみ、または、冷房運転時であって前記冷媒回路(A)における高低圧差が所定値より大きい時にのみ前記補助冷却手段(29)の作動を許容する作動許容手段を付設し、
さらに、外気温度を検出する外気温度センサーを設けて前記外気温度センサーからの温度情報に応じて前記補助冷却手段の作動を制御するようにした、冷凍装置。」

(2)甲第3号証には、「第5 1.(3)」において摘記した事項「ウ.」「エ.」からすると、周波数制御機構8、高圧圧力検出手段27および低圧圧力検出手段28からの情報は、コントローラ34に入力され、該コントローラ34からの制御信号によりリレー35が制御され、該リレー35の常開接点35aは、補助冷却手段29へ電源を供給するための出力端子36と直列に接続されており、前記常開接点35aの閉成時にのみ補助冷却手段29への給電が可能となっている、という技術的事項も記載されている。
よって、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3の第二発明」という。)も記載されていると認める。

「周波数制御されるインバータ圧縮機(1A)、空冷の熱源側熱交換器(3)、減圧機構(6)および利用側熱交換器(7)を冷媒配管を介して順次接続してなる冷媒回路(A)を備え、前記熱源側熱交換器(3)に対して水噴霧可能な補助冷却手段(29)を付設した冷凍装置であって、
冷房運転時であって前記インバータ圧縮機(1A)の周波数が所定値より大きい時にのみ、冷房運転時であって前記圧縮機(1)の容量が所定値より大きい時にのみ、または、冷房運転時であって前記冷媒回路(A)における高低圧差が所定値より大きい時にのみ前記補助冷却手段(29)の作動を許容する作動許容手段を付設し、
前記作動許容手段には、補助冷却手段29へ電源を供給するための出力端子36と直列に、周波数制御機構8、高圧圧力検出手段27および低圧圧力検出手段28からの情報に基づき制御されるリレー35の常開接点35aが接続されており、
さらに、外気温度を検出する外気温度センサーを設けて前記外気温度センサーからの温度情報に応じて前記補助冷却手段の作動を制御するようにした、冷凍装置。」


3.請求人が主張する無効理由3(「第4 1.(3)」参照。)について 本件特許発明1と甲3の第一発明を対比する。
甲3の第一発明の「空冷の熱源側熱交換器」、「水噴霧可能な補助冷却手段」、「作動許容手段」、「冷凍装置」は、各々、本件特許発明1の「空気調和機の凝縮器」、「水噴霧手段」、「給水制御手段」、「空気調和機の凝縮器の補助冷却装置」に相当する。
また、甲3の第一発明が、そのインバータ圧縮機への給電を制御するインバータ回路を備えていること、および、インバータ圧縮機の周波数、インバータ圧縮機の容量または冷媒回路における高低圧差を検知するための手段を備えていることは、夫々当業者にとって自明な事項である。
さらに、甲3の第一発明の「冷房運転時であって前記インバータ圧縮機の周波数が所定値より大きい時にのみ、冷房運転時であって前記圧縮機の容量が所定値より大きい時にのみ、または、冷房運転時であって前記冷媒回路における高低圧差が所定値より大きい時にのみ前記補助冷却手段の作動を許容する作動許容手段」は、本件特許発明1の「検知手段が検知した空気調和機の稼動状態に応じて前記水噴霧手段への給水を制御する給水制御手段」に相当する。
そうしてみると、両者は、次の一致点及び相違点1を有するといえる。

[一致点]
空気調和機の凝縮器に水を噴霧する水噴霧手段と、
前記空気調和機の稼動状態を検知する検知手段と、
前記空気調和機の圧縮機への給電を制御するインバータ回路と、
前記検知手段が検知した前記空気調和機の稼動状態に応じて前記水噴霧手段への給水を制御する給水制御手段とを備える、空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。

[相違点1]
給水制御手段が、本件特許発明1では「前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され」るものであるのに対して、甲3の第一発明ではインバータ回路との関係は特定されていない点。

そこで、上記相違点1について検討する。

空気調和機の圧縮機への給電を制御するインバータ回路において、当該インバータ回路への給電をオンオフするスイッチを設けることは、甲第14号証?甲第18号証に記載されるように周知の技術的事項であって、当業者が適宜採用する事項である。
また、空気調和機の凝縮器に水を噴霧する水噴霧手段、当該水噴霧手段への給水を制御する給水制御手段を備えた空気調和機の凝縮器の補助冷却装置において、圧縮機への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に給水制御手段を接続することは、周知の技術的事項である(そのような例として、甲第12号証(特開2000-65409号公報)(図1での圧縮機27,水噴霧制御部51,52,開閉器25の接続関係も参照。)、甲第11号証(実願昭61-115582号(実開昭63-22567号)のマイクロフィルム)(第1図での圧縮機MC、制御手段11,電源線路aの接続関係も参照。)を挙げることができる。)。
そうしてみると、甲3の第一発明において、空気調和機の圧縮機への給電を制御するインバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチを設けることは、当業者が適宜採用することであり、また、そのようにした場合に、当該電源スイッチの電源入力側に給水制御手段を接続することも、当業者が格別の創作能力を要さずに併せて採用し得た範囲内のことといえる。
よって、甲3の第一発明において、相違点1に係る本件特許発明1の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

しかも、本件特許発明1により、甲3の第一発明及び上述した周知の技術的事項から予期される以上の格別顕著な効果が奏されるということもできない。

以上から、本件特許発明1は、甲3の第一発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、請求人が本件特許発明1について主張する無効理由1,2,4について検討するまでもなく、本件特許発明1に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

4.請求人が主張する無効理由5(「第4 1.(5)」参照。)について 本件特許発明2は、本件特許発明1を特定するために必要な事項に「外気温を検知する外気温検知手段をさらに備え、前記給水制御手段は、前記空気調和機の稼動状態および前記外気温に応じて前記水噴霧手段への給水を制御する」という事項を付加したものである。
そこで、本件特許発明2を甲3の第一発明と対比する。
甲3の第一発明における「外気温度センサー」は、本件特許発明2における「外気温検知手段」に相当し、また、甲3の第一発明においても、給水制御手段は、空気調和機の稼動状態および外気温に応じて水噴霧手段への給水を制御するものと理解することができる。これらのことと「第5 3.」の本件特許発明1と甲3の第一発明の対比結果をふまえると、本件特許発明3と甲3の第一発明は、既に述べた相違点1でのみ相違する。そして、この相違点1についての検討結果も「第5 3.」で述べたとおりである。

したがって、本件特許発明2は、甲3の第一発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件特許発明2に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

5.請求人が主張する無効理由8(「第4 1.(5)」参照。)について 本件特許発明3と甲3の第二発明を対比する。
甲3の第二発明の「空冷の熱源側熱交換器」、「水噴霧可能な補助冷却手段」、「作動許容手段」、「冷凍装置」は、各々、本件特許発明3の「空気調和機の凝縮器」、「水噴霧手段」、「給水制御手段」、「空気調和機の凝縮器の補助冷却装置」に相当する。
また、甲3の第二発明が、そのインバータ圧縮機への給電を制御するインバータ回路を備えていること、および、インバータ圧縮機の周波数、インバータ圧縮機の容量または冷媒回路における高低圧差を検知するための手段を備えていることは、夫々自明である。
さらに、甲3の第二発明の「冷房運転時であって前記インバータ圧縮機の周波数が所定値より大きい時にのみ、冷房運転時であって前記圧縮機の容量が所定値より大きい時にのみ、または、冷房運転時であって前記冷媒回路における高低圧差が所定値より大きい時にのみ」補助冷却手段の作動を許容するとは、本件特許発明3の「検知手段が検知した空気調和機の稼動状態に応じて」給水制御手段にいたる給電経路を遮断することに相当する。
甲3の第二発明の「リレーの常開接点」は、空気調和機の稼動状態に応じて給水制御手段にいたる給電経路を遮断するものであるから、本件特許発明3でいう「給水制御手段にいたる給電経路を遮断する電力遮断手段」に相当する。
そうしてみると、両者は、次の一致点及び相違点2を有するといえる。

