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審決分類 |
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する H01L 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する H01L 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する H01L 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する H01L 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する H01L 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する H01L |
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管理番号 | 1155885 |
審判番号 | 訂正2007-390003 |
総通号数 | 90 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-06-29 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2007-01-15 |
確定日 | 2007-03-26 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第1761945号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第1761945号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
1.審判請求の要旨 本件審判請求の要旨は、特許第1761945号(昭和57年7月5日特許出願、平成5年5月28日設定登録、平成14年7月5日存続期間満了により、権利登録抹消)の願書に添付した明細書及び図面を、本件審判請求書に添付した訂正明細書及び図面のとおりに訂正することを求めるものである。 ただし、本件審判請求に先立って審判請求された訂正2006-39051号において、平成18年6月1日に、訂正許可を要旨とする審決が確定しているから、本件の願書に添付した明細書及び図面は、特許法第128条の規定により、訂正2006-39051号において、平成18年5月16日に提出された手続補正書(審判請求書)に添付の訂正明細書及び図面(以下、「本件特許明細書等」という。)により訂正された明細書及び図面である。 2.訂正事項 [訂正事項1] 本件特許明細書等の特許請求の範囲の 「(100)面を有し、且つ、高濃度n形基板(5)と、前記高濃度n形基板(5)の上に形成された低濃度n形層(4)と、前記低濃度n形層(4)の上に形成されたp形層(3)と、前記p形層(3)の上に形成された高濃度n形層(2)とを有するシリコン基板の表面に、長手方向が<110>方向と45°の角度をなす矩形状の凹部が形成され、前記矩形状の凹部の側面をなす(010)または(001)面をチャンネルとして用い、前記高濃度n形層(2)をソース領域として用い、前記高濃度n形基板(5)に電極形成されたドレイン電極を備える縦型構造電界効果トランジスタ。」を 「(100)面を有し、且つ、高濃度n形基板(5)と、前記高濃度n形基板(5)の上に形成された低濃度n形層(4)と、前記低濃度n形層(4)の上に形成されたp形層(3)と、前記p形層(3)の上に形成された高濃度n形層(2)とを有するシリコン基板の表面に、直方体にエッチング形成された矩形状の凹部であって前記直方体の長手方向が<110>方向と45°の角度をなす矩形状の凹部が形成され、前記矩形状の凹部の側面をなす(010)または(001)面をチャンネルとして用い、前記高濃度n形層(2)をソース領域として用い、前記高濃度n形基板(5)に電極形成されたドレイン電極を備える縦型構造電界効果トランジスタ。」と訂正する。 [訂正事項2] 本件特許明細書等の第1頁下から第5ないし1行の 「(100)面を有し、且つ、高濃度n形基板(5)と、前記高濃度n形基板(5)の上に形成された低濃度n形層(4)と、前記低濃度n形層(4)の上に形成されたp形層(3)と、前記p形層(3)の上に形成された高濃度n形層(2)とを有するシリコン基板の表面に、長手方向が<110>方向と45°の角度をなす矩形状の凹部が形成され、」を 「(100)面を有し、且つ、高濃度n形基板(5)と、前記高濃度n形基板(5)の上に形成された低濃度n形層(4)と、前記低濃度n形層(4)の上に形成されたp形層(3)と、前記p形層(3)の上に形成された高濃度n形層(2)とを有するシリコン基板の表面に、直方体にエッチング形成された矩形状の凹部であって前記直方体の長手方向が<110>方向と45°の角度をなす矩形状の凹部が形成され、」と訂正する。 [訂正事項3] 本件特許明細書等の第2頁第4ないし5行の 「この構造によれば、パワーMOSFTのオン抵抗をさらに小さくすることができる効果がある。」を 「この構造によれば、パワーMOSFETのオン抵抗をさらに小さくすることができる効果がある。」と訂正する。 [訂正事項4] 本件特許明細書等の第2図(a)を本件審判請求書に添付した図面の第2図(a)に(訂正事項4-1)、本件特許明細書等の第2図(b)を本件審判請求書に添付した図面の第2図(b)に(訂正事項4-2)、それぞれ訂正する。 [訂正事項5] 本件特許明細書等の第2頁第9ないし10行の 「(100)面を有し、(110)面を方位規正面とするシリコン基板上で、」を 「(100)面を有し、(01-1)面を方位規正面とするシリコン基板上で、」(ただし、実際の記載では上記「-1」は、「1」の直上に「-」が付されている。以下同様。)と訂正する。 [訂正事項6] 本件特許明細書等の第2頁第18行の 「次に、実際にパワーMOSFTを作製する本発明の実施例について述べる。」を 「次に、実際にパワーMOSFETを作製する本発明の実施例について述べる。」と訂正する。 3.訂正拒絶理由の概要 一方、当審において平成19年2月7日付けで通知した訂正拒絶理由では『4.むすび』において、『訂正事項4及び訂正事項5を含む本件訂正審判の請求は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、平成6年改正前の特許法第126条第1項ただし書きの規定に適合しない。』と判断する根拠として、訂正事項4及び訂正事項5に対して以下の事項を通知した。 『[訂正事項4について] 訂正事項4についての訂正は、実質的に、本件特許明細書等の第2図(a)における「シリコン基板」の「方位規正面」の表記を「(01-1)」に訂正する(訂正事項4-1)とともに、第2図(b)における「直方体にエッチングされた側面」の右上の結晶面の表記を「(001)」に訂正する(訂正事項4-2)ものである。 《訂正事項4-1についての検討》 本件特許明細書等で方位規正面とされる(110)面は、シリコン基板の(100)面とは直交しないから、シリコン基板の面方位が(100)面であることが正しいとすれば、(110)面が方位規正面として誤記であることは明らかである。 しかし、本件特許明細書等には、上記「方位規正面」に関して、「(100)面を有し、(110)面を方位規正面とするシリコン基板上で、第2図(a)に示すように、<110>方向と45°の角度をなす矩形状の凹部pを作るようにエッチングを行う。」(第2頁第9ないし11行)と記載されているのみであるから、本来の正しい「方位規正面」が「(01-1)面」であることの明示的な記載は何らなされていない。 また、本件特許明細書等の「長手方向が<110>方向と45°の角度をなす矩形状の凹部」(特許請求の範囲)及び「<110>方向と45°の角度をなす矩形状の凹部pを作るようにエッチングを行う」(第2頁第10ないし11行)という記載に基づいて、[110]方向と等価な方向を全て含む<110>方向を法線とする結晶面の集合体である{110}面について検討すると、上記{110}面のうちで(100)面と直交する結晶面は、x成分が0であればy成分及びz成分の値は任意でよいため、複数存在する一方で、これらの結晶面のうち他の結晶面を除外して(01-1)面のみが本来の正しい方位規正面であることは、本件特許明細書等に根拠となる記載がされておらず、また、当業者の技術常識を勘案しても自明であるとはいえない。 したがって、訂正事項4-1についての訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとはいえない。 《訂正事項4-1及び訂正事項4-2についての検討》 上記《訂正事項4-1について》の検討内容を踏まえると、本件特許明細書等の第2図(a)におけるシリコン基板の結晶面の表記である「(100)」が正しいとすれば、方位規正面の表記である「(110)」は誤記であるから、本件特許明細書等の第2図(a)及び第2図(b)に誤記である方位規正面の「(110)」を除いて記載された結晶面の面方位は以下のとおりである。 (1)シリコン基板の結晶面である「(100)」(第2図(a)及び第2図(b)) (2)直方体にエッチングされた側面のうち右下の結晶面である「(010)」(第2図(b)) (3)直方体にエッチングされた側面のうち左下の結晶面である「(001)」(第2図(b)) 上記の(1)ないし(3)が同時に成り立つとすると、面方位を規定するためのx軸([100]軸)、y軸([010]軸)及びz軸([001]軸)の配置を右手系(右手の親指をx軸、人差指をy軸、中指をz軸とする座標系)にすることができないから、上記(1)ないし(3)のいずれか1つは誤りであるが、(100)面のシリコン基板が通常よく用いられることは当業者の技術常識であるから、上記の(1)は誤記であるとはいえない。 したがって、以下の検討では、 ・上記(1)及び(2)が正しいとした場合(以下、「条件A」という。)、及び ・上記(1)及び(3)が正しいとした場合(以下、「条件B」という。) について、方位規正面及び直方体にエッチングされた側面のもう一方の結晶面を導出する。 [条件A](上記(1)及び(2)が正しいとした場合) (A-1)上記(1)より、[100]軸(x軸)は、紙面に垂直な方向で、向きは紙面の裏側から表側となる。 (A-2)上記(2)より、[010]軸(y軸)は、紙面に平行な方向で、向きは左斜め上45°となる。 (A-3)上記(A-1)及び(A-2)で、[100]軸(x軸)及び[010]軸(y軸)が決定したので、[001]軸(z軸)は、座標系が右手系になるように配慮すると、紙面に平行な方向で、向きは左斜め下45°となる。 (A-4)上記(A-1)ないし(A-3)で決定した[100]軸(x軸)、[010]軸(y軸)、及び[001]軸(z軸)に基づくと、 ・方位規正面:(0-11)面 ・直方体にエッチングされた側面のうち左下の結晶面:(00-1)面(したがって、直方体にエッチングされた側面のうち右上の結晶面は(001)面) となる。 [条件B](上記(1)及び(3)が正しいとした場合) (B-1)上記(1)より、[100]軸(x軸)は、紙面に垂直な方向で、向きは紙面の裏側から表側となる。 (B-2)上記(3)より、[001]軸(z軸)は、紙面に平行な方向で、向きは右斜め上45°となる。 (B-3)上記(B-1)及び(B-2)で、[100]軸(x軸)及び[001]軸(z軸)が決定したので、[010]軸(y軸)は、座標系が右手系になるように配慮すると、紙面に平行な方向で、向きは右斜め下45°となる。 (B-4)上記(B-1)ないし(B-3)で決定した[100]軸(x軸)、[010]軸(y軸)、及び[001]軸(z軸)に基づくと、 ・方位規正面:(01-1)面 ・直方体にエッチングされた側面のうち右下の結晶面:(0-10)面 となる。(なお、(B-2)より、直方体にエッチングされた側面のうち右上の結晶面は(00-1)面となる。) 上記の[条件A]及び[条件B]のいずれの場合においても、本件審判請求書に添付した図面の第2図(a)及び第2図(b)に記載の ・方位規正面が「(01-1)」面であって、かつ、 ・直方体にエッチングされた側面の右上の結晶面が「(001)」面 とはならないから、訂正事項4-1及び補正事項4-2についての訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとはいえない。 [訂正事項5について] 訂正事項5についての訂正は、本件特許明細書等の第2頁第9ないし10行の「(100)面を有し、(110)面を方位規正面とするシリコン基板上で、」という記載における「(110)」を「(01-1)」と訂正するものであるから、上記の[訂正事項4について]で検討したとおりの理由によって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとはいえない。』 4.手続補正の適否 これに対して、平成19年2月23日付けの手続補正によって、上記訂正事項4及び訂正事項5が削除されるとともに、これに伴って、上記訂正事項6が訂正事項4に繰り上げられた。 上記手続補正は、訂正事項を削除するものであり、訂正請求の要旨を変更するものではないから、上記手続補正を認める。 5.訂正の目的の適否、新規事項の有無、拡張・変更の存否 以下、上記手続補正を認め、上記訂正事項4及び訂正事項5を削除し、上記訂正事項6を訂正事項4とした上で判断を行う。 [訂正事項1について] 訂正事項1についての訂正は、訂正前の特許請求の範囲の第1項に記載された発明である「縦型構造電界効果トランジスタ」の「矩形状の凹部」が「直方体にエッチング形成された」ものであることを限定するとともに、「前記直方体の長手方向が<110>方向と45°の角度をなす」ことを明確化するためのものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 そして、本件特許明細書等の「(100)面を有し、(110)面を方位規正面とするシリコン基板上で、第2図(a)に示すように、<110>方向と45°の角度をなす矩形状の凹部pを作るようにエッチングを行う。ただし、シリコン・エッチングは第2図(b)(第2図(b)は第2図(a)の凹部pの拡大図である。)に示すように、(100)表面に対して垂直にエッチングを行う。この時、直方体にエッチングされた側面は、第2図(b)に示すようにそれぞれ(010)、(001)面となり、(100)面と等価な面である。」(第2頁第9ないし15行)という記載から、「矩形状の凹部p」が「直方体にエッチングされた」ことは明らかであり、また、上記記載と併せて第2図(b)を参酌すれば、「直方体にエッチングされた」「矩形状の凹部p」の長手方向が「<110>方向と45°の角度をなす」ことも明らかである。 したがって、訂正事項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 [訂正事項2について] 訂正事項2についての訂正は、発明の詳細な説明の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載に整合させるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、[訂正事項1について]で検討したとおりの理由により、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 [訂正事項3について] 訂正事項3についての訂正は、本件特許明細書等の第2頁第4ないし5行の「この構造によれば、パワーMOSFTのオン抵抗をさらに小さくすることができる効果がある。」という記載における明らかな誤記である「MOSFT」を「MOSFET」に訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 [訂正事項4について] 訂正事項4についての訂正は、本件特許明細書等の第2頁第18行の「次に、実際にパワーMOSFTを作製する本発明の実施例について述べる。」という記載における明らかな誤記である「MOSFT」を「MOSFET」に訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 以上のとおり、本件訂正審判の請求は、平成6年改正前の特許法第126条第1項及び第2項の規定に適合し、特許請求の範囲を訂正する訂正事項1についての訂正は、同法同条第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、以下では、本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が同法同条第3項に規定された独立特許要件を満たすか否かについて検討する。 