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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する A63B
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A63B
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A63B
審判 訂正 2項進歩性 訂正する A63B
管理番号 1155886
審判番号 訂正2006-39188  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2006-11-21 
確定日 2007-03-29 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2961735号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2961735号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2961735号に係る発明についての出願は、昭和63年9月29日に特許出願され、平成11年8月6日にその請求項1に係る発明について特許の設定登録がなされ、その後、平成18年11月21日に本件訂正審判を請求したものである。

2.訂正の内容
本件審判の請求の要旨は、特許第2961735号の願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を審判請求書に添付された訂正明細書(以下、「訂正明細書」という。)のとおりに訂正することを求めるものであって、その訂正内容は次のとおりである。

(訂正事項a)
請求項1において、「ワンピースボール又は多層ボールの芯球」を「ワンピースボール」と訂正する。
(訂正事項b)
本件特許明細書の1頁13?15行(本件特許公報2欄1?2行)の「ワンピースボール、ツーピースボール等のソリッドゴルフボール」を「ワンピースのソリッドゴルフボール」に訂正する。
(訂正事項c)
本件特許明細書の3頁4?5行(本件特許公報3欄13?14行)の「ワンピースボール或いは多層ボールの芯球」を「ワンピースボール」に訂正する。
(訂正事項d)
本件特許明細書の4頁2?4行(本件特許公報3欄36?38行)の「ワンピースボールを、又はこのゴム組成物を芯球としてツーピースボール等の多層構造ボールを製造」を「ワンピースボールを製造」に訂正する。
(訂正事項e)
本件特許明細書の4頁12?13行(本件特許公報4欄6?7行)の「ワンピースボール又は多層ボールの芯球を得る」を「ワンピースボールを得る」に訂正する。
(訂正事項f)
本件特許明細書の4頁末行?5頁3行(本件特許公報4欄13?15行)の「これを加硫・成型してワンピースボール又は多層ボールの芯球を製造し、更に多層ボールの場合にはカバー材を被覆するものである。」を「これを加硫・成型してワンピースボールを製造するものである。」に訂正する。
(訂正事項g)
本件特許明細書の8頁下から5?4行(本件特許公報5欄45行)の「ワンピースボール又は多層ボールの芯球を形成」を「ワンピースボールを形成」に訂正する。
(訂正事項h)
本件特許明細書の9頁1?4行(本件特許公報5欄49行?6欄39行)の「なお、ツーピースボール等の多層構造のゴルフボールを製造する場合はカバー材料としてアイオノマー、ポリエステル、ナイロン等が好適に使用される。」を削除する。

3.当審の判断
(3-1)訂正の目的、新規事項の有無及び拡張・変更について
上記訂正事項aは、訂正前の請求項1における「ワンピースボール又は多層ボールの芯球」と規定した点を、その内の「ワンピースボール」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項b?hは、訂正事項aの訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明な詳細な説明の記載とを整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項a?hは、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3-2)独立特許要件について
そこで、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができる要件を備えているか否かにつき、以下に検討する。

(a)本件訂正発明
訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本件訂正発明」という。)は、次のとおりのものである。

(本件訂正発明)
「基材ゴムと、メタクリル酸の金属塩及び/又はアクリル酸の金属塩と、過酸化物系架橋開始剤とを含有するゴム組成物にペンタクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、α,α-ジフェニル-β-ピクリルヒドラジル、N,N,N′,N′-テトラエチル-p-フェニレンジアミン、N-(3-N-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシドからの遊離基、p,p′-ジフルオルジフェニルアミン、クロルアニル、ガルビノキシル、ヨウ素及び塩化第2鉄から選ばれるラジカル捕獲剤を添加し、これを加硫・成型してワンピースボールを得ることを特徴とするソリッドゴルフボールの製造方法。」

(b)原審の引用刊行物及びその記載内容
原審において、その拒絶理由通知書に引用された刊行物は次のものである。
刊行物1:特公昭55-19615号公報
刊行物2:特開昭62-195031号公報