[一致点]
空気調和機の凝縮器に水を噴霧する水噴霧手段と、
前記空気調和機の稼動状態を検知する検知手段と、
前記空気調和機の圧縮機への給電を制御するインバータ回路と、
前記検知手段が検知した前記空気調和機の稼動状態に応じて前記水噴霧手段への給水を制御する給水制御手段と、
前記検知手段が検知した前記空気調和機の稼動状態に応じて前記給水制御手段にいたる給電経路を遮断する電力遮断手段とを備える、空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。

[相違点2]
本件特許発明3では、給水制御手段が、インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され、電力遮断手段が、前記電源スイッチの前記インバータ回路の電源入力側から前記給水制御手段にいたる給電経路を遮断するものであるのに対して、甲3の第二発明ではインバータ回路と給水制御手段及び電力遮断手段との関係は特定されていない点。

そこで、この相違点2について検討する。

空気調和機の圧縮機への給電を制御するインバータ回路において、当該インバータ回路への給電をオンオフするスイッチを設けることは、甲第14号証?甲第18号証に記載されるように周知の技術的事項であって、当業者が適宜採用する事項である。
また、空気調和機の凝縮器に水を噴霧する水噴霧手段、当該水噴霧手段への給水を制御する給水制御手段を備えた空気調和機の凝縮器の補助冷却装置において、圧縮機への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に給水制御手段を接続することは、周知の技術的事項である(そのような例として、甲第12号証(特開2000-65409号公報)(図1での圧縮機27,水噴霧制御部51,52,開閉器25の接続関係も参照。)、甲第11号証(実願昭61-115582号(実開昭63-22567号)のマイクロフィルム)(第1図での圧縮機MC、制御手段11,電源線路aの接続関係も参照。)を挙げることができる。)。
そうしてみると、甲3の第二発明において、給水制御手段をインバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続することは、当業者が格別の創作能力を要さずになし得たことである。また、そのような接続構成を採用した場合、「電力遮断手段」の位置としては、それが給水制御手段への給電を遮断するための手段であることを考えれば、電源スイッチのインバータ回路の電源入力側から給水制御手段にいたる給電経路とすることは、当業者が当然採用するものといえる。
すなわち、甲3の第二発明において、相違点2に係る本件特許発明3の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

しかも、本件特許発明3により、甲3の第二発明及び上述した周知の技術的事項から予期される以上の格別顕著な効果が奏されるということもできない。

以上から、本件特許発明3は、甲3の第二発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、請求人が本件特許発明3について主張する無効理由6,7について検討するまでもなく、本件特許発明3に係る特許は、同法第123第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

6.請求人が主張する無効理由9(「第4 1.(9)」参照。)について 本件特許発明4は、本件特許発明3を特定するために必要な事項に「外気温を検知する外気温検知手段をさらに備え、前記給水制御手段は、前記外気温に応じて前記水噴霧手段への給水を制御する」という事項を付加したものである。
そこで、本件特許発明4を甲3の第二発明と対比する。
甲3の第二発明における「外気温度センサー」は、本件特許発明4における「外気温検知手段」に相当し、また、甲3の第二発明においても、給水制御手段は、外気温に応じて水噴霧手段への給水を制御するものと理解することができる。これらのことと「第5 5.」の本件特許発明3と甲3の第二発明の対比結果をふまえると、本件特許発明3と甲3の第二発明は、既に述べた相違点2でのみ相違する。そして、この相違点2についての検討結果は、「第5 5.」で述べたとおりである。

したがって、本件特許発明4は、甲3の第二発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件特許発明4に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

7.請求人が主張する無効理由10(「第4 1.(10)」参照。)について
本件特許発明5は、本件特許発明3又は4を特定するために必要な事項に「前記検知手段と前記電力遮断手段とが一体化された状態値検知スイッチを備える」という事項を付加したものである。
そこで、本件特許発明5を甲3の第二発明と対比する。
「第5 5.」の本件特許発明3と甲3の第二発明の対比結果、及び、「第5 6.」の本件特許発明4と甲3の第二発明の対比結果をふまえると、本件特許発明5と甲3の第二発明は、既に述べた相違点2及び次の相違点3でのみ相違する。

[相違点3]
本件特許発明5は、検知手段と電力遮断手段とが一体化された状態値検知スイッチを備えるのに対して、甲3の第二発明ではそのような構成を有さない点。

そこで、相違点2,3につき検討するに、まず、相違点2については既に「第5 5.」で検討したとおりである。
次に相違点3につき検討するに、検知手段と電力遮断手段とが一体化された状態値検知スイッチを設けることは、周知の技術的事項であり(そのような例として、甲第7号証(「第5 1.(7)」の摘記事項「ア.」及び図1の圧力スイッチ8を参照。)を挙げることができる。)、甲3の第二発明においてかかる周知の技術的事項を適用して、相違点3に係る本件特許発明5の構成を得ることも、当業者にとって格別の創作能力を要したことではない。

そうしてみると、相違点2,3は、いずれも格別のものではなく、本件特許発明5は、甲3の第二発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
しかも、本件特許発明5により、甲3の第二発明及び上述した周知の技術的事項から予期される以上の格別顕著な効果が奏されるということもできない。

以上から、本件特許発明5は、甲3の第二発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許発明5に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

8.請求人が主張する無効理由11(「第4 1.(11)」参照。)について
本件特許発明6は、本件特許発明1?5のいずれかを特定するために必要な事項に「前記検知手段は、前記空気調和機における冷媒状態値を検知するものである」という事項を付加したものである。
そこで、本件特許発明6として、本件特許発明1を特定するために必要な事項に「前記検知手段は、前記空気調和機における冷媒状態値を検知するものである」という事項を付加したものを、甲3の第一発明と対比する。
甲3の第一発明は、「冷房運転時であって前記冷媒回路における高低圧差が所定値より大きい時にのみ前記補助冷却手段の作動を許容する作動許容手段を付設」してなるものである。これは、冷媒状態値を検知することに他ならないから、これと「第5 3.」の本件特許発明1と甲3の第一発明の対比結果をふまえると、本件特許発明6と甲3の第一発明は、既に述べた相違点1でのみ相違する。そして、この相違点1についての検討結果も「第5 3.」で述べたとおりである。

したがって、本件特許発明6は、甲3の第一発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件特許発明6に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

9.請求人が主張する無効理由12(「第4 1.(12)」参照。)について
本件特許発明7は、本件特許発明1?5のいずれかを特定するために必要な事項に「前記検知手段は、前記空気調和機における圧縮機の駆動状態を検知するものである」という事項を付加したものである。
そこで、本件特許発明7として、本件特許発明1を特定するために必要な事項に「前記空気調和機における圧縮機の駆動状態を検知するものである」という事項を付加したものを、甲3の第一発明と対比する。
甲3の第一発明は、「冷房運転時であってインバータ圧縮機の周波数が所定値より大きい時にのみ補助冷却手段の作動を許容する作動許容手段を付設」してなるものである。これは、圧縮機の駆動状態を検知するものに他ならないから、これと「第5 3.」の本件特許発明1と甲3の第一発明の対比結果をふまえると、本件特許発明7と甲3の第一発明は、既に述べた相違点1でのみ相違する。そして、この相違点1についての検討結果も「第5 3.」で述べたとおりである。