6.独立特許要件 (1)本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明 本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明(以下「本件訂正発明」という。)は、次のとおりのものである。 「(100)面を有し、且つ、高濃度n形基板(5)と、前記高濃度n形基板(5)の上に形成された低濃度n形層(4)と、前記低濃度n形層(4)の上に形成されたp形層(3)と、前記p形層(3)の上に形成された高濃度n形層(2)とを有するシリコン基板の表面に、直方体にエッチング形成された矩形状の凹部であって前記直方体の長手方向が<110>方向と45°の角度をなす矩形状の凹部が形成され、前記矩形状の凹部の側面をなす(010)または(001)面をチャンネルとして用い、前記高濃度n形層(2)をソース領域として用い、前記高濃度n形基板(5)に電極形成されたドレイン電極を備える縦型構造電界効果トランジスタ。」 (2)刊行物記載の発明 (a)刊行物1:特開昭55-148438号公報 本件の出願日前に日本国内において頒布された上記刊行物1には、第1図ないし第5図とともに、以下の事項が記載されている。 「本発明による方法に従つて、複数の垂直な又は垂直線から僅かに傾斜したU形溝を有する、相互に誘電体分離されたMOSFETの高密度のマトリツクスが達成される。」(第3頁左上欄第16ないし19行) 「本発明による方法に従つて形成された改良された構造体の密度はそのVMOS型素子構造体の密度の約2倍であ … る。」(第3頁右上欄第11ないし14行) 「相互に誘電体分離された高密度のMOSFET素子のマトリツクスを形成するための本発明による方法は反応性イオン食刻技術を用いている。反応性イオン食刻技術は、VMOSの製造方法に於て用いられている異方性食刻よりも相当に有利である。」(第3頁右上欄第18行ないし同頁左下欄第3行) 「反応性イオン食刻方法は食刻されている単結晶シリコンの結晶方向に依存せず、U形溝の深さは所望の任意の深さでよい。」(第3頁左下欄第12ないし15行) 「第1図に示されている構造体は、説明のためP-型として示されている単結晶シリコン基板10、該基板10上のP型層12、及び該P型層12上のN+型層14を含む。 … 好ましい技術に於ては、 … <100>結晶方向のP-型単結晶シリコン基板10が設けられる。 … 次に、第1図に示されている構造体に反応性イオン食刻方法が施される。 … その方法は、従来技術により層14の表面上に付着された、2酸化シリコン層から成り得るマスク層(図示せず)又は2酸化シリコン層或は窒化シリコン層を含むマスク層の組合せを形成することを含む。U形の第1開孔が必要とされる領域に於て、上記マスク層中に開孔が形成される。 … 例えば塩素の種を含むことにより反応性にされた高周波誘導プラズマが用いられる。 … 反応性イオン食刻又はプラズマの雰囲気は、アルゴンの如き不活性ガスと塩素の種との組合せであることが好ましい。 … この食刻の所望の結果が第2図に示されており、少くとも部分的にP-型基板10中に延びる実質的にU形の第1開孔又は溝16が示されている。それらの第1開孔又は溝16は … 垂直線から約2乃至20度以上傾斜していることが重要である。それは、後にそれらの溝の充填のために付着が行われるとき、溝の上部付近に於て溝の底部よりも僅かに厚い付着が生じるためである。 この方法に於ける次の工程は、誘電体分離領域18を設けるために、開孔16を誘電体材料で充填することである。 … 次に、第3図に示されている如く、誘電体表面層20、層14、及び層12を経て基板10中に延びる反応性イオン食刻された実質的にU形の第2開孔又は溝22が形成される。反応性イオン食刻されたU形の第2開孔22は前述の … 如き方法によつて形成される。 … その結果、垂直線から僅かに傾斜した、好ましくは2乃至10度傾斜した、実質的にU形の第2開孔が形成される。 … それらの第2開孔22内の表面上にゲート誘電体層24を形成するために、基体が … 酸化雰囲気に対して曝される。 … 第4図は、本発明による1つの方法に従つて形成された構造体を示している。第4図に示されている構造体を形成するためには、ゲート誘電体層即ち2酸化シリコン層24で被覆された第2開孔22中に、ドープされた多結晶シリコン層26を付着することが必要である。 … N+型領域30はRAMセルのためのビツト線として働き得る。FETのためのチヤンネルはP型領域34である。ドープされた多結晶シリコン層で充填された第2開孔即ちドープされた多結晶シリコン層26はゲート電極である。この1素子型MOSFET・RAMセルのキヤパシタは、ゲート誘電体層24及びゲート電極26の周囲に於てP-型基板10中に形成された空乏領域25である。 第5図は第4図の平面図であり、第4図は第5図の線4-4に於ける縦断面図である。」(第4頁右上欄第12行ないし第6頁左上欄第4行) ここで、刊行物1には、上記「第2開孔22」の形状について、「垂直線から僅かに傾斜した、好ましくは2乃至10度傾斜した、実質的にU形の第2開孔が形成される。」(第5頁左下欄第6ないし8行)と記載されているものの、一方で「本発明による方法に従つて、複数の垂直な又は垂直線から僅かに傾斜したU形溝を有する、相互に誘電体分離されたMOSFETの高密度のマトリツクスが達成される。」(第3頁左上欄第16ないし19行)という記載もされており、当該記載は「U形溝」の形状が「垂直」である場合と「垂直線から僅かに傾斜した」場合のいずれかを択一的に選択できることを意味する。 