(イ)刊行物1(特公昭55-19615号公報)の記載事項
刊行物1には、
「本発明は、新規で且つ有用なソリツドゴムゴルフボールに関する。…」(2欄9?10行)、
「…更に最近になつて、いわゆるソリツドゴムゴルフボールが開発された。それは一つの構成物から成る均一ゴムボールか又はソリツド心と標準包被物との二つの部分から成るゴルフボールである。これらのソリツドゴムボールは多くの面で巻付けゴルフボールに似ているが、打撃音及び感触のような性質においてしばしば不十分であり、しかもそれらの多くは多数回打った後には割れてしまう。…」(2欄23?31行)、
「…本発明者等はポリブタジエンとこれにグラウト重合した不飽和カルボン酸と金属イオンとから製造されるソリツドゴムゴルフボールが良好な打撃音及び感触、優れた耐久性、及び十分な粘着力を有する極めて望ましいゴルフボールをもたらすことを発見した。」(2欄31?36行)、
「…これらの金属イオンは又既知の不飽和カルボン酸の塩として存在しうる。」(4欄4?5行)、
「不飽和カルボン酸は好ましくは、ジクミルペルオキシドのような遊離基開始剤又は他の知られた遊離基開始剤によってポリブタジエン主鎖にグラフトされる…」(4欄6?9行)、
「…以下は遊離基開始剤によるグラフト法を例示する。ポリブタジエンと不飽和カルボン酸と金属化合物とを重合体のガラス転移温度又は融点と不飽和カルボン酸の沸点との間の温度で混合する。適当な温度は約93?177°C(200?350°F)である。カルボン酸基の少なくとも10%が金属イオンによつて中和され且つ粘着物が形成するまでこの混合を続ける。適当な時間は約3?30分の間である。次いで混合物の温度を使用される遊離基開始剤の分解温度よりも低くする。この低められた温度で約3?15分の適当な時間にわたつて遊離基開始剤を加え且つ混合する。ジクミルペルオキシドの場合には、約65.5°C(150°F)の温度が適当である。反応物を次いで適当に混練りし又は平板へと流込み成形した後、このものから所望されるゴルフボールよりもわずかに大きく且つ重い切片を裁断し、そしてこれを標準ボールカツプ型内に装入する。型内の組成物をそれが硬くなる迄加熱加圧下に保持する。この効果に要する時間は、約138?160°C(280?320°F)の温度では通常約20?30分である。」(4欄11?31行)との記載がある。

これらの記載事項を総合すると、刊行物1には、
「ポリブタジエンと、不飽和カルボン酸の金属塩と、ジクミルペルオキサイドのような遊離基開始剤とを含有する混合物を加熱・成形して、一つの構成物から成る均一ゴムボールを得るソリツドゴムゴルフボールの製造方法。」という発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