したがって、本件特許発明7は、甲3の第一発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件特許発明7に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

10.請求人が主張する無効理由13(「第4 1.(13)」参照。)について
本件特許発明8は、本件特許発明6又は7を特定するために必要な事項に「前記検知手段が、前記圧縮機と前記凝縮器との間の配管に外付けされた温度検知器である」という事項を付加したものである。
そこで、本件特許発明8として、本件特許発明6を特定するために必要な事項に「前記検知手段が、前記圧縮機と前記凝縮器との間の配管に外付けされた温度検知器である」という事項を付加したものを、甲3の第一発明と対比する。
甲3の第一発明は、「冷房運転時であって前記冷媒回路における高低圧差が所定値より大きい時にのみ前記補助冷却手段の作動を許容する作動許容手段を付設」してなるものである。これは、冷媒状態値を検知することに他ならないから、これと「第5 8.」の本件特許発明6と甲3の第一発明の対比結果をふまえると、本件特許発明8と甲3の第一発明は、既に述べた相違点1及び次の相違点4でのみ相違する。

[相違点4]
本件特許発明8では、圧縮機と凝縮器との間の配管に外付けされた温度検知器により空気調和機における冷媒状態値を検知するのに対して、甲3の第一発明では、高低圧差を検知することで空気調和機における冷媒状態値を検知している点。

そこで、相違点1,4につき検討するに、まず、相違点1については既に「第5 3.」で検討したとおりである。
次に相違点4につき検討するに、圧縮機と凝縮器との間の配管の温度を検知する温度検知器により空気調和機における冷媒状態値を検知することは、周知の技術的事項であり(そのような例として、甲第9号証(「第5 1.(9)」の摘記事項「イ.」及び図2の記載内容参照。)、甲第10号証(「第5 1.(10)」の摘記事項「ア.」及び図1の記載内容参照。)を挙げることができる。)、甲3の第一発明において、空気調和機における冷媒状態値を検知するためにかかる周知の技術的事項を適用して、相違点4に係る本件特許発明8の構成を得ることも、当業者にとって格別の創作能力を要したことではない。

そうしてみると、相違点1,4は、いずれも格別のものではなく、本件特許発明8は、甲3の第一発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
しかも、本件特許発明8により、甲3の第一発明及び周知の技術的事項から予期される以上の格別顕著な効果が奏されるということもできない。

以上から、本件特許発明8は、甲3の第一発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許発明8に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

11.請求人が主張する無効理由14(「第4 1.(14)」参照。)について
本件特許発明9は、本件特許発明6又は7を特定するために必要な事項に「前記検知手段が、前記圧縮機から前記凝縮器にいたる配管内に配置された圧力検知器である」という事項を付加したものである。
そこで、本件特許発明9として、本件特許発明6を特定するために必要な事項に「前記検知手段が、前記圧縮機から前記凝縮器にいたる配管内に配置された圧力検知器である」という事項を付加したものを、甲3の第一発明と対比する。
甲3の第一発明は、「冷房運転時であって前記冷媒回路における高低圧差が所定値より大きい時にのみ前記補助冷却手段の作動を許容する作動許容手段を付設」してなるものである。これは、冷媒状態値を検知することに他ならないから、本件特許発明9と甲3の第一発明は、既に述べた相違点1及び次の相違点5でのみ相違する。

[相違点5]
本件特許発明9では、圧縮機と凝縮器との間の配管内に配置された圧力検知器により空気調和機における冷媒状態値を検知するのに対して、甲3の第一発明では、高低圧差を検知することで空気調和機における冷媒状態値を検知している点。

そこで、相違点1,5につき検討するに、まず、相違点1については既に「第5 3.」で検討したとおりである。
次に相違点5につき検討するに、圧縮機と凝縮器との間の配管内部の冷媒の圧力を検知する圧力検知器により空気調和機における冷媒状態値を検知することは、周知の技術的事項であり(そのような例として、甲第4号証(「第5 1.(4)」の摘記事項「ウ.」及び図1の記載内容参照。)、甲第7号証(「第5 1.(7)」の摘記事項「ア.」及び図1の記載内容参照。)を挙げることができる。)、甲3の第一発明において、空気調和機における冷媒状態値を検知するためにかかる周知の技術的事項を適用して、相違点5に係る本件特許発明9の構成を得ることも、当業者にとって格別の創作能力を要したことではない。

そうしてみると、相違点1,5は、いずれも格別のものではなく、本件特許発明9は、甲3の第一発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
しかも、本件特許発明9により、甲3の第一発明及び周知の技術的事項から予期される以上の格別顕著な効果が奏されるということもできない。

以上から、本件特許発明9は、甲3の第一発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許発明9に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

