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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A47L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A47L
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A47L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A47L
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A47L
管理番号 1155927
審判番号 不服2004-12419  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-17 
確定日 2007-04-09 
事件の表示 平成 8年特許願第81325号「清掃ロボットの制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成9年10月14日出願公開、特開平9-266871号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年4月3日の出願であって、平成16年5月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成16年6月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月16日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年7月16日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年7月16日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
本件補正は、平成16年1月23日付け手続補正により補正された特許請求の範囲(以下、「拒絶査定時の特許請求の範囲」という。)の請求項1について、「車両が停止した状態から走行を開始して所定時間を経過する間、」とあるのを、「車両が設定距離を走行した場合に前記車両の走行を停止する共に前記清掃ブラシを停止し、その後も、前記車両が、90度のスピンターンを行い、スピンターンさせた方向にシフト走行し、さらに90度のスピンターンを行い予め設定した走行方向に沿って前記車両の走行を開始して所定時間又は所定距離を走行するまで、」とする補正を含むものである。
この補正は、停止に至るまでの動作について限定を付加し、停止後、清掃ブラシを回転させるまでの走行動作についても限定を付加するものではあるが、清掃ブラシを停止する条件を「所定時間を経過する間」だけでなく、「所定距離を走行するまで」をも含むものとするものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められない。
また、上記補正が、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項2に対してなされたものとしても、清掃ブラシを停止する条件を「所定距離を走行するまで」だけでなく、「所定時間を経過する間」をも含むものとするものとなるから、同様の理由により特許法第17条の2第4項第2号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められない。
そして、上記補正は、特許法第17条の2第4項の他の各号に規定するいずれを目的とするものにも該当しない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「方位及び障害物をセンサを用いて検出し、この検出結果に基づいて制御部が車両駆動機構を制御して車両を自律走行させ、前記制御部が清掃部の清掃動作を制御する清掃ロボットの制御方法において、
前記清掃部は、回転しながら車両の走行に伴い床面を摺動する清掃ブラシと、前記清掃ブラシを回転させる清掃ブラシ駆動機構とを有し、
前記制御部は、車両が停止した状態から走行を開始して所定距離を走行するまでの間、前記清掃ブラシの回転を停止するように前記清掃ブラシ駆動機構を制御することを特徴とする清掃ロボットの制御方法。」

4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した特開平7-322977号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0004】以下に従来の自走式掃除機について説明する。図8および図9において、2は自走式掃除機本体(以下本体という)であり、1は床面の塵埃をかき集めるサイドブラシであり、3は床面の塵埃をかき上げて吸い込む回転ブラシであり、4は塵埃を吸引するための真空圧を発生させるファンモータであり、これらで清掃手段10を構成している。…(中略)…
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の従来の構成では、サイドブラシ1、回転ブラシ3は本体2が清掃動作中は、集塵性をよくするため高出力で常に動作させており、壁際の清掃時にサイドブラシ1による壁面の傷付きが生じたり、清掃方向の反転時等の走行速度の低減による絨毯の単位面積当たりの回転ブラシ3の接触時間の長さによって絨毯の特定部分に傷付きが生じるという問題点を有していた。
【0007】本発明は、上記従来の問題点を解決するもので、壁際以外ではサイドブラシを高出力にて動作させて、壁際では回転数を低く、また、回転ブラシにおいては清掃方向の反転時に回転数を低くすることにより、壁、絨毯等に傷を付ける事無く集塵性を落とさずに清掃する事ができる自走式掃除機を提供する事を目的とする。」(段落【0004】?【0007】)

イ.「以上のように構成された自走式掃除機について以下その動作を説明する。本体2が、図5に示すように壁51に対して矢印aの方向を方位センサ7の基準方向にして角度θを振り、前進と後退を繰り返しながら壁51から距離Lまでの清掃領域を清掃しながら走行しているとする。この時、方位センサ7の角度情報と走行操舵手段5からの走行距離情報により位置認識手段8は現在の走行位置の情報を判断処理部49に出力する。判断処理部49は、前進中は障害物検知手段6からの信号により壁51を検知すると進行方向を後退に切り換え、後退中は位置認識手段8からの信号により、壁51から距離L後退すると前進に切り換えるように走行操舵手段5に信号を出力し前後動作を行う。図中のCは清掃幅を示す。壁51を検知して進行方向を切り換えるとき、本体2の走行速度の絶対値は零に収束し、進行方向が反転すると、再び増加してゆく。この進行方向が反転するとき、床面の単位面積当たりの回転ブラシ42の接触時間が長くなり、つまり壁51付近の床面のみ回転ブラシ42の接触時間が長くなる。
【0029】判断処理部49ではまた、障害物検知手段6から入力される前方と壁51までの距離信号と、あらかじめ設定しておいた本体2と壁51までの距離Dの大小の比較を常に行っており、距離信号が距離Dより大きいときには本体2が進行方向を反転しない距離と判断して回転ブラシ42を高速にて動作させるよう回転ブラシ駆動手段48に信号を出力し、回転ブラシ駆動手段48は回転ブラシ42を高速で動作させる。反対に、距離信号が距離Dより小さいときには本体2が進行方向の反転動作に入る前だと判断して回転ブラシ42を低速にて動作させるよう回転ブラシ駆動手段48に信号を出力し、回転ブラシ駆動手段48は回転ブラシ42を低速で動作させる。
【0030】以上のように本実施例によれば、清掃手段50の一構成部として回転して床面の塵埃をかき揚げる回転ブラシ42と、前記回転ブラシ42を駆動する回転ブラシ駆動手段48と、本体2を走行、操舵する走行操舵手段5と、方位センサ7と、前記方位センサ7の角度情報と前記走行操舵手段5からの走行距離情報により現在の走行位置を認識する位置認識手段8と、距離Dのしきい値を設定し、障害物検知手段6からの信号により前記回転ブラシ42の回転数を制御し、位置認識手段8からの信号により、走行操舵手段5、清掃手段50の動作を制御する判断処理部49を設ける事により、壁51際でのみ回転ブラシ42の回転数を低速にして、壁51際の近傍を清掃するときも回転ブラシ42の床面への影響を最小にして、集塵性を損なう事無く清掃する事ができる。
【0031】なお、本実施例では、前方の壁51に関して説明したが、後方の壁に関しても同様であることは言うまでもない。(段落【0028】?【0031】)