(ロ)刊行物2(特開昭62-195031号公報)の記載事項
刊行物2には、
「〔産業上の利用分野〕
近年、特殊ゴム製品の用途は、自動車、航空機、原油採取、産業用機械分野等に拡大し、その具体的な用途としてホース、チユーブ、オイルシール、Oリング、ガスケツト等の耐熱性、耐油性が要求される分野が急速に進展している。」(1頁右下欄下から4行?2頁左上欄2行)、
「〔従来の技術〕
従来、ゴム製品の老化劣化を防止する為の老化防止剤としては、分子量が100乃至1000程度のラジカルまたは酸素捕捉能を有するアミノ基やフエノール性水酸基等を有する低分子化合物が用いられている。しかし、前述の耐熱性、耐油性が要求される分野では、製品ゴムを高温下で使用する際老化防止剤が揮散したり、或いは油との接触により老化防止剤が抽出されてしまい、老化劣化の防止が充分行なわれない等の問題があった。
この様な問題に対処するため、反応性老化防止剤あるいは非架橋線状高分子に老化防止性官能基を導入したもの等の研究が行なわれている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかし、反応性老化防止剤としては、ゴム加硫時にゴム主鎖中に化学的に結合するものが研究されているが、結合反応の効率が充分でないために、予期される耐熱性、耐溶剤性の利点が具現しにくいばかりでなく、コスト的にも高いという問題を含んでいる。さらに、ゴム製品の用途に応じて添加剤の種類、添加量を変え、もつて当該用途に最適な製品ゴムを得る現状に鑑みた場合、その実用的価値は低い。
また線状高分子に老化防止性官能基を導入したものは、ゴムとの混合に際して、ゴムとの相溶性が悪く製品ゴム中に均一に分散しにくいため、その老化防止効果は低い。」(2頁左上欄3行?右上欄10行)、
「〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは上記実情に鑑み、耐溶剤抽出性に優れ、耐揮散性が良好で、長期間に亘り耐老化性能を発揮し得るゴム用老化防止剤を得べく鋭意検討を重ねた結果、ラジカルまたは酸素を捕捉し得る官能基を有する架橋高分子微粉体が、従来のゴム老化防止剤に比べ優れた老化防止能を発現することを見出し本発明に到達した。」(2頁右上欄11?19行)、
「〔発明の構成〕
本発明は、ラジカルまたは酸素を捕捉し得る官能基を有する架橋高分子微粉体からなるゴム用老化防止剤である。」(2頁右上欄19行?左下欄2行)、
「ラジカルまたは酸素捕捉能を有する官能基が化学的に結合する母体としての架橋高分子としては、3次元の架橋構造を有するものであってゴムの加硫性その他の性質に悪影響を及ぼさないものであれば、公知の架橋高分子物質を使用することができる。
これらの架橋高分子としては、大別して、モノビニル化合物とポリビニル化合物の共重合物、モノビニル化合物重合体の後架橋物、或いは、縮重合反応により生成する架橋高分子等がある。」(2頁左下欄4?13行)、
「ラジカルまたは酸素捕捉能を有する官能基としては、例えば以下の一般式(I)、(II)および(III)で示される基が用いられる。

一般式(I) -NR1R2(式中、R1R2は水素、炭素数1?5のアルキル基、置換基を有してもよいフエニル基を表わす。)

一般式(II) (別紙1の「一般式(II)」参照)

(式中、R3、R4,は水素、炭素数1?5のアルキル基、置換基を有してもよいフエニル基を表わす。)

一般式(III) (別紙1の「一般式(III)」参照)

(式中、R5、R6は水素、炭素数1?6のアルキル基、置換基を有してもよいフエニル基を表わす。)」(3頁左下欄6行?右下欄3行)、
「得られた試験片につき、70°Cで5日間ギヤ式熱老化を行なった。」(6頁左下欄1?2行)、
「〔発明の効果〕
本発明のゴム用老化防止剤は、耐溶剤抽出性、耐揮散性に優れ、長期間に亘っても充分な耐老化防止性維持することができる。」(7頁左上欄6?9行)との記載がある。

(c)対比・判断
そこで、本件訂正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「ポリブタジエン」が本件訂正発明の「基材ゴム」に相当し、以下同様に、「不飽和カルボン酸の塩」が「メタクリル酸の金属塩及び/又はアクリル酸の金属塩」に、「ジクミルペルオキサイドのような遊離基開始剤」が「過酸化物系架橋開始剤」に、「混合物」が「ゴム組成物」に、「成形」が「成型」に、「一つの構成物から成る均一ゴムボール」が「ワンピースボール」に、「ソリツドゴムゴルフボール」が「ソリッドゴルフボール」に、それぞれ相当するといえる。

そうすると、両者は、
「基材ゴムと、メタクリル酸の金属塩及び/又はアクリル酸の金属塩と、過酸化物系架橋開始剤とを含有するゴム組成物を成型してワンピースボールを得るソリッドゴルフボールの製造方法。」である点で一致し、次の点で相違するといえる。

(相違点1)
ゴム組成物の成型態様に関して、本件訂正発明が「加硫・成型」するものであるのに対して、刊行物1に記載の発明が、加熱・成形するものの、加硫・成型するものではない点。
(相違点2)
本件訂正発明が「ペンタクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、α,α-ジフェニル-β-ピクリルヒドラジル、N,N,N′,N′-テトラエチル-p-フェニレンジアミン、N-(3-N-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシドからの遊離基、p,p′-ジフルオルジフェニルアミン、クロルアニル、ガルビノキシル、ヨウ素及び塩化第2鉄から選ばれるラジカル捕獲剤を添加」するものであるのに対し、刊行物1に記載の発明が、このようなラジカル捕獲剤を添加していない点。