12.まとめ
したがって、本件特許発明1?9は、いずれも、請求人の提出した甲第3号証に記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本件特許発明1?9は、甲第3号証に記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
空気調和機の凝縮器の補助冷却装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】空気調和機の凝縮器(35)に水を噴霧する水噴霧手段(3)と、
前記空気調和機の稼動状態を検知する検知手段(Th2,22a、25)と、
前記空気調和機の圧縮機への給電を制御するインバータ回路(33b)と、
前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され、前記検知手段が検知した前記空気調和機の稼動状態に応じて前記水噴霧手段への給水を制御する給水制御手段(2,SV)とを備える、空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。
【請求項2】外気温を検知する外気温検知手段(Th1)をさらに備え、前記給水制御手段は、前記空気調和機の稼動状態および前記外気温に応じて前記水噴霧手段への給水を制御する、請求項1に記載の空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。
【請求項3】空気調和機の凝縮器(35)に水を噴霧する水噴霧手段(3)と、
前記空気調和機の稼動状態を検知する検知手段(22a,25)と、
前記空気調和機の圧縮機に備えられたインバータ回路(33b)と、
前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され、前記水噴霧手段への給水を制御する給水制御手段(2,SV)と、
前記検知手段が検知した前記空気調和機の稼動状態に応じて前記電源スイッチの電源入力側から前記給水制御手段にいたる給電経路を遮断する電力遮断手段(22b,25)とを備える、空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。
【請求項4】外気温を検知する外気温検知手段(Th1)をさらに備え、前記給水制御手段は、前記外気温に応じて前記水噴霧手段への給水を制御する、請求項3に記載の空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。
【請求項5】前記検知手段と前記電力遮断手段とが一体化された状態値検知スイッチ(22,25)を備える、請求項3または4に記載の空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。
【請求項6】前記検知手段は、前記空気調和機における冷媒状態値を検知するものである、請求項1?5のいずれかに記載の空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。
【請求項7】前記検知手段は、前記空気調和機における圧縮機の駆動状態を検知するものである、請求項1?5のいずれかに記載の空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。
【請求項8】前記検知手段が、前記圧縮機と前記凝縮器との間の配管に外付けされた温度検知器(Th2,22a,25)である、請求項6または7に記載の空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。
【請求項9】前記検知手段が、前記圧縮機から前記凝縮器にいたる配管内に配置された圧力検知器(25)である、請求項6または7に記載の空気調和機の凝縮器の補助冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気調和機の凝縮器の補助冷却装置に関し、より特定的には、インバータ搭載機など従来の取付方式では適応できない空気調和機にも取り付けて運転が可能な凝縮器の補助冷却装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図16は、室外機に取り付けられた補助冷却装置を示す斜視図である。この補助冷却装置のノズル103から、所定の運転間隔で室外機130の凝縮器めがけて水噴霧される。
【0003】
図17は、空気調和機の冷凍サイクルと補助冷却装置との配置関係を示す図である。冷房を行う空気調和機や冷凍機では、蒸発器137で冷媒を蒸発させて被冷却物を冷却する。冷媒は圧力が高いと設定された低温にならないので、蒸発器137で蒸発した冷媒蒸気を圧縮機133で吸い込んで圧力を低下させる。この圧縮機133の駆動には外付けされたモータ133aやその他の駆動装置が用いられる。冷媒蒸気はもはや冷凍能力がないので、再び液体にしなければならない。そのためには、冷媒蒸気の圧力を高める必要がある。このため、圧縮機は上述の吸い込んだ冷媒蒸気を圧縮して圧力を高くする。すなわち、圧縮機133は、冷却管側の冷媒蒸気の圧力を低下させる機能と、圧縮機から送り出される冷媒蒸気の圧力を高める機能とを備えている。
【0004】
圧縮機から送り出される冷媒蒸気は、圧力を高められるだけでなく、温度も高められる。この高温高圧の冷媒蒸気を凝縮器135に送って、水や空気で冷やす。この冷却により、冷媒蒸気は圧力の高いまま液体になる。この冷媒をレシーバ138で受けて、膨張弁136やキャピラリチューブを通して圧力を下げて蒸発器に流し込む。蒸発器では、冷媒は被冷却物から熱を奪い蒸発する。本説明で、冷媒というとき、液体、気体、または気液混合のいずれの場合にも該当する。
【0005】
上記の冷凍サイクルの中で、室外機は、通常、圧縮機から膨張弁にいたる経路を備えた部分であり、室内機は、膨張弁の後の蒸発器の部分、すなわち冷凍を利用する部分により構成される。
【0006】
室外機の補助冷却装置101は、凝縮器の冷却に水噴霧を用いることにより、冷凍サイクルの能力と冷却効率を向上させるものである(特許第3009874号)。
【0007】
図17において、補助冷却装置101の制御ボード102は、圧縮機133の電磁開閉器134の2次側から給電されている。したがって、圧縮機133が稼動していない場合には、制御ボード102はオン状態にならず、したがって、電磁弁SVがオン状態にされることはない。制御ボード102には外気温サーミスタ(以下、サーモと記す)Thが接続され、外気温信号が制御回路に入れられる。制御ボードからは電磁弁SVをオンオフ制御する配線がなされている。水噴霧をするノズル103は、電磁弁SVによって水の流通の開閉がなされる水配管104に接続されている。
【0008】
図18は、室外機に取り付けられた補助冷却装置の電気系統図であり、また図19は、水系統図である。上記の電気系統図によれば、補助冷却装置の電源は、圧縮機133aの電磁開閉器134の2次側からとられている。したがって、圧縮機の電磁開閉器134がオンにならないと電力が供給される状態にならない。また、この電気系統には外気サーモThが取り付けられており、外気温度信号を制御回路(マイコン)に送る。マイコンでは、ディップスイッチSW1によってなされたSVをオンさせる温度の設定にしたがって、SVに連結する継電器Ryをオンにする。継電器Ryのオンにより、電磁弁SVはオン状態となりノズル103から水噴霧がなされる。すなわち、この補助冷却装置は、圧縮機の電磁開閉器134がオンになり、その上で外気温が所定温度以上に所定時間以上ならないと、作動しない設定とされている。なお、ディップスイッチSW2は、噴霧時間シフトスイッチである。マイコンの中の制御回路T1は噴霧時間を制御し、また制御回路T2は乾燥時間を制御する。乾燥時間とは、補助冷却装置が間欠噴霧運転の1サイクルの中で水噴霧を行わない時間をさす。
【0009】
図19の水系統図によれば、ノズル103からの水噴霧は、水配管104に取り付けた電磁弁SVを制御ボード102によってオンオフ制御することによりなされる。
【0010】
上記の電気系統および水系統を用いることにより、補助冷却装置を室外機に配設する場合に、経済的に、かつ室外機の稼動に合わせて無駄なく補助冷却装置を稼動させることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