ウ.「尚、本実施例1?4において、障害物検知手段6が検知する対象物を壁としたが全ての障害物を対象としても良い事は言うまでもない。また、低速で動作させるという表現をしようしているが、低速には停止の状態も含まれる。」(段落【0037】)

上記記載事項から、引用刊行物には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「判断処理部49が、方位センサ7の角度情報と、走行距離情報から得た、位置認識信号により、走行操舵手段5、清掃手段50の動作を制御し、また、障害物検知手段6からの信号により回転ブラシ42の回転数を制御し、進行方向を後退に切り換える、前進と後退を繰り返す自走式掃除機の制御方法であって、
障害物検知手段6から入力される前方と壁51までの距離信号と、あらかじめ設定しておいた本体2と壁51までの距離Dの大小の比較を常に行っており、距離信号が距離Dより大きいときには本体2が進行方向を反転しない距離と判断して回転ブラシ駆動手段48は回転ブラシ42を高速で動作させ、反対に、距離信号が距離Dより小さいときには本体2が進行方向の反転動作に入る前だと判断して、回転ブラシ駆動手段48により回転ブラシ42を低速で動作させるか、停止させる制御方法。」

5.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「自走式掃除機」、「判断処理部49」、「走行操舵手段5」、「清掃手段50」、「回転ブラシ42」、「回転ブラシ駆動手段48」は、その機能ないし構造からみて、それぞれ、前者の「清掃ロボット」、「制御部」、「車両駆動機構」、「清掃部」、「清掃ブラシ」、「清掃ブラシ駆動機構」に相当する。
そして、後者において、判断処理部49は、方位センサ7の角度情報及び障害物検知手段6からの信号により走行操舵手段5、清掃手段50の動作を制御しているから、「方位及び障害物をセンサを用いて検出し、この検出結果に基づいて制御部が車両駆動機構を制御して車両を自律走行させ、」また、「清掃部の清掃動作を制御」しているといえる。
また、後者の「回転ブラシ42」は、「回転しながら車両の走行に伴い床面を摺動する」ものであることは明らかであり、後者の「自走式掃除機」は壁に接近した後、距離Dだけ離れるまで「回転ブラシ42」を停止させることもできるから、「車両が停止した状態から走行を開始して所定距離を走行するまでの間、前記清掃ブラシの回転を停止する」ものといえる。
そうすると、引用発明は、「方位及び障害物をセンサを用いて検出し、この検出結果に基づいて制御部が車両駆動機構を制御して車両を自律走行させ、前記制御部が清掃部の清掃動作を制御する清掃ロボットの制御方法において、
前記清掃部は、回転しながら車両の走行に伴い床面を摺動する清掃ブラシと、前記清掃ブラシを回転させる清掃ブラシ駆動機構とを有し、
前記制御部は、車両が停止した状態から走行を開始して所定距離を走行するまでの間、前記清掃ブラシの回転を停止するように前記清掃ブラシ駆動機構を制御することを特徴とする清掃ロボットの制御方法。」であるということができ、結局、本願発明は、引用刊行物に記載された発明である。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

なお、原審において通知された拒絶の理由は、本願発明が引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とするものであったが、本願発明が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたか否かを検討する際に、それらが同じであるか否かは、当然判断されるものであり、請求人もそれを踏まえた上で意見を述べているから、新たな拒絶理由を通知することなく上記のとおり審決した。
更に、平成16年7月16日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明について付言すると、「車両が設定距離を走行した場合に前記車両の走行を停止する共に前記清掃ブラシを停止し、その後も、前記車両が、90度のスピンターンを行い、スピンターンさせた方向にシフト走行し、さらに90度のスピンターンを行い予め設定した走行方向に沿って前記車両の走行を開始」するように清掃ロボットを走行させることは、上記引用刊行物にも記載され、また、原審の拒絶査定時に引用した特開平5-158536号公報にも記載されているように、周知の制御方法であるから、該発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
 
審理終結日 2007-02-13 
結審通知日 2007-02-16 
審決日 2007-02-27 
出願番号 特願平8-81325
審決分類 P 1 8・ 572- Z (A47L)
P 1 8・ 573- Z (A47L)
P 1 8・ 574- Z (A47L)
P 1 8・ 113- Z (A47L)
P 1 8・ 571- Z (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武井 健浩金丸 治之  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 一色 貞好
稲村 正義
発明の名称 清掃ロボットの制御方法  
代理人 吉元 弘  
代理人 橘谷 英俊  
代理人 吉武 賢次  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 川崎 康  

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