そこで、上記の各相違点につき検討する。

(相違点1について)
ゴム組成物を加熱・成型する場合に加硫・成型するという手法を採用することは、例を示すまでもなく、従来より普通に採用されている周知の技術である。
したがって、相違点1に係る本件訂正発明の構成は、刊行物1記載の発明に上記周知の技術を適用することにより当業者が容易に想到し得たものといえる。

(相違点2について)
ところで、上記刊行物2には、ゴム製品の老化劣化を防止する為の老化防止剤として使用されるところの「ラジカル捕獲剤」である「ラジカルまたは酸素を捕捉し得る官能基を有する架橋高分子微粉体」が記載されている、すなわち、ラジカル捕獲剤として高分子から成るものを用いることが記載されているといえる。
他方、上記「(相違点2)」に記載したように、本件訂正発明は、「ラジカル捕獲剤」として「ペンタクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、α,α-ジフェニル-β-ピクリルヒドラジル、N,N,N′,N′-テトラエチル-p-フェニレンジアミン、N-(3-N-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシドからの遊離基、p,p′-ジフルオルジフェニルアミン、クロルアニル、ガルビノキシル、ヨウ素及び塩化第2鉄から選ばれる」ものを使用するものであって、そのラジカル捕獲剤として高分子から成るものを用いていないことが明らかである。
そうすると、相違点2に係る本件訂正発明の構成は、刊行物1に記載の発明に刊行物2記載のラジカル捕獲剤を(その老化防止剤として)適用してみても得ることができないことは明らかである。
(ちなみに、訂正明細書には、「本発明のソリッドゴルフボールの製造方法は、上記各成分を含有するゴム組成物を加熱等により加硫し、成型してワンピースボールを形成するものであるが、この場合、上記ゴム組成物には上述した各成分以外に通常使用される可塑化剤,老化防止剤等の添加剤を配合することは差支えない。」(注;下線は当審が付記した。本件特許公報5欄43?48行)との記載があり、本件訂正発明における「ラジカル捕獲剤」は「老化防止剤」とは異なるものと解される。)

そして、本件訂正発明は、ワンピースボールを得るためのソリッドゴルフボールの製造方法において、上記ラジカル添加剤を添加することにより、「過酸化物系架橋開始剤により発生するラジカルを適度に捕獲し、過酸化物架橋密度を調節することにより、ゴム硬度,重量,反発弾性等を変化させることなく、伸び及び強度を向上させることができ、このゴム組成物を圧縮成型してワンピースボール…を製造することにより、良好な飛行特性を示し、かつ耐衝撃性,耐久性に優れるソリッドゴルフボールが得られる」(本件特許公報3欄31?36行)という効果を奏するものといえる。