近年、インバータを搭載した圧縮機を用いるケースが増えている。また、インバータ搭載圧縮機を定速圧縮機に併設する構成も増える傾向にある。インバータ圧縮機は、負荷に応じて圧縮機の能力を変化させながら稼動することができるので、省エネルギの点で有利である。とくに、たとえばオフィスビル等において室内機が複数取り付けられる室外機などの場合、負荷に応じてインバータ搭載圧縮機と定速圧縮機とを組み合わせて、効率の向上等を得ることができる。このインバータ搭載圧縮機が配置される場合には、圧縮機の稼動に同期してオンオフする電磁開閉器やスイッチを設けることがない。極論すれば、スイッチはあってもなくてもよく、負荷の大小に応じて電力が増減して供給される。また、圧縮機のモータの電圧および周波数はインバータにより変動するので、電磁開閉器の2次側は一定電圧にならない。このため、圧縮機の稼動に同期させることができる従来のような電源接続を補助冷却装置に対してとることはできない。
【0012】
しかし、一定電圧が供給される箇所に補助冷却装置の電源を接続したのでは、圧縮機の稼動と同期がとれないので、圧縮機の停止中も水噴霧が行われ、補助冷却装置の無駄な運転をすることになる。
【0013】
さらに圧縮機と水噴霧とのタイミングがずれると、無駄だけでは済まない場合が出てくる。たとえば、次のような場合が発生する。
(a)外気温が高い時、圧縮機の稼動開始後、遅れて水噴霧が行われると、保護用高圧スイッチが作動して空気調和機全体が停止してしまう。このような意図しない停止は、空気調和機が、生鮮食品等を冷凍する冷凍装置の場合にとくに望ましくない。
(b)逆に、圧縮機の稼動により十分に冷媒蒸気の圧力が高くならないうちに凝縮器に水噴霧すると、冷媒蒸気の圧力が異常に低下して、ハンチング運転と称される冷却効率の悪い運転がしばらく継続する。このときも、水が無駄に消費されることは言うまでもない。
【0014】
このため、とくに冷凍機ユーザーを中心に圧縮機出口側の冷媒蒸気の高圧力を安定に制御する対策をとるよう強い要望が出されてきた。
【0015】
本発明は、圧縮機の電磁開閉器のオンオフに依存せず、空気圧縮機の稼動状態に基いて冷却効率を低下させずに運転することができる、空気調和機の凝縮器の補助冷却装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の局面の補助冷却装置は、空気調和機の凝縮器に水を噴霧する水噴霧手段と、空気調和機の稼動状態を検知する検知手段と、空気調和機の圧縮機への給電を制御するインバータ回路と、このインバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され、検知手段が検知した空気調和機の稼動状態に応じて水噴霧手段への給水を制御する給水制御手段とを備える(請求項1)。
【0017】
空気調和機の稼動状態は、冷凍サイクルの種々の部分の物性値を測定することにより検知することができる。たとえば、圧縮機により高圧にされた冷媒蒸気は、高温高圧にされる。このため、圧縮機から凝縮器に至る間の配管そのもの、またはその配管内の冷媒の温度や圧力、凝縮器における冷媒の圧力などを検知することにより、圧縮機の稼動の有無や稼動状態を知ることができる。この結果、圧縮機の稼動状態にリアルタイムで合わせて、圧縮機の稼動とずれを生じることなく補助冷却装置を稼動させることができる。この結果、冷却水の無駄を防止し、ハンチング運転など効率の悪い運転を防止することが可能となる。
【0018】
上記の給水制御手段には、マイコンボード、パソコンなどの制御手段と電磁バルブとを組み合わせたものなどを用いることができる。給水制御手段が前記インバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側から電力を供給されるので、この補助冷却装置は、インバータ搭載圧縮機などどのようなタイプの圧縮機からも電力を得ることができる。この結果、上記補助冷却装置は適用機種を拡大して、広範な機種の空気調和機の省エネルギおよび能力増強に寄与することができる。
【0019】
上記の検知手段は、連続した所定範囲の信号、たとえば連続範囲の電圧信号、を発信する検知器であってもよいし、スイッチのようにオンオフ信号や電圧の高低信号などの2値信号を発信する検知器であってもよい。
【0020】
なお、上記の給水制御手段には外気温度検知器がさらに接続されて、外気温度の情報と上記部分の情報とに基いて開閉手段のオンオフを制御してもよい。言うまでもなく、外気温度の情報なしに空気調和機の稼動状態の情報のみに基いて給水を制御してもよい。
【0021】
上記第1の局面の補助冷却装置は、圧縮機がインバータ搭載圧縮機の場合に対応した補助冷却装置である。圧縮機がインバータ搭載圧縮機でありかつ電磁開閉器を設けない場合には、給水制御手段は、インバータ回路の前段から常に給電されることになる。このため、インバータ回路の有無にかかわらず給水制御手段を常に正常に作動させることができ、上記第1の補助冷却装置と同様な効果を得ることができる。インバータ搭載圧縮機は、負荷に応じて出力をリアルタイムで変えるので、電力を効率的に使用できる利点を有する。
【0022】
上記第1の局面の補助冷却装置では、外気温を検知する外気温検知手段をさらに備え、給水制御手段は、空気調和機の稼動状態および外気温に応じて水噴霧手段への給水を制御することができる(請求項2)。
【0023】
この構成により、まず空気圧縮機の稼動状態の情報に基いて、たとえば圧縮機が稼動しているか否か判定することができる。次に、圧縮機が稼動した状態で、外気温が所定温度以上の場合に限り、給水制御手段は水噴霧手段に水噴霧を行わせることができる。この結果、水噴霧が必要な状況と対応する外気温の情報に基づいて、確実に必要な場合に限り水噴霧を行うことができ、冷却水の無駄を防止することができる。
【0024】
本発明の第2の局面の室外機の補助冷却装置は、空気調和機の凝縮器に水を噴霧する水噴霧手段と、空気調和機の稼動状態を検知する検知手段と、空気調和機の圧縮機への給電を制御するインバータ回路と、このインバータ回路への給電をオンオフする電源スイッチの電源入力側に接続され、水噴霧手段への給水を制御する給水制御手段と、検知手段が検知した空気調和機の稼動状態に応じて前記電源スイッチの電源入力側から給水制御手段にいたる給電経路を遮断する電力遮断手段とを備える(請求項3)。
【0025】
上記の構成により、まず電力遮断手段が電力系統からの給水制御手段への給電をオンにしないかぎり、給水制御手段は水噴霧手段への給水制御を行なうことができない。このため、(1)空気調和機の稼動状態を確認した上で、水噴霧を行なうかどうか選択することができる。さらに、(2)上記のほかに他の検知手段、たとえば外気温検知手段を備える場合には、上記の給水制御手段は外気温に基づいて給水を制御することができる。すなわち、この場合には2段構えの制御をすることができる。さらに、(3)上記の構成の場合、検知手段と電力遮断手段とを兼ね備えたスイッチ機能を備えた検知器を用いることができる。このようなスイッチ機能を備えた検知器は一般に安価であり、かつ制御回路の心臓部への組み込みも必要ないので取り付けが容易である。
【0026】
上記第2の局面の補助冷却装置では、外気温を検知する外気温検知手段をさらに備え、給水制御手段は、外気温に応じて水噴霧手段への給水を制御することができる(請求項4)。
【0027】
この構成により、(1)空気調和機の稼動状態を確認した上で、給水制御手段を稼動させるかどうか選択し、次いで、給水制御手段を稼動させた場合、(2)給水制御手段は外気温に基づいて給水を制御することができる。すなわち、2段構えの制御をすることができる。
【0028】
上記第2の局面の補助冷却装置では、検知手段と電力遮断手段とが一体化された状態値検知スイッチを備えることができる(請求項5)。
【0029】
上記の構成の場合、たとえば、外気温検知器または圧力検知器と電力遮断手段とを兼ね備えたセンサースイッチを用いることができる。このようなセンサースイッチは一般に安価であり、かつ制御回路の心臓部への組み込みも必要ないので取り付けが容易である。
【0030】
上記第1または第2の局面の補助冷却装置では、検知手段は、空気調和機における冷媒状態値を検知するものとできる(請求項6)。
【0031】
たとえば、圧縮機により高圧にされた冷媒蒸気は、高温高圧にされる。このため、圧縮機から凝縮器に至る間の冷媒状態を検知することにより空気調和機の稼動状態を知ることができる。たとえば、圧縮機から凝縮器にいたる間の配管そのもの、またはその配管内の冷媒の温度や圧力、凝縮器における冷媒の圧力などを検知することにより、圧縮機の稼動の有無や稼動状態を知ることができる。これらの検知手段は、配管に外付けされてもよいし、配管内に装着されてもよい。配管に外付けするほうが、一般に取り付けは容易である。