また、第4図に示された「MOSFET・RAMセル」完成後の段階においては、「P型層12」が「FETのためのチヤンネル」となる「P型領域34」であり、「N+型層14」が「RAMセルのためのビツト線として働き得る」「N+型領域30」であることは明らかである。 したがって、刊行物1には以下の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されている。 「<100>結晶方向のP-型単結晶シリコン基板10と、該シリコン基板10の上に形成されたP型層12と、該P型層12の上に形成されたN+型層14と、前記N+型層14及びP型層12を経て前記シリコン基板10中に延びて形成された垂直なU形の開孔22とを備え、前記P型層12をチヤンネルとして用いるとともに、前記N+型層14をビツト線として用いたMOSFET・RAMセル。」 (b)刊行物2:特公昭42-21446号公報 本件の出願日前に日本国内において頒布された上記刊行物2には、以下の事項が記載されている。 「本発明の目的はキヤリア易動度の大きい、従がつて高周波特性の改善された絶縁ゲート型電界効果トランジスタを提供するにある。 … そして本発明は半導体基体表面が絶縁物被膜で覆われて成る半導体装置において、前記被膜で覆われた前記基体の表面は{100}面 … あるいはそれらの面の近傍の面に平行な結晶面を有し、該面の表面キヤリア密度は到達し得る最小の値を有することを基本的特徴とする。」(第2頁左欄第13ないし23行) 「電子移動度μdが大きいことは、ゲート電圧変化に対するコンダクタンス変化の大きいこと即ち電圧感度が大なることを意味しており、特にMOS型の電界効果型トランジスタを製造する上に有利である。以上の実験から … {100}面結晶を半導体装置として用いた方が{111}面の半導体装置に比べて、優れた特性および効果を示すことが解釈できるであろう。」(第3頁左欄第9ないし16行) 「本発明の思想は電界効果型トランジスタに限定されることなくプレーナートランジスタに応用した場合においては表面キャリア密度を極めて小さくすることができるので … 電気的特性が良好かつ安定なものを得ることができる。」(第3頁右欄下から第4行ないし第4頁左欄第2行) 「半導体表面の少なくとも一部が絶縁物被膜で覆われてなる半導体基板を含み、前記被膜で覆われた半導体表面は{100}面に平行なあるいはその近傍の面に平行な結晶面を有し、前記被膜によつて前記表面に誘起されるキヤリアの表面密度は到達し得る最小の値を有することを特徴とする半導体装置。」(特許請求の範囲第1項) (3)対比・判断 本件訂正発明と刊行物発明とを対比する。 なお、以下では、平成19年2月23日に提出された手続補正書(審判請求書)に添付の訂正明細書及び図面を「本件訂正明細書等」という。 (a)刊行物発明の「<100>結晶方向」は、結晶面の法線方向を意味する表記であるから、刊行物発明の「<100>結晶方向の」「単結晶シリコン基板」は、(100)面を有する「単結晶シリコン基板」と技術的に同等である。 したがって、刊行物発明の「<100>結晶方向の」「単結晶シリコン基板」は、本件訂正発明の「(100)面を有」する「基板」に相当する。 (b)刊行物発明の「P型層」は、「チヤンネルとして用いる」ものであり、一方、本件訂正明細書等には、本件訂正発明の「p型層」について、「p型層 … は … チャネル領域 … を形成する。」(第2頁第26ないし27行)と記載されているから、刊行物発明の「P型層」は、本件訂正発明の「p型層」に相当する。 (c)刊行物発明の「N+型層」は、「ビツト線として用い」るものであり、キャパシタに電荷が蓄積されているか否かで情報を記録するメモリセルでは、キャパシタに接続されるMOSFETのゲート電極をワード線に、ソース電極又はドレイン電極のうち、いずれか一方をビット線に、他方をキャパシタにそれぞれ接続して用いることは当業者の技術常識であるから、前者の接続をした場合に、刊行物発明の「ビツト線として用い」る「N+型層」がソース領域として用いられることは明らかである。 一方、本件訂正発明の「高濃度n型層」は、「ソース領域として用い」られるから、刊行物発明の「N+型層」は、本件訂正発明の「高濃度n型層」に相当する。 (d)本件訂正発明では、「高濃度n形基板(5)の上に形成された低濃度n形層(4)と、前記低濃度n形層(4)の上に形成されたp形層(3)」という積層構造、すなわち、「p形層(3)」が「高濃度n形基板(5)」に接することなく「低濃度n形層(4)」を介して「高濃度n形基板(5)の上に形成され」た積層構造を備えているが、このような場合でも、「p形層(3)」は「高濃度n形基板(5)の上に形成されて」いるから、上記(a)ないし(c)で検討した対応関係も併せて判断すると、刊行物発明の「シリコン基板」「と、該シリコン基板」「の上に形成されたP型層」「と、該P型層」「の上に形成されたN+型層」とを備える積層構造は、本件訂正発明の「基板」「と、前記」「基板」「の上に形成された」「p型層」「と、前記p型層」「の上に形成された高濃度n型層」「とを有するシリコン基板」に相当する。 (e)刊行物発明は、「P型層12を経て」「シリコン基板10中に延びて形成された垂直なU形の開孔22を備え」た構造を備えており、また、刊行物1には、第4図とともに「第4図は、本発明による1つの方法に従つて形成された構造体を示している。第4図に示されている構造体を形成するためには、ゲート誘電体層即ち2酸化シリコン層24で被覆された第2開孔22中に、ドープされた多結晶シリコン層26を付着することが必要である。 … ドープされた多結晶シリコン層で充填された第2開孔即ちドープされた多結晶シリコン層26はゲート電極である。」