(d)まとめ
以上検討したように、本件訂正発明は、上記刊行物1及び2に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものということはできない。
また、本件訂正発明について、他に独立特許要件を満たさないとすべき理由も見あたらない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求は、平成6年改正前特許法第126条第1項ないし第3項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ソリッドゴルフボールの製造方法
(57)【特許請求の範囲】
1.基材ゴムと、メタクリル酸の金属塩及び/又はアクリル酸の金属塩と、過酸化物系架橋開始剤とを含有するゴム組成物にペンタクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、α,α-ジフェニル-β-ピクリルヒドラジル、N,N,N′,N′-テトラエチル-p-フェニレンジアミン、N-(3-N-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシドからの遊離基、p,p′-ジフルオルジフェニルアミン、クロルアニル、ガルビノキシル、ヨウ素及び塩化第2鉄から選ばれるラジカル捕獲剤を添加し、これを加硫・成型してワンピースボールを得ることを特徴とするソリッドゴルフボールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
産業上の利用分野
本発明は、優れた耐衝撃性,耐久性を有するワンピースのソリッドゴルフボールを製造する方法に関する。
従来の技術
ソリッドゴルフボールには、ゴム組成物を圧縮成型したワンピースボール、ゴム組成物により形成された芯球を樹脂製のカバーで被覆したツーピースボールなどがある。
従来、このようなソリッドゴルフボールとしてアクリル酸の金属塩又はメタクリル酸の金属塩を共架橋剤として含有するゴム組成物を使用してワンピースボール或いはツーピースボール等の多層ボールの芯球を形成したものが良好な飛行特性を示すことが知られている(特公昭55-19615号公報等)。
発明が解決しようとする課題
しかし、上記ソリッドゴルフボールは、飛行特性には優れるものの、ゴム組成物の強度及び伸びが小さいため、耐衝撃性,耐久性に劣り、ボールに割れ目などが発生し易いという問題があり、特にワンピースボールにおいてはこの傾向が強い。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、良好な飛行特性を示し、かつ耐衝撃性,耐久性に優れるソリッドゴルフボールを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段及び作用
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行なった結果、メタクリル酸の金属塩及び/又はアクリル酸の金属塩を共架橋剤として含有し、過酸化物系架橋開始剤によって共架橋するゴム組成物を用いてワンピースボールを製造するに当たり、該ゴム組成物にペンタクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、α,α-ジフェニル-β-ピクリルヒドラジル、N,N,N′,N′-テトラエチル-p-フェニレンジアミン、N-(3-N-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシドからの遊離基、p,p′-ジフルオルジフェニルアミン、クロルアニル、ガルビノキシル、ヨウ素及び塩化第2鉄から選ばれるラジカル捕獲剤を添加して加硫することにより、ゴム組成物の伸び及び強度を効果的に向上させることができ、このゴム組成物を用いてソリッドゴルフボールを製造した場合、その飛行特性を損なうことなく、耐衝撃性,耐久性を向上させることができることを知見した。
即ち、メタクリル酸の金属塩やアクリル酸の金属塩は、過酸化物系架橋開始剤によって重合反応,グラフト反応を起して共架橋剤として働くと共に、反応性充填剤として機能するものであり、その配合量は適当な硬度、重量、強度、反発弾性が得られるよう決定されるが、これにラジカル捕獲剤を添加して過酸化物系架橋開始剤により発生するラジカルを適度に捕獲し、過酸化物架橋密度を調節することにより、ゴム硬度,重量,反発弾性等を変化させることなく、伸び及び強度を向上させることができ、このゴム組成物を圧縮成型してワンピースボールを製造することにより、良好な飛行特性を示し、かつ耐衝撃性,耐久性に優れるソリッドゴルフボールが得られることを知見し、本発明を完成するに至ったものである。
従って、本発明は、基材ゴムと、メタクリル酸の金属塩及び/又はアクリル酸の金属塩と、過酸化物系架橋開始剤とを含有するゴム組成物にペンタクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、α,α-ジフェニル-β-ピクリルヒドラジル、N,N,N′,N′-テトラエチル-p-フェニレンジアミン、N-(3-N-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシドからの遊離基、p,p′-ジフルオルジフェニルアミン、クロルアニル、ガルビノキシル、ヨウ素及び塩化第2鉄から選ばれるラジカル捕獲剤を添加し、これを加硫・成型してワンピースボールを得ることを特徴とするソリッドゴルフボールの製造方法を提供する。
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のソリッドゴルフボールの製造方法は、上述したようにメタクリル酸の金属塩及び/又はアクリル酸の金属塩、過酸化物系架橋開始剤を含有するゴム組成物にラジカル捕獲剤を添加し、これを加硫・成型してワンピースボールを製造するものである。
ここで、本発明方法に使用される基材ゴムとしては、特に制限はなく、通常のソリッドゴルフボールに使用されるものを用いることができ、具体的にはブタジエンゴム,天然ゴム,イソプレンゴム及びこれらの混合物が挙げられるが、これらの中でもブタジエンゴム、特にBR01(日本合成ゴム(株)製商品名)、UBEPOL-BR200(宇部興産(株)製商品名)等のシス-1,4型のブタジエンゴムを90%以上含有するもの、ハイシスポリブタジエンとシンジオタクチック-1,2-ポリブタジエンを組合わせたUBEPOL-VCR412(宇部興産(株)製商品名)などが高反発性,押出加工性,加硫物の高強度化の点から好ましく使用される。
また、メタクリル酸の金属塩及びアクリル酸の金属塩としては、1?3価の原子価を有する金属イオンを含むもの、特にナトリウム塩,マグネシウム塩,カルシウム塩,亜鉛塩,アルミニウム塩等が好ましい。これらメタクリル酸の金属塩,アクリル酸の金属塩の配合量は、通常上記基材ゴム成分100部(重量部、以下同じ)に対して15?50部、好ましくは35?45部とされる。これらの配合量が15部未満であるとボールの硬度や反発係数が極端に低くなる場合があり、一方50部を超えるとボールの硬度が高くなりすぎる場合がある。
過酸化物系架橋開始剤としては、特に限定されないが、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサンなどが好適に使用され、これらの配合量は、通常上記基材ゴム成分100部に対して0.5?5部とされる。
ラジカル捕獲剤としては、ペンタクロロチオフェノール,ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩,α,α-ジフェニル-β-ピクリルヒドラジル(下記式1),