【0032】
この結果、圧縮機の稼動状態にリアルタイムで合わせて、圧縮機の稼動とずれを生じることなく補助冷却装置を稼動させることができる。この結果、冷却水の無駄を防止し、ハンチング運転など効率の悪い運転を防止することが可能となる。
【0033】
上記第1または第2の局面の補助冷却装置では、検知手段は、空気調和機における圧縮機の駆動状態を検知するものとできる(請求項7)。
【0034】
たとえば、配管の外側の温度を検知することにより、圧縮機の稼動の有無を間接的に知ることになり、圧縮機の稼動を確実に捉えることができる。また、配管に外付けするので、取付施工が非常に容易である。なお、上記の圧縮機は、定速圧縮機でもよいし、インバータ搭載圧縮機でもよい。
【0035】
上記のいずれの局面の補助冷却装置においても、検知手段を、圧縮機と凝縮器との間の配管に外付けされた温度検知器とすることができる(請求項8)。
【0036】
上記のように、配管の外側表面温度を測定することによって、冷媒状態や圧縮機の稼動状態を検知することができる。この結果、簡便、安価かつ確実に、必要なタイミングで水噴霧手段に給水することができる。この温度検知器に、温度スイッチを用いてもよい。この温度スイッチを用いた場合、検知した情報、通常、2値信号を給水制御手段に送って第1の局面の補助冷却装置のような制御を行うこともできるし、また、第2の局面の補助冷却装置のように、給水制御手段への給電のオンオフ制御をすることもできる。すなわち、多様な制御が可能であり、しかも取付施工が非常に簡単で、温度スイッチ自体安価である。
【0037】
上記のいずれの局面の補助冷却装置においても、検知手段を、圧縮機から凝縮器にいたる配管内に配置された圧力検知器とすることができる(請求項9)。
【0038】
この構成により、上記部分の圧力に基いて水噴霧の制御をすることが可能である。この結果、リアルタイムな圧力に基いて凝縮器の冷却をするので、アンバランスな圧力下での空気調和機の稼動を避けることができ、ハンチング運転などの冷却効率の悪い運転を防止することが可能になる。
【0039】
また、上記の圧力検知器として圧力スイッチを用いてもよい。圧力スイッチを用いた場合、検知した情報、通常、2値信号を給水制御手段に送って第1の局面の補助冷却装置のような制御を行うこともできるし、また、第2の局面の補助冷却装置のように、給水制御手段への給電のオンオフ制御をすることもできる。給水制御手段への給電のオンオフ制御をする場合、この圧力スイッチの作動圧力を、通常の空気調和機に備えられる保護圧力スイッチの作動圧力より低く設定する。この結果、保護圧力スイッチが作動して空気調和機が停止する以前に、上記圧力スイッチが作動して凝縮器を冷却することができる。
【0040】
このような圧力スイッチは簡単に取り付けることができる。また、保護圧力スイッチが通常操業下で作動することが防止され、したがって不要な場面で空気調和機が停止する事態を避けることができる。この結果、生鮮食品等を貯蔵する冷凍装置などの不必要な停止を避けることができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
次に図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
【0042】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における補助冷却装置を示す図である。本実施の形態の特徴は、インバータ圧縮機33から送り出された冷媒蒸気が通る配管に、外付けで管に温度検知器Th2が取り付けられていることである。この管サーモTh2は、上記冷媒蒸気の温度を間接的に検知し、制御ボード2に信号を送る。制御ボード2は、その電源をインバータ33bの前段からとっている。圧縮機を駆動させる駆動系33aには、インバータ33bで制御された電力が供給される。この駆動系33aは、圧縮機33に外付けされた回転機、リニアモータ、その他の駆動機器で構成することができる。ノズル3を配置した水配管4への給水部10は、ストレーナや圧力調整のための減圧弁等を備え、電磁弁SVでオンオフ制御される。
【0043】
制御ボード2には、外気サーモTh1も接続されている。制御ボード2は、外気サーモTh1と管サーモTh2との信号に応じて、水配管4に設けられた電磁バルブSVの開閉を行い、ノズル3からの水噴霧を制御する。
【0044】
図2は、図1における圧縮機を、定速圧縮機43とインバータ圧縮機33とで構成した変形例の場合を示す構成図である。圧縮機として、定速圧縮機43が加えられただけで、他の構成は図1の構成と同じである。ただし、管サーモTh2は、インバータ圧縮機および定速圧縮機の後段の共通配管部分に配置される。制御ボード2の電源配線は、定速圧縮機43を駆動する駆動系に接続される電磁開閉器34の1次側に接続される。
【0045】
図2の組み合わせ圧縮機の場合、インバータ圧縮機は、圧縮機の立ち上がりの部分を、定速圧縮機を停止させたまま要求能力に応じて比例して稼動する。要求能力が定速圧縮機の稼動分に上昇した場合には、インバータ圧縮機の稼動をいったん低稼働にして、定速圧縮機を稼動させる。さらに要求能力が増大した場合、インバータ圧縮機は、定速圧縮機の能力を超える要求能力分に応じて稼動する。この結果、負荷に見合った圧縮機の稼動を行うので、圧縮機の稼動の無駄がなく、省エネルギを実現することができる。
【0046】
図示はしないが、圧縮機が定速圧縮機のみで構成される場合にも、本実施の形態と同じ補助冷却装置を同じように配置して用いることができることは言うまでもない。
【0047】
図3は、制御ボード2および給水部10を取付板19に取り付けた状態を示す平面図である。給水部10は、樹脂が一体成形加工されたものに、電磁弁SVと、減圧弁17と、ストレーナ15およびストレーナ蓋16が取り付けられている。水は給水口18から給水され、ストレーナ15でごみを除かれ、減圧弁17で圧力を調整される。制御ボードからの指示に応じて電磁弁SVが開閉し、開の場合には出口から水を供給する。この取付板19は、孔19aにボルト等を通すことにより、室外機の周囲の適当な位置に取り付けられる。
【0048】
給水部10を、上記のように樹脂の一体成形加工品とすることにより、局所的な弱部がなくなり全体的に適度に伸縮するため、冬季の凍結による破裂を防止することができる。この樹脂の一体成形加工品の採用により、従来、冬季に水抜きを忘れた場合に生じていた破裂を完全に防止することができる。また、補助冷却装置を非常に小型化することが可能となる。
【0049】
図4は、圧縮機をインバータ搭載の駆動系で駆動する場合、電磁開閉器34の1次側に電源配線5を接続した制御ボード2を示す構成図である。外気サーモTh1および管サーモTh2は、制御ボードのコネクタCNを経て、マイコン11に接続されている。
【0050】
2本の電源配線の間には、リレーRyと水配管の電磁バルブSVとが直列に接続されている。電源回路11bから給電されるマイコン11等は、外気サーモTh1および管サーモTh2の測定信号に応じて、リレーRyの開閉および電磁バルブの開閉を行う。スイッチSW1、SW2、SW3、SW4については、順次、説明してゆく。
【0051】
上記制御ボードによる水噴霧制御の基本ロジックは、つぎのように集約される。
(1)補助冷却装置の運転/停止の判定は、管サーモTh2の測定値で行う。管サーモTh2がある温度以上で、かつ外気サーモTh1が噴霧開始温度Tst以上になると間欠噴霧運転を行う。間欠噴霧運転では、t1秒間だけ電磁弁SVを開き水噴霧し、t2秒間だけ乾燥するサイクルを繰り返す。
(2)また、外気サーモTh2が連続噴霧温度Tcon以上になると、連続噴霧運転として電磁弁SVを開いて水噴霧を続ける。
(3)噴霧開始温度Tst、連続噴霧温度Tcon、噴霧時間などは、テーブルまたは近似式で、マイコンに予め記憶させておく。その選択はディップスイッチで行う。たとえば、噴霧開始温度Tstおよび連続噴霧温度Tconの設定は、スイッチSW1で行う。また、噴霧時間のシフトの設定はスイッチSW2で行う。
【0052】