と記載されているように、「U形の開孔22」内に「ゲート誘電体層」を介して「ゲート電極」が形成されることが記載されているから、刊行物発明の「垂直なU形の開孔22」の側面の一部を形成する「P型層12」を「チヤンネルとして用いる」ことは明らかである。 したがって、刊行物発明の「U形の開孔」は、本件訂正発明の「凹部」に相当し、刊行物発明において「P型層」「をチヤンネルとして用いる」ことは、本件訂正発明において「凹部の側面」「をチャンネルとして用い」ることに相当する。 (f)刊行物発明の「MOSFET・RAMセル」は、「MOSFET」を備えており、また、「P型層12を経て」「シリコン基板10中に延びて形成された垂直なU形の開孔22を備え」た構造を備えているから、「チヤンネルとして用いる」「P型層」中を流れる電子の方向が、「シリコン基板10」の表面に「垂直な」方向であること、すなわち、刊行物発明の「MOSFET・RAMセル」が備える「MOSFET」が縦型であることは明らかである。 したがって、刊行物発明の「MOSFET・RAMセル」は、本件訂正発明の「縦型構造電界効果トランジスタ」に相当する。 上記(a)ないし(f)の検討内容を踏まえると、本件訂正発明と刊行物発明は、 「(100)面を有する基板と、前記基板の上に形成されたp型層と、前記p型層の上に形成された高濃度n型とを有するシリコン基板の表面に凹部が形成され、前記凹部の側面をチャンネルとして用いた縦型電界効果トランジスタ。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本件訂正発明は、「高濃度n形基板(5)と、前記高濃度n形基板(5)の上に形成された低濃度n形層(4)と、前記低濃度n形層(4)の上に形成されたp形層(3)と」「を有する」とともに、「前記高濃度n形基板(5)に電極形成されたドレイン電極を備える」のに対して、 刊行物発明は、「P-型単結晶シリコン基板10と、該シリコン基板10の上に形成されたP型層12と」を備える点。 [相違点2] 本件訂正発明は、「シリコン基板の表面に、直方体にエッチング形成された矩形状の凹部であって前記直方体の長手方向が<110>方向と45°の角度をなす矩形状の凹部が形成され、前記矩形状の凹部の側面をなす(010)または(001)面をチャンネルとして用い」るのに対して、 刊行物発明は、「N+型層14及びP型層12を経て」「シリコン基板10中に延びて形成された垂直なU形の開孔22とを備え、前記P型層12をチヤンネルとして用いた」点。 上記相違点について検討する。 [相違点1について] (a)相違点1は、実質的に、本件訂正発明は、「高濃度n形基板(5)」と「前記高濃度n形基板(5)に電極形成されたドレイン電極を備える」のに対して、刊行物発明は、「P-型単結晶シリコン基板10」を備えるとともに「P-型単結晶シリコン基板10」に直接接続された電極が設けられていない点、及び、本件訂正発明は「基板(5)の上に」「低濃度n形層(4)」を介して「p形層(3)」が形成されているのに対して、刊行物発明は、「単結晶シリコン基板10」「の上に」他の層を介することなく「P型層12」形成されている点に分けて整理することができる。 (b)本件訂正発明が「高濃度n形基板(5)」と「前記高濃度n形基板(5)に電極形成されたドレイン電極を備える」のは、本件訂正発明が「縦型構造電界効果トランジスタ」として動作するために、ドレイン領域となる「高濃度n形基板(5)」と「前記高濃度n形基板(5)に電極形成されたドレイン電極」とを通じてドレイン電流を取り出す必要があるためであること、及び、本件訂正発明において「基板(5)の上に」「低濃度n形層(4)」を介して「p形層(3)」が形成されている、すなわち、「基板(5)」とチャネル領域である「p形層(3)」との間に「低濃度n形層(4)」を形成するのは、本件訂正明細書等に「本発明は … とりわけ大電力用の縦型MOSFETに関する。」(第1頁第14ないし15行)と記載されているように、「大電力用の縦型MOSFET」としての使用を前提に高耐圧化の必要があるためであることは、いずれも当業者の技術常識を踏まえれば明らかなことである。 (c)一方、刊行物発明が「P-型単結晶シリコン基板10」を備えるとともに「P-型単結晶シリコン基板10」に直接接続された電極が設けられていないのは、「MOSFET・RAMセル」である刊行物発明が、高密度化のためにMOSFETと電荷蓄積用のキャパシタとが一体に形成された特殊な構造であって、刊行物1に第4図とともに「この1素子型MOSFET・RAMセルのキヤパシタは、ゲート誘電体層24及びゲート電極26の周囲に於てP-型基板10中に形成された空乏領域25である。」(第5頁右下欄第19行ないし第6頁左上欄第2行)と記載されているように、キャパシタとして機能する「P-型基板10中に形成された空乏領域25」が、「P-型基板10」に形成された「U形の開孔22」の底面及び側面にわたって形成された「空乏領域25」であるためであって、「P-型基板10」に直接接続された電極を設けると、キャパシタとして機能する「P-型基板10中に形成された空乏領域25」に対して所望でない電荷の充放電が生じて刊行物発明がメモリセルとして機能しなくなるためである。 (d)したがって、「MOSFET・RAMセル」である刊行物発明おいて、「P-型単結晶シリコン基板10」の導電型を高濃度のn型にするとともに、これに直接接続された電極を設けることは、このようにすると刊行物発明がメモリセルとして機能しなくなることは明らかである以上、当業者であっても容易になし得たこととはいえず、また、「MOSFET・RAMセル」である刊行物発明には「大電力用の縦型MOSFET」としての使用を前提とした本件訂正発明ほどの高耐圧化は要しないから、刊行物発明において「シリコン基板10」と「チヤンネルとして用い」る「P型層12」との間に、敢えて低濃度n型層を設けることも当業者が容易になし得たこととはいえない。 [相違点2について] (a)刊行物2には、プレーナー型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタにおいて、「{100}面結晶を半導体装置として用いた方が{111}面の半導体装置に比べて、優れた特性および効果を示すことが解釈できる」(第3頁左欄第14ないし16行)と記載されているものの、プレーナー型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタが形成された{100}面のシリコン基板表面と同等の結晶性と表面状態とを有する{100}面をシリコン基板表面と垂直な面にも形成し得ることについては、何ら記載がない。 (b)一方、刊行物1には「反応性イオン食刻方法は食刻されている単結晶シリコンの結晶方向に依存せず、U形溝の深さは所望の任意の深さでよい。」(第3頁左下欄第12ないし15行)と、シリコン基板のエッチング手段として反応性イオン食刻方法を用いれば結晶方向に依存せずに「U形溝」が形成できることが記載されているが、当該記載は、刊行物1に「本発明による方法に従つて形成された改良された構造体の密度はそのVMOS型素子構造体の密度の約2倍であ … る。」(第3頁右上欄第11ないし14行)及び「相互に誘電体分離された高密度のMOSFET素子のマトリツクスを形成するための本発明による方法は反応性イオン食刻技術を用いている。反応性イオン食刻技術は、VMOSの製造方法に於て用いられている異方性食刻よりも相当に有利である。」(第3頁右上欄第18行ないし同頁左下欄第3行)と記載されているように、反応性イオン食刻方法は、従来のVMOSの製造方法で用いられていた異方性食刻に比べて基板に垂直なエッチングが可能である点において、より高密度の素子形成を行う際に有利であることを意味するのに止まり、反応性イオン食刻方法によって、実際に(100)面のシリコン基板表面と同等の結晶性と表面状態とを有する(100)面をシリコン基板表面と垂直な面にも形成し得ることまでは、刊行物1には記載されていない。 (c)以上のとおり、刊行物1及び刊行物2のいずれにも、(100)面のシリコン基板表面と同等の結晶性と表面状態とを有する(100)面をシリコン基板表面と垂直な面にも形成し得ることは何ら記載されていないから、当業者が、刊行物2の記載に基づいて、刊行物発明の「垂直なU形の開孔22」の側面を、反応性イオン食刻方法を用いて(100)面のシリコン基板表面と同等の結晶性と表面状態とを有する(100)面になるように試みることは可能であったとしても、実際に、(100)面のシリコン基板表面と同等の結晶性と表面状態とを有する(100)面をシリコン基板表面と垂直な面にも形成し得るか否かを見極めるとともに、可能である場合にはいかなる条件を要するのかを見出すことは、この点について刊行物1及び刊行物2に何ら具体的な指針となる記載がされていない以上、当業者に通常の創作能力を超えた過度の試行錯誤を要することとなる。 (d)したがって、刊行物発明において、本件訂正発明の「シリコン基板の表面に、直方体にエッチング形成された矩形状の凹部であって前記直方体の長手方向が<110>方向と45°の角度をなす矩形状の凹部が形成され、前記矩形状の凹部の側面をなす(010)または(001)面をチャンネルとして用い」ることに相当する構成を備えるようにすることは、当業者であっても、容易になし得たこととはいえない。 したがって、本件訂正発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、また、他に本件訂正発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができないとする理由もないから、平成6年改正前の特許法第126条第3項に規定された独立特許要件を満たしている。 7.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、平成6年改正前の特許法第126条第1項ないし第3項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 縦型構造電界効果トランジスタ (57)【特許請求の範囲】 (100)面を有し、且つ、高濃度n形基板(5)と、前記高濃度n形基板(5)の上に形成された低濃度n形層(4)と、前記低濃度n形層(4)の上に形成されたp形層(3)と、前記p形層(3)の上に形成された高濃度n形層(2)とを有するシリコン基板の表面に、直方体にエッチング形成された矩形状の凹部であって前記直方体の長手方向が<110>方向と45°の角度をなす矩形状の凹部が形成され、前記矩形状の凹部の側面をなす(010)または(001)面をチャンネルとして用い、前記高濃度n形層(2)をソース領域として用い、前記高濃度n形基板(5)に電極形成されたドレイン電極を備える縦型構造電界効果トランジスタ。 【発明の詳細な説明】 本発明は絶縁ゲート電界効果トランジスタ(以下、MOSFETと記す)、とりわけ大電力用の縦型MOSFETに関する。 MOSFETは多数キャリア素子であるため、バイポーラ・トランジスタに比べて高速性であるなどの優れた特長を有している。最近では電力用の分野でもMOSFETの優位性が認められ、MOSFETの大電力化が盛んに行われている。電力用MOSFETはオン抵抗を小さくするために、一般には第1図に示すような縦型構造が用いられてきた。