N,N,N′,N′-テトラエチル-p-フェニレンジアミン(下記式2),

N-(3-N-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシドからの遊離基(下記式3),

p-p′-ジフルオルジフェニルアミン(下記式4),

クロルアニル(下記式5),

ガルビノキシル(下記式6),

ヨウ素,塩化第2鉄などが挙げられるが、なかでも特にペンタクロロチオフェノール亜鉛塩が好ましく使用される。その添加量は通常上記基材ゴム100部に対して0.1?1部とされる。
本発明のソリッドゴルフボールの製造方法は、上記各成分を含有するゴム組成物を加熱等により加硫し、成型してワンピースボールを形成するものであるが、この場合、上記ゴム組成物には上述した各成分以外に通常使用される可塑化剤,老化防止剤等の添加剤を配合することは差支えない。
発明の効果
以上説明したように、本発明のソリッドゴルフボールの製造方法によれば、良好な飛行特性を示し、かつ優れた耐衝撃性,耐久性を有するソリッドゴルフボールを得ることができる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
なお、下記の例おいて配合部数は重量部を示す。
〔実施例〕
シス-1,4ポリブタジエン〔日本合成ゴム(株)製,商品名:BR01〕65部、ハイシスポリブタジエンとシンジオタクチック-1,2-ポリブタジエンとの混合物〔宇部興産(株)製,商品名:VCR412〕35部、ステアリン酸亜鉛2部、メタクリル酸42部、焼成クレー(エンゲルハード社製,商品名:サチントン・ホワイトテックス)5部、ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩0.3部、ジクミルパーオキサイド〔日本油脂(株)製,商品名:パークミルD〕1.1部をニーダーで混練りし、得られたゴム組成物を165℃で30分間加熱圧縮成型して直径42.8mmのワンピースソリッドゴルフボールを製造した。
このゴルフボールについてゴルフボール打撃試験機を使用し、ヘッドスピード48m/secでの打撃を繰り返して耐久性を調べたところ、500回打撃を繰り返してもなんの異常も見られなかった。
また、同じ材料を加硫して得た1mm厚のシートにつき、引張り強度試験を行なったところ、破断時の伸び率が71%、破断時の強度が199kg/cm2であった。
〔比較例〕
ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩を配合しない以外は実施例1と同様にしてワンピースソリッドゴルフボールを製造した。
このゴルフボールについて実施例1と同様の方法でボール打撃試験を行なったところ、300回打撃を繰り返したところでボールが破壊した。
また、実施例1と同様に1mm厚のシートを作製し、引張り強度試験を行なったところ、破断時の伸び率が31%、破断時の強度は173kg/cm2であった。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2007-03-19 
出願番号 特願昭63-245344
審決分類 P 1 41・ 851- Y (A63B)
P 1 41・ 121- Y (A63B)
P 1 41・ 853- Y (A63B)
P 1 41・ 856- Y (A63B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石井 哲  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 西田 秀彦
宮川 哲伸
登録日 1999-08-06 
登録番号 特許第2961735号(P2961735)
発明の名称 ソリッドゴルフボールの製造方法  
代理人 吉見 京子  
代理人 村田 真一  
代理人 村田 真一  
代理人 小佐野 愛  
代理人 石井 良夫  
代理人 木崎 孝  
代理人 小佐野 愛  
代理人 石井 良夫  
代理人 吉見 京子  
代理人 木崎 孝  
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