図5は、噴霧開始温度Tstを27℃に設定した場合のタイムチャート例を示す図である。まず、外気温が27℃未満では噴霧はなされず、補助冷却装置は停止している。しかし、外気温が27℃以上になると、補助冷却装置が稼動し始め、間欠噴霧運転に入る。間欠噴霧運転では、噴霧時間t1で、乾燥(停止)時間t2の周期で補助冷却装置が稼動する。上記したように、t1のシフトの設定は、スイッチSW2で行うことができる。図5の場合、t1は18秒、またt2は6分12秒である。ただし、その後のt1およびt2の選択は、電磁弁のオンオフ1周期ごとに外気温度と比較してテーブル値を選択することにより行う。外気温が28℃に達しても、28℃は連続噴霧温度Tconではないので、間欠噴霧運転の状態が継続する。
【0053】
図6は、運転モードの切り換えを説明する図である。通常運転モードとは、上述のように外気サーモTh1と、管サーモTh2とに基いて、補助冷却装置を運転するモードである。一方、図6に示すHPS(High Pressure Switch)運転モードとは、冷媒の圧力にしたがって、補助冷却装置の稼動/停止を判断する運転モードである。上記の通常運転モードとHPS運転モードとの切り換えは、ディップスイッチSW4で行うことができる。
【0054】
通常運転モードの場合、外気サーモ温度が異常な場合には、補助冷却装置を異常停止することができる。また、外気サーモ温度が正常に戻れば、通常運転モードに戻ることができる。さらに、通常運転モードおよびHPS運転モードのいかんによらず、試運転スイッチSW3をオンすることにより、試運転モードに切り換えることができる。この試運転期間は1分間であり、1分間経過すると、元の運転モードに戻ることができる。
【0055】
図7は、外気サーモTh1および管サーモTh2の値と、補助冷却装置の動作との関係を示す図である。まず、管サーモTh2が所定時間連続して所定温度Ta以上でオン状態であり、かつ外気サーモTh1の値である外気温度が噴霧開始温度Tst以上の場合、上述のように間欠噴霧運転モードに入る。また、管サーモTh2の測定値が所定時間、所定温度Tb(Tb<Ta)以下でありオフ状態にある場合か、または外気温度が(Tst-1)以下の場合には、電磁弁を閉じて噴霧停止する。すなわち、噴霧開始温度から1℃以上低下すると、元の運転モードに戻る。
【0056】
連続噴霧運転モードに入る場合は、上記の噴霧開始温度Tstを連続噴霧運転Tconに置き換えれば、上記の条件がそのまま成り立つ。
【0057】
図8は、管サーモTh2のオンオフ判定の基本ロジックを示す図である。管サーモTh2の温度が連続して30秒、70℃以上の場合、圧縮機が稼動していると判定して、外気温にしたがって、補助冷却装置を稼動させる最初の条件が満たされる。また、管サーモが断線した場合も考慮して、管サーモがオープンの場合も、外気温に応じて補助冷却装置を稼動させる条件が満たされたとする。これは安全性を確保するためである。
【0058】
また、管サーモTh2の温度が連続して30秒、50℃以下の場合には、圧縮機が停止状態に入っていると判定して、管サーモはオフとする。したがって、補助冷却装置を稼動させる最初の条件が満たされていないとする。
【0059】
上記の構成により、どのようなインバータ圧縮機を併用したタイプの空気調和装置の室外機であっても、圧縮機の実際の稼動を適切に判定して、補助冷却装置を適当なタイミングで稼動させることができる。この結果、補助冷却装置の取付可能な機種が増え、さらに広範な使用が期待されるようになる。また、冷却水の無駄を防止することができる。
【0060】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2における補助冷却装置を示す構成図である。本実施の形態では、インバータ圧縮機33から送り出された冷媒が通る配管の外側に接して温度スイッチ22を配置したことに特徴がある。この温度スイッチ22は、配管壁を通して冷媒の温度を測定し、インバータ圧縮機33の稼動中または不稼動中かを判定する。
【0061】
この温度スイッチ22は、温度測定部21aと電磁スイッチ部21bとを備えている。測定温度が、たとえば70℃以上の場合にはインバータ圧縮機が稼動中であり、冷媒の状態としては水噴霧を行うのに適していると判定し、電磁スイッチ部22bは導通状態をとる。この導通状態に加えて、外気サーモTh1がたとえば27℃以上になれば、制御ボード2は、電磁弁SVにオンの指示を出し、水配管4に水を流し、ノズル3から凝縮部35に水噴霧する。
【0062】
また、測定温度が50℃以下の場合には、インバータ圧縮機33が停止中と判定し、バイメタルスイッチまたは電気接点22bはオフ状態をとる。
【0063】
図10は、制御ボード2の構成を示す図である。温度スイッチのバイメタルスイッチまたは電気接点22bは、測定温度が所定温度、たとえば70℃以上の場合オン状態をとり、所定温度、たとえば50℃以下の場合オフ状態をとる。温度スイッチのバイメタルスイッチまたは電気接点22bは電源配線に接続されているので、このバイメタルスイッチまたは電気接点22bがオン状態にならない限り、電磁弁SV1,SV2がオン状態になることはない。なお、図10の電気系統には、水配管が2本配置され、それぞれに電磁弁が配置される場合を示している。
【0064】
図11は、本発明の実施の形態2の変形例の電気系統を示す図である。この電気系統に配置された温度スイッチは、図10の電気系統に配置された温度スイッチとタイプが異なる。図10に示した温度スイッチは、測定温度が所定値以上になるとオン状態になる。しかし、図11に示した温度スイッチは、測定温度が所定温度以上になるとバイメタルスイッチまたは電気接点22bがオフ状態になるタイプのものである。圧縮機から送り出される冷媒は高温高圧の状態なので、電気回路としては、測定温度が所定温度以上のときにオン状態とする必要がある。
【0065】
このため、図11の回路では、コイルと電磁スイッチ22bxとで構成されるスイッチ部材を配置する。バイメタルスイッチまたは電気接点22bと直列に接続される部分がコイルであり、ここに電流が流れると磁気力が発生し、電磁接点22bxを開離してオフ状態とする。したがって、温度スイッチ22の温度測定部の測定温度が所定温度より低い場合、バイメタルスイッチまたは電気接点22bはオン状態となり、かつ電磁接点22bxはオフ状態となる。この状態では制御ボードに電力が供給されないので、補助冷却装置が稼動する第1の条件が満たされないことになる。
【0066】
逆に、電磁スイッチの温度測定部22aでの測定温度が所定温度以上の場合バイメタルスイッチまたは電気接点22bはオフ状態となり、かつ、電磁接点22bxはオン状態となる。このため、制御ボードに電力が供給され、補助冷却装置が稼動する第1の条件が満たされることになる。この後、外気サーモTh1の測定温度に応じて、電磁弁SVのオンオフパターンが決められ、水噴霧がなされる。
【0067】
温度スイッチは、一般に、高温になるとバイメタルスイッチまたは電気接点が開離してオフ状態にするタイプのほうが多いので、図11に示すバイメタルスイッチまたは電気接点の構成とする場合が多い。
【0068】
なお、上記の温度スイッチは、2値信号をマイコンに送信し、マイコンにおいて外気温信号と2値信号にしたがって、噴霧パターンを制御してもよい。
【0069】
上記の構成により、温度スイッチという安価な部材を用いて、簡単な施工により、補助冷却装置を稼動に適したタイミングで稼動させることができる。この結果、冷却水の無駄を防止し、冷却効率の悪いハンチング運転などを避けることができる。
【0070】
(実施の形態3)
図12は、本発明の実施の形態3における補助冷却装置を示す図である。本実施の形態では、圧縮機33から送り出される冷媒の圧力に応じてオンオフ動作をする圧力スイッチ(HPS:High Pressure Switch)25を、圧縮機33と凝縮器35との間の配管内のサービスポート31に配置する。このサービスポートは、メンテ時に冷媒を充填したり、上記のような圧力スイッチを装填するために用いられる。保護用HPS39は、配管に直接取り付けられ、所定の圧力を検知すると空気調和機の稼動を停止させる安全対策がとられている。保護用HPSは、図12では取付スペースを設けるように描かれているが、通常、特別の取り付けスペースを設けずに、配管内にそのまま取り付けられる。
【0071】
一般に、圧縮機から送り出される冷媒は高温高圧であるので、このサービスポートの圧力により、圧縮機が稼動中か否かを判定することができる。ここで用いられるHPSは、測定圧力が所定値以下になった場合にオン状態をとるスイッチである。
【0072】
図13は、HPSを組み込んだ電気系統を示す図である。冷媒の圧力に応じてマイコンは次の信号を受信する。