第1図に示したV字形ゲートの作製は、(100)面と(111)面のシリコンのエッチング速度の差を用いた異方性エッチング法により行われている。したがって、チャネル領域は(111)面にできるので電子移動度が小さく、チャネル抵抗が増大し、この結果オン抵抗が大きくなる。 本発明は縦型MOSFETにおいて表面準位密度が小さく、電子移動度の大きな(100)面と、等価な面を用いる新しい構造を提供するものである。すなわち、本発明の縦型構造電界効果トランジスタは、(100)面を有し、且つ、高濃度n形基板(5)と、前記高濃度n形基板(5)の上に形成された低濃度n形層(4)と、前記低濃度n形層(4)の上に形成されたp形層(3)と、前記p形層(3)の上に形成された高濃度n形層(2)とを有するシリコン基板の表面に、直方体にエッチング形成された矩形状の凹部であって前記直方体の長手方向が<110>方向と45°の角度をなす矩形状の凹部が形成され、前記矩形状の凹部の側面をなす(010)または(001)面をチャンネルとして用い、前記高濃度n形層(2)をソース領域として用い、前記高濃度n形基板(5)に電極形成されたドレイン電極を備えるものである。 この構造によれば、パワーMOSFETのオン抵抗をさらに小さくすることができる効果がある。 以下、本発明の縦型構造電界効果トランジスタの詳細について実施例を用いて説明する。 まず最初に、本発明の実施に必要な(100)面をチャネルとして用いるための技術について述べる。(100)面を有し、(110)面を方位規正面とするシリコン基板上で、第2図(a)に示すように、<110>方向と45°の角度をなす矩形状の凹部pを作るようにエッチングを行う。ただし、シリコン・エッチングは第2図(b)(第2図(b)は第2図(a)の凹部pの拡大図である。)に示すように、(100)表面に対して垂直にエッチングを行う。この時、直方体にエッチングされた側面は、第2図(b)に示すようにそれぞれ(010)、(001)面となり、(100)面と等価な面である。このように、シリコン基板を垂直にエッチングするには、通常の反応性イオン・エッチング法や反応性イオン・ビーム・エッチング法を用いる。 次に、実際にパワーMOSFETを作製する本発明の実施例について述べる。第3図(a)?(d)はパワーMOSFET作製の工程図を示したものである。まず(100)面を有する高濃度n形基板5上に低濃度n形層4をエピタキシャル成長した基板を用いる。n形層4の比抵抗ρと厚さtはそれぞれ1Ωcm、10μmである。このエピタキシャル基板に通常のイオン注入法と熱拡散法を用いてp形層3(不純物濃度は5×1017cm-3、深さは2μm)と高濃度n形層2(不純物濃度は1×1021cm-3、深さは0.5μm)を形成する。これらp形層3、n形層2はそれぞれチャネル領域、ソース領域を形成する。次に、厚さ1μmのフィールド酸化膜1を基板全面に成長させ、通常のフォト・リソグラフィを用いてゲート領域の酸化膜を除去する(第3図(a)参照)。 次に、先に述べたようにシリコン基板を裏面に対して垂直に、かつp形層3を貫通するまでエッチングする(第3図(b)参照)。この時、エッチング部の底面は(100)面で側面は、(010)と(001)面である。 次に、第3図(c)に示したようにゲート酸化膜11を膜厚1000Åに成長させた後、表面凸部の高濃度n形層2に電極をつけるためのコンタクト窓を開孔する。 最後にアルミ等の金属電極を蒸着、エッチングして、第3図(d)に示したように、ソース電極9及びゲート電極8を形成する。なお、ドレイン電極は高濃度n形基板5に電極形成して得る。 以上のようにして作製した本発明の縦型荷造電界効果トランジスタは、チャネル部分が(100)と等価な面を用いるため電子移動度が大きく、オン時のチャネル抵抗を低減することができる。この結果、同電界効果トランジスタのオン抵抗を小さくすることが可能となり、その工業的価値は極めて大きい。 【図面の簡単な説明】 第1図は従来の縦型パワーMOSFETの断面図、第2図(a),(b)は本発明の縦型構造電界効果トランジスタを実現する場合のシリコン基板平面上での位置および矩形状の凹部を示す概要図、第3図(a)?(d)は本発明の実施例における絶縁ゲート電界効果トランジスタを製造する工程を示す図である。 1……熱酸化膜、2……高濃度n形拡散領域、3……p形拡散領域、4……低濃度n形エピタキシャル層、5……高濃度n形基板、6……ゲート形成領域、7……ソース電極用コンタクト窓、8……ゲート電極、9……ソース電極、10……ドレイン電極、11……ゲート酸化膜。 【図面】 ![]() ![]() ![]() |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2007-03-13 |
出願番号 | 特願昭57-117303 |
審決分類 |
P
1
41・
856-
Y
(H01L)
P 1 41・ 854- Y (H01L) P 1 41・ 853- Y (H01L) P 1 41・ 852- Y (H01L) P 1 41・ 855- Y (H01L) P 1 41・ 851- Y (H01L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 近藤 幸浩、内野 春喜、阿波 進 |
特許庁審判長 |
河合 章 |
特許庁審判官 |
橋本 武 長谷山 健 |
登録日 | 1993-05-28 |
登録番号 | 特許第1761945号(P1761945) |
発明の名称 | 縦型構造電界効果トランジスタ |
代理人 | 片山 健一 |
代理人 | 大野 聖二 |
代理人 | 大野 聖二 |
代理人 | 片山 健一 |