(a)冷媒の圧力が所定値Pa以上の場合:電気接点はオフ状態をとる。このため、フォトカップラ27のフォトダイオード27aは発光せず、トランジスタ27bにも電流は流れない。したがって、マイコンには高電圧が信号として送られる。
(b)冷媒の圧力が所定値Pb(Pb<Pa)以下の場合:電磁接点25はオン状態をとる。このため、フォトカップラ27のフォトダイオード27aに電流が流れ、発光し、フォトカップラ27のトランジスタ27bのゲートに伝達される。トランジスタ27bはオン状態となり、コレクタに電流が流れ、抵抗における電圧降下のため、低電圧たとえばゼロ電位がマイコンに信号として送られる。
【0073】
図14は、上記の信号を得たマイコンが行う制御のフローチャートである。まず、電磁弁SVがオフ状態で圧力上昇し、HPS25がオフ状態になると、マイコンは高電位信号を受信する。高電位信号を受信したマイコンは、N1サイクルだけ間欠噴霧運転を行う。1サイクルにおける噴霧時間はtt1であり、乾燥時間はtt2である。N1サイクルであり、乾燥時間はtt2である。
【0074】
N1サイクルの間欠噴霧運転の後、HPSオフ状態が持続されている場合には、圧力低下を強化するために間欠噴霧における乾燥時間tt2を5秒間だけ短くする。この水噴霧を強化した条件で、さらにN1サイクルだけ間欠噴霧運転を行う。
【0075】
このさらなるN1サイクルの間欠噴霧運転の後、HPSからの信号が低電位になっていれば、圧力はPb以下になったとして、電磁弁をオフ状態にする。しかし、依然としてHPSからの信号が高電位の場合には、乾燥時間をさらに5秒間短縮する。このとき、乾燥時間がゼロ以下になった場合は、連続噴霧運転を行う。連続噴霧運転を所定時間行い、HPSからの信号が低電位になっていれば、圧力はPb以下になったとして、電磁弁をオフ状態として冷却を停止する。
【0076】
図15は、図14のフローチャートに基いて制御を行った例を示すタイムチャートである。図15において、測定圧力がPa以上になった場合、HPSはオフ状態となる。このとき、マイコンには高電位信号が送られる。マイコンは、この高電位信号に基いてN1サイクルだけ間欠噴霧運転を行うことを指令する。図15の例では、N1サイクル後に圧力はPb以下になっていないので、もうN1サイクルだけ乾燥時間を5秒間減らしたパターンで間欠噴霧運転を行う。図15の例では、そのN1サイクルが終了する前に、圧力はPb以下になる。この時点で、HPSはオン状態となり、マイコンは低電位信号を受信する。このため、N1サイクルの間欠噴霧運転が終了する前に、補助冷却装置は運転を停止する。
【0077】
圧力が再びPa以上になったとき、マイコンは高電位信号を受信し、N1サイクルの間欠噴霧運転を指令する。この前に停止した際の間欠噴霧運転の乾燥時間は、(tt2-5)秒であったので、この間欠噴霧運転の乾燥時間も(tt2-5)秒から再開する。この再開された間欠噴霧運転のN1サイクルが終了した時点では、圧力はPb以下になっていないので、1サイクルの乾燥時間をさらに5秒間減じてN1サイクルの間欠噴霧運転を行う。しかし、N1サイクルの途中で圧力がPb以下になった時点で運転を停止する。以後、上記のロジックにしたがって、補助冷却装置の運転を行ってゆく。上記のN1サイクルに要する時間は、乾燥時間が各N1サイクルごとに変化するので、一定ではない。
【0078】
上記の制御により、圧力スイッチを用いて、圧力の状況にリアルに対応してきめこまかい水噴霧制御を行うことが可能となる。このため、保護用圧力スイッチの作動による冷却装置の停止を防止することができる。また、圧縮機を出た冷媒の高圧を安定化することによって冷媒系を安定化させ、ハンチング運転等の不完全な稼動を防止することができる。
【0079】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【0080】
【発明の効果】
本発明の補助冷却装置およびその運転方法を用いることにより、補助冷却装置の稼動制御を、圧縮機の電磁開閉器のオンオフに依存しないで、より直接的に圧縮機から凝縮機に至る部分の物性値に基いて行うことができる。このため、冷却水の無駄な消費、ハンチング運転など不完全な状態での運転の防止、および保護用HPSの作動に起因する補助冷却装置の停止などを防止することが可能となる。この結果、補助冷却装置をインバータ搭載圧縮機などにも適応して用いることができ、適用機種を拡大して空気調和機の省エネルギおよび能力増強をさらに広範に行うことが可能となる。また、圧縮機と凝縮器との間の冷媒の圧力を測定して制御に反映させることにより、冷媒の高圧状態を安定化して確保することができる。この結果、保護用HPSの作動に起因する意図しない停止を回避して冷凍機器を安定して稼動させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における補助冷却装置を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における補助冷却装置の変形例を示す構成図である。
【図3】図1および2の水供給部および制御ボードを取付板に取り付けた状態を示す図である。
【図4】制御ボードの電気系統を示す図である。
【図5】噴霧開始温度Tstを27℃に設定した場合における、噴霧、乾燥および電磁弁のタイムチャートを示す図である。
【図6】運転モードの切り換えを示す図である。
【図7】運転モード間の移行条件を示す図である。
【図8】管サーモのオンオフ切り換え条件を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態2における補助冷却装置を示す構成図である。
【図10】図9の制御ボードの電気系統を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態2の補助冷却装置の変形例における温度スイッチおよび制御ボードを示す図である。
【図12】本発明の実施の形態3における補助冷却装置を示す構成図である。
【図13】図12に示す制御ボードおよび圧力スイッチの電気系統図である。
【図14】図12の補助冷却装置の運転のフローチャートである。
【図15】図14のフローチャートに基いて運転制御がなされたタイムチャート例を示す図である。
【図16】室外機を冷却している補助冷却装置の斜視図である。
【図17】従来の補助冷却装置を示す図である。
【図18】従来の補助冷却装置の電気系統図である。
【図19】従来の補助冷却装置の水系統を示す図である。
【符号の説明】
1 補助冷却装置、2 制御ボード、3 水噴霧ノズル、4 水配管、5 電源配線、10 水供給部、11 マイコン、11b 電源回路、15 ストレーナ、16 ストレーナ蓋、17 減圧弁、18 給水口、19a,19b 水出口、21 取付板、21a 取付孔、22 温度スイッチ、22a 温度測定部、22b バイメタルスイッチ(電気接点)、22bx 電磁スイッチ、25 圧力スイッチ(HPS)、27 フォトカップラ、27a フォトダイオード、27b トランジスタ、31 サービスポート、32,33 インバータ圧縮機、33a インバータ駆動部、33b インバータ、34 電磁開閉器、35 凝縮器、36 膨張弁、37 蒸発器、39 保護HPS、43 定速圧縮機、CN コネクタ、Ry リレー(電磁開閉器)、SV 電磁弁、Th1 外気サーモ、Th2 管サーモ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-12-28 
結審通知日 2007-01-09 
審決日 2007-01-25 
出願番号 特願2001-321532(P2001-321532)
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (F24F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 荘司 英史  
特許庁審判長 岡 千代子
特許庁審判官 長浜 義憲
新海 岳
登録日 2005-12-02 
登録番号 特許第3745669号(P3745669)
発明の名称 空気調和機の凝縮器の補助冷却装置  
代理人 山崎 宏  
代理人 山崎 宏  
代理人 岡田 春夫  
代理人 仲倉 幸典  
代理人 北村 修一郎  
代理人 仲倉 幸典  
代理人 小池 眞一  
代理人 仲倉 幸典  
代理人 山崎 宏  

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